【Doul特集 Vol.2 ライブレポート】『A LONE WOLFツアー』Doulがくれた長い夜

Doul特集Vol. 2は『A LONE WOLF – IF YOU CAN DREAM IT THEN YOU CAN BE IT.-』東京公演のライブレポートをお届けします。

筆者の主観(というか一方的な愛)も多分に含まれておりますが、インタビューの言葉も交え、現地と配信で観た2つの視点で綴ります。

Vol.1 インタビューはこちら




Doul初のワンマンツアー

2022年3月25日。Doul初のワンマンツアー、東京公演が代官山UNITで行われた。

アルバム『W.O.L.F』のオープニングトラック「The wolf is at my back」が流れ、会場内が暗転する。

“WOLF”の映像とともにバンドメンバーのWhee(G)、Tosh(B)、Lew(Dr)とDoulが登場。

「We Will Drive Next」の歌い出しで目を閉じていたDoulは、その目を開いた瞬間、少しだけ会場を見渡した。

「リハーサルでは、観客がいることを想定せずに歌う」

先日のインタビューでそう語っていたことを思い出した。

アルバムのリードトラック「Super Hero」。この曲のメッセージは、まさに今回のツアーにぴったりだった。

「声が出せないとかいろいろあるけど、手拍子もジャンプもできるし、暴れて帰ってください」という短いMCからの「BYE HOUSE」。

配信ではギターを爪弾くDoulを、下から切り込んでいく画角がかっこいい。

オリジナルよりも長めに用意された「Howl」のイントロで手拍子を促し、ハンドマイクに切り替えたDoulが観客とグルーヴを共有する。

泳ぐように歌うDoulの奔放さが伝染し、明らかに会場のノリが変わるのが分かった。この楽曲がいかに愛されているのかも伝わる。

ここでDJ Allen Mockが登場、会場の雰囲気はさらに一変する。ライブハウスがクラブに入れ変わる瞬間を目撃したような感覚。

Allen MockのDJプレイから、Doulのフリースタイルへと流れる。

余韻を残したまま、青白いライティングとともに「Bone」のヘヴィな世界観を一手に引き受けるDoul。

インタビューでは、アルバムの中でこの曲をなじませるために、インタールード「I’m in the zone」を入れたと話していたが、ここではあえて突如放たれる衝撃が、体中に心地よく響いた。

Allen Mockが今回のためにRemixした2020年のシングル「Don’t」では、観客が一斉にジャンプする。アルバム未収録のこの曲がこんな形で聴けるとは思わなかったので、個人的に激熱だった。

1人残らずノリノリな空気の中、大胆にも「bye!」とステージからはけていくDoul。観客の視線は一気にDJブースに集中し、“Doulのいない3分間”がAllen Mockのオンステージに託される。

幾何学的かつアーティスティックな映像がAllen Mockとサウンドに透過するように重なり、このクリエイティブな空間演出も見事だった。




サプライズゲストも登場

変わって、Doulが好きなことをするセクション「D’s room」に。サプライズゲストとして、Doulの盟友であり、ビートボックス世界チャンピオンのSO-SOが登場。

ライダースに身を包んだ全身ブラックのDoulと、何色身に纏ってるか数えられないカラフルなSO-SOという並び。ファンにとってはもはや愛おしい光景のようにも思える。

SO-SO「今日のお客様はノリがよくてやりやすいです」

Doul「Doulのファンだもんね。DOOBROですよね」

と会場を歓喜させ、「Bada Bing Bada Boom feat. Zag SO-SO REMIX」のSO-SO REMIXを披露。

もはやどれが同期でどれがSO-SOの発する音なのか見失いそうだが、重ねられたクリエイティブが素晴らしいのでとりあえず踊る。

さらに、SO-SOが2022年2月22日22時22分にリリースした新曲「2022」にDoulもラップで参加するという、一夜限りの贅沢なコラボも実現。

短時間でフロアを沸かせるSO-SOのパフォーマンスはさすがだった。

ハイブリッドな音楽性で魅せる後半

ここから雰囲気をガラリと変え、Doulがゆっくりと話し始める。

「デビューして、ずーっとカメラの前でしか歌えない、大きな所でやってもお客さんがいない」(コロナ禍の)状況が続いたと吐露するも、「自分のファンだけが集まる空間で、こんな幸せなことあるのかなって思う」と、感謝を言葉にして伝えた。

そしてピアノの弾き語りで聴かせる「What’s missing」は、毎回泣いてしまうと告げながら、ゆったりと歌い上げる。

アルバムでトライしたことをインタビューで伺った時、「歌えることを証明したかった」とこの曲を迷わず挙げてくれたことを思い出して、胸が熱くなった。

これからは、その歌声で多くの人を魅了し続けてほしい。そう願いながら見つめた。

(360 Reality Audioが使用されたこの映像が本当に素敵なので絶対観てください! 曲は1:30くらいから)

