BE:FIRSTに関する極めて個人的な1年間の記録

BE:FIRSTに関する極めて個人的な1年間の記録

「BE:FIRSTについて書いてみよう」とこの記事を書き始めたのは2021年11月。そして2022年12月、まだ書いてる!

デビューしたタイミングで書き始めたものの、2022年はアルバムも出すだろうし、年末には紅白にも出てくれるだろうし、グループの足取りをもう少し見たいと思った。

その間、BE:FIRSTが所属するBMSGはユニバーサルミュージックとの新レーベル”BE-U”を設立、新グループ”MAZZEL”も結成させていた。

その模様はオーディションドキュメンタリー番組として、2023年1月から配信がスタートするという。

BE:FIRSTは期待以上に高く、予想以上に速く躍進していった。

これは活動記録というよりも、一人のリスナーが少しずつ書いては保存、を繰り返してきた感想のまとめを記事にしたものです。


BMSGと「THE FIRST」

自身もオーディションをきっかけにAAAのメンバーになったSKY-HIさんが、自己資金1億円以上を投じ、その後クラウドファンディングで4億5000万円以上が集まったオーディション「THE FIRST – BMSG Audition 2021 -」(以下、THE FIRST)。

当初は地上波で放送する予定はなかったそうだが、2021年4月から日本テレビ系の「スッキリ」やHuluでも放送・配信が開始され、私もリアルタイムで拝見していた。

オーディション番組は観れるものは観ているのだけれど、音楽に関する記事を書いたりする仕事柄、チェックしている意味合いが強い(でも観ると泣いてしまう)。

「THE FIRST」の場合は、SKY-HIさんが2020年に立ち上げた株式会社BMSGの事業展開が気になっていたので、それが自分にとっての関心事だった。

BMSGは、世界に通用する日本のエンタメの基盤づくりから、細部に至るまで見通しを立てていた。

執筆現在「THE FIRST」はYouTubeでも観ることができる。グループの原点を誰でもすぐに観られるのは素晴らしいと思う。

そしてこのオーディションから7名が選出され、デビューしたBE:FIRST。グループ名には「常にトップを狙う」「唯一無二」という意味が込められているという。

さぞかし闘志を燃えたぎらせているかと思いきや、他の人が別のナンバーワンでもあることを尊重して、自分のナンバーワンに誇りを持つ。という信念があるのだとか…素敵やん。

BE:FIRSTは実際に、他を尊重しつつ成長する姿が印象的で、オーディションの時点でそんな雰囲気を持っていた。だから私はこの番組を最後まで観ることができたのだと思う。

Aile The Shotaさんなど、BE:FIRSTのメンバーにならなかった方々からも、たくさんのものを受け取れるのが「THE FIRST」やBMSGのすごいところでもある。

おそらく公式で公開されている動画はほとんど観たと思う。最初は事業者目線で観ていたのに、いつしか心を持っていかれた。

そんなBE:FIRSTがリリースしてきた楽曲を、まずは2021年からピックアップしたいと思います。

「Shining One」

2021年8月には、プレデビュー曲「Shining One」が配信リリースされた。

何だこのアシンメトリーな曲は!!

爽やかさと華やかさを残しつつもクールなメロディに対し、ビートは2ステップメインで時々4つ打ちになって走り出したり、2番でビートレスになるところがあったり、アンバランスをバランスよく散りばめている。もう日本語がわからない。

間奏が30秒以上ある曲も最近では珍しいのに、むしろそこを見どころとして「初めましてBE:FIRSTです」と名刺を差し出されたような気持ちになる。頂戴します!

オーディションを見守ってきた者にとっては、審査の課題曲だったこの曲にも、MVでところどころ登場するステージと衣装にも、特別なものを感じる(メンバーが発表されてすぐ一部のシーンを撮影したそうです。精神力尊敬)。

「Gifted.」

そして2021年11月「Gifted.」でデビュー。

さっきまで笑顔でびだわんびだわん歌ってた方々が1ミリも笑わないじゃないか。

今度は最小限のビートに、壮大なストリングスのメロディを合わせてきた。

かつてこんなにコンテンポラリーなデビュー曲があっただろうか。その前衛的な姿勢たるや!

