【サザンオールスターズ 43年目の挑戦】無観客ライブを観て思ったこと

2020年6月25日に横浜アリーナで開催された『サザンオールスターズ 特別ライブ 2020』。1人のサザンファンとして、音楽好きのライターとして、感じたことを記事にしておこうと思います。



サザンオールスターズ 42周年の特別ライブ

君は好きなアーティストが一体何組いるんだって感じですが、私は茅ヶ崎市のサザン通りに住んでいたこともあるくらい、サザンが大好きです。

茅ヶ崎で聴くサザンを毎日経験できたことは、自分にとって財産だと思えるほどに、敬愛しております。

ライブが行われた6月25日は、デビュー42周年という記念すべき日。

そんな大切な瞬間を、無観客のステージで、画面越しでしか見届けられない歯がゆさ。他方で、50万人のオーディエンスと同時に観賞して祝福できることの感慨深さ。

これまでに味わったことのない感情が押し寄せます。

視聴券1枚につき、使用できるデバイスは1台のみ。つまり1アカウント1ビューというルールです。

チケット購入者は3日間のアーカイブを観ることができます。記事を書く時に観直せるので、個人的にこれはとてもありがたい!普通のライブレポだと、超絶忙しいのです。

物理的なチケットも、座席の確保もないため、Cloakでの引き取りは必要なく、視聴までの動線は非常にスムーズ。

チケットの購入枚数は18万枚、予想される視聴者数は50万人とも言われ、音楽業界が動向を注視したイベントでした。

動画配信サービス「ULIZA(ウリザ)」での配信で、通信環境は安定していました。画質もきれいでトラブルもなかったようで、一安心。

コロナショックを受けて、自宅のWi-Fi環境は最強にしておくべきと考え、自粛期間中により高速なWi-Fiに切り替えたのですが、変えておいて良かったと心から思いました。

セットリスト

公式さんが公開してくれたセットリスト、以下のリンクから各プレイリストにアクセスできます。

https://taishita.lnk.to/2020live625

  1. YOU
  2. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
  3. 希望の轍
  4. Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)
  5. フリフリ ’65
  6. 朝方ムーンライト
  7. タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
  8. 夕陽に別れを告げて~メリーゴーランド
  9. シャ・ラ・ラ
  10. 天井棧敷の怪人
  11. 愛と欲望の日々
  12. Bye Bye My Love(U are the one)
  13. 真夏の果実
  14. 東京VICTORY
  15. 匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB
  16. エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
  17. マンピーのG★SPOT
  18. 勝手にシンドバッド
    <アンコール>
  19. 太陽は罪な奴
  20. ロックンロール・スーパーマン ~Rock’n Roll Superman~
  21. みんなのうた

