100年前の名著に学ぶ『自分の時間』の作り方

今回のブックレビューは、アーノルド・ベネット『自分の時間』。100年以上前に出版された本です。入れ替わりの激しい書店のビジネス書コーナーの棚差しに、100年前の本が並ぶ不思議。

以前、流し読みしたことはあったのですが、しっかり読む機会がないままここまで来てしまいました。

先日たまたま書店で見かけたので、購入することに。まえがきの時点で「なるほどなぁ」と読みふけってしまいました。

この記事では、本書の内容を一部要約し、最後にレビューとしてまとめました。読者の皆さんの時間を無駄にしないために、分かりやすくお伝えできるように努めます。




時間活用術の名著『自分の時間』

著者はイギリスを代表する作家、アーノルド・ベネット。最初に発表されたのは1908年のこと。時間活用術の名著として、現代まで長きに渡り愛読されてきた。

全12章で構成されているが、各章のボリュームは多くないのであっという間に読み切れる。そんな本書を紐解きたいと思う。

以下は、ベネットが本の中で述べていることを要約したものである。引用部分もあれば、私なりに噛み砕いた箇所も含まれる。

時間は貴重品である

時間はあらゆるものを生み出す元となる「貴重品」であるのに、哲学者たちは時間について語らない。

時間とは、朝目覚めた瞬間から1日が終わる時まで、人間に平等に与えられた奇跡のような財産である。

その使い方次第で、「人生のすべて」が変わる

「もっと時間があればやりたい」という願望に対し、それをやらずにいること自体に不満を感じている人は多い。しかし、1日を24時間よりも増やすことはできない。

スケジュール表を作ったところで「何かをやらねば」という思いを募らせるだけ。労が多くて報われなくても、不満を感じない覚悟がなければ怠惰で終わるだけだ。

そのためにすることは「始めること」。たったこれだけである。これしかない。

「始めること」以外に方法はない

1年後の時間、明日、今から1時間後でさえも、あなたのために取って置かれている財産なのだ。

ならば、「来週まで待つ」ことには何の意味もないし、「時間ができたらやる」の時間は、いつになってもやって来ない。

睡眠と仕事の時間を16時間と仮定しても、残り8時間もある。この8時間をどう使っているか、説明できる人がどれくらいいるのだろうか。

仕事の時間を除いた16時間を、自分のための時間と考える。ここに精力を注いでしまうと仕事に支障をきたすと考えがちだが、実際はむしろ逆。

知的な能力は身体のような疲れ方をしないので、労働にも耐え得る。睡眠は必要だが、明日の仕事のために休息が必要なのではない。

朝の通勤電車は、自分の世界に没頭できる絶好の時間である。ここで新聞やニュースを読むことに費やしてはもったいない。そんなものはちょっとした空き時間にやればいい。

ーーここでベネットは読者に提案をする。

週3回の夜90分が心を豊かにする

1日おきでいいから、仕事から帰った1時間半、精神を向上させる意義のあることに費やしてはどうか。3晩行なっても、まだ残り4晩もある。ここでは自由に過ごせばいい。

1週間を6日として計画する方法もある。残りの1日は「たまたま手に入った時間」くらいに考える。

1回ごとの時間は大したことのないように思えるが、積み重ねれば膨大な量になる。こうした小さな積み重ねからしか、「習慣を変える」ことはできない。

これらのことを効率的に行うには集中する必要がある。頭脳・思考をコントロールすることも可能。

さらに、物事は原因と結果の継起による積み重ねだと理解することで、生きる上での苦悩は減る。

この理解こそが、自己を磨いてきたことで得た洞察力なのだ。「この世に退屈なものなどない」ということも理解できるようになり、人生は豊かになる。

ーー以上が『自分の時間』の要約である。

もっとも効果的な読書法

本書には思考を集中させることで、頭の働きをコントロールする、自身の能力をフル回転させる内容なども記載されているので、興味を持たれた方にはぜひ本書を手に取ってほしい。

第3章から8章くらいまでは、具体例とともに時間の捉え方について理解することを促してくれる。

第11章は読書好きなあなたに宛てた、読書によって人生の利息を生むアドバイスが書かれている。

「努力して読むから糧になる」など、ここは実際に読むことで糧にすべき項目なので、あえてここには記さずにおく。

そして第12章で、「向上の芽」を育てる秘訣がまとめられ、本書は締めくくられている。

さらに巻末には、訳者の渡部昇一さんによって、アーノルド・ベネットについてや、本書についての丁寧に解説も。

渡部さんの翻訳は、豊富な語彙量の中から分かりやすい言葉が厳選されていて、とても読みやすくまとまっている。

普遍的なテーマとどう向き合うか

この本を読んで、執筆されてから100年という時が経過しているということに、まず誰もが驚くのではないだろうか。

ランプやマッチなど、時代を感じさせるワードが登場するのもまた趣がある。

それにしても、時間を使いこなすことが人類にとっていかに普遍的なテーマであるかを、つくづく思い知らされる。

同時に、同じ問題に悩まされ続けている我々は、時間というものにもっと真っ向から、大胆にも丁寧にも向き合うべきなのではないだろうか。

しかし、大半の人がなんとなく毎日を過ごし、疲れを理由に休息を取っている気がしてならない。明日もまた時間をもらえることを、我々は知ってしまっている。

堂々巡りになってしまうが、その一方で解決できなくて当然、とも言えるのではないだろうか。

これだけ普遍的なテーマを、何十年か生きた程度で克服などできないのではないのかと。そう思えば少しは気が楽になるし、さまざまな方法を試していけば良いのだと思う。

仕事から帰って何かに取り組めば、自己成長につながることは誰だって分かっているはずだが、結局は背中を押してくれる存在がほしいのだ。

個人的に背中を押されたのは、知的な能力は手足のように疲れないのだから、次の日のために疲れないように過ごす必要はないということだった。

私は職業が文筆業なので、仕事と知的エネルギーを使うことは同じ枠内に存在しているようなものだ。勉強時間と執筆が同化しているような感覚なので、たくさん勉強したつもりになって満足してしまう日もある。

だからこそ、学びと仕事は別と考えて、学びの時間をしっかり設けたいと思った。その時間が読者の知識に貢献できるのであれば、ライターとしてこんなに嬉しいことはない。

さいごに

とてもサクサク読めるのに、多くのものを得たような読後感。

サクサク読めるだけに、ふーんと軽く受け流す人と、しっかりと受け止める人。

どちらもあると思いますが、それは時間という概念の捉え方の違いであり、果ては人生観にも及ぶのかもしれません。

考え方の違いはあれど、時間に振り回されたくはないし、これだけシンプルな本が、これだけの時代を経て読み継がれているという事実が、すでに大切なことを教えてくれているように感じます。

きっとこの先も人生は続くのだから、ほんの数時間くらい、この本に捧げてもまったく無駄ではないはずです。

人生の残り時間があとどれくらいであろうと、短くても長くても。どんな人にも平等に大切なもの、それが「時間」なのだと感じました。

文/長谷川 チエ(@Hase_Chie

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!