【インタビュー】アルバム『SEASONS』の魅力をSPiCYSOLと探る旅

SPiCYSOL

SPiCYSOLがCulture Cruiseに初登場! 2022年10月26日リリースのアルバム『SEASONS』について伺いました。


SPiCYSOL × Culture Cruise

ーーSPiCYSOLさん、いつも聴かせていただいています! Culture Cruiseは湘南から発信していて、私も茅ヶ崎には長く住んでいたので、取材させていただけて嬉しいです。

KENNY(Vo):えーそうなんですね! ありがとうございます。

ーーSPiCYSOLさんは3名が茅ヶ崎に移住されて、音楽的に変わったことも多いのではないですか?

AKUN(Gt):めちゃめちゃ変わりましたね。仕事もライフスタイルの一部になって、午前中曲作りして午後は海に行ったり、インプットとアウトプットがしやすい場所だなと思います。音楽好きな人も多くて、海から上がったらサーファーの方が「YouTube観てるよ」って声かけてくれたりとか。

ーー嬉しいですね! 海って独特の距離の近さがありますよね。さっそく2022年の活動について伺いたいのですが、シングルをコンスタントにリリースすることは最初から念頭にあったのですか?

KENNY:そうですね。今年はそういうプランニングでした。

ーー毎月ハイペースな作業だったと思いますが、ストックを使ったり、その時作ったりという感じですか?

AKUN:半々くらいですかね。「今こういう曲作りたいな」という発想はその時のフレッシュなアイディアを優先させながらという感じで。

ーー『SEASONS』というアルバムのテーマはどのあたりから意識し始めましたか?

KENNY:僕自身はけっこう遅めでした。約1ヶ月に1回のシングルリリースの方に全力を注いでたので、それがまとまった夏くらいですかね。

ーーじゃあシングルを出し切った頃に、アルバム全体のコンセプトが固まってきたというか。

KENNY:そうですね。前年末くらいから今年のコンセプトを決めてたんですけど、全然違う方向に転がりました。前回のアルバムはニュークラシック、もう1つ前はカントリーっぽいものをやろうとしていたんですけど、今回はリリースした曲たちを見て『SEASONS』というテーマが合っているということになって。

AKUN:もしコンセプトアルバムを作るとなると、そこに集中する必要が出てきますし、メジャーでバンドをやらせていただいているからこそ、みんなに届けたいものもあるし。8月末頃に残り3曲くらい入れようという話で、バランスを見て完成させましたね。

アルバム『SEASONS』の制作について

ーー最初に再生ボタンを押して「Treasure」を聴いた瞬間から、いつも以上にサウンド面のこだわりを感じたのですが、打ち込みと生音のバランスで気を配ったところはありますか?

AKUN:楽曲の方向性的にも今までは生演奏にプラスして打ち込みだったんですけど、輪郭がぼやけちゃって、本当に聴かせたいところを他の音が邪魔してしまうことがあったんですよね。SPiCYSOLはサブスクでよく聴いていただいていて、CDで聴く環境はまた違うので、打ち込みで完成形のデモを作ってからレコーディングという形にしました。

ーー今まではどうしていたのですか?

AKUN:楽器の後ボーカルを録って、Mixでバランスを整えていました。今回は楽器も歌も録った後に、自分たちでリアレンジや調節をして、エンジニアさんに引き継ぎました。そうすると1つ1つの音の輪郭がはっきりするというか。歌詞を聴いて音を足したいと思うことも今まであったので、自分で打ち込むからこそ調節ができますよね。

PETE(Trumpet/Key):帯域の調整はAKUNがめちゃくちゃやってくれましたね。だから歌もきれいに聴こえてるんじゃないかな。

ーー出来上がってから変えたくなる部分ってきっとあるでしょうしね。

AKUN:そうなんですよね。サブスクだとロー感が弱く聴こえたりとかもあるので。歌が絶対に主役なので、被ってしまったら嫌だなというのもあって。サラウンドに聴こえるようにしたくて、この形になりました。

ーー地道な作業の積み重ねですね。今回のアルバムで挑戦したことをお一人ずつ聞かせてください。

KAZUMA(Dr):「Lens」という曲は生ドラムで録ってるんですけど、ドラムのヘッド(叩くところ:通常はプラスチックなどが使われる)にカンガルーの本革を使ったことですかね。ローが出るんですけど耐久性が低くてどんどんベロンベロンになってきちゃうんです。テクニシャン(ドラムの調整などを行う専門家)の方が持ってきてくれて、結構優しく叩いてたんですけど、伸びてきちゃって。

SPiCYSOL  KAZUMAさん

ーー叩いていても違うものですか?

KAZUMA:まったく違いました。強く叩くと一瞬で伸びちゃうので、難しいですね。

ーーじゃあ力加減を分かっていないと使えないですね。

AKUN:「LOUDER」から入ってくれてるテックさんで、痒い所に手が届くような、知識もあるし、自分たちが思っている音を再現してくれるというか。気難しい職人さんみたいな感じではなくて柔軟な方なので、いろいろ提案してくれて、すごくよかったですね。

KAZUMA:ドラムセット自体も70年代のビンテージのものだったので、さらに鳴りがよかったです。

ーー改めて聴いてみます! PETEさんはいかがですか?

