I Don’t Like Mondays.「Do Ya?」90’s HIP HOPとFUNK ROCKのクロスオーバー

I Don't Like Mondays. Do Ya?

I Don’t Like Mondays.が4月17日にデジタルシングル「Do Ya?」をリリース。Culture Cruiseではレビューとともに、Run-D.M.C.や90年代HIPHOPについても触れてみたいと思います!

IDLMs.×90’s HIP HOPカルチャー

リリースに至るまでは、最初にヴィジュアルが公開されて、次に一部がSNSなどで公開。そして公式サイトでは、ファンクラブであるFRIDAY LOVERsのデジタル会員のみ、Short Ver.が聴けるという流れでした。

当初公開されたヴィジュアルについては、ざわついている声も聞こえてきましたが、結局はそんなこともパフォーマンスの一つになり、何をやっても彼ららしいスタイルになる。

そもそも彼らの音楽を語る上で、ファッションは欠かせないツールになっています。いろいろな表情を見せてくれるI Don’t Like Mondays.が大好きなのはみんな同じはず。新しいものを取り入れたり、挑戦する姿勢を尊敬します。

最初にSNSで拝見した時は「adidas…まさかHIPHOP?IDLMs.が?」となりましたよね。

ロックバンドがHIPHOPと出会ったら、どんな曲になるんだろう…兆志さんはどう絡んでくるの? 

とも思いましたが、曲を聴いて納得しました。

個人的には90’s HIPHOP大好きなので、adidasとHIPHOPの切っても切れない関係、そして欠かせないRun-D.M.C.という、1つのカルチャーとしてまるごと愛しているようなところがあります。

あの頃のHIPHOPのかっこよさはもはや別格。そう感じているリスナーは、もちろん私だけではないはずです。

テーマはHIPHOPだけど、そこに兆志さんのギターを乗せてロック感も出したかったとのことで、それがちょうどRun-D.M.C.とエアロスミスのコラボのようなイメージだと、ヴォーカルの悠さんがおっしゃっていました。

このコラボは「Do Ya?」を語る上で欠かせないインスパイア的存在になりそうですよね。

Run-D.M.C.「Walk This Way」

オールドスクールHIPHOPの第一人者であるRun-D.M.C.が、ロック界の大御所、エアロスミスの「Walk This Way」を1986年にカバー。

HIPHOP史に残る伝説のコラボと言われています。サンプリングでもなく、カバーというか、もう一緒にステージに立って歌っちゃってる。

この曲を知らずにHIPHOP好きを明言しているリスナーがいるとしたら、デコピンしちゃうよ。ってくらいの名曲です。私もリアルタイムではないので偉そうなことは言えませんが。

当時のロックミュージシャンからすれば、「HIPHOPなんて邪道だ」という雰囲気がまかり通っていたので、「エアロスミスがチャラいHIPHOPアーティストと『Walk This Way』歌ってるぜ?なんだよコレ」みたいなノリだったと思うんですよね。

HIPHOP好きにも「ロックなんてダセぇ」とか思ってる人も多かったはずなので、どちら側から見ても、立入禁止区域に突撃した斬新かつ革命的なコラボだったわけです。

1986年ですでにこんな試みをしているのが変態だし最高かよって話なんですよね。

ちなみに、HIPHOP界にadidasのイメージをもたらしたのもRun-D.M.C.がきっかけとなっています。とにかくここでは語り尽くせないほどの偉業を成し遂げたグループなのです。

90’s HIPHOPはこれらのカルチャーを受け継いで、Naughty By NatureやNAS、 LL Cool J、Common、De La Soulなどの名だたるアーティストが、アンダーグラウンドからメインストリームに押し上げていった時代。

↓先日の渋谷WWW Xで行われたライブで、アンコール時のSEとして流れていたHouse of Pain の「Jump Around」は90年代を代表する名曲。ここから初披露の「Do Ya?」に繋がっていたのが胸熱でした。

そんな背景もあり、adidasを着るロックミュージシャン by IDLMs.というところがテンション上がります。なんかこう、別々に好きだった3つか4つくらいのものが偶然1個に結びついたみたいな(雑)。

