Ayumu Imazuを象徴するオールラウンドなアルバム『Pixel』レビュー

Ayumu Imazu 「Pixel」レビュー

Ayumu Imazuさんが2022年8月にリリースした1stアルバム『Pixel』のレビューを書きました。


Ayumu Imazuさんについて

Ayumu Imazuさんは6歳からダンスを始め、14歳から3年半、アメリカ・NYでアーティストとしての修行を積んでいる。

NYの頃から拝見していたのだけれど、当時から非凡なヴォーカル力がとにかく目立っていた。

AyumuさんたちがNYで奮闘する姿は本当にかっこよくて、当時ライターになるかならないかの岐路に立たされていた私はとても刺激を受け、自分も一歩踏み出してみようと決意する。

そしてライターになり、音楽について書き始めると、ヴォーカリスト界隈でもダンサー界隈でも「Ayumuはすごい」という話が、ひきこもりライターの私の耳にまで届くようになる。その評判と顔の広さにいつも感心していた。

2020年にリリースされた1st EP『Epiphany』を聴いた時、「ついに来たぞ!」とわくわくした。

その後、2021年8月にメジャーデビュー。現在もアメリカと日本を拠点として活動されている。

そこから続々とシングルを発表し、2022年、1stアルバムに先がけてリリースした「Tangerine」を聴いて、またわくわくした感情がやってきた。

でも今回は少なく見積もっても10倍増しくらいの衝撃だった。

「Tangerine」

これまでもずっとタッグを組んできた今井了介さんとの共作ということで、Ayumuさんの音楽性を芯から捉えている楽曲だと思った。

BPM120もない速さの曲だと思うけれど、グルーヴに瞬発力があるので、歌い出した瞬間から加速していくように感じる。

さらっと言ったけど、「グルーヴに瞬発力がある」なんて思ったのは初めてだ。そんなものがあるのでしょうか?

いずれにしても、Ayumu Imazuさんはきっと日本屈指のグルーヴ力を持ったアーティストなのだ。瞬間的にピッチが調節できるし、加速を感じる一方でブレイクの使い方も上手い。

歌っていない時にどう歌うか、というと日本語がすごくおかしいけど、そういうことだ。休符で休まない。これもおかしい。前例がないので何と表現すればよいのかわからない。

でもとにかく、これからは休符の使い方が世界のメインストリームでも大切になってくると私は静かに思っている。

アルバム『Pixel』

そんな「Tangerine」から始まるアルバム『Pixel』は、各曲が個性を放ちながらも、絶妙なバランス感覚でパズルのようにフレームの中に収まっている。

リード曲の「Over You」は、ビートの細部にまでアイディアが詰まっている。サビはミックスヴォイスが続く難易度の高さも、バリエーションを持ったヴォーカルでクリアしている。4つ打ちでも単調にならない立体感、とんでもない曲を3曲目に忍ばせているではないか!

「Problem」は作曲に参加したyonkeyさんの遊び心と見事に調和して、アルバムの変化球となっている。今後もたくさんのアーティストとのコラボが生まれていきそうな予感。

また、個人的に本作の中でもかなり好きなのは「Butterfly」で、強靭なサウンドが飛び交うイヤフォン推奨のニュージャックスイング。Ayumuさんのダンスもきっと本領発揮するし、このジャンルはかなり突き詰めてほしさがある。

個性豊かな楽曲たちも、フレームの中では居場所が決まっているみたいにきれいに収まっていて、『Pixel』というタイトルにも納得できる。

全11曲、約38分の中で、1stアルバムにして世界観が確立されているのがすごい。

最初何かの曲が気に入ってリピートしまくってたのに、ふとしたきっかけで別の曲も気になってきて結果全部好きみたいな。そんな形を変えていくアルバムになりそうだなと思う。

日本語の表現力

歌う方も聴く方も、邦楽は母音で感じ取っているところがあると思うのだけれど、Ayumuさんはもっと速く、子音でグルーヴが出せるという感じがする。

それが「瞬発力のあるグルーヴ」とつながってくるのだろうし、日常的に英語を話していることも理由としてあるのかもしれない。

アメリカ在住の日本人アーティストと聞くと、リスナーとしてはどうしても「洋楽っぽさ」を探してしまうのだが、Ayumu Imazuさんは、日本語の伝え方も非常に上手い。

「ついに来たぞ!」と私が感じたEP『Epiphany』の4曲目にある「さまない」や、『Waves』の「雨跡」など、Ayumuさんは布石を打つように「日本語に重点を置いた楽曲」を作品ごとに残している。

今回のアルバムでいえば「薔薇色の夜」「破片」など。言葉の伝え方が丁寧で、「Tangerine」とはまったく違う世界が広がっている。いわばシンガーソングライターとしての一面だ。

めちゃくちゃ上手い。この雰囲気も捨てがたい。いや捨てる必要なんてないのだ。歌いたいものを歌ってください。

ブルーノ・マーズのパフォーマンスに衝撃を受けたと語っているように、洋楽に影響を受けていることもわかるけれど、それでもAyumuさんは、日本語を通して伝えることを大切にしていて、そのこだわりをずっと貫いているのではないか。

アメリカで生活をする中で、同じくらい日本語の魅力も感じているのではないか。憶測だけが先走って1ミリも合ってないかもしれないけど、個人的にはそのように感じた。

あんなにグルーヴに瞬発力を持ったAyumuさんが、こんなにゆったりとバラードを歌っている。

だから英語でも日本語でも、Ayumuさんであること以外に大事なことなんてないんじゃないかという気がしてきた。

そう思えるのは、オールラウンダーなアーティストだからだと思うし、バラードを歌う時の丁寧さは、まさにAyumu Imazuさんそのものを映し出しているような感じがする。


ダンスヴォーカルにおいてはグループが全盛の今、ソロアーティストとしての逞しさとともに、自由でしなやかな音楽性も感じられる。

『Pixel』は個性豊かな楽曲によって、解像度の高いAyumu Imazuの表現力を見せつけられたアルバムでした。

文 / 長谷川 チエ

Ayumu Imazu 公式サイト

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!