【ライブレポート】ブルーノ・マーズ来日公演『Bruno Mars Japan Tour 2022』

東京ドーム

ブルーノ・マーズのライブ『Bruno Mars Japan Tour 2022』の10月26日・東京公演について書きました。


4年半ぶりの来日

ブルーノ・マーズの来日公演が発表された日から、4年前の2018年に書いたライブレポートがすごい勢いでアクセスされ始めた。追加公演が終わった執筆現在も、まだ読んでいただいている。

「24K MAGICワールドツアー2018」セットリスト編
「24K MAGICワールドツアー2018」感想編

私のレポートが皆さんにとってどんな風に役立っているのか、そもそも本当に役立っているのかはわからないですが、とにかくありがたいです。

そのレポートの中で私はこう綴っていた。

自分は“文章でしか” 伝えられないと思っていたけれど、ブルーノだって、“歌だけで” 想いを伝えてくれた。それ以外に、彼が何か特別なことをしただろうか? そう自分に問いかけました。

次にまたどこかでブルーノのライブを観られるとするならば、それまで自分は自分の道をひたすら進んで行こうと、前向きにさせてくれる時間でした。

こういうことを言うから、また次も書かないとと焦るのだ。

自分を奮い立たせる意味合いが大きいのだけど、まさかその時が2022年に訪れてくれるとは思わず、この4年半に起こったことを急ぎ足で振り返っていた。

来日の発表から公演日までは1ヶ月ちょっとしかなかったので、ライブ当日はあっという間にやってきた。

『Bruno Mars Japan Tour 2022』

大阪2公演を終え、東京公演の初日となった2022年10月26日。東京ドーム。

華々しく登場するブルーノ・マーズとザ・フーリガンズ。「Moonshine」でスタートしたのは意外だった。

コロナ禍を経て、みんな何かを発散したかったのかもしれない。誰もが、周りのことなんて気にせず、自分とブルーノの世界を楽しんでいるように見えた。自由で居心地がよかった。

「24K Magic」からとにかく特効の数がすごい。ここが東京ドームであることを時に実感させられ、時に忘れさせられる演出とパフォーマンス。

ライブハウスのように近づく心の距離と、ドーム空間を生かした壮観さが交互に押し寄せてくるような感覚だった。

みんなで熱唱する「Treasure」、ブルーノとフーリガンズの掛け合いがこの世のものと思えない「Perm」は生演奏が神の域だった。フェイク上手すぎ、ライブ音源リリースした方がいいんじゃないか。

ブルーノは前回も日本語をけっこう話してくれたけど、今回も「かわいい」とか「愛してます」とか言ってくれていた。やっぱりブルーノの日本語はかわいかった。

ブルーノとフーリガンズのパフォーマンスは息もぴったりで、まるでミュージカルのようにも見えてくる。

それでいて各々が持つグルーヴは個性豊かで、バチバチに振り付けが用意されているわけでもない。これをどのようにリハーサルですり合わせているのだろうかと疑問に思う。

そして、フーリガンズもブルーノに負けないくらい進化していた。

生演奏の迫力。曲のつなぎがとても興奮したし、心を重ねるようなコーラスやダンス、そのすべてが素晴らしかった。

全楽器がそうだけど、特にベースを弾きながらあのダンスを踊るのは尋常ではないと思う。

前回は骨折などもあり、来日できなかったフィリップ・ローレンスが来てくれたことも嬉しかった。

ディレイの激しいドーム規模でも、あれだけリズミカルにグルーヴ感を出せるのは一体どうなっているのか、もうわけがわからなかった「Chunky」。

マテウス・アサトによるギターソロのオンステージも圧巻だった。そこから流れるように始まる「Versace On The Floor」。

この曲に繋がっていくのではと徐々に予感させていったギターソロは、より一層美しさを纏っていた。

もうこのあたりから、私はいよいよライブレポートを書くことを断念し始めていた。目の前に広がる天国みたいな空間を、どのように言葉にすればいいのか見失ってしまったのだ。

だんだん諦め始めるライブレポート

「Versace On The Floor」は前回の来日公演でも印象的だった。紫色のライトに情感あふれる演出で、みんなのスマホのライトで照らされた客席は、星空のようにキラキラしていた。

今回はフルではなかったし、歌い上げつつも気取らずラフな感じというか(これがまたすごい)、前回とは違う空気感だったのだけれど、やはりみんなスマホのライトをつけていてきれいだったし、誰にとっても特別という空気が流れていた。

音源で聴くこの曲ももちろん信じられないくらい好きだけど、ライブで聴く「Versace On The Floor」はその時だけのもので、動画に撮っていたとしてもそれはまた別の感情にすり替わってしまう(今回も撮影OKでした)。

