【フェスレポート】ROCK KIDS 802 HIGH!HIGH!HIGH!

「ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-」主催の音楽フェス『HIGH!HIGH!HIGH!』から、DISH//、yama、クリープハイプの3組をピックアップしてレポートします。


2年ぶりの開催

大阪のラジオ局FM802主催の音楽フェス「ROCK KIDS 802-OCHIKEN Goes ON!!-SPECIAL LIVE HIGH!HIGH!HIGH!」。

2013年にスタートし、インドアフェスとして大阪の夏を彩る恒例イベントになっています。

2年ぶりの開催となる今回は、スケールも大きく、4年ぶり2回目となる大阪城ホールにて行われました。

実のところ私はフェスレポートが苦手で、平等に書こうとして中途半端に終わってしまったりします。

そもそも普通のライブレポを、個人的にはあまり読まないというのもあるかもしれません。途中で集中力が切れて読み飛ばしてしまいます。

レポートじゃないじゃん、と思われた方には大変申し訳ないのですが、自分が書いていて楽しい書き方を追求します。

この日のステージはすべて拝見し、すべて良かったのですが、今回は3組に限定してレポートに集中しようと思います。それではどうぞ。

DISH//

ーーフェスのトップバッター。

この世で一番緊張が走る言葉。特にホールはとてもやりにくいと思う。会場が温まっていない中で、少しでもひるむとそれが客席に伝わってしまってドン引かれたりする。

DISH//は最初から飛ばしていて、Vo. 北村匠海さんの第一声から完璧なサウンドデザインだった。

1曲目から「未完成なドラマ」を歌い上げるなど、攻めの姿勢はキープしつつ、会場を置きざりにせずに上手く引き込み、一切迷いを感じさせないステージング。

守りに入らないバンドスタイルとは、なぜこんなにも気持ちが良いものか。声出し禁止などの制限があるので何もアクションは要求しないのだけど、観客は自然と盛り上がっていく。

DISH//が分け与えてくれた熱量と絶妙な空気感。それがとても居心地の良い空間だったので、ずっと続いてほしいと思った。

単独ライブとはまた違う雰囲気を作れるのが、DISH//の面白いところ。セットリストも違うし、フェスではフェスの顔になる。客層を見分けるのも上手い。

ネガティブなことも多い時期だけど「僕たちの先輩が繋ぐ今日という時間を、体感したみんなの明日はきっと何かが違うんじゃないか」と話してくれた北村さんのMCが印象的だった。その時点で素敵な言葉受け取りましたので、もう違っていたと思います。

謙遜していたけれど、誰にも真似できない経歴と経験値を重ねてここに立っている十年選手のバンドだ。その重みを演奏のみで証明してくれるところが、このバンドの魅力ではないだろうか。

私の周りには男性のお客さんが多かったが、「『猫』やっぱいいよな。聴けて良かった」「他にも知ってる曲あった!」という嬉しそうな会話が聞こえてきて、「どれかなー。『No.1』かなあ」と微笑ましく盗み聞k…耳を傾けた。

静寂を切り裂くように、盛大な花道を残してDISH//は去っていった。

【DISH// セットリスト】

  1. 未完成なドラマ
  2. 勝手に MY SOUL
  3. NOT FLUNKY
  4. Seagull
  5. No.1

yama

2020年にメジャーデビューしたyamaは、以前から歌い手としてネットカルチャーの中で存在感を発揮してきた。「聴く」要素が強い音楽性だけに、それ以上を求めないファンもいるかもしれない。

フェスに出演すること自体がチームにとっても挑戦だと思うので、その場所に立つ姿はとても頼もしく見え、リスペクトしたいと思った。

今後もこういうアーティストは増えていくだろうし、個人的には別に「Sey!!」が欲しいわけでも騒ぎたいわけでもないので、一辺倒になりがちな音楽フェスに多様性が生まれることは大歓迎だ。

聴くことに集中するライブやフェスがあっても良いと思う。生を楽しむフェスとDTM主体のネットカルチャーが混ざり合う音楽文化の交差点に、yamaさんが立っているようだった。

今回のセットリストでは、7曲中5曲がヴォーカルの歌い出しから始まっている。フードを被り表情もほとんど見えず、大きくリズムを取る様子もない。ほとんど直立の状態でただ歌い続けている。

それであのグルーヴを保てること、高い表現力で世界観を描写できることに驚きを隠せず、終始吸い込まれるように見つめた。

他の観客の皆さんがどう受け取ったのかは分からないし、正直ノリ方が分からないって感じの方や、最後まで立たなかった方もいた。それでも、何かに立ち向かうように歌うyamaさんは力強くてしなやかだった。

