【「PAINT」レビュー】I Don’t Like Mondays.が時代を迎えに行く時

I Don’t Like Mondays.が2022年1月9日にリリースした「PAINT」のレビューを書いていたら、アルバムを振り返る流れになりました。




時代がI Don’t Like Mondays.に追いつく時

2017年にこのサイトで音楽カテゴリーを作ってから、I Don’t Like Mondays.のことは書こうと決めていたのだが、どのように書くか悩んでいた。

なかなかうまくいかず、少しずつ進めていた下書きを形にしたのが、

時代がI Don’t Like Mondays.に追いつく時

という記事の前編と後編だった。読み返すと全然前後していないし、テンションのおかしな拙文で恥ずかしいのだが、「時代よ追いついてくれ」という気持ちを込めて書いた。

それ以降もライブレポートやインタビューを書かせていただける奇跡が起きたりしたが、2020年2月以来、I Don’t Like Mondays.の記事を書いていなかった。

その間も曲は聴いていたしライブにも行っていたのだが、記事の中ではどのように向き合えば良いのか、分からなくなってしまっていた。向き合うというか一方的な話なのだけれど。

インタビューの帰り道、未熟な自分への不甲斐なさに涙が止まらなかった。その残像が蘇る。悔しさを思い出してしまうので、遠ざかりたかったのだと思う。

もちろんすべて自分の問題で、温かく迎えてくださったMondaysさんは一切関係ない。私が1人で勝手にこじらせているだけなのだ。

それでもI Don’t Like Mondays.の音楽は鳴り続け(AIも勧めてくる)、聴こえてくると聴いてしまう(やっぱり好き)。

そんな中リリースされた「PAINT」。2年の空白を埋められるか分からないが「書けるところまで書いてみよう」と思わせる引力があった。

I Don’t Like Mondays. – PAINT

TVアニメ『ONE PIECE』のOPテーマとなった「PAINT」。映画はいくつか観たのにマンガは3巻で挫折した私が、こんなに熱い気持ちで『ONE PIECE』と対面する日が来るとは思わなかった。

「PAINT↑」と発音するのかと思ったら、ご本人たちは「PAINT↓」とAにアクセントをつけて発音されていた。すでにかっこいい。

本編で聴いて胸が熱くなった。Mondaysの楽曲としてはいつも以上にポジティブな爽快感があるが、『ONE PIECE』ファンからすると「いつもより落ち着いていて良い」となるようだ。

放送後に解禁されたMVは、このバンド史上初とも言えるほど真っ直ぐで、眺めていたら涙があふれた。

パワーを持つ曲というのは成り行きでできるものではなく、どんなに強力なタイアップやタイミングがあっても、曲の力がなければどうにもならない。バンドの潮目を変えるほどの強いパワーが宿っているような気がした。

しかし聴けば聴くほどシンプルではある。I Don’t Like Mondays.の音楽性としては、いつもよりポップスの要素をより多く取り込み、それをトップラインとしてロックのレイヤーの上に重ねた、という感じだろうか。

アウトロはアニメに合わせて作られた構成だと思うけれど、CHOJIさんのギターがバンドと『ONE PIECE』をつないでくれているかのように効いている。

「ギターソロを入れるかどうかでよく押し問答になる」エピソードが私は大好きなのだが、この曲でこそ際立っている。アニメのテーマにギターの明るい音が与える印象は強いと思うので、素晴らしくマッチしたフレーズだと思う。

ドラムはひときわシンプルながら疾走感を生み、ベースはセクションごとに色の違いを示してくれる。落ちサビ後半からぐいっと入ってくるベースラインを確認するのが趣味。

あえて分かりやすくメッセージが伝わるサウンドを選択した彼らの、リスペクトや優しさが音になったようにも感じられる。

これまでは、先を行くMondaysの音楽をたどって歩く感覚だったけれど、この曲では彼らが歩み寄るような、迎えに来てくれたような気がした。音楽に迎えに来てもらったのは初めてだ。

I Don’t Like Mondays.を形容する時に必ずと言っていいほど耳にする「おしゃれで洗練されたバンド」という姿の裏で、時折見せる闘志のような熱や、バンドのつながりを感じさせる曲。

「On my way」や「DIAMOND」などを彷彿とさせる。

思えば私たちリスナーはこうした楽曲を介して、彼らの意志や目指す方向を確認するかのように、くみ取っていたような気がする。そこにまた1曲加わったような。

とはいえ、知ったつもりでいた自分も「Mondaysにもこんな一面があったんだな」と気づく。あるいは、ここで新たに手にした表現力なのかもしれない。

つまりこの曲をきっかけに知った人も、今まで応援してきたファンも、ここからはじまるI Don’t Like Mondays.をいっせいに好きになれるような曲なのだと思った。

