世界に見つかってほしいBALLISTIK BOYZの圧倒的な主体性

Culture Cruiseには書きかけの記事が大量にあり、そのほとんどがおそらく永遠に未公開状態で終わります。上手くまとまらないとか、言葉が見つからないとか、理由はさまざまです。

その中でも、やっぱり完成させたくてずっと気になる記事というのが常にいくつか存在します。

今回もその類のもので、衝動的に書き始めてから、半年間寝かせてようやく目覚めた記事です。今回はBALLISTIK BOYZについて書きました。



BALLISTIK BOYZ「Animal」

ーー本当は何ヶ月も前にしたためていたこの記事は、出す時期を逃してしまい、ずっと下書き保存されていた。

書き始めたきっかけはこの曲だった。BALLISTIK BOYZが2021年2月にリリースした「Animal」。

なんっだこれは!! 革命が起きたと思った。BALLISTIK BOYZ、めちゃくちゃバランス良くなってる。テイスト的にも、今までとは違った手札を出してきた感のあるレイドバックなR&B。

レディー・ガガやケイティー・ペリーなどへの楽曲参加で知られるCory Enemyが、縁あってプロデュースをされたそうなのだが、とにかくトラックが優勝している。

質の高いプロデュースに対して、受け身に回らないヴォーカルも素晴らしく、チルだけどクリアで力強さもある。歌詞はけっこう大人な内容のようだ。

2019年5月のメジャーデビューから、リリース時点で2年弱にして、もうここに辿り着いたのかということが驚きだった。

しかし元々世界を見据えて活動されてきた彼らにとっては、この場所も通過点に過ぎないという感じがする。

MVはDVDとYouTubeに公開されているものとでは違うそうなのだが(間違っていたらごめんなさい)、YouTubeの方を拝見すると場面転換が一度もなく、何度か観るまでそのことに気付かなかった。

細かいカット割の工夫のみで、変化のない景色の中でも躍動感を演出している。30秒台でサビに入るコンパクトな曲構成とも合っているのかもしれない。

カメラワークと、メリハリのあるダンス、Lo-Fiな映像の質感、日常から洩れたようなライティングで、ここまでシンプルな素材がハイブリッドになるのかと感心しまくっている。

個人的には2021年のミュージックビデオ賞を贈りつけたいくらいだ。ちなみにCulture Cruiseで厳選している2021年プレイリストにも入っている。

BALLISTIK BOYZは、歌に特化した4人、ラップに特化した3人で構成されている。ヴォーカルとパフォーマーに分かれるのが特徴的なEXILE TRIBEの中で、全員がマイクを持つこと自体が珍しい。

彼らのライブはまだオンラインでしか拝見したことがないけれど、確かに全員がマイクを持ったまま踊る姿は新鮮で、それすらもアイデンティティに直結するというのはEXILE TRIBEならではだと言える。

一般的にはごく普通のことではあるが、「グループの見分けがつかない」という方はこの特徴だけでも覚えておくと何かがはかどるかもしれない。

「SUM BABY」

「Animal」を聴いて衝動的に書き始めた何ヶ月も前の下書きを、引っ張り出して再び書き始めたのにも理由があった。BALLISTIK BOYZは8月にシングル「SUM BABY」をリリースした。

そうは言ってもこんなに褒めちぎった「Animal」明けですからね。期待値めっちゃ上がってますし、どれだけの数の新譜チェックしてきてると思ってるんですか。はい、聴いてみましょう。

いや待っってくれ! めちゃくちゃ良いじゃん。こんなにスマートに夏を味方にする方々初めて見たんですけど。あれもこれも夏のせいにしていいらしい!

