【I Don’t Like Mondays.インタビュー】10周年のバンドアイデンティティを示す「New York, New York」

I Don't Like Mondays.

4月24日にデジタルシングル「New York, New York」をリリースしたI Don’t Like Mondays.にインタビューしました。この楽曲が生まれた背景や、10周年を迎える心境などを語っていただきました。

「New York, New York」

ーー今回の楽曲はバンドサウンドが特徴的ですが、制作はいつものようにディスカッションから進めたのでしょうか?

SHUKI(Dr):今回は初めてのパターンでした。今までは歌メロを重視して、弾き語りで弾いてもいいメロを基準に考えていたんですけど、もうちょっとトラックも含めてバンド感を強めた方がいいんじゃない?って話をしてて。今年出す曲調をどうしようかというのは、去年くらいから話してたんだっけ?

KENJI(B):うん、そうだね。

CHOJI(G):作り始めのきっかけは、いつも通り話し合いから生まれましたね。

SHUKI:バンドっぽいのでいこうと話し合ってはいたんですけど、新しい試みをする中で自分たちが思うサウンドに辿り着かず、でも話し合いは重ねて曲は作っていて。これは本当に初めての試みなんですけど、ある日曲を作る部屋に向かう途中で、僕が思いついたサウンドがあったんです。部屋に着いてKENJIが後から来たので、別にそれを世に出そうとかいう気持ちではなく普通に、なんかメモとっておこうという程度で、引き続き別の曲を作っていたんです。それで、いざどの曲を出そうかという話になった時に、これ逆に新しくていいんじゃない?って。ギターサウンドメインで広げて、ワンコーラスは作ってたので。バンドっぽいのやりたいって話し合いを重ねてたからこそ、フィーリングで作るのは逆に今の僕らっぽいというか、凝り固まってない、考えすぎてなくていいんじゃないかということでこの曲を選びました。ここまでフィーリングで作ったのは初めてです。

YU(Vo):このタイミングじゃなかったらレコーディングまで至らないというか、勇気が湧かなかったんですけど、10周年ということもあるので。2024年はこの曲より先に、Snow Manに楽曲提供させていただいたりとか、自分たち的にはイベントが続いて。ここで本当にバンドらしいものを出してもいいタイミングだなぁと、思い切って今年初のシングルでいけるんじゃないかということで。いろいろ重なってできた曲です。

ーーサウンドはUKっぽくて、KENJIさんのルーツに近いですよね。

KENJI:そうなんです。それこそデビュー前の時期にやってた方向に近いですね。フィーリングでできたものを持ってきたから、歌詞が入るまでは「これ大丈夫かな?」って。

YU:これでいこうと言ったものの(笑)。不安はありましたね。

KENJI:みんなで広げていった時に「意外とこの曲がいいんじゃない?」っていうみんなの反応で、いや…ほんとにそうなのかな?って(笑)。でも決めたから何とか完成させなきゃっていうところから入っていったんですよ。

YU:僕の歌詞が入るまでは不安でしたね。今まではラララで歌ったデモでも「これはめっちゃいいね!」っていう曲をリリースしてたので。この曲はラララの段階では、ほんとに大丈夫かな?って。サウンドは勢いがあってよかったんですけど。でも結果タイトルも含めて、自分が仮歌を入れた時に、めっちゃいい曲になりそうっていうのは、ワードが入って手ごたえを感じましたね。

KENJI:すごいYUらしいし、サウンドは僕らっぽくて。

ーー歌詞と曲調の雰囲気も一致しているなと思いました。歌詞はどんな風に書かれたんですか?

