【FlowBack『intersect』インタビュー後編】FlowBackという場所を必死に繋いできた

2023年6月27日にミニアルバム『intersect』をリリースするFlowBackへのインタビュー。後編では初収録となるソロ曲についてお話を伺いました。

前編はこちら


ソロ曲についてのお互いの印象

ーー今回は全員のソロ曲が入っていますが、結成10周年でやりたいこととしてお話されていましたよね。

TATSUKI:そうですね。それぞれが作りたい人と作ってくるというのをテーマに作りました。

ーーそれぞれご自身の楽曲について、どんな曲か聞かせてください。

MASAHARU「INTENTION」

MASAHARU:僕の楽曲は「Paper Plane」を作ってくれた方に作詞・作曲をお願いしました。「僕には歌えないような曲と歌詞を書いてください」と相談したところ、ファンクとかロック寄りの楽曲で、内容も普段の僕から想像できないような曲として聴けるんじゃないかなと思います。

ーーMASAHARUさんはあえて制作には入らなかったということですか?

MASAHARU:そうですね。構成の打ち合わせには入らせていただいたんですけど、あえてノータッチでした。ブリッジの部分ではロングトーンの出し方を変えたりして、苦戦しました。僕はきれいに出しちゃうんですよ。でも「もっと男らしい曲でしょ」って、ディレクションを受けて。

ーー他の3名はMASAHARUさんのソロ曲を聴いてどう思いましたか?

Swan.J:ツアーのリハーサルで、お互いのソロ曲を初めて通しで聴いたんですけど、意外ではあるけど違和感はなく、MASAHARUくんの曲だなという印象でした。

TATSUKI:そうなんですよ。本人は自分とかけ離れているって言ってるんですけど、僕からしたらザ・MASAHARUで(笑)。昔のMASAHARUがよく歌ってそうな曲だなという印象がありました。

REIJI:僕はすごいセクシーだなって。

Swan.J:今の声がセクシーだった(笑)。

ーーごめんなさい、声は一切載らないんですよ。

REIJI:「(セクシーボイス)」って注意書き入れてください。FlowBackの曲でアプローチする曲って意外と少なくて、音楽を通してMASAHARUくんが1人で表現するというのが、男性の魅力に気付いた…なんかすごい恥ずかしいんだけど(笑)。10年目にして新しい一面が見れたという感じがしますね。

ーー10年経ってもメンバーから見てまだ新しい面があるってすごいですよね。

TATSUKI:まだまだボロボロでてくるかもしれないです(笑)。

Swan.J「海月」

Swan.J:これは経験したことがそのまま反映されていて…感情が揺れ動いているものを表現したいと思ったら海月(くらげ)が浮かびました。別れ話がテーマなんですけど、別れ話って長ければ長いほど、小さいことが気になっちゃうっていうか。相手の呼吸の音とか目の動きとか。ショックだからっていうのもあるけど全然話が入って来なくて。そういう感情を言語化できたらいいなと思って書きました。

ーー短い曲ですけど、スパッと終わっていく潔さもいいなと思いました。

Swan.J:ほんとですか。それも理由があって、もう1ヴァース蹴ってフックが来る構成も考えたんですけど。別れ話をしている時って体感は永遠のように長く感じるんだけど、相手の中では答えが決まってるから短いっていうのも表現したくてこの尺にしました。歌詞もほぼレコーディングブースで書いたし、打ち込みもその場でやったので制作も速かったです。

MASAHARU:曲調でいうと、FlowBackでこういうことやりたかったんだろうなっていうものがソロになったというイメージ。

Swan.J:そうですね。FlowBackのカラーからあまり離れたくなくて。これをFlowBackでやったらかっこいいだろうなというものを自分で投影して、ソロ曲もFlowBackの曲になるので、遜色ない感じがいいなと思って。

TATSUKI:最近のFlowBackだと「鳳蝶」もそうですけど、ふわふわして行き先が明確ではなくて、もがいてる。でも足を動かそうとする感じがSwanっぽい曲だなと思いました。

REIJI:ゴリゴリのラップ系じゃなくて、ノリのいい速い曲だからライブ映えしそうですよね。水族館にいるクラゲっていっぱいいるじゃないですか? だから自分が見ていたものがいつの間にいなくなったりとかして。僕の解釈としてはそういう意味で、気付いたら終わってたという感じだった(笑)。だからこのテーマがいいなと思います。

TATSUKI「コントラスト」

TATSUKI:自分がソロで音楽を作るとなったら、こうしたいというのが元々あって、今回はそれにトライした第一歩という感じですかね。作詞・作曲には、普段から僕のいろんな面を知っている友達が別名義で入ってくれてます。部屋の中にいる自分にフォーカスして作りました。

ーー歌詞もそうですし、声や歌い方も自然で等身大のTATSUKIさんという感じがしました。

TATSUKI:FlowBackでいる自分と、普段のTATSUKIという人格の違いを表現したくて。FlowBackとしてキラキラできている反面、普段の自分…全然違うわけではないですけど、どっちも好きなので、そのうちの一個の部分を表現したいなと思いました。

ーータイトルの由来はなんですか?

TATSUKI:タイトルはずっと決まらずにツアーを回ってたんです。そしたら写真とか編集したりするのが好きなので「コントラスト」というワードが出てきて。光と影とか、明暗とか、片方があるから片方が輝くんですよね。普段の自分を好きでいられるのもFlowBackがあるからだなと思って。自分の人生の中で、それがいいコントラストになっているんだなと思って決めました。

ーー他の3名はどんな印象でしたか?