BE:FIRSTの楽曲制作はあて書きも多く(誰が歌うかを予め想定して歌詞を書くこと)、誰の後に誰が歌うかの流れまで考えて歌割りを組むこともあると伺った。

曲によって作り方は違うと思うけれど、どの曲もパンチラインのように印象的なフレーズが耳に残るのは、そういう制作方法だからなのだと納得した。

BE:FIRSTをもっともよく知るSKY-HIさんが制作に携わっていることも、ある種のドメスティックな手法として、強みになっているのかもしれない。

大型フェスに登場するBE:FIRST

2022年はさまざまなフェスやツアーなど、ステージに立ち続けていた。

4月に行われた「VIVA LA ROCK 2022」は私も拝見しましたがすごい盛り上がりで、当時未発表だった「BF is…」で始まった時の衝撃が記憶に残っています。

この頃、YouTubeの「Artist On The Rise」にも選ばれている。

8月は「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022」「SUMMER SONIC 2022」「音楽と髭達2022 – My Home Town」など大型フェスに出演。

また9月には、BMSG所属のアーティストやトレーニーが一堂に会する「BMSG FES’22」が富士急ハイランド コニファーフォレストにて開催された。

謙虚な姿勢を保ちつつも、生まれたばかりのものだからといって媚びない誇り高さを持つことを目標にしてきたというBE:FIRST。

日本や世界でのプレゼンスを高めるため、大型フェスへの出演は欠かせない活動の一つだったのだと思う。

個人的には、フジロックでJonas Blueと共演してくれたことが印象的だった。

2021年にJonas BlueがWhy Don’t Weとコラボした「Don’t Wake Me Up」は、このサイトの2021年100曲プレイリストにも選んだほど名曲で大好きだった。

その「Don’t Wake Me Up」のJapanese VersionとしてBE:FIRSTとのコラボ曲がリリースされ、フジロックでの共演が実現。

Jonas Blue大好きな私はひたすら感動しておりました。のちにJ-WAVEの番組ではRYOKIさんのインタビューで再び共演してくれた! RYOKIさんありがとうございます!

1stアルバム『BE:1』

2022年8月にはアルバム『BE:1』をリリース。1stアルバムのリリースはものすごく大変でたいていずれ込んでしまうので、想定よりは遅かったのかもしれないけれど、デビューから9ヶ月という絶妙なタイミングだった。

今後の活動の下支えになりそうなアルバム。聴きごたえもある上にバランスも取れていて、期待を超える仕上がりだった。

eillさんが楽曲提供した「Betrayal Game」は、TVドラマ「探偵が早すぎる」の主題歌に。

作曲にはベーシストでもある宮田“レフティ”リョウさんも参加、アレンジはA.G.Oさんということで、旬のサウンドでありつつ、イントロから太いベースリフが引っ張っていくループ曲になっている。

しかもレフティさんによる生ベースが、主役にも脇役にもなってデジタルと融合しており、ダンス&ボーカル系の曲としても画期的。

そこにs**t kingzのNOPPOさんがコレオグラフを担当されたということで、説明不要だけどしつこく説明したくなるすごい曲なのだ!

それを7人の個性でキャッチーに仕立てたBE:FIRSTが、制作陣の魅力も引き出すという、相互関係を高め合うサイクルを築き上げていると思う。

ちなみにeillさんはこのアルバムの「Message」も楽曲提供されており、また違ったBE:FIRSTを引き出している。脚本から作り上げたというMVも素晴らしいです。

「Scream」ではついに叫び始めるBE:FIRSTの皆さん。アルバムの中でも特にライブ向きな曲。

私が通っている歯医者さんはいつもJ-POPがかかっているので、スケーリング中に流れてきた時は不思議な心境になったけど、オープンスペースで聴くと印象も変わる。

そして、この曲のMVはとんでもなくカット数が多い。呼吸を忘れそうなほど画変わりしていく。

おそらく本来なら永遠に終わらないような現場、BE:FIRSTのハードスケジュールでは工夫をする必要があったと思うけれど、現場でプレビューを行わないことで時短に成功したと伺った。

効率化によってクリエイティビティを妥協しないプロの技を見た気がする。メタバースなどを専門とする映像会社、stuによる視野の広い映像制作も見どころの一つではないでしょうか。

2022年のレコード大賞優秀作品賞に選出されたり、紅白歌合戦への出場も決まったり、年末まで飛躍しまくりのBE:FIRSTさん。

「Bye-Good-Bye」などはTVで見かける機会も多いと思うので、あえてギャップのあるこの動画を選びました。

SONYの360 Reality Audioを採用した「Milli-Billi」のダンスパフォーマンス。YouTubeの急上昇ランキングもずっと1位をキープしていた。

この曲を聴いて、これはメインストリームの中で奇跡的に生まれたマイノリティなのだと思った。

それはマジョリティへの対立というよりも、マジョリティのど真ん中で突き抜けていける人たちが結果的にマイノリティなのだと。

ほぼメロディのないトラックでゴリゴリに踊ってるし、そこにこのリリックを嵌めてマイクリレーできることがマイノリティなのだと思い知る(伝わってほしい)。

「Milli-Billi」「Spin!」「Move On」というエッジの効いた3曲の流れが、1stアルバムの定義を覆していて最高に狂っていると思った。

BE:FIRSTのメンバー

ここまで好き放題語ってきたけれど、やはりこの7人でBE:FIRSTであるということには触れておきたいので、かなり主観的ですが私なりの目線でのメンバーさんについて最後に書いておこうと思います。

