原作ファンが観た映画『東京リベンジャーズ』の感想

2021年7月9日公開の映画『東京リベンジャーズ』についての感想を、ネタバレなしで書きました。




『東京リベンジャーズ』への期待度は低かった

映画『東京リベンジャーズ』制作の動きがあることは、制作会社の知人から何年も前に聞いていて、もういつだったか覚えていない。

正直に申し上げておくと、私はこの映画に期待していなかった。

キャストの皆さんも原作も大好きなので、成功してほしいと思ってはいたものの、原作が人気なだけにハードルが上がりきっている。だから過度に期待してがっかりしたくなかったのだ。

このジャンルの映画は、なかなか観客を満足させるのが難しいとも思っていた。

アクションシーンに迫力を求める人もいれば、ヴィジュアル重視の人、原作とちょっとでも違うと怒り出す人。求めるクオリティがばらばらの方向を向いている。それもハードルを上げている理由ではないかと思う。

満点でなくとも、全体的な総合力、五角形の星がバランスよく結ばれれば、まあ及第ではないか。本当に失礼ながら、そんな風に見据えていた。

普通の映画なら1ヶ月ほどで撮了するが、中断と再開を繰り返し、コロナの影響で撮影には300日以上かかったという。4度目の緊急事態宣言も出される中、逆境に負けず立ち向かってほしい。

執筆現在、私はこの作品を3回も映画館で観ることになった。1回目は舞台挨拶。それ以降は自主的に足を運んだ。

舞台挨拶で観る映画は気分的に少し違うので、2回目はちゃんと自分で観に行こうと思った。3回目は、記事を書く上でもう一度確認したくなり、突然思い立って近所の映画館に出向いた。

期待していなかったのに3回も足を運ぶとは。そして私は、ずっと泣かなかったのに3回目で泣いた。映画というのは本当に奥が深くて困る。何度でも観たくなるではないか。

ここでは、本作の魅力だと感じたことを、自分流に4つの視点で書き出してみたいと思う。

原作とつかず離れずの脚本

原作が実写化されることにおいて、特にマンガではヴィジュアルも含め、原作をどこまで再現しているかという視点で語られることは多い。タイトルにまでしておいて申し訳ないが、私はこの点をあまり深く考えていない。

再現性が高いのは素晴らしいことなので評価すべきだが、原作に近づくことだけが実写版の目指すところではないと考えてきた。原作リスペクトを前提とした上で、また違った作品世界を展開することも、実写化の意味を生むんじゃないだろうかと。

アニメ版も含めて三兄弟みたいなもので、近くにいるけれど違う道を進む。そんな感じだ。兄弟が同じ顔つきで同じ進路を辿っていたら怖い。原作を知らない人もいるのだから、まずは映画の完成度を見るべきだと思う。

映画『東京リベンジャーズ』は、原作とつかず離れずの距離感を保っているように感じた。

映画のシナリオは年々複雑になっていて、何と何を掛け合わせて斬新さを出すかというフェーズに入っている。単純すぎる展開にもう観客は飽きているし、難しすぎれば「嫌い」と判断されてしまうのが辛いところだ。

『東京リベンジャーズ』は、“ヤンキー × タイムリープ” という掛け合わせになっている。

ヤンキー映画もタイムリープというテーマも珍しくないが、ストーリーを理解できないだけで離脱や酷評をされる時代なので、観客を置いていかないことは今とても大事な要素だと感じる。

定番であり斬新。SNSやUGCとの相性もいい。“運命を殴り変えろ” というコピーも秀逸だ。

高橋泉さん脚本では、『ソラニン』『凶悪』『ひとよ』のシナリオも好きだ。

流動的な構成と演出

全体的にアクティブだが、構成がしっかりしていて失速しない。冒頭の入り方もいいし、いわゆるセットアップ部分が骨太なので、「これは期待できるかもしれない」と思って観ているうちに引き込まれた。

アクション系はすぐ眠くなってしまう私でも、目バッキバキで観れたのは、ケンカシーンもカット割やアングルに意図があり、ちゃんと時間が動いていたからだろうか。

アクションシーンで物語が一旦止まってしまうから眠くなるのだと思うが、本作は流動的に進行していた。

ケンカにもちゃんと理由がある、っていうとなんかあれだけど、「これが観たいんだろ?」っていうドヤったアクションではなかったからだと思う。

「あのシーンが描かれてない」「急展開しすぎ」とかは論じられそうだが、尺が長すぎて中だるみしたり、盛り込みすぎてどこも駆け足になるよりよっぽど良い判断だと思う。

しかもそれらは、原作を知っている人が勝手に印象的なストーリーを浮かべているだけで、何も知らない人からすれば、案外不自然には感じなかったりする。

たった一作の映画ですべて描き切るのは当然不可能だ。映画で『東京リベンジャーズ』を好きになった人が、原作を読んでさらにこの世界観を深く知っていく、という順番でも構わないと思う。

