「聴けばすぐに好きになる」PSYCHIC FEVERの音楽には、そんな不思議な魅力があると思っていた。
海外にいる時間も長いグループで、なかなか実現できなかったインタビュー。
そんなPSYCHIC FEVERが2024年4月3日、EP『PSYCHIC FILE II』をリリースするというので、この機会を逃すまいと彼らの元へ駆けつけた。
今回は7名の中から剣さん、中西 椋雅さん、小波津 志さん、WEESAさんへのインタビューを前・後編に渡ってお届けします。
新しい自分たちを見つけるEP
ーーこの度は『PSYCHIC FILE II』のリリースおめでとうございます! どんな作品になりましたか?
小波津 志(以下、小波津):ありがとうございます! 去年『PSYCHIC FILE I』を出させていただいて、今回はその2作目になっています。前回とはまた違って、自分たちの夢に対する情熱とか熱量を表現した内容になっていまして、その中でも今まで挑戦したことのない楽曲たちを集めた作品です。デビュー2年目になるんですけど、また新しい自分たちを感じていただけるのではないかなと思います。
ーーそもそも『PSYCHIC FILE』とはどんな作品なのでしょうか?
小波津:『PSYCHIC FILE』というタイトルは自分たちで付けさせていただいたのですが、内容としてはPSYCHIC FEVERがこれまでやったことがないようなジャンルに挑戦したり、新しい自分たちを見つけるための表現をすると決めて、制作し始めました。
ーー全7曲という聴きごたえのあるEPですが、制作はどれくらいでできましたか?
中西 椋雅(以下、中西):制作期間としては1ヶ月くらいですかね。時期はタイにいる頃だったので、現地のチームの方にお願いすることもあれば、日本からいつもお世話になっているチームの方に来ていただいてレコーディングしたりとか。でも日本でレコーディングした曲もありますし、いろんな場所で録りましたね。
小波津:うん、タイで録った曲が多いですね。
ーー環境の違う場所でのレコーディングで、やりづらさはなかったですか?
剣:もう慣れました!
中西:電圧の問題というのがあって、タイの方が日本より電圧が高いんですよね。エンジニアさんに聞くと、マイクのノリがよかったりとかするらしいんです。僕らにはあまり影響はないんですけど。
剣:業界のマニアックな情報です(笑)。
ーーでもそういう情報は入って来ないので貴重です! ディレクション面ではどうですか? 日本で録っていたらこういう仕上がりにならなかっただろうといったことなど。
WEESA:「BEE-PO」と「FIRE feat. SPRITE」は、日本語をまったく話せないタイの方がやってくださって、通訳の方を通してやりとりしたんですけど、パッションで感じ取って、自分たちも自分たちなりのエッセンスを入れたりもしています。僕たちの意見だけじゃなくて、ディレクションしてくださる方も「もっとこういう風にするといいんじゃない?」と言ってくださったりとか。楽曲によってディレクションしてくださる方も違うので、いろんなエッセンスが加わってるんじゃないかなと思います。1曲1曲、いろんな挑戦をしています。
ーー個人的には「BEE-PO」の2ステップが、PSYCHIC FEVERのボーカルとラップにとても合っていると思いました。2000年代初頭を思わせる2ステップは、前作EP『99.9 Psychic Radio』からY2Kの流れを汲んでいる感じもするので、前作きっかけのリスナー層にも響いてくれるのではという気がしています。
剣:「BEE-PO」は「FIRE feat. SPRITE」も手がけてくれたNINOさんが作曲してくれているので、海外エッセンスがたっぷり入っている楽曲ですね。
小波津:その年代プラス、歌詞の内容とか、表現しているのは僕たちなので、最新というか最先端というか。今だからこそ表現できる内容かなと思います。
ーー「Love Fire」はMV含め、視覚的にはどんな曲でしょうか?
中西:シンプルなのが印象的です。まず僕たちの強みでもあるダンスが際立つような振り付けというのを考えた時に、観てくださる皆さんが真似できないような、スキルフルな感じにしたいなというのがありまして。MVの内容的にも、ごちゃごちゃしたものではなくて、シンプルにダンスが観られるものにしたいということになりました。僕たちのスキルとか、ダンスの表現の仕方を楽しんでもらえたら嬉しいなと思っています。
ーー出来上がりを楽しみにしています。
小波津:めちゃくちゃ楽しみにしててください。めっちゃくちゃいいです。振り付けも僕大好きで。メンバーのJIMMYくんと、あと元々龍臣と一緒にやっていたRht.のMacotoくんに担当していただいているんですけど、ダンスから音楽を感じられるというか、踊りながら自分たちの感情を感じ取れるくらいで。感情で撮りましたよね?
剣:うん、もう感情がたかぶってないと踊れない踊りです。ただ「ダンスしよう」では、体操になっちゃうような。それくらい難しくて高度なダンスなんですけど、覇気が大切になってきます(笑)。
ーーそのために、どうやって心を躍らせるんですか?
