三代目のEDM路線が気に入らない?どんなにすごい挑戦かを今こそ語ろう

三代目 J Soul Brothers=EDMというイメージは世間でも継続中でしょうか。EDMはフューチャーハウスやトロピカルハウス、トラップなど派生を重ね、世界的なメインストリームであり続けています。

しかし、初期の三代目JSBが好きな方を筆頭に「三代目にEDMはいらない」「バラードがいい」というファンの声も。そこでJSBとEDMの関係について、本気出して考えてみました。

(この記事は2017年5月に執筆したものです)

画像出典:Wikipediaより




なぜこんなにもバラードが待たれるのか

三代目のバラードが聴きたいというファンの方の気持ちはよく分かるのですが、私の考えとしては、バラードは量産すべきでないと思っています。

「Born in the EXILE」級の名曲があれば、私は何年でも待てます。ていうか別に待ってない。

挑戦を続けて磨きがかかる表現力。そして夢を叶えて行くメンバーたち。その努力の賜物として出来上がったバラードに、真価があると思うのです。

そこに彼らのキーワードがある。新たなクロスオーバーに挑戦し続ける彼らの「音」を聴きたい! 三代目JSBがどれだけの試行錯誤を重ねてこのジャンルを築き上げてきたことか、しっかり聴き込んで欲しいのです。

以下、ぜひ曲を流しながら読んでみてください。もう何百回も聴いてるから知ってるよ! という方も、改めて聴き直すと、とても意義深く聴こえてくるはずです。

R.Y.U.S.E.I.

三代目とEDMの関係は「R.Y.U.S.E.I.」を筆頭に挙げられることが多いですが、2ndアルバム『TRIBAL SOUL』「I Can Do It」ですでにEDMを試しています。

3rdアルバム『MIRACLE』「(YOU SHINE) THE WORLD」も直球のEDM。まずはアルバム曲から布石を打ったわけですね。

そもそもJ Soul Brothersは、New Jack SwingやR&Bを取り入れてきたグループ。

三代目はそれを受け継ぎながらも、時代とともにエレクトロ寄りに。New Jack Swingはどちらかというと、パフォーマーに浸透しているように思います。

それまでのシングル曲は、継承に重きを置いていて保守的にも感じられましたが、徐々にリベラルになり、三代目の特色が出てきました。

それは悲観すべきでなく、むしろ歓迎することもJSBファンの流儀と言えるのではないでしょうか? ターゲットマーケティングが幅広いグループを応援するなら、ファンの理解にも時に寛容性が問われると思うのです。

変化する過程では不安や苦悩もあったと思いますが、柔軟に受け入れアウトプットするのが非常に上手いグループだと感じます。

もう何年もこのスタイルでやってます、みたいに自分たちのものにするのが上手いなと。でも本当はこれも、どっちに転ぶか分からない未知なる挑戦ですよね。

バラードを出せば安泰だけど、あえて挑戦する姿勢を忘れないのが三代目のスタイルなのですね。日本では、トライするJ-POPアーティストを受け入れる度量が狭いように感じるところが残念です。

EDM好きなアメリカ人の友人が「日本はなんで洋楽聴く人がかっこいいと思われてるの?それってすごくダサいよ?JSBとか超絶COOLじゃーん!」と言ってました。

この心の寛容さがアメリカ音楽に多様性をもたらし、レベルを底上げするんだなと感じました。私も洋楽は大好きですが、同じくらいJ-POPも愛しています。




O.R.I.O.N.

プロローグが長いので途中から。さらっと歌っているように見えますが、完成度も難易度も非常に高い曲なのでしっかり聴き込んでほしいです。

個人的には3:09あたりの、NAOTOさんが攻めすぎて冷静な登坂さんがなだれていくシーンが気に入ってます。こういう細かすぎる発見が趣味で。

2014年に1年間かけて打ち出した、春夏秋冬シリーズの冬にあたる曲。

「S.A.K.U.R.A.」「R.Y.U.S.E.I.」「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」に次いで、華やかな年末にリリースされたこの曲によって季節が一巡し、プロジェクトが完結したわけですね。

この音で冬を表現した感性にはロマンと壮大さを感じます。それでもキャッチーに仕上げるのがすごい。

「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」は継承、他の3曲は攻めというバランスと、今後の方向性を位置づけるプロジェクトだったように思います。

あくまでもJ-POPなので、しっかりと歌い込むのは前提。EDMも取り入れるならば、徐々にアガってサビを最大級の音圧にしなければいけません。

これは三代目のどの曲にも言えることですが、ボーカル2人で交互にパート分けされるので、1人でサビまでビルドアップできるわけではありません。

自分のパート以外でも、相応のテンションを保ち続けること。さらにサビでは、最高潮の音圧から突然バトンタッチされる難しさもあるのです。しかもいきなり高音だったりする無茶振り!

