BE:FIRSTのライブドキュメンタリー映画『BE:the ONE』レビュー

BE:FIRSTのライブドキュメンタリー映画『BE:the ONE』レビュー

8月25日(金)より全国公開されている、BE:FIRSTのドキュメンタリー映画『BE:the ONE』のレビューです。

※公式がHPなどですでに出していたり、メンバーが見どころとして明かしているシーンはネタバレにならないという判断で書きました。

具体的なシーンの描写は出てきませんが、構成部分には触れているので、あまり情報を入れずに観たいという方は、2つ目のブロック “映画『BE:the ONE』の内容” はまるっと飛ばしてください。

すべてをシャットアウトしたい派の方は、観終わってから読まれることをおすすめします。それではどうぞ!


BE:FIRST初のライブドキュメンタリー

この映画が上映されると知った時は、デビューからこんなに早く、もう映画になるのかと思った。

同時に、映画1本が作れてしまうほど、7人はデビュー前から駆け抜けてきたのだとも思った。

本作を観るにあたって、自分がどの立場かという疑問はいっそ置いておいて、自分の中に2人のペルソナを設定し、2つの視点で観ようと決めていた。

一つは、BE:FIRSTのファンであるBESTYとしての視点(箱推し)。この記事ではAさんと仮定する。

もう一つは、BE:FIRSTの曲はほとんど知らない、メンバーの顔と名前も一致しないくらいの人(映画好き)。この記事ではBさんと仮定する。

実際の私は、『THE FIRST』(オーディション番組)は放送時からすべて観ていて、2022年には1年間BE:FIRSTを観察して、年末に記事を出した。

「BE:FIRSTに関する極めて個人的な1年間の記録」

その後も記事を書いたりしているので、そこそこ追いかけ回してはいるが、好意的に思っている普通の人、みたいな感じでしょうか(ざっくりでごめんなさい)。

映画『BE:the ONE』の内容

内容としては、『THE FIRST』から今日までの流れや、バックヤードでのメンバー同士の雰囲気などが、ドキュメンタリー映像としてふんだんに収められている。

しかしそれだけではなく、本作ではライブステージも曲ごとに織り交ぜられている。

つまりライブフィルムとしても楽しめるのが本作の大きな特徴となっており、スクリーンでライブ映像が観られるということだけでも価値があると思う。

ベースとなっているのは、BE:FIRSTが初めて開催した全国ツアー『BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023』。

東京公演は当時オンラインでも配信され、私もその感想をレポートしている。

『BE:FIRST 1st One Man Tour “BE:1” 2022-2023』ライブレポート

すでにディスク化もされているライブなので、Aさん(急に登場します)としては既視感があることは否めないが、スクリーンでライブを観るというのはどんな場面でも高揚する。

ましてファンであれば、何度でもこの映画を観に行きたくなるポイントになっていることは間違いないと思う。

BE:FIRSTの曲についてあまり知らなかったBさんも、その部分でかなり歩み寄ることができた。いい声だなー、ダンス上手いなーという純粋無垢な感想が溢れ出てくる。

パフォーマンスが観られるという点では、1stアルバム『BE:1』から「Message」のAcoustic Ver.が、スペシャルパフォーマンスとして収められている。

これは韓国で撮影されており、本作でしか観られない映像になっている。

オ・ユンドンさん、キム・ハミンさんが監督を務めていることもそうだし、海外のクリエイティビティと親和性を高めていくことは、世界を目指すBE:FIRSTにとって貴重な一歩となり得る。

映画館を出た後、必ず何かの曲を聴きたくなるのが音楽映画の面白さだと思うけれど、この日の私にとってのそれは「Message」だった。

なんなら次の日もずっと「Message」を口ずさんで歩いていた。

“BE:GIN”や“BE:AT”など、それぞれの構成がしっかりと作られているけれど、全体としては流れるように観客の感情に入り込んでくる。

そのあたりは、BE:FIRSTやBMSGが持つテクスチャーと上手く結びついて構成されている。

メンバーへのインタビューも流動的に展開していくのは観やすい反面、Bさんの視点では誰が何を話しているかの判別や、全員の名前を覚えて帰ることは難しいかもしれないとも感じた。

