【FlowBack ロングインタビュー前編】アルバム『Y』が示す人生の岐路

2023年12月3日のライブを最後に、無期限の音楽活動休止を発表したFlowBack。

初めてFlowBackへのインタビューを行なったのは2020年、コロナ禍につきリモートで。

2度目は4人体制になって初めてのワンマンライブを控えた貴重な1日、小さなダンススタジオで。

3度目はライブ会場の楽屋にお邪魔して。

そして4度目の今回は、FlowBackの活動拠点であるFB HOUSEにてインタビュー。

振り返ると、いつも無理なお願いばかりだったのに、FlowBackはその度に全力で受け止めてくれた。

Culture Cruiseがなぜここまでこのグループを取材し続けたのか、その4年の月日を、ここから感じ取っていただけたら嬉しいです。

FlowBackの過去、現在、未来が詰まった1万字のロングインタビュー。前編・後編合わせてご覧ください。


音楽活動休止前、最後のフルアルバム『Y』

ーー今日はFB HOUSEにお招きいただきありがとうございます! ここからYouTubeの配信とか、なさっていたと思うと感慨深いですね。

REIJI:そうなんです。不思議ですよね。

TATSUKI:ここで取材をするのは初ですね。

ーー本当にありがとうございます。さっそくアルバムのお話に入りたいのですが、久々のフルアルバムリリースですね。タイトルの『Y』はどなたが考えたんですか?

Swan.J:けっこう前の話になるんですけど、まず「Y」っていうバラードを作りたくて、“分かれ道”と“なぜ”という疑問形の“Why?”っていう意味合いの曲を作りたいってメンバーと話してて。でもそのバラード自体は一旦作らないことになったんです。そしてベストアルバムを作ることになった時にTATSUKIくんが「そういえば『Y』っていうタイトル素敵だから、今回は自分たちの人生の岐路で意味合いも合うし」と言ってくれて『Y』になりました。

ーー最初にバラードの「Y」を作ろうとしていた頃って、もう活動休止のお話は皆さんの間で出ていたんですか?

TATSUKI:出ていなかったです。まったく別ですね。

Swan.J:『intersect』のリリースイベントのMCで僕が「FlowBackのバラードって素敵だけど曲数少ないよね。僕バラード作ってみたいです」ってポロッと話して、それで考えていた時に「Y」というイメージが出てきて、みんなにこういうのどう?って提案して、みんなで考えていったという感じです。

TATSUKI:元々このアルバムに入れようとしてた気がする…違うわ、3ヶ月連続リリースの時に、1曲はバラードでいこうっていう話になって、その時にSwanが「Y」で作ってみようと思うって話してくれたんだ。

ーーじゃあ当初の想定とは全然違う曲になったんですね。

Swan.J:本当にそうですね。

ーーType-Bには4人バージョンで再録された2曲が収録されていますが、どのように決まっていったんですか?

TATSUKI:「AfterRain」は僕たち的にもどこに思い入れがあるのかって言われたら分からないんですけど(笑)、インディーズの時にリリースして、自分たちのエモい思いみたいのが込められてて。「2曲録り直すとしたら何だろうね」っていう時にこの曲と、デビュー曲の「Come A Long Way」という案が出て。正直今まで応援してくれてた人たちからしたら、5人のままの声で残してほしいとか、4人で歌い直すことをよく思わない人もいるかもしれないとは思ったんですよね。でも曲のタイトルの意味でもある“ここまで来た”っていうことがすべてだなと思って。デビュー当時にその意味はあんまりしっくり来てなかったこともあって、デビューはゴールじゃないのに、ここまで来たっていうのは言い過ぎじゃない?って正直思うこともあったんですけど。その時は一個のゴールに立って、また新たなスタートに向かうという意味での「Come A Long Way」。今のタイミングでは改めて歌っておいた方がいいだろうなと思って、自分たちが10年間やってきたものは決して挫折じゃなくて、一旦FlowBackとしてのゴールに持ってきたという思いを込めたかったので、この楽曲に決まりましたね。

ーー歌ってみてどうでしたか?