SPiCYSOL PETEさん

PETE:サックスの吹き方を工夫したところですね。サックスは以前も1曲入れてるんですけど。

ーー 今回だと「Skyscraper」のブリッジのところですかね。

PETE:そうです。最初はきれいめの吹き方でレコーディングもすでに終わっていたんですけど、AKUNが「もっとアグレッシブな方がいいんじゃない?」って言ってくれたんですよね。たしかに、流れで聴いた時に歌詞とか曲調に合わないなと思って、もう1回スタジオに行って、口の部分をプラスチックから金属に変えたり、音を歪ませてみたりしました。そしたら良くなって、新たな発見になりました。

ーーAKUNさんの一言で変化が生まれたんですね。

AKUN:歌詞にトゲがある中で、最初のきれいめな吹き方だとお利口に聴こえて。優等生みたいな。歌っている人の人柄が出るような音じゃないと世界観が違うんじゃないかということで、ダボダボのデニムを履いた奴がラフに吹いているようなストリートっぽい感じがいいなと思って。クラシックではなくて。僕は吹けないので専門用語も分からないから、リファレンスを見せました。

KAZUMA:PETEさん、それはライブで見れるんですか?

PETE:はい、魅せます。

KAZUMA:今の「みせます」はあれだよね?

KENNY:魅了の魅(笑)?

PETE:そうですね、もちろん。

ーーそうだったんですね(笑)。KENNYさんはなにか挑戦したことありますか?

KENNY:「Lens」でドルビーアトモス(Dolby Atmos)を唯一採用しました。想像してたより意外と空間で遊ぶのが難しいんだなと思いました。曲にもよるとは思うんですけど、耳元で歌っているように聴こえるとかあるみたいで。

SPiCYSOL KENNYさん

PETE:初めての挑戦で、もっとドラムをバラバラにすればよかったとか、やってから分かったんですよね。

KENNY:そうそう。いい勉強になりました。今の環境だとドルビーアトモスで聴ける人も少ないので、今後のツールとしては面白いのかなと思いましたね。

AKUN:オーケストラとか、ボーカルグループで推しに囲まれているように聴こえるとかだったら、もっと面白いかもね。

KENNY:オーケストラね! 推しがいない状態で今、ドルビーアトモスが使われてます(笑)。

ーー私はSPiCYSOLさん推しです! AKUNさんはありますか?

AKUN:一番意識したのは、全体が混ざった時にいい音になることを追求しました。Recの環境って、自分の楽器の音が一番大きい状態で聴くんですよね。せーので演奏すればバランス取れるんですけど、一人ずつRecするから、組み立てが変わるというか。キーボードが入ったらベースが濁っちゃうとかあったので。

SPiCYSOL AKUNさん

KAZUMA:PETEがやっちゃったかー。

AKUN:例えです例え(笑)。あくまでも主役は歌なので、歌が入るまでバランスがどうなるかは分からないというか。オケで聴くとよかったのに歌が入って濁ることもあるし。

PETE:たいがいドラムがうるさいけどね(笑)。

AKUN:帯域が被るところもあったので、打ち込みが多くなったことも含めて、隙間に入れて歌と被らないようにしたり。それが正解かどうかは、分からないんですけど。

KENNY:最大のチャレンジだね。

AKUN:マスタリングはいつもと同じ方だったんですけど、3パターン候補を出してくれるんですよ。今まではバンド内で意見が割れることがあったんですけど、今回は一致することが多かったです。

初めてのリスナーにおすすめする曲

ーー今回もSUNNY BOYさんと作られている曲が多いですが、SUNNYさんとの制作もバンドにとって欠かせないものになりましたよね?

KENNY:SUNNYくんとは相性が良くて、ハワイ出身の方なので海外の感性で。理想を言う時も、音を言葉で伝えるって難しいじゃないですか? だけどそれがバシッとくるのがSUNNYくんだなと思いますし、それが今回多い理由ですね。

ーー「CHASE」を共作された永澤和真さんとはいかがでしたか?

KENNY:同じ名前でもうちのKAZUMAとは大違いで。

PETE:真逆だよね(笑)。めちゃくちゃ好青年で。

KENNY:彼も本当に素晴らしいサウンドメイカーで、いろんな楽器もできて。

AKUN:すごいですね、彼は。前作で「かくれんぼ」のアレンジをしていただいて、また一緒にやりたいと僕はずっと思っていて、今回はゼロから一緒に作ることができました。

ーー最後に、もしこの記事でSPiCYSOLさんを初めて知るリスナーの方がいるとしたら、アルバムのどの曲を聴いてもらいたいですか?

KAZUMA:1人ずつにしますか? 全員で1曲?

ーー全員で1曲決めていただきましょう!