これは好みの問題なので、評価基準には含まれないけれど、一人ひとりの言葉は切り取らずにロングインタビュー形式でフォーカスされると、個人的には集中できる。

しかしこれは、インタビューでアーティストが発した言葉を寸断せず、空気感や脈略を伝えようとするライターの自分の癖なので、むしろ他の方にとっては、観やすく編集されていると感じるのかもしれません。

スクリーンの選択肢

映画『BE:the ONE』は通常の2D版だけでなく、ScreenX、4DX、4DXScreenでも公開されている。

「ScreenX」は、正面スクリーンと2つの側面スクリーンの計3面で構成されているもの。

「4DX」は、音やパフォーマンスに合わせてシートなどに直接モーション効果が伝わる機能が備わっている。

「4DXScreen」は、ScreenXと4DXの機能がどちらも搭載された無敵バージョン。なんかもう分からなくなってきた。

4DXScreen以外は別の作品で体験したことがあるのだけれど、私はポップコーンを食べながら2Dで観るシンプルな行動も込みで映画が好きな人間なのと、大多数の方は2Dで観ると思うので、やはりみんなと同じ感覚でこのレビューを書いてみたいと思い、2Dを選択しました。

そうなると上映館の選択肢が広がるのもいいところ。

しかし、機能や設備の優れたスクリーンでBE:FIRSTのパフォーマンスが楽しめるのは素晴らしいことで、音楽を立体的に捉えることのできる画期的な機会でもある。

こうした体験をきっかけに、音楽が映画とより結びついてほしいとも思う。

音楽ファンが映画館に足を運ぶ機会が増えることや、映画ファンがアーティストとその音楽を知る機会が増えることにも期待したい。

居住する地域や費用など、さまざまな理由でライブには行けなくても映画館なら行けるファンもたくさんいる。

音楽と映画の距離は、補完し合いながらもっと近づくことができると思うので、『BE:the ONE』のような作品がもっと増えてほしいと思います。

映画を観終わって思うこと

今この記事を書いていて、私が考える本作の特筆すべき点は、“BE:STY”ブロックがあって、ファンがこの映画の一部になっているところです。

BE:FIRSTが、日々の生活を超えて人生になっている人たちが、こんなにたくさんいる。音楽ってこんなに人と人を繋いでくれるんだと考えていたら、涙が止まらなくなった。

103分の上映時間は、いい意味でとても長く感じた。「103分の尺なのにこんなに見せてもらえるんですか? この後どうなってるの?」と途中で何度も思った。

映画を観終わった後の自分の中には、AさんもBさんも存在しなくなっていた。音楽に境界線は必要ない!

勝手に設定したペルソナは、BE:FIRSTによってすべて解き放たれていたようだ。

BMSG初のグループとして誕生したBE:FIRSTは、事務所の先輩に当たるような存在はいないのだ、とふと考えた。

SKY-HIさんがその役割も担っているのかもしれないけれど、SKY-HIさんだって初めて社長になったわけで、グループとして何を目指せばいいのかはきっと分からず、模索しながら道をつくってきたのだと想像する。

しかし彼らは、どの過程でそれを身につけてきたのだろうかと思わず考えてしまうほど、グループとしての芯があって、筋を通していて、信念に従って活動していると感じる。

それはきっとBE:FIRSTになる前から、オーディションを受ける前からの日々の過ごし方や、音楽との向き合い方によるもの。過去の7人が、現在のBE:FIRSTの信念をつくっているのだと思った。

『THE FIRST』ですら過程だったのだと、この日強く感じた。初めての連続に何度も出会って、不安を乗り越えてここまで形を作ってきた。

その姿は、きっとどんな人の心にも残るし、勇気をもらえると思う。

7人はいかにして音楽をつくる人になったのか、ここまでの軌跡が可視化されたのが『BE:the ONE』。

ここからさらに続いていく道を、たどってみたいと思える作品でした。

文 / 長谷川チエ

『BE:the ONE』公式サイト


▼BE:FIRSTに関する1年記事

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▼嵐の映画レビュー




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!