Mondaysさんはこんなに力説するような動機ではなくて、もっと自然というか、スマートな考えから始まっていると思うんですけどね。

ゴリゴリのHIPHOPをそのまま再現するのではなく、90’s HIPHOPカルチャーというフレイバーを楽曲に取り込んだ、そんな印象です。言葉で言うのは簡単ですが、そのさじ加減にこそ、彼らのセンスの良さが表れていますよね。

ただ、HIPHOP好きとしてはやはりRun-D.M.C.を意識してしまうので、これはIDLMs.革命だと思ってます。テスト出ます。

作り手が楽しむという音楽で一番大切なこと

ギターの兆志さんは「ファンの方は驚くかもしれないけれど」とケアしつつも、「自分たちがやりたいことをして作った曲であり、そこを感じてもらえたら」とおっしゃっていました。

先日のライブで初披露された時も、メンバーご自身が楽しみながらパフォーマンスできたのだとか。もちろんその場にいた自分にも伝わってきました。

バンドが好きなように曲作りをするのは至極真っ当であり、それが音楽において最も失われてはならない部分だと思うので、私はこの言葉にすごく安心したんです。

いろいろなことを試してもらいたいし、誰かの顔色を伺いながら作った作品なんて面白くないですから。

そうは言っても、「A GIRL IN THE CITY」とかを聴いていた方はびっくりしちゃうかもしれないですよね。ちょっと聴いてみましょうか。あでも「A GIRL IN THE CITY」はMVがないので、「PRINCE」のMVも観てみましょう。

なんだこれ別人じゃん!この振り幅の広さが、I Don’t Like Mondays.の魅力なのですね。

余談ですが、YouTubeの「PRINCE」なんでこんなにデフォルトの音ちっちゃいんですかね。ここでボリューム大きくしちゃうと、次の動画で「ひぃー!」ってなるんですよ。これ絶対FRIDAY LOVERsあるあるですよね。

そして「Do Ya?」のMVの随所で感じられるのは、皆さんやっぱり動きの勘がいいですよね。そんな中、素に近そうな兆志さんがとても好きです。

さらに、何でも着こなしてしまうベースの謙二さん、キッチンで真顔でベース弾くってどんなシチュエーションだよっていうシュールさが最高です。

終わりそうで終わらない遊び心も良いし、最後の本当に終わる瞬間はビシッと締まるかっこよさ。あぁやっぱりIDLMs.はかっこいい。そういう結論だった。これ以上ごちゃごちゃ語っても仕方ないかもしれない。

トライしつつも持ち味を発揮

冒頭の「That’s the way〜」のところで私の心はわしづかみにされ、「うぉーー!好きなやつ!」と瞬時に小踊りしました。こんなの好きに決まってる。

スキルフルな演奏と良質なアレンジ、卓越したファッションセンス。楽曲にしっかり落とし込んで、作品として完成させられる日本のバンドがどれくらいいるのか?というところ。「Do Ya?」ってことです。

「こういうのいいよね、やりたいよね」という話だったら誰でもできますが、それを本当に実現させてしまうのが、彼らの実力を裏付けるところでもあり、魅力なのだと思います。

そして素晴らしいトライの中でヴォーカル、ギター、ベース、ドラムがしっかりとI Don’t Like Mondays.の持ち味を発揮していることも忘れてはなりません。

生き生きと鳴り響く謙二さんのファンクベース。Motownの時代の音に近づけたとおっしゃっていたことに私は感銘を受けました。Motownが大好きだというのもありますが、なんて細やかな配慮なのだろうと。改めてMotownの曲を聴いて、ベースに耳を澄ませてみたりもしました。

秋気さんのドラムに関しては、高次元すぎて素人の私にはもはや理解できない領域なのですが、打ち込みとのバランスをものすごく綿密に考えられているのだろうな、というのは分かりました(もっと勉強します)。