最後にくれた「ありがとうございました」のたった一言が無性に気に入って、大切で、ずっと深く胸に刻まれている。

アルバムリリースと初ツアー、楽しみにしています。

【yama セットリスト】

  1. カーテンコール
  2. Downtown
  3. あるいは映画のような
  4. a.m.3:21
  5. 麻痺
  6. クリーム
  7. 春を告げる

クリープハイプ

ライターであれば、成長とともに新たな言葉を身につけていけるはずなのだが、自分がどんどん語彙力を失っていくように感じる時がある。

クリープハイプを聴くと、この不思議な感覚を表す言葉を見つけられずに、ずっと探し続けてしまう。だから今回の3組に、あえてこのバンドを選んだ。

クリープハイプが魅せる光と影のコントラスト。光の中の影、影の中の光、どっちでもいいんだけど、その境界線をたどって歩くのが好きだ。

夏フェスは日向のような圧倒的まぶしさがある中、クリープハイプがいると陰キャのまま潜り込んでも大丈夫という感じがする。

200回は洗濯したっぽい5年前のツアースケジュールが刻まれたバンTで参加しても大丈夫みたいな、安心感がある(個人の感想です)。

バラードでしっとり聴かせる、とかはあっても、フェスという日向に影を作れるバンドは貴重だ。それでいて、曲調自体は暗いわけでもなく、盛り上がることもできる。

「イト」のイントロを聴いた瞬間の高揚感、あれは一体なんなんだ。「帝一ぃ〜〜!」と心の中で叫ぶのが我の常だ。もはや日向を超えている。

「お母さんと参加するのでクリープハイプが気まずい」みたいな前日に見たというツイートの話から「ラブホテル」をねじ込んで来るのが面白かった。

Vo. 尾崎世界観さんのMCは、飾らないけれどストーリーがあって、何とも言えない魅力がある。

この日「ねがいり」を聴けるとは思わなかった。出会えた時の嬉しさと、終わってしまう寂しさが、短い夏の物哀しさと入り混じる。

かっこつけすぎかもしれないけど、純文学に浸っている時みたいな名付けようのない涙が流れた。

探している言葉は余計に見つからなくなった。この涙こそが、私がまたこの場所に来てしまう理由かもしれない。

【クリープハイプ セットリスト】

  1. キケンナアソビ
  2. 月の逆襲
  3. ラブホテル
  4. イト
  5. イノチミジカシコイセヨオトメ
  6. ねがいり

カオスな夏フェス

この3組を選んだのは、小説の参考にしたアーティスト記事でも書いたように、表現することを助けてくれたDISH//とyamaさん、そして言葉を失っていくクリープハイプ。この対比が面白くて選びました。

もちろん、ここに書ききれなかった方々もみんな素敵だったのです。

大阪で梅田サイファーを観れたのもすごく嬉しくて、アルバム『ビッグジャンボジェット』はCulture Cruiseの上半期ベストアルバム記事に入れようと思ったくらい素晴らしいんです。

大好きなXIIXの「おもちゃの街」が聴けて泣いて、帰ってからもずっと聴いてます。

GLAYのTERUさんの「However」と「誘惑」は感動で全身震えたし、SUPER BEAVERはこの日の全部をかっさらっていきそうなほどパワーがありました。

そもそも原作から大好きな『東京リベンジャーズ』の花垣武道を演じた北村匠海さんと主題歌を担当したビーバーが同じフェスに出て(時間差はすごいあったけど)、「名前を呼ぶよ」を歌ってくれたことがときめきポイントで、マスクの下で私はずっとニヤニヤしていた。

フレデリック観られなかったのは残念ですが、オチケンさんのDJがとても良かったし、フレデリックTシャツを着てる方もけっこう見かけて、何かグッとくるものがありました。私も持ってます。あのロゴ好きです。

やっぱり夏フェスはカオスなのが良い!

今回は仕事での大阪滞在だったのと、緊急事態宣言も出されているのでまったく遊ぶ余地はありませんでしたが、このフェスが思い出になってくれました。

コロナ対策として、スタッフさんは密にならないように配慮したり、携帯用アルコールを来場者全員に配布し、随時手指の消毒をするようアナウンスしてくれていました。心からの感謝と、お疲れさまでしたの気持ちを届けたいです。

文 / 長谷川 チエ

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▼ここにもyamaさんとDISH//います

▼映画『東京リベンジャーズ』レビュー

原作ファンが観た映画『東京リベンジャーズ』の感想

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!