REIJI:落ちサビのMARKのパートを僕が歌っているんですけど、MARKの歌に寄せた方がいいのか、自分の色を出した方がいいのか葛藤した部分がありました。でもできるだけ自分の色を出そうと思って歌いましたね。ずっと残るものなので、歴史は変わっていくというか、この作品については4人がつくり上げたものだから、4人の思いを背負って歌うべきだなと思ったので。

FlowBackへの手紙

ーー今作には新曲も3曲入っているので、順番にお聞きしたいと思います。まず「Glitch Pop!!」はどんな曲でしょうか?

Swan.J:さっきの話に戻ると、「Y」というタイトルのバラードは実現しなかったんですけど、「Glitch Pop!!」がある種バラードみたいな感じがする。内容的には。突発的な感情だったりとか、ふとした時の選択肢で僕たちはグループを組んだし、応援してくれているFBF(FlowBackのファン)とも、些細なきっかけで出会えて、それぞれ僕たちと出会ったタイミングも違えば、初めて聴いた楽曲も観たパフォーマンスも違うだろうけど、この曲を聞いたら初めてFlowBackに出会ってくれた瞬間に戻ってほしいなっていう思いからできた曲です。歌詞の内容もそこから「Y」のところに来てるんですけど。

ーーエモーショナルな歌詞に対して、曲調はギミックが効いていて対比が面白いですよね。

TATSUKI:今までの中でもより攻めた曲、歌って踊るグループでかっこいいものを表現したいという思いがあって。(作曲の)辻村有記くんとFlowBackの相性がすごくいいなと思っていたので、アルバムを作ろうとした時に、すぐにお願いをしました。

ーー「Bubblegum」はUKドリルっぽくて個人的にすごく好きです。

MASAHARU:そうですね。ドリルの要素が入っていて、HIPHOPテイストの曲をやりたくて作りました。REIJIとTATSUKIがラップに挑戦していたり、僕としてもあんまりこういうメロディラインは作ったことがなかったので、いろんな挑戦が入った曲です。

ーー作ってみてどうでしたか?

MASAHARU:けっこう時間かかりましたね。

Swan.J:だいぶ経つよね。だってMASAHARUくんから「Bubblegum」っていうデモが送られてから1年以上経ってるよね。

MASAHARU:うん、サビがしっくり来なくて。サビがもっと静かな曲だったんですよ。JUDAI(Swan.Jさん)しか知らないんですけど。Bメロで盛り上がってサビで落ちるみたいな感じだったんですけど、作ってる段階で音楽市場でそういう曲が増えてきてて。変えた方がいいな、今さら出しても…みたいな感じで、もっと時間ほしいって言って。

ーー1年でトレンドもかなり変わりますよね。

MASAHARU:だから学びましたね、あんまり時間かけすぎると良くないって。

ーー寝かせすぎちゃったんですね。

MASAHARU:寝かせすぎました(笑)。ダンス&ボーカルって特にトレンドに敏感じゃないですか?

ーーさらに曲調がHIPHOPだと、鮮度が命という感じがしますよね。「Y」に関してはどうですか?

Swan.J:各メンバーのパートはそれぞれが作詞をしています。僕らは10年間活動する中で担当があって、振り付けだったり、作曲だったり、グラフィティとか作詞とか。その歌詞の中でいうと、それぞれが担当しているものを言葉で、踊る、奏でる、描く、歌を詠む。他の人からしたら正解か不正解か分からないけど、信念を持って自分たちが担当しているものを全うしてきたと思うので、それを改めて伝える曲になったかなと思います。

ーー歌詞はすぐ出てきましたか?

REIJI:FlowBackに対して手紙を書くというテーマだったんですけど、思いが溢れているから、僕はそれを一個にまとめるのが難しくて、たっちゃん(TATSUKIさん)に相談したりして、やっと完成したっていう感じです。

ーーどんな相談だったのですか?

TATSUKI:どういう風にまとめたらいいのかが分からない、いろんな気持ちがあるから難しいって。僕は遠征の移動中に作ってたんですけど、逆にすぐ出てきてすぐ固まって、今までの自分が吐いた言葉、メンバーが吐いた言葉、Swanが歌詞に落とし込んでくれた思いとかを改めて紐解くというか。ライブで前に自分が話したこととか。そういったものを思い返してみたらスラスラ出てきたなぁと思って。だからREIJIにも、今までの作品とかにフォーカスを当てて考えると意外と出てきやすいかもよって言ったら…ね?

