【過去曲探索】「Summer Madness」から4年後にリリースされた名曲、三代目JSB「SCARLET feat. Afrojack」レビュー

三代目 J SOUL BROTHERSが2019年8月7日にリリースした「SCARLET feat. Afrojack」を、4年後の2023年、同じ日に振り返ってみます。

Culture Cruiseではインタビューを中心に、新曲を取り上げることが多くなってきたので、過去の曲にも再び注目しようという取り組みをしているところです。


赤をイメージした「SCARLET」

2019年の三代目JSBはトリコロールを掲げた年で、1年かけて青、白、赤の3色をテーマにした楽曲を発表しました。

青の「 Yes we are」に続き、赤として表現されたのがこの「SCARLET」。そして白がテーマの「冬空 / White Wings」。

3曲(4曲)すべてイメージが違うのですが、どれにも三代目JSBらしさを感じるところが、扱う楽曲の幅広さを物語っています。

そんな中でも「SCARLET」は、彼らの楽曲としてはありそうでなかったような、はたまた持ち味を各方面から集めて凝縮したような、絶妙なラインを表現しているように思います。

作詞:YVES&ADAMS、作曲:Giorgio Tuinfort, Afrojack

Afrojackを再びプロデューサーに迎え、全体としてはアッパーで躍動感のあるビート。しかしながら、個人的には「SCARLET」といえばピアノと言ってもいいくらい、ピアノの音色も強く印象に残ります。

それはやはりシンプルなイントロとアウトロに由来しているのだと思います。

加えて、1番のヴァースはずっとピアノメイン。2番もまたピアノで始まるのですが、ビルドアップするうちにピアノがどっか行く。そしてよりエレクトリックに盛り上がる。

ここに8bitっぽいFXをなぜ入れたのか、作曲陣にインタビューして聞いてみたいです。

赤をイメージさせる情熱と、切ないポイントが散りばめられた美しいメロディ。

Afrojackはこういうハイブリッドな演出が非常に上手ですよね。世界的に活躍するDJというのは、1曲の中でリスナーの感情を上手にコントロールできる人だと私は思っております。

また、コライトしたジォルジオ・トゥインフォートもすごいクリエイターで、アリアナ・グランデやデヴィッド・ゲッタなど錚々たるアーティストのプロデュースを手がけてきた方です。

ジォルジオ・トゥインフォート作品には、マイケル・ジャクソンとジャスティン・ティンバーレイク「Love Never Felt So Good」(2014)も。

耳が取れるんじゃないかと思うくらい聴きましたこの曲。原曲は1983年にはすでに制作されていたということで、この地球の時間軸どうなってるのか。

「SCARLET」のこのスケール感には、やはりわくわくさせられます。

「Summer Madness」から4年

三代目JSBが初めてAfrojackをフィーチャーしたのは、2015年リリースの「Summer Madness」でした。

当時もEDMテイストのJ-POPはあったので、この曲が特別新しいというわけではなかったんですよね。

ただ、J-POPでもっとも要となるサビが、完全にドロップとして作用する曲を、トップランカーがシングル曲で勝負するというのはかなり実験的だったと思います。

2017年に書いたØMIさんの「Wasted Love」の記事で、Afrojackはメランコリックなのだということを熱弁しましたけれども、「Summer Madness」もトラック自体はエモい展開になっています。

ラストにかけて怒涛のビルドアップがあり、花火が散るように終わります。

でもYouTubeで公開されているMVはその前に終わってしまうので、最後の切ない感情まで見届けることができないのが少し残念に思います。

そして4年の月日が経ち、「SCARLET」のリリース。Afrojackとのコラボと聞いて「Summer Madness」の頃のようにやいのやいの言う人もいなくなりました(どこに行ったのか?)。

その間、LDH EuropeのCEOに就任したり、JSBのメンバーではØMIさんのソロでAfrojackと制作を行うなどして、2015年よりもさらに距離感は近いものになっていることが窺えました。