YU:作詞も新しいやり方でした。メンバーが詰めて上がってきたサウンドがすごく好きだったので、この曲をもっと自分が好きになるためには、どういうタイトルだったら好きになるかなって、タイトルから入りましたね。自分が書き溜めてたタイトルアイディアから、ないかなーってメモ書きを見ながら曲を聴いたりしてて。その時に、そういえばずっと「New York」っていうタイトルの曲作りたいと思ってたなって思い出して。なかなかハマる曲がなかったので。この曲に「New York」というタイトルがついたら自分的に好きかも、じゃあどういう内容だったらこの曲に「New York」というタイトルが付けられるかなと、ストーリーを書いていったという感じです。

ーー先にタイトルがあって、そこから歌詞を書くという流れで。

YU:そうですね。デザインに近い作詞の仕方ですね。

ーーそういう作詞の仕方は今までやったことありますか?

YU:初めてでしたね。

ーードラムは今回、打ち込みを使わずに生ドラムなんですね。

SHUKI:そうですね。僕らは曲作りをパソコン上でやるので、特にドラムはレコーディングスタジオで初めて演奏するっていう感じだったんです。でもやっぱりバンド感を大事にしたくて、ライブでどういう風にできるかも知りたいので、事前に楽器隊でスタジオに入って。この曲を演奏してみて「ここもっとこういう風にしたらいいんじゃない?」とか確かめてからレコーディングしました。

ーー事前に演奏してみる方法って、今までやっていなかったのでしょうか?

SHUKI:昔やってたんですけど、最近やっていなかったのでもう1回やり出しました。バンドを基軸に、ということは大切にしましたね。

バンドの力だけで聴かせられる楽曲

ーーそもそも、バンドを基軸にする発想にはなぜ辿り着いたんですか?

KENJI:去年の『RUNWAY』ツアーが大きかったのかな。『RUNWAY』の世界観って今の自分たちにすごい合ってるよねってなった時に、そこに寄り添える曲を増やしていきたいというのがあって。よりバンド感を強くしていくところへの第1弾っていう。

YU:僕らひねくれ者なのでデビュー当初から、バンドなのにいかにバンドっぽくないことをやるかということをやり続けていったんです。

KENJI:そうそう、最初はね。でもバンドじゃん?って(笑)。

YU:やり尽くして一周回ってきたという。去年は「Mmm…」とか、Celina Sharmaさんとコラボした「What’s going on?」とか、バンドがやっているのが想像つかない曲では行くとこまで行ったなって。10周年ということもあって、改めてアイデンティティを出したかったのは大きいですね。

SHUKI:外部のプロデューサーさんにアレンジしてもらうことを試してきて、自分たちがやったアレンジとの一番の違いは、ライブでバンド演奏に置き換えた時にどこまで迫力だったり、曲のよさが活きるかを考えるかなんですよね。音源を流すだけじゃなくて。それこそニューヨークのGreat Good Fine OKにお願いした時(「Sunflower」)も、普段楽器を演奏している人たちとは違うアレンジでしたし。今回は、ライブも見据えてどうなるかを考えていった方がいいんじゃないかということで、バンド感を大事にしました。

ーーそこで効いてくるのはギターかなと思うのですが、イントロとからアウトロまで印象的ですね。

CHOJI:実はそれこそイントロは、デモで弾く前に8分でずっと入ってたので、試行錯誤してアクセントの位置を変えて、リフっぽく肉付けしていきました。僕が弾くので、僕が納得いくギターを弾きたいし。間奏はファズのエフェクターを踏んでガーッといったりするんで、ライブは大変ですけど、その分やりがいがあるなと思います。YUはバンドっぽくないことをやりたいって言ってましたけど、僕はずっとバンドっぽいことをやりたかったので、このままこの感じでやりたいし、10年前だったらできなかったことも、一周して僕らバンドの力だけでも聴かせることができると本当に思っているので。それをブラさずにいきたいなと思います。ちょっと硬いですか?

KENJI:いやいや、大丈夫大丈夫(笑)。

ーーCHOJIさんとしても理想的な曲になったということですね?

CHOJI:そうですね。みんなで会議した時に聴いて、不思議とみんなで「これいいじゃん」ってなって。さらに勢いづけて完成させよう、これをシングルっぽく、より良くしようって力が入るじゃないですか? それでまたこの曲にパワーが宿ったのかなと思いますね。

ーーCHOJIさんも、YUさんの歌詞が入って手ごたえを感じましたか?

