ブロックチェーン技術の普及に伴い、音楽業界でも少しずつNFTが導入され始めてきました。今回は、音楽にNFTが活用されている事例を挙げながら、どのようにNFTを生かすことができるのかを考えます。
音楽に活用できるNFT
NFT(Non-Fungible Token)とは、代替不可能(替えが効かない)なトークンという意味です。
代替不可能なものとしては、コンサートチケットなどをイメージすると分かりやすいかもしれません。自分と同じ席のチケットを持っている人が他にいては困るので、世界に一つしか存在しないものです。
一方、私たちが普段使っているお金は、お店や人と交換してもまた別の場所で使えるので、代替可能ということになります。
NFTは転売(二次流通)時に、作者への報酬が入る仕組みを設計できます。例えば古本やCDを、中古屋さんやフリマアプリで売買する場合、元の作者まで報酬が還元されることはありません。
しかしNFTを利用すれば、取引額の一部が作者に還元されるため、クリエイターの長期的な利益につながります。この点で、音楽との相性が良いしくみであるといえます。
日本の音楽NFTサービス
音楽にNFTを取り入れるとすれば、どんな可能性があるでしょうか。
日本の音楽業界でのNFTの導入はまだまだ少ないですが、楽曲の限定販売や、楽曲をイメージしたアート作品の販売、メタバース空間での音楽フェスの開催など、徐々に広がりつつあります。
個人的には、転売を防ぐためにも、コンサートチケットのNFT化、ブロックチェーンの導入はすぐにでも広まってほしいと思っています。
さらに「音楽を所有する」という概念を、CDやレコードなどのフィジカルからさらに意識を広げることも大切だと感じています。
また、以下のようにNFTを扱う日本の音楽系企業や団体も増えています。
The NFT Records
The NFT Recordsは音楽を専門とした日本のNFTマーケットプレイスです。
環境に配慮したプロダクト設計のほか、オークション・定額・抽選・予約など、販売方法も幅広いバリエーションを採用。
シリアルナンバー入りの楽曲やアーティスト写真、MVなど、NFTならではの作品を販売しています。
JASRAC
JASRAC(日本音楽著作権協会)でもブロックチェーンを利用して音楽作品を管理する実証実験を行なっています。
音楽作品のデータの信頼性向上のほか、流通プロセスの透明性や効率アップを図ることで、クリエイターや権利者への還元率を上げることが期待されています。
さらに、情報の共有や手続きなどもより簡素化することで、コストカットの実現を目指しています。
QUESTRY
日本初のNFT音楽コンテンツを扱う「QUESTRY」は、アーティストが持つ各種コンテンツに、NFTを付与して販売するサイトです。
50個限定の楽曲販売や、ハイレゾ音源での提供、購入者のみがアクセスできるコンテンツなど豊富な特典があります。
NFTの活用によって、アーティストとファンとの新たなコミュニティの形成や、交流を図ることが期待されます。
NFTを活用しているアーティスト
3LAU(ジャスティン・ブラウ)
EDMプロデューサー・DJの3LAUは、アルバム『Ultraviolet』のリリース3周年を記念し、33個のNFTを販売しました。
このNFTは、トークン化された初のアルバムとしての価値だけでなく、アルバムの新バージョンや未発表曲を聴くことができたり、3LAUの音楽がベースとなったカスタムアート、物理的なレコードが配布されるなどの特典がありました。
また、2021年8月には、音楽に特化したNFTマーケットプレイス「Royal」を創業。
5500万ドルの資金調達にも成功しました。この資金調達にはThe Chainsmokers、Kygo、Disclosureなども投資しています。
Snoop Dogg
Snoop Doggは2021年4月、Crypto.comにて24時間限定でNFTを販売しました。
2022年には、自身が買収した伝説的HIPHOPレーベル「Death Row Records」を、史上初のNFTレコードレーベルにしたいと発言していたSnoop Dogg。
NFTアート作品の「Death Row」は、10万8000ドルで落札され、その後もNFT関連のプロダクトを続々と開発しています。
Perfume
Netflixで配信されている「Perfume Imaginary Museum “Time Warp”」で使用されたデータをもとに、Perfume初のNFTアート作品を販売。
NFTマーケットプレイス「NFT Experiment」にてリリースされ、2万MATIC(日本円で当時レート325万円)で落札されました。
「NFT Experiment」はライゾマティクスが運営するNFTアートの販売サイトで、デジタルアートワークの収集や取引ができます。
音楽×NFTの普及
サブスクの普及に伴い、音楽に関連するデジタルコンテンツの販売という点では、リスナーの抵抗感や、アクセスの快適性など、まだまだ課題も多いジャンルです。
しかし、アートワークと組み合わせて所有する意識を育てたり、未発表曲やリミックスなどの仕掛けを作るなど、可能性も十分にあるのではないでしょうか。
Culture Cruiseでは、音楽×NFTの普及を今後も特集していきます。
▼この記事で参考にした書籍
NFTの教科書
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