トラックメイクもこのグループに合わせた作りになっており、特に2番はサビのトラックが連続して3回も回されています。

普通ならこのような構成にはしないと思いますが、ツインボーカルやパフォーマーといった視点がいくつもあるJSBならではのトラックの聴き方ができます。

「SCARLET」は、「Summer Madness」でのチャレンジがあって4年後だったから構築できた世界観なのだと思います。

Afrojackが出演した『ULTRA JAPAN 2019』

「SCARLET」の個人的な印象としては、2019年の『ULTRA JAPAN』(アメリカ・マイアミ発祥の世界的なEDMイベント)にたどり着きます。

このイベントにAfrojackが出演した際、ラストに「SCARLET」のトラックを使用していました。

OneRepublicの「If I Lose Myself」、2018年に亡くなったAviciiの「Wake Me Up ft. Aloe Blacc」のヴォーカルとマッシュアップさせたのですが、あまりにも完璧な大トリだったので、とても印象に残っています(現地には行っていません。生配信で観ました)。

今でも「SCARLET」のトラックに「Wake Me Up」のヴォーカルで脳内再生することがあるくらいです。「New Memories」からの流れも最高でした。

「SCARLET」のトラックを違う角度から聴いたことで、改めて完成度の高さを思い知ることになります。

日本での開催ということで、三代目JSBと、EDM界のレジェンドとなった亡きAviciiに2日間の大トリを譲るかのようなステージ。

満開の花火とともにフィナーレを迎えた『ULTRA JAPAN 2019』で、Afrojackの温かな計らいとプロフェッショナルを体感することができました。

ご興味のある方は、AfrojackがFacebookに投稿したその時のパフォーマンス動画(長いです)もご覧ください。

クライマックスのずらし方

個人的に思う「SCARLET」の素晴らしいポイントは、2サビ後にサビのトラックをループさせている部分です。

ØMIさんの“I WANNA BE RED”にかぶせ気味で入ってくるところ、MVでいうと4:09くらいの箇所です。

▼3:40〜(2番のサビ)から始まります(※音量注意)

一瞬のクライマックスなのですが、EDM的にはここが一番盛り上がるポイントで、トラックの美しさに着目できます。

でもこれはJSB的にも強みを発揮できるところで、意識がヴォーカルからパフォーマーにシフトする瞬間でもあります。

パフォーマーが最も輝いている瞬間にクライマックスを感じるというのがまた素敵で。

この視点のシフトが三代目JSBの持つ強みであり、LDHが培ってきた文化なのだと、2023年の今実感します。ライブで観るとその連続で、だからずっと目が離せなくなって楽しいのだなとも思います。

そこからブレイクダウンに突入し、アウトロへという流れ。一番テンションが上がっていた時には、もうすでにエンディングに向かっていたという花火のような刹那的な盛り上がりです。

特にJ-POPでは、サビが1番、2番、大サビと3回繰り返されることが多く、落ちサビも含めて4回という時もあったりするのですが、この曲はカウントしてみると2回しか出てきません。

でもフックとしての役割を十分すぎるくらい果たしている上に、物足りなさを感じないのは、この2サビ後のループがあるからだと思います。

なおかつ、クライマックスが終盤にずれていることで単調さが回避されていて、ヴォーカルはフェイクで繋ぐ程度なのでくどさも感じない。

海外のトラックメイカーはこういうバランスが本当に上手いです。(自分が何者なのか、誰目線の立場なのか分かりませんが、とても勉強になる…)

欲を言えばもう少し音数は抑えても良かったかと思いますが、2019年でAfrojackとの久々のコラボということでこれくらいなのかなという感じもします。

その分「Summer Madness」の頃に比べて、低域〜高域までの音のレンジがバランスよくなった気がします。

サビでクリックが3回入るところとか、なかなかJ-POPでは取り入れづらいですが、こういった遊び心も普通に盛り込んできますよね。

ブレイクダウンが取り入れられているのは「R.Y.U.S.E.I.」の頃から継続していますが、この曲では2回、わりとしっかりめに入っています。

そこでパフォーマーが視線を惹きつけるという、Afrojack × 三代目 J SOUL BROTHERSというコラボの持ち味がこれ以上ないほどに結実した曲だと感じました。


2019年にリリースされてすぐに書き始めていたこの記事も、出すタイミングを失って4年も経ってしまいました。

でもこの4年で気付けたこともたくさんありました。

何年経っても飽きずに聴ける「SCARLET」、強靭なトラックと美しいメロディに、視点の変化が掛け合わされた素晴らしい楽曲だと思います。

文 / 長谷川 チエ

▼CrazyBoyさんインタビュー

▼「TONIGHT」レビュー




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!