さらに、アコギでカントリー調に聴かせる「Insane Boy」から、マイク1本でアンビエントな雰囲気にいざなう「Heart is Breaking」、バンド+DJスタイルの「Bada Bing Bada Boom」(SO-SO REMIXもぶち込む)まで、一体いくつ引き出しがあるのかと思うほど多彩に夜を染めていく。

七変化するステージを観て、「1回のライブで満足できるハイブリッドなDoulが観られる」と語ってくれたことを何度も思い返した。

サウンドだけでなく、ステージがどのように映るかまでを瞬時にデザインできるプロデュース力も、Doulの大きな魅力ではないだろうか。

過ぎていく時間を惜しみつつ、終盤になっても「The Time Has Come」「My Mr.Right」など名曲は尽きない。

その強靭な音楽性に改めて気づかされるとともに、コロナ禍でも負けずに楽曲制作を重ねてきたDoulに、心からの拍手を送りたくなった。

この日の開演は18:30。「こんな早い時間でライブが終わるなんて悲しいんですけど、最後は好きな感情で、Doulをもっと好きになって帰ってください」と微笑む。

最後に、この1stツアーを「一生忘れない」と心強いメッセージを添え、鍵盤の一つひとつに想いを込めるように、大切に歌われる「Free」。

そしてギターを抱えフロントに立つと、1サビから一気にロックなバンドサウンドに。Doulの音楽の原風景はやはりここだと思わされるラストだった。

拍手で迎えられたアンコールでは、自身がプリントされたラグランTを着たDoulが登場(めちゃかわいいめちゃ似合う)。

「音楽を好きな人たちが、年代性別、何にも関係なく楽しめるライブがDoulの望んでること」

「日本を飛び出したりもすると思うけど、たまに帰ってきてみんなと音楽を楽しむ空間を絶対につくるんで。今ここで約束するんで」と頼もしい表情を見せてくれた。

過去を回顧するようで、未来を見据えるようにも感じられた「16yrs」は、今までで一番希望のつまった音がした。

そしてDoul初のワンマンツアー、東京公演は幕を閉じた。

Doulがくれた長い夜

今回のライブで印象的だったのは、フィジカルに訴えかける力強さだった。

コロナ禍のデビューだったからこそ、そのパワーを肌で感じさせてくれた感動も、期待以上に証明してくれたことも、喜びとともに大きく讃えたくなったのだと思う。

観客は遅れてきたその機会を逃すまいと、しかと受け止めているようにも感じられた。

また、配信も行われたこの公演では、映像を意識したパフォーマンスやMCも印象的だった。

それは作為的なものではなく、Doul自身が発した音や言葉が、まるで空間に溶け出していくようで美しかった。

「MCで話すことは考えていない」「本番を大切にする」とインタビューで話してくれたことも、本当にそうなのだろうと思った。

Doulが用意してくれたのは、誰もが自由に音楽を楽しめる空間。とてもシンプルなものだったのだと。

正直なところ、Doulが最高のパフォーマンスを見せてくれる分だけ、果たしてこのライブをテキストで表現できるだろうかと怖気づいた。何とかして逃げられないかと考えた(ごめんなさい)。

しかし私はレポートを書くことを、Doulさんと約束したのだ。私が勝手に言っただけだけど。

ツアーのタイトル「IF YOU CAN DREAM IT THEN YOU CAN BE IT」を、心の中で何度もなぞった帰り道。Doulがステージでみんなに約束してくれたように、書くからにはちゃんと未来につなげたい。

Doulがくれたその日の夜は、いつもより少しだけ長かったから、私はその夜をたどって書き始めることができた。

「See you next song!」の言葉を置いてステージを後にしたDoulの背中を思い出す。

ここからが始まりなのだと確信しながら、今この記事を書いている。

文 / 長谷川 チエ

A LONE WOLF – IF YOU CAN DREAM IT THEN YOU CAN BE IT.-』セットリスト

  1. The wolf is at my back
  2. We Will Drive Next
  3. Super Hero
  4. Bye House
  5. Howl
  6. Bone
  7. DON’T
  8. Bada Bing Bada Boom feat. Zag SO-SO REMIX
  9. 2022(SO-SO)
  10. What’s missing
  11. Insane Boy
  12. Dearest Friends
  13. Heart is Breaking
  14. Bada Bing Bada Boom feat. Zag
  15. From The Bottom
  16. The Time Has Come
  17. My Mr.Right
  18. On My Way
  19. Free

アンコール:16yrs

▼Doul特集 Vol.1 インタビュー

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!