【Doul特集 Vol. 1 インタビュー】アルバム『W.O.L.F』の魅力

2022年3月に1stアルバム『W.O.L.F』をリリースしたDoulさんを2回に渡って特集。Vol.1はインタビュー、Vol.2はライブレポートでお届けします。今回はアルバムや初のワンマンツアーについて伺いました。


Doul × Culture Cruise

ーーDoulさん、アルバムリリースおめでとうございます! CDとしては初リリースということで、フィジカル的な強さとか、曲同士が高め合っている感じもあり、盤になることを意識されている印象を受けました。

Doul:ありがとうございます。あんなに多い曲を一つにすることが初めてだったので、アルバムだからこそできる遊びというか、曲間とか並びもすごい考えました。

ーー紙ジャケにしたかったとおっしゃっていましたが、それはずっと決めていたのですか?

Doul:そうですね、紙のマットな感じとか、レコードのジャケットの質感もめちゃくちゃ好きなんで、自分が出す時は紙にしたいと決めてました。

ーー紙ジャケって記憶に定着しますよね。タイトルも本当にアルバムに合っているなと感じるのですが、どの段階で決めたのですか?

Doul:曲作ってる最中からタイトルは『W.O.L.F』って決めてて、ジャケのイメージもできてました。一発目のアルバムは、自分の守護神のようにも感じている“ウルフ” をタイトルにして、思いのあるものにしたかったので。

ーー最初に14秒鼓動が入っているのは、どんな意図があるのでしょうか?

Doul:あれは最初の段階では入れていなくて、ベースの部分を作って音を重ねていたんですけど、それをずらして鼓動を入れました。心臓の音って不思議な感覚になるじゃないですか。ライブのことも考えて、自分も含め、聴く人もアルバムの世界観にすぐに入り込めるような仕掛けというか。

ーーでは今回のアルバムツアーでも、そういう部分が生きてくるようなプログラムになっているんですかね。

Doul:そうですね、めちゃくちゃ生きてます。

ーー個人的な推し曲は「Bone」なんですけど、MVは雪の日に撮影したんですか? タンクトップでしたけれども。

Doul:めっちゃ雪の日に撮ってます。死ぬほど寒かったです。けっこう前から撮影日は決まってて、雪の予報だったんですけど、それも記念になるかなと。最後に寝っ転がるシーンがあるんですけど、背中凍ってて。

ーーうわぁ…そう思って観るとまた印象が変わりますね。「Bone」でアルバムの世界観がガラッと変わる感じがします。

Doul:元々はアルバムに入れるか迷っていた曲で、自信作だったのでシングルで出したいくらいだったんですけど、アルバムを通して聴いた時に、HIPHOPビートで懐かしいサウンドを入れた方が面白くなると思って。それで入れてみたら、意外と外せない曲になったのでそのまま入れつつ、いきなりだと全体になじまないので、その前にインタールードを入れてます。

自分が考え出したものを信じたい

ーーこのアルバムで制作に時間がかかった曲はありますか?

Doul:時間がかかった曲(…考え中)

ーー制作自体はすんなりいく方ですか?

Doul:そうですね、めちゃ速いです。1日2曲とか作るんで。時間かかった曲ないかもしれないです。速いというか、アレンジとかまで想像できてたからかもしれないですね。

ーーアートワークなどのイメージが先に浮かぶともおっしゃっていますが、曲の完成に向けて多くの人が関わっていきますよね。セルフプロデュースの面白くも大変な点だと思うのですが、イメージをどのように人に伝えているのでしょうか?

Doul:自分のイメージに近い色の画像を用意することが多くて、十何枚くらい写真を見せつつ、口で説明しまくる感じですね。人が関わってくるにつれて考えも変わるし、イメージしてた方向とずれたりもするけど、新しいイメージももらえるので。「この歌詞はこういう風に書いた曲で」という明確な説明を前提に、色とか場所の雰囲気を伝えます。

ーー例えばそれが全然違ったものでも、それはそれでありだと思えますか?