セットリストはライブの定番を抑えつつ、気軽にチケットを買ってみたライトリスナーからコアファンまでを網羅した、バランスの取れた内容でした。

手探りで行われたライブとあって、あえて手堅さを重視した面もあるのではないかと思います。

どの曲でどんな感情だったか覚えてないほど、私はだいたい泣いていたか笑っていたか、揺れていたかのどれかです。ずーっと泣き笑いだったかもしれません。

オンラインならではの演出

まず最初にアングルの切り替わりで、カメラの多さと移動距離が尋常ではないことに気付きます。それもそのはず、40台のカメラが配置されていたそうです。

メンバーが登場する段階で、観客がそこにいるかのような想定で臨まれていることが感じ取れました。

メンバー間でも距離を保ち、ドラムセット横にはアクリルのパーテーションが置かれています。

曲ごとに筆者の思いを語り出すと止まらないので今回は慎むとして、特筆すべきは「真夏の果実」の演出でした。

客席に置かれた無数のライトが光る、今までに観たことのない景色。こんなに切なく横浜アリーナを見つめたのも初めてです。

これをスタッフさんは手作業でセッティングされたそうです。桑田さんも見ると泣いてしまいそうだったので、客席を見ずに歌ったとおっしゃっていました。

「東京VICTORY」をセットリストに入れたことの意味や、聖火を使った演出にもメッセージが感じられます。

随所に見られた「手作り感」やチームワークも、このライブの魅力だったのではないかと思います。この温度感は、リスナーの満足にも直結するのではないかと。

さらに、サザンライブの象徴でもある、ダンサーさんがずらりと並ぶ華やかなステージやコーラスワークには、安心感と頼もしさがありました。

左端に控えめなフォントで表示される歌詞にも配慮が感じられ、ライブビューイングとも違う、360°自在に動き回れるカメラワークや画角を楽しむこともできました。

スカイカムなどを駆使したカメラオペレーション。ここには、無観客ライブならではの大きな可能性を感じます。

“横浜アリーナで無観客” の意味

きっと多くの方が感じたであろう「無観客なら横浜アリーナでなくても良いんじゃないの?」という疑問。

個人の主観ですが、無観客の横浜アリーナが映された瞬間、テンションは上がり「こんな贅沢させてもらっていいのかな」とさえ思いました。

ライティングの演出や、客席に配慮することなく動けるカメラワークなど、臨場感という意味でも、空間としての役割を果たせていたように感じました。

さらに大切なのは、大がかりな演出と会場を使用することで、たくさんの人手が必要になることです。

ライブスタッフさんのお仕事が発生するという部分、ここに大きな意味があったように思います。

当然ながら、ライブをやりたいアーティストと、ライブを観たいファンのためだけにあるほど、音楽は単純ではないということです。

1回のライブを実現させるために関わるスタッフの数を考えると、今後を見据えた大きな試みになるし、たった1回の開催でも救われる人たちはたくさんいます。

今回だけでもスタッフさんは400人いらっしゃったそうです。

この公演では、年末のカウントダウンライブの足がかりとされた部分もあったようですし、サザンにとって横浜アリーナという場所がいかに特別であるかを加味すると、“横浜アリーナで無観客”だからこそ得られた価値が大いにあったのではないでしょうか。

オンラインで、オフラインの壮大さと温かみを感じることができたのは、きっとこの会場だったからなのだと思います。

音楽は常に挑戦

桑田さんはライブ中、いつも客席を気にかけてくれるのですが、今回も「大丈夫ですかー皆さーん?」と投げかけていたんですね。

「こっちは見えてるけど、ステージからの景色は空白のままなんだよな」と思うと切なくて。

ラストには「皆さんがいないと寂しいでーす」って、ほんの一言本音をおっしゃって、その言葉にまた涙が流れます。この拍手と涙は、どうしたら彼らに届けることができるのだろうかと。

アーティストの正直な気持ちは当然そこですよね。

全編を通してそんな本音も吹き飛ばすサザンのアクトはさすがだったのですが、他のアーティストもこのレベルでモチベーションを保てるかというと、それはあまりにも短絡的で酷なようにも思います。

生ライブの代替と考えると無理が生じるので、あくまでも一つの選択肢と認識する方が自然な気がしますね。

演者側のやりがいを削がれないオンライン配信の方法は、エンタメ業界全体で考えるべき課題ではないでしょうか。

そして懸念されるのは、観客がこのような配信スタイルに慣れてしまう点です。

今回は多くの人が満足感を得られたライブだったと思いますし、もちろん純粋にサザンのステージに感動した部分が大きいですが、少なからず皆がライブを渇望していたことや、珍しさによるところもあったと思うのです。

新鮮味を維持するためには、今まで以上にクリエイティブな演出が必要とされ、本当に実力のあるアーティストやスタッフしか残れないということなのかもしれません。

たとえオンラインでも、サザンのライブが3,600円で観られるというのは、今までだったらありえないことです。ライブビューイングなどはありましたけどね。

ある程度実験的であったとしても、納得できる金額だと思います(※ちなみに2019年のサザンのドームツアーは9,500円でした)。

遠方の方や、身体に不自由がある方、妊娠中や子育てなどで外出できない方も自宅で観られるのは素晴らしいことではないでしょうか。

落選して涙を飲む人もいない。ネット環境さえあれば、皆が平等に楽しむことができます。

この規模のライブができるアーティストは限られますが、その中でもサザンが多くの期待と見えない不安を背負い、先陣を切ってくれた意味合いがとても大きい。

他のアーティストも、じゃあこういう演出はどうだろう…と試行錯誤を繰り返して、独自の文化と体験を積み重ねていけば良いのだと思います。


42年続けてきたサザンにだって、新たな問題に直面することがある。音楽は常に挑戦なのだと再認識することができました。

音楽や文化を支えるためには、受け手が担う役割も必ず存在します。

新たな価値観を排除せず、多様性を認め、時には失敗を受け入れる寛容さを持って、文化全体を支えられるリスナーであり続けたいです。

机上の空論では淡々と課題も浮かびますが、大好きな曲のイントロが流れただけでわぁっ!と笑顔になる。

どんなパラダイムシフトが起ころうとも、音楽の本質は変わらないのです。

最後に言いたいのはやっぱりこの言葉。

サザンオールスターズの皆さん、新しい景色を見せてくれてありがとう!そして42周年おめでとうございます!

文/長谷川 チエ


サザンオールスターズ 公式サイト

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ABOUTこの記事をかいた人

東京生まれ。2016年、別業種からフリーライターとして独立。2017年にCulture Cruiseメディアを立ち上げ、「Culture Cruise」を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。カルチャーについて執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、別名義で小説や行動経済学についての書籍も出版。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!