さらに、この曲に兆志さんのギターソロをぶち込むという優れたバランス感覚。これはやはりIDLMs.だからなせる技ですよね。鳥肌立つくらいかっこいいです。

そしてリリックには、90年代には存在していなかったもので表現したかったと語っていた悠さん。誰もが親しみを覚えるフレーズと、ヴィンテージ感漂う曲調とのミスマッチな部分。

90’sの再現だけで終わってしまうことを防いで、時代がクロスオーバーすることの深みがプラスされています。


漂うファンクネスなグルーヴ

HIPHOPをテーマにしつつも、「90’s HIPHOPだよね、以上!」と片付けてしまうにはあまりにももったいない。個人的には、Earth, Wind&FireとかKool&The Gangを聴いた時のようなファンクネスを感じました。

最近だったらブルーノ・マーズとか、洋楽では感じさせてくれる領域はあったけれど、その感覚をI Don’t Like Mondays.という日本のバンドが届けてくれた。

これがもうめちゃくちゃ嬉しくて。横ノリが混ざる感覚というか、このグルーヴ感って、邦楽ではなかなか出会えないものなので。

日本のバンドがやるファンクって、ものすごくかっこいいと思っていて、これからどんどん盛り上がってほしいと感じている分野なんです。

それで、この流れでジャパニーズファンクロックの素晴らしさを語る文章を作っていたのですが、例によってまた超長文になってしまったので、それはまた別の機会にご紹介することにします。はい。

今までの曲にはない仕上がりとなった「Do Ya?」。けれども、どの曲を聴いてもいつも必ず同じように感じることがあります。

楽曲のクオリティの高さ、そして楽曲に対する真摯な姿勢と愛情。これだけは変わることのない共通点ですね。

これほどまでの振り幅でもブレないのは、揺るがないコアな部分があるからなのだと思います。もしも私がHIP HOPアーティストだったら、迷わず「Do Ya?」をサンプリングするなぁ!

前例のない存在に

作品が出来上がる度に、リスナーの期待を軽々と超えてしまうI Don’t Like Mondays.。私は今回も、いい意味で裏切られたその快感を味わうかのように、時にはスピーカーで、時にはヘッドフォンで、一つ一つの音をすくうように聴いてみた。

リリースされた瞬間から今まで、SpotifyとYouTubeで最もこの曲をリピートしたリスナーかもしれない私は。この記事を書いている間じゅう、エンドレスで聴きまくった。

クロスフェード再生にしているので、本当に一瞬の隙もなく聴いた(いや、ちょっと客観視するために他の曲も聴いた)。

ある時は、用もないのに外に出て、歩きながら聴いてみたりもした(曲の印象や耳に入ってくる音が変わるので)。途中でお化けに会った。でも、私には「Do Ya?」が一緒にいてくれたから怖くなかった。

何百回聴いてもまだ飽きない。脅威である。私がアーティストだったら、こんなに実力のあるバンドがこんなに素晴らしい曲を出してきたら、本気で嬉しいし本気で焦ると思う。

きっとものすごく大変だった曲作り。秋気さんはどこかのSNSで、ハゲそうだとまでおっしゃっていた。私もハゲそうなくらい頑張って彼らの記事を書いてきたつもりだったけれど、きっと秋気さんの方がハゲてると思う(当然)。ならば私ももっと、派手にハゲ散らかすほどの記事を書きたい。

「前例のないことができている」というインタビューも拝見した。そうか…Culture Cruiseも前例のないサイトになるように、もっと突き抜けていきたい。

かっこいい作品をどんどん作り出してくれる。やりたいことやる。さらっとやってるように見せかけて、気が遠くなるほど大変な作業してる。

どうか彼らがずっと、作りたいものを作れる環境でありますように。今回も、大きく変わったところ、何も変わっていないところ。その両方を見せつけてくれて、心からリスペクトだよIDLMs.!!!

文 / 長谷川 チエ(@Hase_Chie

▼私のやかましいライブレポをおかわり!

【ライブレポ】I Don’t Like Mondays.全国ツアー「2018 A/W TOUR “A GIRL IN THE CITY”」

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!