REIJI:うん。そこから出てきましたね。

MASAHARU:僕も出てきた言葉からチョイスする感じだったので、そんなに難しい感じはしなかったですね。メロディを考えている時点でこういう言葉がハマるなって思い浮かんではいたので。メロディの方が大変だったかな。

ーーどんなところが大変でしたか?

MASAHARU:だんだんステージの幕が閉まっていくっていうイメージで作ったんですけど、僕はサビが派手なラインが好きなので、僕の作っているメロディだと合わないなというのがあって。だんだんとだんだんと閉まっていくという、初めて聴いたら分かりづらいけど、ある種僕らの歩いてきた道を優先したメロディというか。それを考えるのが難しかったですね。なかなか出なかったです。

ーー最終的にはどのように突破したんですか?

MASAHARU:トラックメイカーさんと一緒に作っている時に、派手なメロディしか思い浮かばなくてって悩みを話したら、いろいろメンタル面でケアしてくれて、これでいいじゃない?って僕の固定観念を壊してくれたから、家に帰ってちょっと出てきはじめて。本当にちょっとずつです。

TATSUKI:MASAHARUくんの鼻歌のデモをリハ終わりに「これで作ってほしいんだよね」って聴かされてね。よかったよね?

REIJI:よかった。テンテテテンって感じだったよね(笑)。

TATSUKI:転調もするよね? MASAHARUは転調が好きっていうイメージがめちゃめちゃある。10年前から(笑)。10年前にMASAHARUが「転調好きなんだよね」って言ってたのをめっちゃ覚えてて。

MASAHARU:分かんない覚えてない。

Swan.J:あの時のMASAHARUに聞くしかない。

MASAHARU:転調は好きですけど(笑)。でもFlowBackにはなかなか落とし込みづらかったから、「without you」とこの曲と、何曲かしかないけど。

TATSUKI:だから「Y」で急に持ってくるんだ、と思った。

ーーたしかにFlowBackさんの曲って、転調ではなくフェイクとか別の方法で盛り上げていくイメージですよね。Swanさんは「Y」の歌詞、どのように作ったのですか?

Swan.J:3ヶ月連続リリースだったりとか、アルバムの楽曲制作で思うように時間が作れなくてギリギリになってしまったのもあるんですけど、僕のパートがイントロ部分なので、まずはメンバーから出揃ったタイミングで歌詞を書き始めたんですね。というのもREIJIくんが先ほど言ったように、FlowBackに対しての手紙というテーマで書いていたのもあるし、メンバーからは感情的な強い言葉が出てくるだろうなって予想してたので、イントロからがっつりラップするよりは引き算したくて。レコーディングの1日前に歌詞を書き始めて、全部文章として構築してみて、ここ要らないって切っていって切っていって。まとめると3行くらいになるんですけど。それがこの10年で培ってきたことなのかなって。足して派手にすることは可能だけど、味付けと同じで、出汁だったりとか、素材本来の、シンプルだけど奥行きがあるMASAHARUくんのメロディを生かすつなぎみたいな。なおかつそれぞれが書いてくれた熱い思いだったり悩みだったりをまろやかにするというか。この曲に関してはそういう役割だと思っていました。

ーー物語の序章のようで、シンプルだけどすべてが詰まっていて素敵ですよね。言葉を削るってとても勇気のいることだと思いますし、10年の歳月と積み重ねがなければできなかったことだと思います。

Swan.J:ありがとうございます。メンバーが書いている言葉に嘘はないし、絶対グッとくるだろうなと思ってたら案の定きたので、メンバーそれぞれが書く言葉に対して信頼がありました。


後編では、独立してからの2年間と、FlowBackとしての10年間の振り返り。思い出の1日も挙げていただきました。

さらに今後の活動や、やりたいことについても伺っています。

後編はこちら

撮影 / 小山恭史、インタビュー・文 / 長谷川 チエ

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!