降りしきる雨の中聴いた三代目JSB「RAINBOW」/7つの夢と絆が描くアーチ

三代目 J Soul Brothersが2018年6月6日にリリースしたアルバム『FUTURE』から「RAINBOW」についてのレビューです。

この記事を書いた日は、梅雨の訪れを知らせる雨の日でした。それがアルバム『FUTURE』の発売日と重なりましたが、この曲の意味を教えてくれる恵みの雨になりました。




映画『SEVEN/7』と「RAINBOW」

アルバム『FUTURE』のリードトラックである「RAINBOW」。作詞はメンバーの登坂広臣さんと、ELLYさんの別名義であるCRAZYBOY、作曲はEDMで世界的人気のデュオ、Yellow Claw(イエロー・クロウ)。

そして『FUTURE』に同時パッケージ化となった、7人の姿を追いかけたドキュメンタリー映画『SEVEN/7』のエンディングテーマでもあります。

私は昔からレインボーカラーが大好きなので、なんとなくこの曲は嬉しかったし、デビューから大きく成長したこのタイミングで、壮大にRAINBOWを奏でるのが素敵だと思いました。雨上がりの虹のように、ボーカル2人の声が透明感にあふれています。

今回のMVの好きなシーンは、NAOTOさんのノールックパス(@2:03くらい)。なんかNAOTOさんらしくて好きです。

初めてハワイに行った時、滞在している期間だけでもたくさんの虹を見かけました。ハワイって本当に夢のような国だなぁと感じたし、あんなにクリアな虹を見たのも初めてだった。この曲のMVも、雰囲気にすごく合っていますね。

2010年のデビューからがむしゃらに走り続け、7人の夢だったドームツアーを達成し、様々なジャンルの楽曲にも挑戦した。個々の活動指針も明確になる中で、でもやっぱりこの7人なのだという気持ちは、むしろソロ活動が本格化する前よりも強まった気がします。

そして「RAINBOW」は、映画『SEVEN/7』を象徴するテーマソングになってくれました。感動と同時に爽快感も得られるような内容。それはきっとこの曲によるところが大きいかなと思います。

ちなみに私は映画館でこの作品を観て、Ne-Yoが登場した時に叫びそうになりました。

「RAINBOW」の印象も、映画を観る前と後では、明らかに感じ方が変わりました。7人の人生をかけた重みが、ずっしりと伝わるのです。こんなに立派な曲ができるくらい、この7人は走り続けてきたのですね。

曲を聴いているだけだと聴こえてくるのはボーカルとCRAZYBOYの声のみですが、パフォーマーの笑顔も脳裏に浮かび、7色の虹がはっきりと見えます。

「Summer Madness」からの変化

「Summer Madness feat. Afrojack」を取り上げた「三代目のEDM路線が気に入らない?どんなにすごい挑戦かを今こそ語ろう」という記事も書きましたが、あれから年月も経過して、J-POPがEDMを取り入れることも珍しくなくなりました。

そんなことを考えながら、この曲のレビューは少しずつ書き進めつつも、記事として出すつもりはありませんでした。

でも、今市さんがラジオ番組「SPARK」で「いい曲ですよね〜」とおっしゃっていたのが忘れられなくて。その声が意気揚々にと言うよりも、限りなく優しくて穏やかな声だったからです。

無難な曲ではないけれど、かといって攻めのスタイルとも少し違うのだなと。そして、そんな思いを抱きつつ観た映画『SEVEN/7』で、確信に変わりました。

JSBのメンバー自身も「Summer Madness」の時は少なからず勢いとか尖った気持ちみたいなものがあったかと思いますが、今回は心境も違うように見えました。

これまでと、これからの活動について見つめ直し、気持ちを新たに7人で上を目指していこうという所信表明。その思いを乗せた歌が、たまたま今回EDM調の楽曲であった。そんな気がしています。

それと同時に、映画『Born in the EXILE』の時のようなバラードではなかったことが、今の気持ちを象徴している気がします。チャレンジングかつポジティブな思考が伝わってきて。

着々とここまでやってきた軌跡があって、とても地に足がついているように感じました。今回はアルバム曲ですし、本当は「Summer Madness」と比較する必要もないのですが、まぁイメージとして分かりやすく例に出しました。

最近は彼らの曲を初めて聴く瞬間、歌い出しの今市さんの声を聴くと「こんな歌い方ができるようになったんだ」とハッとさせられます。

個人的にはボーカル2人が、お互いに声質を寄せているように感じられて、レコーディングは別々に行っていたとしても、登坂さんと今市さんの声の結びつきがいつも以上に強いように感じました。




Yellow Clawについて

プロデューサーのYellow Clawは、私も大好きでよく聴いているのですが、今回のコラボは意外な感じがしました。

Yellow Clawが作ってくれたこの曲は素晴らしくて、JSBが前を向いて歩き出している。Yellow Clawは7人の歩みをくみ取るように、ぴったりな楽曲を提供してくれています。

ずっと見てたんじゃないかというくらい完璧です。そして日本の音楽ファンに向けてPRしてくれていました。

オランダで結成されたYellow Clawは、偶然にも三代目JSBと同じく2010年にデビューしました。世界中のEDMイベントにひっぱりだこで大人気なのですが、彼らもまだまだ伸びしろがあるユニットだと思っています。

元々は3人組のユニットだったのですが、2016年にMC兼プロデュースという、核となるメンバーだったビジーが脱退。以来デュオとして、2人で頑張ってきた経緯があるのです。

DJとしてグローバルに活躍できる人はほんのひと握りで、競争の激化する過酷な世界。しかも流行の移り変わりの速さは、ちょっとエグいなと感じるくらいで、本当に大変だと思うのですよね。

そんな荒波に揉まれながら、Yellow Clawも三代目と同じだけの時間を過ごし、成長してきました。こんなに素敵な曲を作ってくれた2人には、日本の音楽リスナーとして心から感謝したいのです。

EDMはチャラチャラしたパリピが聴く音楽、というイメージで誤解されやすいですが、実はとてもドラマティックで、人間の感情を豊かに描く音楽なのだということが、「RAINBOW」を通じて世の中に少しでも伝わってくれたらと願っています。




雨は頑張る人の涙

登坂さんとCRAZYBOYのリリックも素晴らしくて、じっくりと眺めてしまいます。きっと辛いこともたくさんあったのだろうと、計り知ることができる内容ですが、涙が夢へのステップになることを彼らは知っているし、私たちに示してくれています。

彼らの夢を応援することも素晴らしいけれど、ファンのみんなが彼らに影響されて夢を追い続けたり、何か新たな行動を起こすきっかけになったら、これもまた素敵だなぁと思います。

この曲の歌詞にもあるように、虹って肉眼で見ると“境界線のないグラデーション”なんですよね。だから、7色に限ったことではないと思うんです。

頑張っている人はみんな、雨上がりの虹のように輝いている。その色がグラデーションになって、大きな弧を描くんじゃないかなぁと。

頑張った人の涙が雨になって、前を向いて歩き出した軌跡が虹になる。太陽のまぶしさ、虹の美しさを感じることができるのは、雨があるから。

そう思うと、雨も悪くないですね。梅雨空でもこの曲を聴けば、立ち止まらずにまた一歩踏み出せそうな気がします。

文 / 長谷川 チエ(@Hase_Chie


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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!