SOTAさんのことは、湘南出身の世界チャンピオンダンサーとして以前から存じ上げていた。私も湘南に住んでいたのでオーディションでもずっと応援していたし、選ばれた時は嬉しくて叫びたくなった! どんなにダンスが世界レベルでも、歌やラップの表現は似て非なるものだと思うけれど、そこに飛び込んでいったSOTAさんを尊敬するし、歌声も本当に素敵だと思う。努力してきた分だけ、すべてが実って武器となってほしいです。

「THE FIRST」で「デビューできてもできなくても寂しい気持ちは消えない」と吐露していたSHUNTOさんは、そんな感情も混ぜ込んだようなハイブリッドなボーカルが魅力。二次審査の時のダンスがとてもかっこよかったので、この方がBE:FIRSTのメンバーになったらいいなと思っていた。人懐っこさをのぞかせたり、感情を見透かすことのできないような表情をされたり、見る度に違うSHUNTOさんがそこにいるので興味が尽きない。

MANATOさんはアメリカ留学をされていた時から拝見していたので、オーディションでも自然と応援している自分がいた。存在感があるのに耳なじみの良いボーカルは大きな武器だと思うし、「BF is…」の歌い出しは、アルバム全体の要でもある大切なフレーズを完璧に歌いこなしていると思う。そしてMANATOさんのクリエイティビティが発揮されていくと、同じだけグループにも創造性がもたらされるのではないかと感じている。

RYUHEIさんが持つスタイリッシュな雰囲気は、今後も年々増していくのだろうと思う。歌えば空気が変わるようなボーカルには、曲のイメージを決定づける強さと、聴き手に委ねる柔らかさが共存している。慎重に言葉を探す時のRYUHEIさんにはいつも注目してしまうし、どんな言葉を探してくるのかが気になる。きっと思考力の高い方だと思うので、深く考えて答えを出し、直感でアウトプットするパフォーマンスが魅力だと思う。

JUNONさんの説得力のあるボーカルは、言葉で説明しなくても伝わる、というか、言葉などあてにならないとライターの自分ですら思わされる。それほどの存在感を持ったJUNONさんの魅力を形容する言葉を、もっと仕入れておけばよかったですし、これから頑張りたいです。どんなに喜怒哀楽の激しい曲でも、JUNONさんとしての芯の強さが常に一本筋を通していて、それがBE:FIRSTらしさにもつながっている気がする。

グループで足並みを揃えつつ個性を出せるRYOKIさんは、自分を見せる前にいつも周りを見ているのだと思う。その上で自分を示すことは相手を喜ばせたり、迷わせないという最も深い敬意ではないかと、淀みない言葉で伝えてくれるRYOKIさんを見て思った。俳優業の才能も本当に素晴らしいので、二刀流で誰も辿れない道を切り開く未来まで想像できる。楽曲ごとに自在に色をつけていく姿は、目で見て感じる音楽の素晴らしさも教えてくれる。

Huluの動画で、LEOさんがライブ会場の最後列まで確認しに行く姿を見て、ここまで観客の気持ちに立てるアーティストがどれだけいるだろうかと思った。その視点はステージでも体現され、実際に全体像がよく見えている方だなと思う。全体の中の自分と、どう動けば全体が良くなるかをいつも考えている。そんなLEOさんだから見える世界がきっとあって、パフォーマンスを通してその世界を見せていただいているような気持ちになります。

7人全員がグループの切り札のような存在であることは、BE:FIRSTの大きな強みだと思います。


上は目指すが競争はしない、むしろウェルカムな空気すら湛えたこのグループのスタンスは、誰かと競ったり、ランキングに興味のない自分にとって、とても心地よかった。

敵対しても何も生まれないということ、特に男性グループにおいてはより顕著に突きつけられてきたし、日本国内でそうこうしている間に、K-POPは世界でのプレゼンスを上げていた。

日本のダンス&ボーカルグループもシステムごと見直さなければ、これ以上拡大するチャンスはこの先もうないと思う。

「THE FIRST」は現象だったと語っていたSKY-HIさんとBE:FIRSTの活動を見て、このグループとこの会社ならその先に行けるのではないかと思った。

デビュー時に記事を書き始めて、すぐに出さなかったのは「『THE FIRST』楽しかった! デビューしたね、完。」みたいな記事は無意味だと感じたからです。

誰かの人生がかかったオーディションが消費されるコンテンツになったり、結成して満足されてしまうことがあってはならないし、時間が経過してこそ成長し続ける姿が注目され、評価されるべきだと思うので。

実際に、それほど大事に書こうと思わせてくれたBE:FIRSTの皆さんは、本当にすごいと思いました。

きっとまた続きを書きたくなると思うので、まずは1年間の記録をここで綴じたいと思います。

文 / 長谷川 チエ

BE:FIRST 公式サイト

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BE:FIRST 1stワンマンツアーライブレポート

▼BALLISTIK BOYZインタビュー




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!