やっぱり世界に見つかってほしいBALLISTIK BOYZ『PASS THE MIC』レビュー

今回は2度目のBALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE特集! 2021年11月リリースのアルバム『PASS THE MIC』についてレビューを書きました。




「All Around The World」

リクエスト企画として書き始めた今回の記事。しかしリクエストだろうと私は手加減しません。厳しく冷静に観ますよ。はいっ再生!

かっっこいぃぃ! 先生、革命って1年に2回起きても大丈夫ですか?「Animal」で起きた革命がもう更新されそうな勢いです。

耳に飛び込んできたAメロの低音とともに、明瞭なリリックが不明瞭なメロディにぶつかっているところが新しいと思った。こういうアプローチもあるのかと気付かされる。

内容は“足跡のない未来”を目指して国境を越えることを宣誓する、旗印のような曲になっている。

歌詞の意味から考えれば、今までのJ-POP、とりわけLDHグループではポジティブでパワフルな曲調が多かったと思う。曲の内容を、リスナーはメロディである程度嗅ぎ分けていたかもしれない。

しかしこの曲は、切なさを通り越して不穏なコードが下敷きになっている。

それでも、ひたむきな強さを切なく感じさせるのは7人のパフォーマンスによるところが大きく、高い表現力がなければ成立しない曲だと思った。

飾り立てることのないMVも素晴らしい。これだけ華のある七人衆、シンプルな映像が合っているし、メッセージもふつふつと確実に届いてくる。

個人的に工場夜景とか巨大建造物が大好きなので、この場所を舞台にしてくれたことにテンションが上がった。

今回はコレオグラファーの方にお願いしたという振り付けも、創造性があってとても良い。7人もちょうど良い温度感で丁寧に踊ってくれている。YouTubeにUPされている1人ずつバージョンの映像も全部拝見しました。

暗がりから始まるMVは全然Love, Dream, Happinessの色じゃない。しかし何事もそういうところに起源があるし、よりリアルにも感じさせてくれる。

そんな夜明け前みたいな新しさがあると感じた。そしてラストに向けて明るくなる空は、希望のように感じられるのが嬉しい。

地に足がついている。考え抜かれたクレバーなアルバムリード曲だと感じた。

アルバム『PASS THE MIC』

そんな「All Around The World」で始まるアルバム『PASS THE MIC』は、全18曲の充実した内容になっている。

  1. All Around The World
  2. Day Dreaming
  3. Animal
  4. In My Eyes
  5. SUMMER HYPE
  6. 44RAIDERS
  7. Strangers
  8. Most Wanted
  9. Chasin’
  10. ANTI-HERO’S
  11. Bang Out
  12. Life Is Party
  13. HIGHWAY
  14. Front Burner
  15. Blow Off Steam
  16. SUM BABY
  17. WAY TO THE GLORY (BALLISTIK BOYZ ver.)
  18. HANDS UP

タイトルは、HIPHOPではよく耳にする言い回し。

曲も有名なのがいくつかあったよなと見返していたら、昔Da Youngsta’sという少年ラッパーのユニットがあって、あまりヒットはしていないと思うけど「Pass da Mic」という曲がかっこよかった。

ゴリゴリの90’s HIPHOPを分かってくれる方に向けて、一応Spotifyリンクを貼ります。

「マイクをよこせ」みたいな少し強引な意味合いで今まで解釈していたのだが、BALLISTIK BOYZの『PASS THE MIC』はもう少しマイルドで、繋がりを意味するようなニュアンスとして受け取った。グループの趣旨にも合っていて良いタイトルだと思う。

彼らは2019年5月の1stアルバムでデビューをされたので、そこから約2年半を駆け上がり、今回の2ndアルバムでここまでの成長度を見せた。

その早熟さを特に感じるのは「All Around The World」から「In My Eyes」までの前半4曲あたりで、彼らの魅力と実力が今まで以上に引き出されたように思う。個人的にはこういうR&B調の楽曲を引き続き楽しみにしたい。

前回の記事でも取り上げた「Chasin’」はアルバムになるとより曲の個性が際立つ。

確かな歌唱力で聴かせる「Strangers」、パワーフレーズでも“圧倒的な主体性”を見せる「Most Wanted」、海外のHIPHOPサウンドを日本流に落とし込んだような「HIGHWAY」「Blow Off Steam」などの試みも面白い。