あとTikTokで踊ってるやつ、延々と、ていうか永遠に観ちゃうんですが。

BALLISTIK BOYZの楽曲は細かく分かれた歌割りが特徴的だが、「SUM BABY」でもその特徴が上手く生きている。

入れ替わり立ち替わりヴォーカルが変化しているのに、うるさい感じがまったくない。Mixの成果なのか、バラバラの声質が1つにつながっている感じがする。

何がどうなったらこんなにきれいにまとまるのか謎だけど、ぶつかり合うことのない7つの個性が、パフォーマンスになるとぴったりとシンクロする。あまりにも尊い。

プールサイド系MVはパリピっぽくなりがちだが、リゾート感に寄せて品良くまとまっているし、カメラ前でのポージングとか、一つ一つが上手いのに嫌味がない。

BALLISTIK BOYZの夏といえば「SUMMER HYPE」だったのが、1年で更新されてしまった。いや、もう1つの夏が訪れたというべきか。

さらに、このシングルの4曲目にカップリングとして収録されている「Chasin’」にも強く惹かれるものがあった。

「Chasin’」

ヴォーカルにはオートチューンがかかっているので、全体としては華やかに聴こえるのだが、サウンド自体は音数少なめで、印象的なギターのリフからループするようなトラックになっている。

同シングル収録のインストバージョンを聴くと分かりやすいのだが、「Chasin’」はトラックが激渋なのである。

これがBALLISTIK BOYZ流のサウンドによくまとまったな、っていうところが見事で、終始攻めの姿勢を感じるリリックも、この激渋トラックがしっかりとバランスを取っている。

BALLISTIK BOYZといえば、2019年はパーティーアンセム的な楽曲が目立っていたが、2020年頃からさらに多様性が出て進化を遂げてきたように感じていた。

方向性が定まってきたのか、BALLISTIK BOYZの持ち味であるラップが、シームレスに曲の中で溶け込み、7人の個性がきれいに出始めたような気がしていたのだ。

そこにきて「Chasin’」のような、今までとは違ったアプローチのトラックを当ててくると、ついにやりよったなという嬉しみが込み上げる。

「Animal」のカップリングの「HIGHWAY」もポジション的に近く、難しいとは思うが、イメージとかぶち壊してこういう曲をリードシングルにすることができたら、さらに面白くなるのではないかなと思う。

BALLISTIK BOYZの圧倒的な主体性

数多のダンスヴォーカルグループがいる中で、なぜBALLISTIK BOYZを取り上げたくなったのかを自分なりに考えてみると、ヴォーカルに圧倒的な主体性を感じる、という答えに行き着いた。

がちがちにディレクションされたヴォーカルというのは聴き手に伝わってしまう。と個人的には感じていて、地味にJ-POPの問題点でもあると思っている。

つまり、指示通りに歌った声というか、クオンタイズ(音ズレの補正)をされてて遊びがない、きれいに整いすぎた声というか。

キャリアを積んでいく中で、そういう時期もあるだろうし、あどけなさが作品に与える良い面もあるとは思っているのですが。

その点でBALLISTIK BOYZはヴォーカルに自信を感じるし、勘の良さがクオンタイズに負けない野性味みたいなものを帯びているのかもしれない。

もちろんグループなので整合性も保たれているのだけど、それでも自由に楽しむ心がしっかりとそこにあるように聴こえるので、健康的な心地良さを感じるのだと思う。


私のマイペースなライティングはどうしたって治らず、いつしか諦めてうまく付き合っていくようになった。

ゆえに、最後まで書き上げる気持ちを駆り立ててくれる音楽には、それだけで魅力とパワーがあるということが、今の自分にとって一つの目安になっている。

他のライターさんからすれば「どこを基準にしてるんだ」って感じだと思いますが、半年かけてでも書き上げたことに、答えがあると思っています。

音楽を楽しんで創作している人たちは、何か磁力のようなパワーを持っていて、人を自然と惹きつけるのかもしれない、などと感じるもう一つの晩夏でした。

文/長谷川 チエ


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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2016年、別業種からフリーライターとして独立。2017年にCulture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。カルチャーについて執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、別名義で小説や行動経済学についての書籍も出版。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!