反対に、気持ちよく歌ってても今度はマイクを離さなきゃいけない。または瞬時にトーンダウンしてハモったり。

そこに合わせて感情をコントロールするのは容易ではないはず。聴き手は何の違和感もなく流し聴きできますよね?

これは実力があるから成せる技であり、例えば役者さんがカット割りのために、細かく区切られた演技をつなげても、視聴者はノーカットの感覚で観れるくらい自然なのと似ています(伝われ〜)。

デュオで歌うにはバラードよりも難易度が高いと私が感じているのが、 POPS系EDMです。

Summer Madness feat. Afrojack

ここまで真っ向からEDMと対峙した楽曲は、J-POPでも類を見ないのではないでしょうか。このクロスオーバーを世間がどこまで理解するだろうかと、興味深く見守りました。

トップアーティストである三代目JSBが、ヒットチャートに挑戦状を叩きつけたことの功績は大きいと思います。

J-POPで一番の魅せどころであるサビで、ボーカルが黙るっていう。むしろ一緒に踊ってる。この試みは賞賛もの。EDM風ならHands up!!!

J-POPでは、サビの部分を至上主義とする傾向が強めです。

CMタイアップ曲などは特に、サビさえよければという感覚で、AメロBメロが聴けたもんじゃない、いきなりサビにカットインするような不自然な楽曲もあるわけで。

でもこうしてドロップまでビルドアップしていく楽曲では、どの部分も気が抜けません。そこはさすが世界のトラックメイカーAfrojackだなと。

曲をリリースするだけならまだしも、彼らの場合はTV出演などもあり、ビジュアルも様になっていないといけないですよね。音サビでも間延びしない工夫、ELLYさんの振り付けが見事に生きています。

生の音楽番組で歌うのは気の毒なほどボーカルの難易度が高いですが、果敢に挑んだ2人には賛辞を送りたい思いです。

でもね、私は彼らがEDM路線で攻めることはもっと前から気付いていましたよ。どれくらい前からかというと、この頃からです。

Best Friend’s Girl

デビュー曲から(笑)

打ち込み系はEXILEから継承しつつも、クラップはダブステップ、リミックスは特にエレクトロを予感させました。

もはやEDMの線引きが難しいですが、タイミング的にもこの頃から、世界ではEDMが流行り出します。

時代にフィットさせるJSBのスタイルを鑑みると、EDMとまでは言わずとも、ダブステップあたりは計画的戦略だったのでは?とも思うわけです。

それにしても、岩田剛典さんが変わりすぎな件は無視できないですよね。でも私は昔の岩田さん好きです。J Soul Brothersのイメージにも合ってて、ちょっと世間に抗っているかのような。もちろん今も素敵ですよ。とにかく元気でいてくれればいいんです。




Sick Individuals – Lost & Found

EDM界では世界的にも活躍中のSick Individualsが、三代目のライブを観てぜひコラボしたいと語っていたのは、2015年の年末ごろでした。

この話は流れてしまったのかな?とても楽しみにしていたのに。もはやJ-POPの機会損失です。EXILEとはリミックスで絡んでましたけどね。

挑む者は輝き続ける

先達のNew Jack SwingやR&Bスタイルをかたくなに守るだけではなく、その時代の良さを取り入れていくのがJ Soul Brothersの特徴。

「三代目JSBは挑戦し続けるグループ」だとメンバー自身も語っていることが、何よりもそれを意味しています。

個人的には、ミドルナンバーのR&Bも織り交ぜつつ、保守的になりがちな日本の音楽に、新しいサウンドをどんどんもたらして欲しいです。

しっかり作り込んでいるのに、ポピュラー性も外さない。その二面性が彼らの持ち味であり、実は相反する高度な魅せ方でもあるのです。

彼らが挑戦し続ける限り、輝きは失わない。アーティストのチャレンジにリスナーがもっと寛容になれば、J-POPはさらに進化できるのではないでしょうか。

文 / 長谷川 チエ(@Hase_Chie


▼世界を一つにしたAvicii

 

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!