この曲を携えた彼らのライブは、今まで以上に結束力のようなものが生まれるのではないか、風穴を開けてくれる予感さえする。

I Don’t Like Mondays.のアルバム

「PAINT」などをきっかけに最近I Don’t Like Mondays.を知ったというリスナーには、ぜひ過去曲も聴いてほしいのでまた勝手に押し付けたい。

たくさんの実験的な曲を経て「PAINT」にたどり着いたことを、遡って知ればきっと感動すると思うので。

曲単体では過去の記事をご覧いただくとして、今回はアルバムをピックアップしようと思う。

『Black Humor』(2021)

執筆現在では一番最新のアルバムなので、ここから聴くといいよ! と思ったけどこの時点で「PAINT」とは随分違っていた。つまりそれがMondaysの魅力なのだと叫びたい!「PAINT」から一番遠そうな曲を取り上げてみる。

このアルバムはそれまでと比べて、たくさんの感情が詰まっているように感じる。歌詞の世界観だけでなく、音としての感情表現も広がった気がしている。

『FUTURE』(2019)

オフィシャルインタビューからの番外編という形ではありますが、『FUTURE』の記事はこちらにもあります▼

I Don’t Like Mondays.がCulture Cruiseにやってきた!『FUTURE』インタビュー

「AITAI」のお話を伺った時、アルファベット表記ながら、初めて日本語のタイトルが誕生したことを話題にしたら「これで表記も日本語だったらヤバいよね」と全員で笑ったことを曲を聴く度に思い出す。

しかしその後、堰を切ったように日本語表記のタイトル曲を容赦なくリリースし続ける。YUさんの中できっと変化があったのだと思うけれど、その判断もMondaysらしいと思ってしまう。

こだわりがあるようなないような、風に吹かれてそうな一面もこのバンドの魅力だ。闘志とか書いておいてあれだけど、何なら私はそこが一番好きかもしれない。

『FASHION』(2016)

音楽もファッションも同じく表現することであり、音楽はファッションの一つなのだと教えてもらえる。アートワークは飾れるものにしたいと仰っていた言葉も印象的だった。

ライブの時の着こなしがおしゃれなところとか、全部ひっくるめてやっぱりこのバンドが好きだなぁと思う。

『TOKYO』(2015)

この時期、日本でも打ち込みを取り入れて生音と合わせるバンドが増えていた。I Don’t Like Mondays.は、その頃から群を抜いてサウンドセンスを放っていた。

それを象徴するようなアルバムで、打ち込みに振り切った「FINAL DESTINATION」など、今聴いても攻めの姿勢が感じられる。




「TONIGHT」

「もしもI Don’t Like Mondays.を知らない人に1曲だけ紹介できるとしたらこの曲を選ぶ」と以前の記事で豪語していたので、この曲で最後を締めくくることにする。

コロナの影響でライブが中止や延期に追い込まれた時期も、個人的には寂しさやストレスを感じなかったのだが、このバンドのこの曲をライブで体感できないことだけは、口惜しさを払拭できずにいた。それくらい何物にも替えがたい尊さがある。

最近のライブでは「LEMONADE」から「TONIGHT」の落ちサビに流れるのも最高で、少しだけ長く聴けるのが嬉しかったりする。「しれっともう1回やってくれないかな」と毎回思う。

コロナ禍で事態が深刻になればなるほど、この曲への恋しさが複雑に増していった。あのドキドキする高揚感だけは、家で聴いていても味わうことができないから。

I Don’t Like Mondays.のライブに初めて行く方は、「TONIGHT」を覚えておけばもっと楽しめると思う。そしてサビと間奏はみんなで飛ぶよ(飛ばなくても大丈夫だよ)!!!


自信がなくて下書きの状態だったI Don’t Like Mondays.の記事を、初めて公開しようと思えたのは彼らのライブで背中を押されたからだった。

今回も、I Don’t Like Mondays.のことを書けなくなっていた自分を、I Don’t Like Mondays.に後押しされた。一体何をやっているんでしょうか私は。どんだけ好きなんだよと自分でも思っている。

時代よ追いつけと強く願っていたが、彼らが時代を迎えに行った。「PAINT」はそんな曲だった。そんなことまでできるのIDLMs.!!!

I Don’t Like Mondays.は私とCulture Cruiseにとっての羅針盤みたいだ。またしても止まらなくなった涙はいっそ引き連れて、自分だけの地図のアクセントにしようと誓った。

文 / 長谷川 チエ

▼I Don’t Like Mondays. インタビュー

▼全国ツアーライブレポート

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!