「その場にいた者だけが味わえる感覚」。ブルーノのライブはずっとそういう時間が流れているので、そこにまた特別な感情や思い出を与えるのかもしれない。

しかしこれはライブレポートを書く身として最も無責任な言葉だし、言った時点で終了してしまう。でも言ってしまった。そしてこの日何度もそう思ったのも事実だった。

それでも書いているのは、4年前の自分をがっかりさせたくなかったからだ。

何より、行けなかった方々に伝えたくてライブレポを書いてきたのだから、本当はこんな時こそ書かなければ意味はないのだ。

読み手からすればそんな事情はどうでもいいと思うのですが、いつもこんな風にして、書けるのか書けないのか? 自問自答を繰り返しながら記事を制作しています。4年経っても変わっていないようです。

ブルーノさんの弾き語りコーナー

家宝になりそうな「Marry You」、大盛り上がりの「Runaway baby」を経て、ぶるーのさんの弾き語りコーナー開幕! 私が勝手に名付けただけです。

前回の来日公演に比べると、セクションがはっきり分かれていたような気がする。

ゲーム形式で、ブルーノが歌った後に観客が続きを歌えればポイントゲット。これは他の日もやったのでしょうか?

あっさり「2points Tokyo!」と2連続ポイント進呈してくれる優しいぶるーのさん。2点で終了。

ぶるーのさんのピアノに合わせて歌を歌えるなんて、世界中の幼稚園を探し回っても見つからない。

さらに、ブルーノが楽曲提供した嵐の「Whenever You Call」を弾き語りで歌ってくれた! 私は興奮しながら、あまり状況をわかっていなかった同行者に説明した記憶がある。

ちなみにこの現象によって、以前書いた「Whenever You Call」のレビュー記事のアクセスが飛躍的に伸びた。

ブルーノ・マーズ制作「Whenever You Call」を聴いて嵐に送るメッセージ

とてもありがたいし、ブルーノ効果がすごすぎる。

そしてブルーノとアンダーソン・パークによるユニットSilk Sonicの「Leave the Door Open」なども弾き語るブルーノ。きっと歌ってくれると信じてたので嬉しかった。

ちなみにこの曲の作詞作曲に携わっているD’Mileは嵐の「Whenever You Call」も制作されているプロデューサーです。めちゃくちゃいい曲作りますよね。

「Just the Way You Are」は生演奏が特に素晴らしくて、ドーム内に響くシンガロングは雲の上にいるのではないかと思った。

ブルーノやフーリガンズのグルーヴがドーム中を包み込んで、メロウに浸りつつ高揚して盛り上がるという、これまでの自分の人生になかった感情がこの日生まれた。

最後のメンバー紹介はアミューズメントパークのショーみたいだった。軽快でめちゃくちゃ上手い。

そして油断する観客を急き立てるかのように、パワフルに登場したアンコールの「Uptown Funk」。体感30秒くらいで幻のように過ぎていった。

届ける力が進化したブルーノさん

ブルーノ・マーズのライブは、規模もパフォーマンスもよりパワフルになっていたけれど、ドーム公演でよく例えられる、豆粒(米粒?)だとも思わなかった。

決して私の席はステージから近くなかったが、心に届く距離は短くなった気がした。

ブルーノの届ける力が進化したのだと思う。届ける力のない私は心底羨ましいし、その点で何か少しでも自分のインプットになっていてくれたらと願う。

まずは、この日のブルーノみたいに、気取らず飾らずありのままを書いてみた。

あっという間に過ぎてしまった魔法のような時間。あまりにも終わってほしくなさすぎて、拍手したくないと思ってしまうほど素敵な時間だった。もちろん手が痛くなるくらい拍手したけど。

この場にいた誰もが、きっとこの日のために頑張れたし、明日からもまた頑張ろうって思えたと思う。

これが音楽の素晴らしさだ。誰かの日常が華やいで、笑顔の数が増える。

やはりブルーノは特別なことなど何もしていなかった。

だから私も「その場にいた者だけが味わえる感覚」を、ただひたすら文章にしていこうと決意した。

文 / 長谷川 チエ

『Bruno Mars Japan Tour 2022』東京公演Day1セットリスト

01. Moonshine
02. 24K Magic
03. Finesse
04. Treasure
05. Perm
06. Billionaire
07. Chunky
08. That’s What I Like
09. Wake Up in the Sky〜Please Me
10. Versace On the Floor
11. Marry You
12. Runaway baby
13. ピアノ弾き語り
・F**k You – CeeLo Green
・Young, Wild and Free ft. Bruno Mars
・上を向いて歩こう – 坂本九
・Whenever You Call – 嵐
・Talking to the Moon
・Nothin’ On You
・Leave the Door Open
14. When I Was Your Man
15. Grenade
16. Locked Out of Heaven
17. Just the Way You Are
– アンコール –
18. Uptown Funk


▼2018年の来日公演ライブレポはこちら

▼嵐「Whenever You Call」レビュー

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!