MASAHARU:TATSUKIって言葉数の多い曲が似合うなと思ってて。ハスキーでもあるし。僕が曲を作る時も、言葉数が多い部分をTATSUKIに当てがちなんですよ。友達が作っているからか、TATSUKIにすごく似合ってる。

Swan.J:歌詞がTATSUKIくんそのものすぎて。コーヒーとかカメラとかゲームとか。好きなものに囲まれてる私生活をしてるし、TATSUKIくんのプライベートもイメージ湧くし、時間軸が分かるからこそ偽ってないのも分かるし。一番リアルですよね。

REIJI:時間軸があることによって、描写が分かりやすいですよね。パートごとにリアルなTATSUKIが感じられて面白いなと思ったのと、ファルセットの出し方が、FlowBackの時と違うなって。意識しているのか分からないけど。

TATSUKI:歌い上げたくなくて、つぶやいてる、しゃべりかけてる感じがテーマになっているので、間違ってないと思いますね。僕もわざとやっているわけではないんですけど、自然に出るのかなって思います。

REIJI「空絵」

REIJI:人生初のソロ曲で何を届けたいかと考えた時に、令和に入ってから難しい曲が多いなと思って、あえてAメロ、Bメロ、サビ、大サビというシンプルな構成にしました。「Swing Babe」でも歌詞を書いてくれた人と一緒に作ったんですけど、令和版の歌謡曲を作ってくださいとお願いしました。「ムズすぎだろ」って一回突っ込まれましたけど。リファレンスには山口百恵さんの「さよならの向う側」を出してて。

ーーそれを聞くと納得しますね!

REIJI:キーワードは鳥とキャンバスで、僕は絵も描くのでその個性も世界観に入れてくださっています。自信がなかった過去の自分は、空を自由に飛ぶ鳥が羨ましくて、その対比があったり、サビでは僕も自由に飛んでいる鳥を描いたり、パートごとに心情が良くなっていく構成です。タイトルは完成した曲を流して聴いてから決めました。自信がなかった自分が翼を広げて飛んでいく様と、空に自分の想いを描くという2つを掛けて。絵を描く時も最後にタイトルを決めるんですよ。そこもリンクさせたかったというのがあります。

TATSUKI:これは今のREIJIだからこそ、本当の言葉で伝えられるんだと思いました。というのも、この数年間で彼自身が、自分との葛藤を乗り越えてきたのを側で見ていたので。僕はこう乗り越えた、とかではなくて、聴いた人が「自分も乗り越えよう」と思ってもらえるようにというメッセージを感じて。聴いてるとグッとくる楽曲ですね。

REIJI:嬉しいですね。

Swan.J:待ってたよって感じですね、この歌を。ソロ曲の話があった時に、僕の中でもしREIJIくんにお願いできるならこういう曲がいいなって思ってた曲が来たから。REIJIくんは本当に空みたいな人なので、天気と同じように、日によって感情の変化があるけど、それもひっくるめてREIJIくんだし。ラスサビにかけての壮大さもドラマチックだし、歌謡曲が軸になってるって知らなかったので、なるほどなと思いますね。

REIJI:(拝む仕草)

MASAHARU:FlowBackの曲ってループものが多いから、コード感の違った作り方が新鮮だなと思ったのと、何よりギターソロ飛ばされるこの時代に、堂々とギターソロを持ってくるところ(笑)。改めて音楽の楽しさを感じるし、何より気持ち良さそう。

Swan.J:ほんと気持ち良さそうに歌うよね!

REIJI:キーがちょうど良くて(笑)。


ーー今後イベントもたくさん行なっていくということで、『intersect』からまたどんな波及が生まれていくのか楽しみですね。

REIJI:僕たちだけでなく、聴いた人の気持ちまで交差するような広がりを見せてくれたらいいですね。楽しみにしています。

Swan.J:長く活動していると、1回遠くに行ってしまった人たちも「やっぱりFlowBackがホームだな」と言ってくれることも意外と多いので、戻って来れる場所が存在するのは大事だなと思いますね。

TATSUKI:今までFlowBackは人格だと思っていたんですけど、場所なのかなと思いました。その場所を僕たちは必死に繋いできたんだろうなって。今まで人格を上に上にって引き上げてきて、その思いがあったからこそ、今はFlowBackという場所ができて、明日に繋いでいけます。

Swan.J:FlowBackは場所だと思うことは僕も多くて、応援してくれる方がいるから僕たちも同じ場所にいられるし。仮に僕たちがFlowBackじゃなくなったとしても、FlowBackという音楽や場所は残り続けるから。今後自分たちが作っていく音楽にも深く根を張って、その場所に立っていたいと思います。

編集後記

FlowBackへの3度目のインタビューでした。

この日はイベント出演前のお忙しい時間の中での取材でしたが、いつものように気さくに応じてくれました。

2年ぶりとなるアルバム単位でのリリース。FlowBackの活動の中でもっとも濃い2年だったと語ってくれましたが、4人の人間性もそれ以上に育まれていったように思います。

お会いする度に魅力的な人になっていく4人に、ずっと取材を続けていけること、記事を書かせてもらえるのは、FlowBackという場所を守り続けてくれているからに他なりません。

365日FlowBackでいる4人の、貴重な1日に『intersect』のストーリーを共有してくださって嬉しいです。

きっと誰かの居場所になれるような『intersect』から、たくさんの光が伸びて交差する瞬間を何度でも見に行きたいです。

取材・文 / 長谷川 チエ

FlowBack公式サイト

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▼前回のインタビューはこちら

▼『Connect』ライブレポート(2020.2)




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!