【2022年上半期】個人的によかった邦楽アルバム7選

2022年上半期 よかった邦楽アルバム

今年もこの季節がやってきました。なぜか下半期にはやらないこの企画、2022年の上半期にリリースされた邦楽アルバムの中から、個人的ベスト作品を7枚セレクトしました。

Awich『Queendom』

曲を集めてコンパイルしたという感じではなく、すべての曲が『Queendom』というタイトルのもとに存在していて、かつしっかりと意思を持っている。そんな印象のアルバム。

JP THE WAVY、YZERR、ANARCHY、KEIJU、¥ellow Bucksといった客演のバランスも絶妙。

「Follow Me」は、すでに2022年の年間プレイリスト100にも選びました。

今このリリックでラップと歌をかませるのはAwichしかいないし、曲の良さもさることながら、Awichの気概に吸い込まれていくようなアーティストとしてのパワー。気付いたらこれをセレクトしていたという感じ。

LUCKY TAPES『BITTER!』

熊に出会った時、背中を見せずに後ずさりして逃げるように、気づかないうちにどんどんブラッシュアップされていた。例えて言うならそんなアルバム。

だから「今回もいいね」という感覚に「今回はすごいね」という感覚が混ざる。

約1年半ぶり、気付けばメジャー3rdアルバムだという『BITTER!』。

ここまで確立されたLUCKY TAPESの世界の中で、らしさと挑戦とを織り交ぜたバランスのよさ、1枚のアルバムとしての緩急。

攻めつつもしっかりと守られたブランディングが見事だと感じた。

小林私『健康を患う』

最近の私はほとんど小林私でできているのではないかというくらい、小林私が私の生活を席巻しはじめている。

2022年3月に、8曲入りのアルバム『光を投げていた』をリリース。このアルバムもミクスチャーでとても良かった。

今回セレクトした、同じく8曲入りのアルバム『健康を患う』は、2021年に発表された1stアルバムを再構築した形で、2022年4月に配信リリースされたもの。

六畳一間の和室で聴きたい「悲しみのレモンサワー」から、オートチューンのサウンドデザインも抜かりない「スープが冷めても」、からの「恵日」というパンチのある流れが個人的には好き。

メロディの引き出しを開けたり閉めたりしながら、文字通り生活を席巻してくる小林私がまじですごい。

Bleecker Chrome『SEVEN THIRTY ONE』

サブスクでアルバムを試聴すると、ついカーソルを移動させて早送りしたくなってしまうけど、このアルバムは「もう少し聴いてみよう」と試聴のうちからどんどんのめり込んでしまう。聴く者の手を止める訴求力のあるビートとボーカルだと思う。

『SEVEN THIRTY ONE』というタイトルには、2年間の活動休止を経て、再始動として新たな一歩を踏み出した730+1日という意味が込められているという。

活動休止していたとは思えないほど、プレイヤーとしての嗅覚の鋭さを感じるし、Bleecker Chromeの経験が、この完成度をもって1stアルバムに行き着いているだけで、一つの答えをもらった気持ちになる。

ひときわ思いの強さを感じる「Burning Fuel」を聴いて、どこか安堵する自分もいる。

神はサイコロを振らない『事象の地平線』

まず、ここまでボリューミーな20曲入りのアルバムを作っただけですごい。そしてリスナーの集中力を切らさずに興味を引きつけるのもすごい。

さらに、10曲目の「徒夢の中で」で景色が変わり、ここでやっと折り返す(その後に「あなただけ」がくるのとかたまらん)。

フェードアウトすることもなく、全20曲を聴かせる神サイはすごい…と何段階にも渡って感じさせる。

2022年6月には、Rin音とのコラボ曲「六畳の電波塔」もリリース。

体幹がしっかりしていて、創造力や生命力が感じられるバンドだなと思う。

Doul『W.O.L.F』

アルバムリリースの際にはインタビュー、アルバムツアーの東京公演はライブレポートとして特集した筆者としてはかなり聴き込んだので、Doulが伝えたかったものは受け取ったつもりでいる。

しかしそこまで聴き込まなくとも、アルバムとはどんなものか、特に洋楽アルバムの何たるかをしっかり自分の身に落とし込み、音楽をリスペクトしてきた経緯がすぐに感じ取れると思う。

だから流れがきちんとできているし、安心して身を任せられる信頼感のようなものが芽生える。

Doulのルーツまでも感じられる、1stアルバムにふさわしい出来栄えに仕上がっている。

【Doul特集 Vol. 1 インタビュー】アルバム『W.O.L.F』の魅力

Ghost like girlfriend『ERAM』

Ghost like girlfriendの楽曲は、1曲ずつがしっかりと自立している。『ERAM』の中でもそれは感じられて、アルバムとして一つになると森の中にいるような気分になった。

ヒーリングとかじゃなくて、いろんな植物が重なり合って森になっている感じが浮かんでくる。そういう意味では、これもある種の森林浴みたいなものかもしれない。

EP『2020の窓辺から』の時からこの曲だけが稀有なきらめきを放っているように感じられた「Birthday」は、ここでもとりわけ彩りを濃くしている。

型にはまらない斬新なメロディに美しさを感じつつも、「面影」の商店街のパン屋の話とか、「Flannel」の“だからもうアイスでも食べて” の歌詞に妙な親近感を覚え、Ghost like girlfriendの真骨頂、というよりも素の優しさに触れたような感じがする。


以上、2022年上半期の個人的によかった邦楽アルバム7選でした。

曲単体で聴くことが増えている最近の聴き方ですが、アルバムごと楽しむ時間もやっぱり大切だなと改めて思いました。

文 / 長谷川 チエ

▼2021年上半期の邦楽アルバム7選はこちら

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!