【T-POP自由研究レポート#3】High Cloud Entertainmentほか、タイの音楽レーベルについて

タイの夜景

T-POPレポート第3弾、今回はタイの音楽レーベルと、High Cloud Entertainmentについてです。

後半は、タイに活動拠点を置く日本のグループ、BALLISTIK BOYZやPSYCHIC FEVERについても取り上げます。

▼前回までのレポートはこちらから

#1 タイの全体情報と音楽の歴史
#2 タイのダンスミュージックと人気アーティスト


タイの音楽レーベル

T-POPの歴史は、レーベルを通して発展させてきた印象があります。例えば、80年代に参入してきたEMIなどの外資系レーベルによって、洋楽が急激に浸透しました。

90年代は、RS PromotionとGMMグラミーの2強。そしてベーカリーミュージックの台頭など。

特にGMMグラミーは、現在に至るまで独自の進化を遂げてきました。ドラマなどの映像も含め、タイのエンタメ業界の70%シェアを持っているとも言われています(すごい)。

なかなか強い数字ですが、エンタメについて調べていると何かとグラミーさんに行き着くので、この数字はわりと信憑性がありそうです。

2020年には関連会社であるGMM TV社が、日本のテレビ朝日と業務提携を行いました。テレビ朝日は元々2015年からバンコクにビューローを開設していましたが、これはちょうどタイのBLドラマが流行り始めていた頃です。

「泰流」などタイの映像コンテンツがテレビ朝日で豊富に展開されているのもこの提携によるものです。

また、GMMグラミーは2021年5月に韓国のYGエンターテインメントと合弁会社「YGMM」を設立。YGエンターテインメントは、BLACKPINK、BIGBANG、WINNERなどが在籍する韓国でも有名な音楽レーベルです。

そんな中で、アンダーグラウンドなレーベルも奮闘していて、インディーバンドが多く所属するParinam Musicや、エレクトロ系のCometRecordsBKK、HIPHOPのZQUAD Recordsなど、面白いレーベルがたくさんあります。

特にHIPHOPは独特な発展の仕方をしており、混沌としていてなかなか深いです。

歴史的な話をすると、タイは国王を元首とする立憲君主制の国家ですが、政治的に不安定で、1932年の立憲革命以来19回もクーデターが起きています。

近年では2014年のクーデター以来、軍事政権が5年間続きましたが、2019年に新政権が発足し、民政に復帰した背景があります。

元を辿ると、民族的な対立によって音楽が派生する経緯などもあり「日本でいうところの」に置き換えられない歴史や文化が根付いているように感じます。

少なくともカウンターカルチャーのHIPHOPに影響が及ぶのは必至ですし、さまざまな文化が一つのフィールドでクロスオーバーする点も、タイ音楽の面白さかもしれません。

High Cloud Entertainmentとは

タイの音楽レーベルの中でも、今勢力を伸ばしているのが「High Cloud Entertainment」です。

ラッパーのF.HERO、ライブストリーマーアーティストのPimryPie、プロデューサーのLOUIS 1-Flowが立ち上げ、タイを代表するレーベルになりつつあります。

設立は2020年と歴史は浅いですが、すでにタイ国内でも存在感を発揮しています。

もっとも再生回数を伸ばしているMVがこちら。執筆現在で1億回に迫ろうかという人気ぶりです。フィーチャーされているPEARWAHさんは、人気ドラマに多数出演する役者で、歌手としても活動されています。

このレポートの#1でも取り上げた、F.HEROとMILLI、Stray KidsのChangbinによる「Mirror Mirror」は、Billboardでも19位にチャートインするなど、High Cloud Entertainmentの看板楽曲的な位置付けになっています。

K-POPアーティストをはじめ、コラボを重ねて知名度を上げてきた印象があるレーベルです。

日本とのかかわり

そのHigh Cloud Entertainmentは、2022年3月に日本のCHET Groupの新レーベル「CHET Asia」を日本独占エージェントとして迎え入れます。