CHOJI:僕の思うUKって、生と死、ちょっと危ない感じがあるんですよ。連想させる歌詞のワードの統一感っていうか、その辺はすごいよくやってくれたなと思いますよね。

ーーそうなんですか?YUさん。

YU:知りません(笑)。

CHOJI:そういう歌詞がくることで、僕のギターも「行け」ってなるし、それがバンドっぽいのかなと思います。

ーーベースでもファズのエフェクトを使用されていますよね。

KENJI:そうですね。デビュー当時はこういう音楽性だったんですけど、この年齢でそのままやるには無理がある、若い感じのロックになっちゃうんじゃないかというのがあったので。ベースはがむしゃらに弾くというよりは、どう引き出していくかを考えました。ちょっと大人っぽいUK、今自分たちがかっこよく思えるUKってどんな感じなのかとメンバーで話して、精査しながら間引く作業をした結果、こういうフレーズと音色感になっていきました。

ーーKENJIさんの思う大人っぽいUKとは、どんなサウンドですか?

KENJI:がむしゃらすぎない、肩の力が抜けているというか。別に暑苦しいのが悪いわけではないんですけど、僕らがやるには違う方向だなと思ったので、そこは守っていきたくて。

ーーボーカルに関してはいかがでしょうか?

YU:歌い方も、I Don’t Like Mondays.が今までやってきたスタイルの中でこの曲を紹介したかったので、そこは気をつけましたね。トラックがこんな感じなので、力強く歌うと僕ららしさがなくなっちゃう、コスプレっぽくなるのは違うと思って。あえて張り上げすぎないようにしました。

ーー歌入れはどれくらいでできましたか?

YU:早い段階で歌詞ができたので、レコーディングに入る前の歌入れも自宅でやって、体にもう馴染んでいたのですんなりできました。時間がかかっちゃう時って、声の音色も含めて、これをどういう風にするのが正解なのかをスタジオで録りながら試すから時間がかかるんですよね。この曲は自分たちの中で固まっていたので、あまり迷わなかったですね。

『RUNWAY』ツアーを振り返る

ーー前回のインタビューでは『RUNWAY』ツアーのセットリストを考え始めた頃だったので、改めてどんなツアーだったか、次のツアーに入る前にお聞きしておきたいです。

YU:自分的には今までのツアーの中では、一つのパッケージという意味では完成度が高くて、そのパッケージで初めて海外公演もワンマンツアーで回らせてもらえたので、国境を超える一つの完成形を見つけられたと思いました。それを見つけるのに10年かかったんですけどね。

KENJI:一番はやりたいことをやれたというのがありますね。今までが悪いわけじゃないですけど、こういうことやってみようというのを、試行錯誤して盛り込んで各ツアーやってきたので。単純にどうやったら自分たちが一番楽しいかを体現できる曲が揃ってきたかなと思いつつ、強いていうと、自分たちが思う世界観にするには、まだ曲足りないよねっていう延長戦で今やってるから、楽しかったですけど、これをさらによくしていくのが今後のツアーなのかなという気はしますね。

ーー10年やって、まだ曲が足りないと思えるのがすごいです。

YU:全然足りないですね(笑)。

KENJI:曲数はあるんですけどね。

CHOJI:自分たちのやりたい音楽が変わってきたというか。見せ方とか、そういう意味で。

YU:俺は変わってはいないんだけど、精度が高まった。

KENJI:分かってきたっていう感じかな。

YU:そうそう!「これが自分たちがやりたいことだったんだ」って。今までのこともやりたくなかったわけじゃないんだけど、いろいろやってもっと幅が狭まった。

SHUKI:『RUNWAY』ツアーの後に海外公演をやって、僕たちの目指してたことは合ってたんだという実感がありました。セトリをほぼ変えずにいっても違和感なかったのは、自分たちに自信が持てたし今の方向でいいんだと思えました。一番は、『RUNWAY』はキャラクター的に僕らっぽさが一番出るんですね。ファッションだったり、音楽だけでない部分も含めて全部一致したというか。そういう意味で一番自信が持てました。

CHOJI:SEも含め、1曲目の「RUNWAY」から始まって、最後の「Beautiful Chaos」が一番自分たちの素のかっこよさを「見ろ!」って見せつけられる曲で、それが頭と最後にあるというのが、見つけられた。それに照準を合わせていきたいというか、これで行こうというのが発見できたツアーでしたね。

#IDLMs10th

ーー最後に10周年ということで、この10年を少し振り返っていただけますか?