Doul:イメージと逸れた場合は「ん?」とはなりますけど、新しい考えが来て、見せ方が違うけど自分のイメージにもリンクしてる場合はいいなと思います。例えばアートワークを作るとして、この1個の感覚を作っているのって自分だけで、そこにある考えを持っているのも自分だけなので、一旦自分が考え出したものを信じて作りたいという思いがあります。

ーー途中で自分の考えも変わることはないですか? やはり最初のインスピレーションが貫かれていることが多いのでしょうか。

Doul:新しくやりたいことは増えていくんですけど、ある程度の理想図は最初に全部描くんで、変わるにしてもそこに増えていくという感じです。

ーー足し算する感じなんですね。Doulさんの音楽は、どの曲も違った角度での実験的要素があるところが私は大好きなのですが、このアルバムでトライしたことがあれば教えてください。

Doul:「What’s missing」という曲はバラード調なんですけど、自分にとっても新しい曲で。最初の4曲くらい出した頃までですかね、“雰囲気もの” だと言われて、歌を歌えない人だと思われてたんですよ。「Howl」とか、上手いかっていうと分からないじゃないですか。

ーーとっても上手いですけどね。

Doul:グルーヴで歌っている曲というか。グルーヴで歌うのが一番なんで、いいんだけど、歌えることを証明するためにも「What’s missing」を書いたんですよ。アカペラでも聴かせられるくらいのメロディをあえて作って「Doul歌えるよ」という意味でのトライというか。それだけで作った曲ではないんですけど。

ーーいろいろある理由の一つというか。

Doul:全体で見ると「What’s missing」が一番歌えることを証明した曲ではあります。でも基本的にDoulの曲は歌えるというよりもグルーヴを大切にしてるし、カラオケで真似できないフロウが続くと思うんで。

ーー間違いないです。歌い上げる曲が入って、より素敵なアルバムになったのですね。

初のツアー『A LONE WOLF』

ーーライブのリハーサルは順調に進んでいますか?

Doul:もちろんです。リハも感覚を変えてやってます。本番を楽しみたいから。

ーーそんなことできるんですか!

Doul:お客さんの前でやるってことをまったく想像しないです。レコーディングの時はお客さんがいるのを想像しながら歌うんですよ。でもリハでそれをすると、本番で衝撃がなくなるので。「ここでお客さんが盛り上がって…」って想像するとだめなんですよね。

ーーたしかに、盛り上がるところを先に想定するのも違和感ありますしね。でもいきなり本番で緊張しないですか?

Doul:ないですね。ステージに立ってる時が一番生きてるって感じるんで、そこでギターを弾いた瞬間に感じるものは、どこでも味わえないし。だからリハとはまったく違う音も鳴るし。

ーー観客が観たいのもそういうところですしね。

Doul:もちろんリハで100%以上でやるアーティストもいて、それも面白い考えだなと思います。でもDoulは少し違って、本番を大切にする。もちろんリハもちゃんとやりますけど、本番で出し切るという考えですね。

ーーどちらも素敵だと思います。どんなところに注目すると、今回のツアーをより楽しめそうですか?

Doul:今回はバンドサウンドと、HIPHOPやってるDoulと、いろいろ混ざったハイブリッドなDoulが観られるので、1回ですごく満足できるライブになると思います。

ーー楽しみにしています! 今日はありがとうございました。

インタビュー後記

Doulさんへのインタビュー。

リモートインタビューはとても苦手で、何度やっても慣れることがない。微妙なラグにはばまれて、物理的な距離が近づくこともない。

PCの前でぶつぶつ言ったり変な間(ま)を作る私の何十倍も、Doulさんは落ち着いていた。その落ち着きによって生まれた余白は、微妙なラグも物理的距離も埋めてくれた。

私がちょっと意味の分からない質問をしても、その何十倍も深い答えを出してくれる方だった。

心の中にあることを包み隠さずに話してくれた気がするし、媚びたり、偽ったりすることのない目をされている方だった。自分の芯にあるものを曲げたり、迎合したりもしない。

でもそれはわがままでも、自分勝手でもなく、誠実さの中にあるものではないかと思う。Doulさんのソフトな一面が、私にはとても印象に残った。

Doulさんの柔軟な音楽性は、そんなところにも端を発しているのかもしれない。とても信頼できる音楽と、クリーンな空気を作るアーティストだと思った。

そんなDoulさんが立つステージをこの目で見て、流れる空気を身体で感じて、ライブレポートとして表現したいと思います。次回は東京公演のライブレポートをお届けします。

インタビュー・文 / 長谷川 チエ


Doul First Album 『W.O.L.F』

・初回仕様限定盤 4,400円(税込)CD+Blue-Ray
・通常盤 3,300円(税込)

・配信リンク:https://orcd.co/doul_wolf

Doul 公式サイト

▼Vol. 2 ライブレポートはこちら

▼藤井風さんについて【2021年版】




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!