さらに同年5月には、LDH JAPANとパートナーシップ契約を締結したことを発表し、合同で記者会見が行われました。

パートナーシップ締結の第1弾プロジェクトとして、LDH所属のBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERが2022年8月から半年間、活動拠点をタイに移すことも発表されました。

彼らが制作したり生活する様子は、リアリティショーでも発信されるそうです。

ちなみにCHET Asiaは、2022年8月に同じくタイの音楽レーベルである、XOXO Entertainmentともエージェント契約を結んでいます。

XOXO Entertainmentは、前回の記事でも取り上げた4EVEやATLASなど、こちらもタイ国内外で規模を拡大しているレーベルです。

タイに拠点を置くBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVER

ちなみに、今までタイの音楽を聴いていた方にとっては、日本のBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERのことがよく分からない、という状況にあるかもしれないので、この2組についても軽く触れておきます。

BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE

BALLISTIK BOYZは2019年5月にメジャーデビューした7人組のダンスボーカルグループです。メンバー全員がマイクを持つというのは、それまでのEXILE TRIBEにはなかったので新しさがありました。

2021年リリースの「Animal」は「ボーカルもダンスもこんなに難しい歌をなんでこんなにさらさらと表現しているんだこの人たちは。しかもサビのトラック、トレンドなのにスタンダードになり得るほどに優秀。これはずっと歌える歌だし絶対に波が来るぞ」と思ってレビューを書くも、完成に至らず半年後にやっと出すなんてことをした執念の記事がこちらです。

その後インタビューもさせていただき、7人がそれぞれに自分らしさを持った素敵グループだと感じたので、国を超えても必ず魅力を発揮できるし、日本のエンタメの良さを海外に伝えてくれるグループだと確信しています(強めな応援)。

タイに行って以来、メンバーのSNS発信も増え、Culture CruiseのBBZ関連記事もかなり読まれているので、過去の自分の記事を通して、BALLISTIK BOYZの注目度が上昇していることを日々実感しているところです。また話止まらなくなるのでこれくらいにしますね。

PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE

PSYCHIC FEVERは2022年7月にデビューした7人組のダンスボーカルグループ。

デビュー前から曲を発表したり、47都道府県を回ってステージパフォーマンスも数多くこなしているので、すでに表現力も磨かれており、個性も確立されちゃってるのがすごいです。

普通もっと、手探りの時期だと思うのですが、場数を踏んできた経験が確実に生きていると感じます。

ダンスボーカル界ではデビュー前の活動から注目されるのが最近の動きだと、個人的には思ってます。

いざアルバムを聴いてみると、上手さが際立つ上に、とにかく曲がいい! 1stアルバムからこのアベレージの高さ出せるのは本当にすごいと思います。『P.C.F』とてもいいアルバムです。

デビュー直後から海外での活動を経験できることが、確実にグループの音楽に反映されるだろうと思わせてくれるような、フレキシブルさも感じ取れるグループです。

元々この2組は、グローバルに活躍することを意識して結成されたグループであり、EXILE TRIBEの良さを受け継ぎながらも、同時に自由な風を取り込むことができるグループ、という印象があります。

活動拠点がどこであっても、きっとアイデンティティを見失うことなく個性を発揮できる一方で、柔軟に異国の文化を取り入れてキャリアにしていけるグループではないかと思います。

すでに大充実の2組の活動ですが、これがパートナーシップ締結の第1弾プロジェクトだということで、第2弾以降、どれだけ濃厚なのかという感じですが、ますますパートナーシップが築かれていくことを楽しみにしたいです。

タイの音楽レーベルはアジアのつながりを元に、今後もグローバルな展開を見せてきそうです。

またしても原稿用紙9枚分です! T-POP自由研究#3、ご覧いただきありがとうございました!

やめ時が分からなくなってきましたが、上手くまとまれば#4も書きます。

文 / 長谷川 チエ

▼これまでのレポートはこちら

#1 タイの全体情報と音楽の歴史
#2 タイのダンスミュージックと人気アーティスト

▼BALLISTIK BOYZインタビュー

▼CrazyBoyライブレポート

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!