【進化した原点回帰】三代目JSB「恋と愛」で7通りの恋に出会う

三代目 J Soul Brothersが6月6日にアルバム『FUTURE』をリリースします。今回は、アルバムの発売前にサブスクリプションやYouTubeで解禁となった「恋と愛」についてのレビューです。

メイン画像出典 :「恋と愛」公式YouTube動画

真骨頂の王道バラード

さっそく今回も、ズタボロになるまで聴き込みました。
この記事を書くために何百回とリピートして、その度に「僕たちはもう二度と逢わない方が良いんだよ」というセリフを登坂今市ペアに入れ替わり立ち替わり浴びせられ、2人の時間がどうにも辛いと言われ、もう心はズタボロ。どうしても愛にならないといけないのでしょうか?もう恋のままでも良いんで!

いつものように始まる今市さんの第一声を聴いた瞬間、なぜか懐かしさを覚える不思議な感覚でした。それぞれのソロ活動があった影響でしょうか。そして登坂さんの声に「そう!これだよこれ!」と。いつもどおりの順序。2人の声を同時に聴けるこの安心感は、決してソロでは味わうことのできない心地良さ。

“真骨頂”という言葉はこういう時のためにあるのですね。私は彼らのミディアム調の曲も、流行を取り入れたEDMもR&Bも大好きなのですが、それでもやはり、こういう曲を時々聴かせてくれるのは嬉しいですね。

「花火」や「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」を彷彿とさせるような、叶わぬ恋を歌った切ないバラードは、三代目JSBの王道であり強みでもあります。三代目といえばこういったエモーショナルな曲調のイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

とはいえ「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」のリリースは2014年10月なので、この胸を締め付けられるような切なさは、4年ぶりによみがえる感情です。胸ってこんなに締め付けられて呼吸止まらないんでしょうか?彼らは久々という感覚があるか分からないけれど、原点回帰とも言えるノスタルジーを感じます。

ボーカルが歌い、パフォーマーがそれぞれのストーリーを演じているMVも素敵です。パフォーマーの皆さん、役者業もされていますが、タイトなスケジュールをこなしながら磨かれてきた表現力なのだと思うとグッときてしまいます。頑張ってる人ってやっぱりすごい〜(結論)。

そして山下さんが水をかけられるシーンにも感心してしまいました(もちろん注目すべきシーンは他にもいっぱいある)。水をぶちまけられる前提であんなに大きく目を開けていられるなんて、なんというプロ根性!わざと嫌われるような態度を取ったのですかね、MVの中の山下さんは。

直己さんなんてもう、とてつもない大恋愛だったのでしょうね。死を覚悟するほどの恋…迫真の表情が物語っています。落下する直己さんの車、からの今市さんがターンするところなんて胸が苦しくて病みそう!

ちなみにこの車のナンバーが “JSB-7091”になっていました!NYの設定なんですね。細かすぎる発見。。

古巣に戻ってきたような感覚を味わいながらも、これまでとは違う顔つきや佇まいが見受けられて、メンバーの表現力の上達とともに年月の経過を実感します。

「花火」「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」そして「恋と愛」

「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」の最後の部分から、「恋と愛」の冒頭のピアノが繋がっているように聴こえるマジック!偶然だと思いますが。この機会にこの2曲も聴き直してみましょう。

♪「花火」

♪「C.O.S.M.O.S. 〜秋桜〜」

何とまぁ!久々に聴くとこの2曲も素敵すぎて甲乙つけがたい!

「花火」の時点で十分素晴らしいのですが、それでも、特に登坂さんの声は2Dから4Dの世界にワープするくらい深みを増したように感じます。でも、ワープでも何でもなくて(当然)、すべては少しずつ積み上げてきた努力の結晶なのですよね。

そして今市さんは切なく歌い上げるストーリーテラーとして、健在どころか進化していますね。曲の世界観を伝える細かい描写、歌詞の一つ一つを大切に歌う丁寧さに、さらに磨きがかかったなと思います。

情感を込めて全身で表現するパフォーマーと、ボーカルはシンプルに歌にひたすら徹する、この美しいコントラストもポイントですよね。
特に、マイクを持たないパフォーマーから、切なさとかやりきれない思いとか、さまざまな感情を受け止めるのが私は好きなのです。表現することの無限の可能性を感じます。

ボーカルも一緒に踊るパターンも相当捨てがたいんですけど、やっぱりすっくと立って歌う姿が彼らのスタイルを象徴している気がして。つっ立ってればつっ立てるほど(言い方)良いのです。それぞれの役割が感じられて。と言いつつ、そんな中けっこう動いちゃう今市さんも好きです〜。もはや何でも好きです(結論)。

歌詞の深みを感じてみる

「恋と愛」の作詞を担当したのは小竹正人さんで、「花火」や「C.O.S.M.O.S. ~秋桜~」も彼が手がけています。小竹さんの書く詞には叙情的なものが多く、人間の感情そのものに非常に敏感な方なのだろうなと勝手に想像しています。