後半はもう少し箸休めがあっても良かったかとも思うが、失速しないパワーを感じられる。

この18曲の中だけでも、BALLISTIK BOYZの挑戦と変遷が分かる1枚になったのではないだろうか。

2ndアルバムにしてベストアルバムのようなボリュームに仕上がっている。




「In My Eyes」

この記事をどのように書こうかと、手書きノートにブレストしていたある日の深夜。何か手がかりになるかもしれないと、タイムフリーでBALLISTIK BOYZのラジオ番組を聴いてみた。

そこで流れてきた「In My Eyes」で手が止まり、Aメロの砂田さんのヴォーカルに導かれるように音量を上げた。

「あぁこの感情を記事にすべきだ」と思った。

リリース当初、いい曲だなとは思ったものの、その時は引っ掛からなかったのです。でもラジオで流してくれたおかげで「待てよこれめちゃくちゃ良いんじゃないか?」と改めてしっかり聴き直すことができた。

なぜ素通りしてしまったのか。直前の「Animal」に気を取られてしまったのか? 長谷川。サブスクで新譜をチェックする時の自分の聴き方を反省したい。

能動的に試聴する時と、ラジオで受動的に聴く時とでは、印象が変わるのは当然かもしれない。朝と夜でも違うし、昨日の自分と今日の自分が同じとも限らない。

BALLISTIK BOYZならではの自由な歌割りで、伸びやかに響くシンプルなミッドバラード。

その日から繰り返し聴いて「なぜ良いと思ったのか」の理由をいくつも考え、時にはノートにメモした。

おかげで終盤の「In my eyes, In my eyes」のコーラスがくると「終わろうとしてる! 行かないで!」と追いかけるのが毎回のルーティンになった。

リピートすればいいじゃんとか冷たい目で言わないでくださいねそういうことではないのです。

加納さんのヴォーカルを中心に、特に後半部分、メンバーがフェイクのような形で次々にコーラスとして重なる。それぞれが自分の表現力を信じるような歌声が、豊かに響いてくる。

前回の記事でも書いたように、これだけマイクが渡されていくのに、まるで一つにつながるような美しさや一体感までも感じられる。どの教科を勉強すればこの謎は解けるのでしょうか。

この曲を良いと思った理由をメモした中で、一番素敵だと思ったことをここに書き写しておくことにする。

誰がどの場所に立っていても、たった数秒の1フレーズでも輝かせることができるのが、BBZの素晴らしい魅力

すでに何となく考えていた構成はあったけれど、一瞬の感情やひらめきを信じることにしている。それまでの構成案を吹き飛ばすほどの素晴らしい曲として、「In My Eyes」は私の心に刻まれた。

世界に見つかるBALLISTIK BOYZ

「世界に行けることなら行きたい」と思うアーティストは多いかもしれないけれど、BALLISTIK BOYZはブレずにそれを掲げている。

「行けるなら行きたい」のと「最初から行こうとしている」のでは、きっと大きな違いがある。

日本のアーティストが世界で活躍することで、我々が困ることなど一つもない、むしろありがたいくらいなのだから、私は断然後者を応援したい。

「まずは日本から」などと思わず、いきなり世界を目指しても良いと個人的には思う。世界は純粋に音楽で評価をするので、2021年のような選曲を重ねていけば、彼らにとっては日本よりもブルーオーシャンだと考えることもできる。

BALLISTIK BOYZのファンの方々は、一部の熱心な人たちが布教活動しているとかではなくて、日本のファン、海外のファンが一体となって、世界を目指すという認識を当初から持っている。

そうするとファンどうしも争っている場合ではなくなるので治安も良くなる。目標を高く明確に掲げることは、人が同じ方向を見るようになるので、実はとてもファンに優しいことなのではないかと思った。

今回この記事がリクエストで書かれたものだと強調しているのは、そんな方々の熱意が私を動かして記事を書かせてくれたことを伝えたかったからです。

こんな何者でもない私に声をかけてくださって、なんて素直で純粋な方々なのでしょうか。幸せになってほしいです。熱意のこもったメッセージをありがとうございました。

変わるはずのなかった明日も、こうやって少しずつ変わっていくのだと思った。

この先は第二章として、より世界を見据えて活動するというBALLISTIK BOYZを楽しみにしたい。

刺激を受けながら、私も“足跡のない未来” を目指したいと思う。

文 / 長谷川 チエ


▼前回の記事はこちら

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!