PG12(保護者の助言や指導があれば12歳未満でも鑑賞できる作品)に収まる範囲で(収まってない気もするけど)、物足りなくもなく、目を覆うほど酷いバイオレンスでもなく、バランスよく配分されている。

ただそれは突出した何かがないと言い換えることもできてしまうので、演出面ではここで賛否が分かれるかもしれない。

SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」

原作にBGMをあてることはできない。だからこそ、音楽は映像の大きな強みとなる。

『東京リベンジャーズ』と、主題歌のSUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」、こんなに完璧に歌と本編が合致するなんて。もはやマンガを読んでもこの曲が頭の中で流れてくる。大好きな東リベにテーマソングを授けてくれてありがとうと伝えたい。

個人的には、誰が主題歌を担当しているかで映画の印象が大きく変わるし、この曲が主題歌だったから映画に好印象を抱いた点は少なからずある。

一見クールで近寄りがたい方々のように見えますが、SUPER BEAVERはめちゃくちゃ丁寧で優しくて人柄も最高に素敵なバンドなんです! だから主題歌を担当してくれて本当に嬉しかった。

映画の公開前にはリリースされていたので、ストリーミングでいくらでも聴くことはできた。しかし新鮮な気持ちでエンドロールを観たいがために、この曲を封印してきたので、エンドロールで流れた時はテンションが上がった。

ここまで粘着質な映画&音楽ファンは他にどれくらいいらっしゃるのだろうか。聴きたいなら我慢しないで聴けばいいじゃんと思いますよね。私もそう思います。でもこの我慢大会は感動が何倍にもなるのでおすすめです。

スクリーンのエンドロールで聴く歌には、サブスクでもCDでもライブでもなく、また動画で観た時でも味わえない世界が詰まっている。あと5分で日常に戻ろうかという、魔法が解ける直前みたいな時間だ。

音楽だって命を削ってできている。だから本当は、エンドロールが終わる瞬間まで一人でも多くの方が座っていてくれたらいいなと、密かに思っている。

キャスティング

そして青春アクションヒーローもの(って言うのか分からないけど)では、演者の芝居に甘いところがあるとか、怒鳴ってカバーしてる感じとか、そういう一面が露呈すると熱が冷めてしまう。

それらもエンタメの一つというか、役者さんの貴重な登竜門だと思うので否定はしないが、『東京リベンジャーズ』が顔の良い役者を集めたお決まりのヤンキー&友情映画、と乱雑にカテゴライズされることがあるならば、私は全力で暴れて抵抗したい。

本作では、未来の映画界を盛り上げるであろうキャストの方々が、素晴らしいお芝居を繰り広げている。

総合的な演出には賛否が分かれるかもしれない。しかしマイナスの印象をすべて払拭するくらい、キャストの熱演が素晴らしかった。

山田裕貴さんはこの作品でいくつもステージを上げたように思うし、熱い不良だらけの中で、物語を深くした杉野遥亮さんは全然中学生に見えないのが逆に良い。

タケミチの素直な表情を引き出した今田美桜さん、鈴木伸之さんのいつの間に仕入れたのかというヘビーな貫禄、眞栄田郷敦さんは佇まいで語っていた。主人公との距離の取り方が絶妙な磯村勇人さん。

間宮祥太朗さんと清水尋也さんは熱の中で不気味な闇を創造していた。吉沢亮さんは緩急の付け方が秀逸で、ハイキック一つでこの映画のアクション全体のレベルを底上げした。

それらが生きていたのも、北村匠海さんが主演ながら突っ走らず、周りに波長を合わせて演じたからだと思う。誰一人空回りすることなく統率が取れている。そんな奇跡のような空気感が、この作品を包み込んでいる。

出ている役者さん全員を好きになるような映画なので、好きな役者さんがいなくても観てみてほしい。終わる頃にはきっと誰かを好きになっている。そんな映画にはなかなか出会えない。それが本当に素晴らしいと思った。

こういう映画では、経験豊富な先輩の友情出演、強力なバイプレイヤーが脇を固めてバックアップするものだが、『東京リベンジャーズ』は、ほぼ若手の役者さんだけで構成されている。

それでこの世界観を創出した彼らに、盛大なスタンディングオベーションをおくりたい。このキャスティングでなければ私は記事を書かず、ただ観て終わりだったと思う。

 

「誰かのために」というテーマではあるが、それは自己犠牲ではなく、タケミチは自分を変えることで運命を変えようとした。人を動かすのはいつも人、そんなことを思いながらこの記事を書いた。

原作を知っていると、やはり続編のことを考えてしまう。最後のひと押しは観客次第だ。この映画の続きをスクリーンで観られる日が来ることを、原作ファンの一人として心待ちにしたい。

文/長谷川 チエ

東京リベンジャーズ 公式サイト




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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2016年、別業種からフリーライターとして独立。2017年にCulture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。カルチャーについて執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、別名義で小説や行動経済学についての書籍も出版。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!