剣:「Love Fire」ということもあって、自分のプライベートだったりとか、いろんなものさしとか矢印をそれに向ける! みたいな(笑)。それくらいエネルギーのある楽曲です。
初のドラマタイアップ
ーー「Pinky Swear」は初めてのドラマとのタイアップですね!
WEESA:『好きなオトコと別れたい』というドラマのエンディングテーマに起用していただいています。ドラマに出てくるキーワードをリリックの中に落とし込んで作られた楽曲で、恋愛観だったりは、聴いてくださる方の共感を生むような楽曲になっているんじゃないかなと思うので、ぜひリリックにも注目していただきたいです。何より、ドラマのエンディングテーマは僕たち初めてなので、ドラマの放送が楽しみでもあります。
ーーどんな風に使われるのかとか、細かいところも気になりますよね。
WEESA:そうなんです。ほんと間違いないです。
剣:エンディングと言ってもいろいろあるわけじゃないですか。セリフに被ってくるのか、はけぎわなのか、曲のどの部分が起用されるのかとかも。
中西:地上波で早く観たいなぁ(笑)!
小波津:ちゃんと表現できてるのかも気になるし。男性側の心情を歌った歌で、めちゃくちゃイメージして録ったので、それがうまいこといっているのか。
ーー毎熊克哉さんの役どころですね。まだクランクイン前だったと思いますが、どのような資料をもとにイメージしたんですか?
小波津:文面でいただいていました。だらしない男性なんですけど、不器用な中にも女性に対する純粋な想いがあって、恋心は変わらないので、そこの表現をどうしようかというのは考えて、7曲の中でも一番繊細な歌い方、表現になっているかなと思います。
ーーちょっといつもと歌い方が違うなと思いました。語りかけるような感じに聴こえたので。
剣:おぉー(笑)!
小波津:不器用さを感じていただけると嬉しいです。
トライアンドエラーを何度もできる海外公演
ーーところでPSYCHIC FEVERさんは海外の国々をたくさん見てきたと思いますが、各国による音楽性の違いなども感じることはありますか?
小波津:聴いてる音楽は違うなと思いますね。インドネシアはHIPHOP要素が強かったり。日本だと四季があるような楽曲も多いですし、たくさん聴かれるイメージがあるんですけど、東南アジアは気候が暖かくてそれがないので。あとは、タイに行くとフェスに制服を着た子たちが、けっこうな数で来ていたりとか。
剣:日本だと高校生とかが制服で来るイメージがないじゃないですか?ライブとかはあっても。学校終わりでフェスにそのまま行く、フェスが身近にあるっていう感覚ですかね。
小波津:音の楽しみ方も全然違いますね。僕たちがこのスピードで(ゆっくりと手を横に振る仕草)パフォーマンスする楽曲が、これくらいとか(倍の速さ)。
剣:8ビートが16ビートになってたりね。椋雅がライブの楽曲の編集だったり制作をするんですけど、BPMを速めたりとかやってみたんです。バイブスとかテンション感を合わせてみたりとか。その試行錯誤がすごい楽しくて。「ここのBPM速めたらめっちゃ前のめりになってくれた!」とか、意外とあんまりだったなとか。ありがたいことに、海外ではたくさん公演をさせていただいているので、トライアンドエラーが何回も何回もできるんですよね。
ーー海外でそれを体感できているのは、アーティストさんとしてアドバンテージになりますよね。
中西:それは本当にありがたいことですね。
小波津:貴重な経験をさせていただいています。
剣:グローバルにいろんな国の方が足を運んでくださるので、それが僕たちの強みというか。ベトナムでは「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」の歌詞を英語にしてみたりもしました。短い期間で制作したので、すごいプレッシャーでしたけど、本番のギリギリまでみんなずーっと呪文のようにブツブツ言って。
ーー怖いなー!
小波津:舞台裏見てほしかったなー!
剣:ベトナムにお越しの皆さんへのサプライズでもあったので、特別な時間になっていたら嬉しいですね。
ーー映像を拝見して、その気配りに感動しました。元々の英語詞のところはみんな合唱してくれるじゃないですか?
中西:練習してきてくれてね。
剣:あれは鳥肌立ちますね。もうイヤモニも取りました。今までは音源と自分の声しか聴こえなかったけど、もう一つ音楽が流れてるみたいな。「携帯かな? 違った」みたいな(笑)。数字として見ることはあったんですけど、人対人の、肌で感じた部分、こんなに日本から何時間もかけて来てくれてとか、遠い国の方がここまで歌ってくれてるとか、難しい日本語のところも歌ってくれてる方もいて。たくさんの方に届いてるんだなというのは、そういうところで実感できましたね。
後編では「Just Like Dat feat. JP THE WAVY」の反響をご自身ではどう捉えているのか、海外での活動で変わった音楽の価値観など、さらに深いお話に入っていきます。
撮影:小山恭史、インタビュー・文:長谷川チエ
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