SHUKI:常にチャレンジはしてたかなと思います。毎年。アルバムや曲を出すにあたって、流れを踏まえるというよりは、今の自分たちのやりたいフレッシュな気持ちを先行させていました。ようやくこれを続けていこうと、去年から年をまたいでやったのは初めてだと思うので。いろいろやってきたから自信も持てたし。年齢的にもさっきKENJIが言ったみたいに、がむしゃら感を消せない年齢の時もあったけど、今はそれがめんどくさくなりすぎて(笑)、自然体が一番いいと思えるので、それに音楽性がマッチしてるのは、この10年のおかげかなと思います。

CHOJI:経験という意味で、前はライブでの動き方とか、完璧に自分の中のイメージがあったんですけど、そこまで気張らずとも、真剣にガッとやる時だけピンポイントで見せられるとか、自分の中で意識が変わったかもしれないですね。

ーーその意識は、回数を重ねていくことで変わったんですかね?

CHOJI:そうですね、やっぱり経験ですかね。本当は全曲ギターソロやりたいんですけど「ここでないことで、次のギターソロの価値が高まる」とか、あぁ確かにそういう意見もあったなと思えたり(笑)。

ーー誰の意見だったんだろう?

YU:冷静な意見(笑)。

CHOJI:自分のギターの価値をいかに高めていくか、僕は熱でいきたいタイプで、さじ加減はみんながやってくれるので、より俯瞰で見れるようになったのかもしれないですね。あんまりそっちに行きたくないんですけど。

KENJI:大丈夫大丈夫、そんなに変わってないから(笑)。

CHOJI:やっぱりギタリストが一番熱量を伝えられるので、変わらずに僕はいきたいと思います。

YU:自分は飽き性なので、よく飽きなかったなと思います。

KENJI:そうだよね(笑)。

YU:ようやく始まったという感じかもしれないですね。今思うと今までは準備期間で、2024年が自分たちの中でのデビューじゃないですけど、地盤が固まったので。ここからの方が面白そうだなと思います。

KENJI:仲良く続けて来れたんじゃないかなというのが一番ですね。辞めていくバンドも見ているので、まず続けられてるだけでも一個儲けものじゃないですけど、みんなのバランスが良かったかなと思います。10周年の区切りで原点回帰のようなことをやってるということは、ある程度一区切りで完成したのかなと思ってて。ここからどうブラッシュアップするかというところに、やっと注力できるようになった環境なので、ここからの10年が楽しみですね。

編集後記

10周年を迎えるI Don’t Like Mondays.が打ち出したのは、原点回帰を感じさせるバンドサウンド。

「一周した」というメンバーの言葉は、ここまでの試行錯誤があってこそであり、そのすべてを通過して生まれたのが「New York, New York」なのだと感じます。

シンプルにして、強いアイデンティティをたたえた1曲に。

これまでは長い準備期間だったと語るこのバンドの11年目のデビューを、リスナーとしても新たな気持ちで迎え入れたいです。

撮影:小山恭史、インタビュー・文:長谷川チエ

■リリース情報

タイトル:New York, New York
配信日:2024年4月24日(水)

■ツアー情報

I Don’t Like Mondays. “FOCUS” ASIA TOUR
公演情報:https://idlms.com/news/352555

I Don’t Like Mondays. “Island Tour
公演情報:https://idlms.com/news/351934

I Don’t Like Mondays. 公式サイト


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▼前回のインタビューはこちら




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!