THREE1989「Just be Blue」と雨の日のプレイリスト

THREE1989が2022年6月3日にリリースした「Just be Blue」のレビューと、THREE1989の雨の曲、そして雨の日専用のプレイリストを作りました。

雨を待つ

雨が降り出すのを待つような気持ちで、今この記事を書いている。

1年の季節の中で、梅雨が好きという人はどれくらいいるのだろうか。

梅雨真っ盛りの6月に生まれた私ですら、すごく好きというわけでもないのだけれど、特別であることは確かだ。

雨が多く、祝日が1日もない6月がどこか疎まれていることも、肌感覚で実感している。

別にいいんです、嫌いと言う方々のベクトルを無理に好きに向けようとしているわけでもないので、そのまま言い続けてくれて全然いいんです。

でも例えばTHREE1989は、そんな鬱々とした日々も思いも、一瞬で素敵な景色に変えてくれる。今回この記事のテーマにしたかったのはそういうことなのだ。

THREE1989は2022年4月から連続して毎月3日に配信リリースを行なっており、6月3日には「Just be Blue」がリリースされた。

「Just be Blue」

作曲とプロデュースにはYuki “T-Groove” Takahashiさん、YUMA HARAさんが参加されたとのことで、普段のTHREE1989とは少し違った体制で制作されている。

T-Grooveさんといえば、ディスコ、ファンク、ソウル、R&Bなど幅広く扱う音楽プロデューサー。日本にこのグルーヴ感をもたらしてくれる方は他にいないんじゃないかと思わせるくらい、混じりっけのないファンクサウンドを生み出してくれている。

そんなTHREE1989とT-Grooveさんのコラボということで、どう考えても相性が良い。聴く前から名曲、聴いてもっと好きになる感じ。

亀井友莉さんが参加されたというストリングス含め、モータウンがなかったらきっと今ごろ呼吸をしていなかった筆者としては、イントロを聴いただけで全幅の信頼を寄せずにはいられない。

加えてシティポップのような都会的な爽快感もある。このコラボはまさに今こそだと思うし、まじで世界中で聴かれてほしい。聴かれなきゃおかしい。

そしてYUMA HARAさん。Culture Cruiseで取り上げている多数のアーティストの方々ともご縁の深いギタリストさん。音楽プロデューサー、コンポーザーと幅広く活動されています。

ソウルフルで爽快なトラックを、なめらかに包み込むようなメロディ、切なさが漂うヴォーカル。雨をこんな価値観で表現できるのは、このコラボだからこそだと感じる。

レコーディングは久保田利伸さんのスタジオ、BASEMENT of Funky Jamで行われたとのことで、どこから説明したらよいのか分からないくらい説明不要な熱い楽曲となっている。

T-GrooveさんとYUMA HARAさんといえば、2022年3月にはFOUR LEAF SOUND「Still in You(T-Groove&Yuma Hara Remix)」もリリースされていて、こちらもまた素敵なので聴いてください。

THREE1989には他にも雨に関連する曲がある。どれも素晴らしいので、梅雨生まれの私は猫のように懐いてしまいそう。

「UMBRELLA」

2018年にリリースされた「UMBRELLA」はライブでも盛り上がる定番曲で、玄関先に置かれた傘のように、気付けばそこにいてくれる存在だった。

でもよく考えてみよう。曲ができた背景から、傘をテーマに織り成すストーリーがこのサウンド構築と流れるようなメロディの元に展開するのはどう考えても発明レベル。

1番と2番ではBメロの作りが全然違っていて、切なくもカラッとポップな1Bに対して、2Bはシンセベースがより浮かび上がってエッジが立っているのに、雲が立ち込めた日本の空が見えてくる。

そして2021年6月には「紫陽花」をリリースしたTHREE1989。

「紫陽花」

私はEDMを聴きながら太宰治とかを読むような変な人間なのだが、この曲を聴いた時、何となくその感覚に近いものを感じた。変な趣味と勝手に結びつけて申し訳ないですけど。

梅雨なんて早く終わればいいのにってみんな思ってる。雨の歌は数知れず存在するけれど、去っていく紫陽花の見頃を惜しむように追いかける、そんな曲は初めてだった。

誰もが夏を待ちわびているというのに(夏になったらなったで、THREE1989の夏の曲もまた素晴らしいのだけど)、梅雨の時期をこんな風に楽しんじゃってる音楽は貴重だ。

この曲の大サビ前のような、山と谷、光と影みたいなものをグラデーションで表現するのが、THREE1989は本当にうまい。いつもそこに心を奪われている気がする。

以前THREE1989にインタビューをした際にも、Vo. Shoheiさんの小学生時代のお話を伺って、自然の恵みがすぐそばにある環境で育ったShoheiさんだからこそ持てる視点があり、歌える歌があるのだという印象を受けた。

きっとTHREE1989ならではの雨や季節の捉え方があり、その感性が美しい楽曲のベースでもありエッセンスでもあるのだと感じる。

作物も文学も、雨がなければ育たない。嫌われ者の雨の日にこそ、離れずに寄り添ってくれるTHREE1989の曲を大切にしたい。

雨の日に聴くプレイリスト

そんなTHREE1989の曲に感化されて、Culture Cruiseでも雨の日専用のプレイリストを作りました。

歌詞も大事だと思うので今回はほとんどが邦楽です。ここで取り上げたTHREE1989の3曲も入ってます。

中にはもう雨上がっちゃってる曲とか、連想させるとか、直接雨ではない曲もありますが、そういうところも含めて雨は想像力を育んでくれるものだと思いました。

適度にリラックスできるような曲が集まって、雨の日って頑張らなくてもいいっていうか、ちょっと小休止できるような雰囲気があって、そんな1日をデザインしてくれる曲が多いことにも気付けました。

雨の日が待ち遠しくなるような素敵な曲が集まっているので、ぜひ聴いてください。晴れの日が待ち遠しいような、もう少しだけ降っていてほしいような、いろいろな感情が芽生えるので楽しいです。

文 / 長谷川 チエ

THREE1989 公式サイト


▼THREE1989 インタビュー(2019.11)

▼[THREE1989] 10曲レビュー&レセプションパーティーレポ

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!