KENNY:難しいですね。自分のお気に入りとSPiCYSOLっぽいのはまた違ったりするしなぁ。

ーーちなみにお気に入りでいうと?

KENNY:いっぱいあるんですけど、「Playback」かなぁ。

PETE:うん、そうだね。

KENNY:でもSPiCYSOLっぽいとか、初めての方への名刺代わりという意味では「CHASE」になるのかな。歌詞がうまく書けたと思うのは「Holy Night」で、アルバム通しての推しは「Treasure」だし…。

AKUN:シチュエーションごとに、全部リード曲にしようという認識で作ってきたから、逆にリスナーに聞いてみたいですね。

KENNY:うん、決められないので、長谷川さんの推し曲でお願いします!

インタビュー後記

初めてSPiCYSOLの楽曲を聴いた時、鮮やかで明るい夏の海だけでなく、複雑な色彩が滲む秋の海のような、心の機微を掬い上げてくれるバンドだと思いました。

瞬く間に日常に入り込んできたその音のルーツが知りたくて、いつかこのバンドにインタビューしてみたいと、思うようになりました。

それが今回ようやく叶って、アルバム『SEASONS』のインタビュー。本作を聴いた時、このアルバムのインタビューでよかったと心から思った。それくらい素敵な作品だと思います。

KENNYさんは歌声と同じように、人柄も優しさと気遣いにあふれていて、こちらが求めるものをすぐに感じ取ってくれるような方でした。すべていい意味で、ボーカルっぽくないところと、さすがボーカルだなと思うところが同居している、それがKENNYさんの個性であり魅力だと感じました。

抽象的な質問にも的確な言葉で答えてくださったAKUNさん。このアルバムを聴いた時、ギターのリフがベースのようだと感じたのですが、主役はボーカルなのだというAKUNさんの言葉に、その理由が隠されている気がしました。そんなギタリストがいるSPiCYSOLは最強のバンドだと思います。

KAZUMAさんは現場を明るくしてくれて、インタビューでも撮影でも、絶妙なところで変化球を投げてくれました。一瞬で周りの空気を変えられる方で、この日緊張していた私は何度も助けられました。そして取材後、一番に聴きたくなったのは「Lens」のドラムでした。素晴らしかったです!

PETEさんはバランサーで、SPiCYSOLのGood Musicはここに支えられているのだと思いました。私のはっきりしない質問にも、ずっと向き合って、一緒に笑ってくれたり。そして時にいじられキャラにもなれるPETEさんは、バンドのことを一番冷静に見ているのではないかと感じました。

全員一致の推し曲を決められず、決定権を預けてくださったので「SPiCYSOLを初めて知る方に1曲聴いてもらうとしたら?」の質問が自分に返ってきました。

僭越ながら、SPiCYSOLを初めて聴いた時に感じた、秋の海のような思いを共有できる「Far Away」を選ぶことにしました。

アルバムの最後の曲ですが、この曲にたどり着くまで、四季をめぐるように1枚を通して聴いてみてほしいです。

選ばないことを選んでくれた4人の意思が、きっと伝わると思います。

SPiCYSOL

撮影 / 藤重 廉、インタビュー・文 / 長谷川 チエ

【リリース情報】

2022.10.26(水) Relaease

SPiCYSOL Major 2ndAL「SEASONS」

・CD+BD:WPZL-32016~7 価格4,950円(tax in)
・CD+DVD:WPZL-32018~9 価格3,850円(tax in)

ご購入はこちらから:https://SPiCYSOL.lnk.to/2ndAL

<収録内容>

―CD―

M1.Treasure
M2.Skyscraper
M3.Playback
M4.LOUDER
M5.CHASE
M6.Natural
M7.Lens
M8.Bell
M9.Holy Night
M10.Far Away

―BD / DVD ―

SEASONS SPECIAL SESSION MOVIE

M1.CHASE
M2.Playback
M3.Natural
M4.Lens
M5.LOUDER
M6.Skyscraper
M7.Far Away

【リリースイベント情報】

-ミニライブ&サイン会-

11/6(日) 14:00- タワーレコード横浜ビブレ店
11/20(日) 14:00- タワーレコード新宿店
11/23(祝水) 14:00- タワーレコード梅田NU茶屋町店

詳しくはこちら:https://wmg.jp/spicysol/news/88073/

【ライブ情報】

SPiCYSOL Tour 2022 “SEASONS”

11/12(土) 福岡スカラエスパシオ 17:00 / 18:00
11/22(火) 名古屋CLUB QUATTRO 18:00 / 19:00
12/09(金) 大阪バナナホール 18:00 / 19:00
12/17(土) 札幌ペニーレーン24 17:00 / 18:00
12/25(日) KT Zepp Yokohama 17:00 / 18:00

チケット一般発売中
https://spicysol.com/contents/571330

【SPiCYSOL オフィシャルサイト】

HP:https://spicysol.com

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ワーナーミュージック・ジャパン公式HP:https://wmg.jp/spicysol/


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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!