【2023年上半期】Culture Cruiseのライターが選ぶ邦楽アルバム6枚

2023年1月〜6月にリリースされた邦楽アルバムの中から、個人的によかった6枚をピックアップしました。この中でランキングになっているわけではありません。

人間の感情はピークエンドに偏りがちなので、上半期よりも下半期にリリースされた作品の方が印象に残りやすい特徴があります。

だから上半期のリリースを忘れずにいよう! ということで自分への備忘録も兼ねているため、上半期だけに実施している企画です。

w-inds.『Beyond』

w-inds.の15枚目のアルバム『Beyond』。

このアルバムの素晴らしさについては以前レビューでも取り上げました。

w-inds.のアルバム『Beyond』は隙のないクオリティで満たされた傑作だった

過去のw-inds.楽曲を数々手がけてきたクリエイター陣による制作と、橘慶太さんによるセルフプロデュースが上手くミックスされています。

ダンスヴォーカルのトレンドがどのように変化しても、武器を変えずに勝負できるのがw-inds.の最大の武器とでもいうべきか。

でもご本人は武器とか勝負とか思ってなさそう、もっと広い視野でシーンを見ているのだろうと気付かされる1枚。

NOA『NO.A』

Culture Cruiseでもリリースインタビューをした、NOAさんの1stアルバム。

【NOAインタビュー】アルバム『NO.A』で魅せるアップグレードした表現力

ドラマ『君の花になる』への出演、8LOOMとしての活動を経てのリリースで、それがなければまた違う切り口の制作になっていたのではないかという気がしました。

ご自身の音楽性を貫かれているところはきっと変わらないけれど、アプローチの幅広さを感じる全14曲。

その44分の中から、NOAさんという人物像が浮かんでくるようで、文字通り名刺代わりのような1枚に。

ソロアーティストならではのアルバムの楽しみ方ができ、同じくソロアーティストのAyumu Imazuさんをフィーチャーした「Just Feel It」も象徴的です。

chilldspot『ポートレイト』

chilldspotはアルバム作りがとても上手い。曲の名付け方も絶妙なので並ぶとすごくいい。

それぞれの楽曲に関連性はなくても、聴いているうちにどんどん馴染んでいって、継ぎ目がなめらかになるような。

前作『ingredients』も素晴らしかったのですが、さらに表現力に立体感と厚みが増したように思います。

流れで聴いてみると、2022年にシングルリリースされていた「get high」の新たな位置情報を教えてもらった気分です。

そしてライブで聴くとさらに印象が変わっていく。バンドがスキルフルであればあるほど、やはりアルバムって重要だなと思わせてくれます。

林和希『I』

DOBERMAN INFINITYのヴォーカル、KAZUKIさんがソロ名義でリリースした1stアルバム。

1stでここまで世界観が確立されているのもすごいし、言われなければドーベルのKAZUKIさんだと気付かないかもしれないというくらい、グループとは違った魅力が詰まっていてすごい。

もちろんKAZUKIさんが素晴らしいヴォーカリストであることは存じ上げていましたが、それだけに、というかその分というか、これほどの作品をずっと出さずにいたこともすごいと感じる。

とにかくすごいこと尽くしのアルバムだなという衝撃を受けました。

全7曲というミニマムなアルバムですが、林和希さんというアーティストを理解するには十分すぎるくらい、密度も満足度も高い生粋のR&B作品です。

スピッツ『ひみつスタジオ』

アルバムってこういうことなんだよと、ずっとスピッツに教わってきたような気がする。

「アルバム曲」とはシングルになれなかった曲ではなく、そのアルバムの中でこそ輝ける曲だからそこにあるのだということも、スピッツが教えてくれた。と私は思っています。

サブスクにしっかりチャンネルが合わせられているのに、90年代の名作たちにも引けを取らない幹の太さ、Spotifyの月間リスナーも300万人以上の人気ぶり。

懐かしさと真新しさが同時に押し寄せる。歌詞を理解できたようなできていないような。だからもう一回聴いてみる。

スピッツを聴いた時にだけ現れるそういった感情や行動が、心を豊かにしてくれます。

森大翔『69 Jewel Beetle』

毎年書いていたこの記事、今年は書かなくてもいいかなぁと思っていたのだけど、やっぱり書こうと自分を動かしてくれたのはこのアルバムが素晴らしいからでした。

シンガーソングライター、森大翔さんの1stアルバム。

森さんのギターテクニックが最大限に活かされた楽曲がずらりと並んでいて、「巧いなぁ」と思わず声に出してしまう。絶対に飛ばしてはいけないギターソロ。飛ばすなよ!

しかしそれだけではないんです。「歌になりたい」「台風の目」で感じるヴォーカルセンス。

リスナーを飽きさせない森さんによる、奇跡が折り重なったようなアルバム。

このライター、終始何言ってるのか全然わからなかった、と思われてもいいです。

でも最後に「剣とパレット」だけでも聴いていってください。

以上、Culture Cruiseのライターが選ぶ2023年上半期のアルバム6作品でした。

文 / 長谷川 チエ


▼2022年Ver.

▼2021年Ver.

▼NOAさん『NO.A』インタビュー

▼w-inds.『Beyond』レビュー

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!