今回は、愛にならないまま終わる恋がテーマですが、なるほどなぁと思いふけってしまいますね。「恋と愛」は同アルバム『FUTURE』に収録されている「蛍」の数年後を描いたストーリーになっているそうなのです(この辺はまた別記事で)。

恋が愛に実ったらとても幸せですが、恋で終わりを迎えることが、儚さや美しさを保ったまま思い出になることもありますよね。切ないけれど、その感情によってこんなに素敵な曲ができてしまうのですから。

そして、最初から報われないと分かっていながら発展する恋もあります。愛にならない恋の方が圧倒的に多いわけですし、恋を重ねていくことで、やがて本当の愛を見つけて、その尊さにも気付くのだと思います。

私もありますよ、愛になる寸前で終わってしまったり、報われない恋も、愛に変わったのに別離を迎えてしまった経験もあります……でも今は自由に生きて、後悔もないし絶望しているわけでもないんです。そう、恋愛においては愛に昇華することだけが最上の幸せとは限らない。

ひとつの恋愛を貫くこともかっこいいと思いますが、恋のまま終わった思いを抱えて生きることはある種、人間に与えられた試練のような気がしていて、それが大きな経験や財産になると信じています。

小竹さんが書いた詞に、三代目JSBが息を吹き込み、それを聴いて「あぁ、恋愛ってそういうことだよなぁ」と恋愛観を見つめ直したり。きっと誰もが、自分の経験を振り返ったりすると思うのです。音楽と人間の感情がリンクするって素晴らしい!

7通りの表現力

新しさも追い求めながら、ファンが渇望していたバラードも、進化した上でしっかり届けてくれて、このバランス感覚の良さは見事としか言いようがありません。

そして個人的には、こんなにグループとしての成長を感じた曲は初めてなのではないかと思えるほど、耳も目も奪われました。7人の個性もそれぞれ違うので、7通りの恋路がどれも素晴らしいのです。

以前はできていなかったのか?と聞かれれば決してそうではないし、どの年代のどの作品にも良さがあるわけですが、とにかく見事に1人残らず、全員が成長しているなと思うのです。

ボーカルに焦点を当ててみると、直近では登坂さんの「LUXE」や今市さんの「Alter Ego」などをリリースしていて、特段久々に聴いた声でもないのですよね。それなのに、とても成長したように聴こえます。

さらに、彼らもほとんどのメンバーが30代を迎え、人生経験も豊かになってこの曲を聴かせてくれて。聴く者の想像力を掻き立てられるくらい、より絶妙な描写をしてくれるアーティストになったのだなとしみじみ感じました。

良い作品を世に届けるためには多くの経験も必要です。けれどもそんな理屈以前に人として、7人が7通りの人生を、人間らしく生きてくれていたのですね。どんなに勉強し続けても、人間らしく生きていなければ、情熱的な表現なんてできないと思うのです。

彼らはトップアーティストだけど、自分を見失わず等身大に生きている。それぞれの表情から、そんなことがしきりに浮かんできました。

聴く側の自分に訪れた変化

最後にもう一つ気付いたのは自分自身のことで、おこがましいので後書きとしてさらっと書かせていただくことに(いやいつも自分のこと結構語ってる気もしますが…)。

たくさんの感情が湧き上がる自分の聴き方の変化に気付いたのです。それはもちろん、彼らが素晴らしい歌を届けてくれたことに他なりません。

ただそれと同時に、私自身も経験が増えて感情が揺さぶられているのか、それともライターという職業に就いて、Culture Cruiseを運営し始め、感度のアンテナを高めようと自覚した結果なのか、どちらかは分からないし、その両方かもしれないけれど。

多方面から刺激を受けて、ここ最近は読者の皆さまに情熱や温度をいかに文章を通して伝えるかを意識して執筆しているので、そんな思いが影響しているのかもしれません。

いずれにしても、今までの曲を聴いていた時はもう少し「あ〜いいね〜」みたいなふわふわした感情だった気がします。彼らの曲によって、少しばかりは自分も成長しているのかなと、感じた瞬間がありました。

アーティストの歌でリスナーが成長するなんて、今まで考えたこともなかった!久々のバラードを聴かせてくれたおかげで、たくさんの気付きを得ることができました。

そして彼らが示す7通りの恋は、どれも本当に感慨深いものがあります。この感情を抱いたまま「蛍」を聴くと、非常に心が揺さぶられて深く響きますね。それがつまり、人間らしさということだと思うのです。

ABOUTこの記事をかいた人

東京生まれのWebライター(@cgrams40)。2017年にCulture Cruiseを運営開始。現在は東京と湘南・茅ヶ崎を拠点としている。カルチャーについて執筆するほか、10年の投資経験を生かして行動経済学についての電子書籍も出版(別名義)。趣味はレコード収集。愛するのは鹿島アントラーズ。そして、ありとあらゆるカルチャーのすべて!!