「Best Friend’s Girl」は夢の氷山の一角に過ぎないということ

今回は三代目J Soul Brothersのデビューシングル「Best Friend’s Girl」を取り上げます。三代目の原点であるこの曲の背景、オーディションと夢の関係について、コラム的に綴ってみました。

J Soul BrothersよりもEXILEの要素を取り入れた楽曲

「Best Friend’s Girl」は2010年11月に満を持してリリースされました。「次のJ Soul Brothersはこいつらだぁ!」的な、個々をクローズアップしつつも集合体をしっかりと見せるintroduce的MVになっています。

今市さんと登坂さんは、「EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 2」により、3万人の中から三代目JSBのボーカルに選ばれました。

最終審査で課題曲だったこの楽曲が、そのままデビューシングルに。MVの冒頭で目隠しをした今市さんが現れるのも、そういった背景があるからなのでしょう。

J Soul Brothersとはいえ、曲調はEXILEの要素を取り入れたバラード。打ち込みが効いているDTMなので、しっとり聴かせるというタイプとはまた違います。デビュー曲ということもあり、ボーカルをそのあたりでカバーリングしたのかな?と個人的には感じたりもして。

私は2枚目のアルバムに収録されているTRIBAL SOUL ver.が好きです。切なさが増したリミックスとコーラス部分が好きで、再録している点も好感触。

でもやはり、オリジナルの前奏から始まるピアノは、この曲の象徴とも言うべきポイントです。

敏腕音楽家、松尾潔さんプロデュース

作詞には、アーティストのブレイク仕掛け人として右に出る者はいないほどの音楽プロデューサー、松尾潔さん。

宇多田ヒカルさんやMISIAさん、平井堅さんなど、R&Bを強みとするアーティストをサポートしてきた方です。

テレビ東京系「ASAYAN  男子ボーカリストオーディション」(元々はもっとぶっ飛んだ番組だったけど)に始まり、CHEMISTRYを黎明期から支えている存在でもあります。

ジェームス・ブラウンやマイケル・ジャクソンなど、名だたる世界的アーティストに取材を行ったり、今日本にブラックミュージックが浸透しているのは、松尾さんのおかげといっても過言ではないほど、すごい方なのです。

そんな松尾さんプロデュースのデビュー曲、EXILEの要素を継承した楽曲、大規模なオーディションということで、ポピュラー性を追求するグループになっていくのだなという印象でした。

作曲は、こちらもヒット曲をたくさん生み出している川口大輔さん。三代目では「旅立つまえに」なども川口さんが作曲されています。このお二人がタッグを組むと、切ないラブソングが出来上がっちゃう。

JUJU「ラストシーン」

この曲も作詞:松尾潔さん、作曲:川口大輔さんです。ストリングスが美しいですね。

たくさんの人の思いを背負った曲

「Best Friend’s Girl」はオーディションでファイナリストとして残っていた現GENERATIONSの片寄涼太さんや数原龍友さんなど、今は違う形で活躍する多くの方にとっても、思い入れのある曲ですよねきっと(強引)。

オーディションの模様は「週刊EXILE」という番組で放送されていて、私も大福食べながら観ていたのですが、課題曲がデビュー曲になるとは、酷なことをするなーと思いました。

オーディションを受けた3万もの人たちの思い。軽い気持ちでチャレンジした方もいれば、人生をかけて挑んだ人だっていたはずです。

そんなたくさんの思いを、ボーカルの2人が今でも背負っていると思うと、居たたまれない気持ちになります。さぞかし辛いだろうとか、そういうことではなくて、重みを感じるのですよね。

歌にはそれだけ人の人生を変えるパワーがあるし、多くの人にとっては、他と何ら変わりのない1曲でも、特別に感じている人もいる。

現に今市さんと登坂さんの人生は大きく変わって、彼らや一部の人だけが表面化しているだけで、もっとこの楽曲に関わりたかったと思っている人もたくさんいるはず。

そんな歌を歌う重圧は相当なものであることは想像に難くないですし、それを乗り越えただけで、メンバー7人は精神力までも鍛えられたでしょう。

失敗が成功へと導く夢の方程式

オーディションを受けた約3万人の人たちは何をして、どんな風に今の三代目を見つめているのかと考えます。

気持ちの程度の差こそあれ、オーディションを受けた方々は行動に移しているのですから尊敬します。大半の人は、機会があってもアクションを起こさないからです。

行動心理学では、目の前にチャンスが巡ってきた時、1度でも実行に移す人は20%(私はもっと少ないと思っている)、そのうち、何度失敗しても続ける人はたった1%の人々だと言われているのです。スターは例外なくこの1%にカテゴライズされると私は考えています。

今市さんは、EXILEのTAKAHIROさんが合格者となったボーカルバトルオーディションを受けたそうですが、その後もくじけずに100社ものオーディションに挑戦したから、美談となって努力が報われたわけですよね。

その時の落選がなければ、彼は今ごろ違う人生を歩んでいたかもしれません。今回の内容を教訓にして、次はこうしてみようとか、成功までのステップに置き換えることができます。

それすらも、やらずに途中で諦める人が大半である中で、成功の影には必ず努力があるということ。

オーディションに受からなくても、それが次のステップに続いていくというのは、いろいろな人のストーリーから見てとれます。

先ほどお話ししたCHEMISTRYのオーディションは、EXILEのATSUSHIさんやNESMITHさんも受けていました。当時とても人気の企画で、私も大福食べながら観ていましたが、彼らもまた活躍しています。

CHEMISTRYが5年の時を経て活動を再開したことも、夢は終わらないんだということを体現してくれてますよね。「またやろうよ」と声をかけた、川畑さんの素直さから実現に結びついた気がします。

変わってないじゃん!素晴らしい。。この曲も松尾さんが作詞とプロデュースを手がけています。

いろいろ考えてみると、松尾さんがプロデュースに関わったオーディションを受けたCHEMISTRYとATSUSHIさんNESMITHさん。その後、松尾さんとATSUSHIさんが審査に関わったオーディションでの登坂さん今市さんまで、その他にもここで紹介しきれないくらい多くの方の夢と縁が一直線上につながっている気がして、感慨深いものがあります。

︎夢と努力と巡り合わせから生まれた

運を引き寄せて、夢を実現させているのはやはり本人の努力。三代目のボーカル2人のように、オーディションを勝ち抜いてからずーっと第一線で活躍し続けているアーティストって、実はとても稀です。ボーカルとパフォーマーの支え合いも素晴らしいものがある。

オーディションで勝者となり、それがテレビ放送までされると、周囲やファンの期待値は否が応にも高まります。その期待が、やがて歯車の軋みを生じさせ、本人を苦しませるという現象。私たちはそんなアーティストを何度目にしてきたでしょうか。

今三代目JSBが活躍できているのは、メンバー7人のたゆまぬ努力と覚悟、そして周囲のサポートがあるのだということ。その原点となる「Best Friend’s Girl」は、多くの夢や努力、巡り合わせから生まれた奇跡の1曲だと言えます。

文 / 長谷川 チエ(@Hase_Chie

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!