三代目 J Soul Brothersが2018年6月にリリースしたアルバム『FUTURE』から、ヴォーカルの登坂広臣さんと今市隆二さんのソロ曲を収めたそれぞれの作品について、全体を総括したコラムとして綴ります。今回は登坂さん(HIROOMI TOSAKA)編です。
アルバム『FUTURE』DISC-3
- INTRO ~CLAIR DE LUNE~
- WASTED LOVE
- DIAMOND SUNSET
- LUXE / HIROOMI TOSAKA feat. CRAZYBOY
- Smile Moon Night
- END of LINE
- HEY / HIROOMI TOSAKA feat. Afrojack
配信限定だったリードシングルの「WASTED LOVE」「DIAMOND SUNSET 」「LUXE」から「HEY」まで、全楽曲のプロデュースをAforojackが担当するという豪華な内容。全7曲ですが、聴きごたえがあり充実度の高いアルバムになっています。
2017年7月に「WASTED LOVE」をリリースして以来、心地よいビートでリスナーをエキサイトさせてくれた登坂広臣さんの楽曲たち。
このアルバムではさらに「END of LINE」や「HEY」などを通じて、普段知ることのできない、等身大の素顔を垣間見ることができます。
今を突き進む音楽スタイル
先日、映画『SEVEN/7』を観るため、2018年3月にオープンした「TOHOシネマズ日比谷」を訪れました。
久々に日比谷エリアに足を踏み入れたので、東京に住んでいながら、あんなに進化していたことを知りませんでした(エンターテインメントの街にするという構想があるそう)。
ちょっと目を離した隙に、東京はすぐに変わっていきます。スピード感があり洗練された登坂さんの音楽は、まるで進化を遂げる東京の街のようだと、映画を観終わり帰路につきながら考えていました。
「INTRO ~CLAIR DE LUNE~」の何かが始まる序章のムード。ここから「WASTED LOVE」へと繋がる流れが、孤高の雰囲気に満ちていて好きです。
今までは「WASTED LOVE」のみで聴いていたものが、これからは「INTRO ~CLAIR DE LUNE~」からの流れで聴くことができるわけですね? 先輩!
時代を感じ取って、自分なりに噛み砕いていく感覚に優れている登坂さんなので、今の音楽性は本当にマッチしているし、彼だからこそできる挑戦なのではないでしょうか。
個人的には古い音楽も聴き続ける一方で、トレンドも大好きだし、新しいサウンドを聴きたくなる瞬間があります。
次なる流行を生み出すというよりは、J-POPでまだ手つかずだった領域にトライしていく、という印象が強い登坂さんの音楽。
その点ではグループの方向性と近いものの、両者はまた違ったコンセプトを確立し、提唱してくれています。
映画『SEVEN/7』を観ても、登坂さんがいかに “旬”にこだわっているかが分かります。失敗はある種の成功であると語った彼の言葉は印象的で、勇気づけられるパワーワードでした。
新しいものを作ろうとすれば失敗はつきもので、中にはそれをあげつらうリスナーもいる。
でも前に進んでいる人は、何か良いものはないかと、ポジティブなものを探し求めています。他人の批判を嘆く前に、もうその先へ動き出している。
周りにどんなにディスられても動じない、自分のスタイルは崩さないという強い信念そのものが、登坂さんの音楽性を映し出しているし、パワーの源にすらなっているのではないかと感じます。
そういった意味ではELLYさんのソロ名義であるCRAZYBOYも、同じように自分のやりたい道を突き進む音楽性ですよね。
この2人がタッグを組んだ「LUXE」には、そんな彼らの反骨心すらも滲ませるほどの、強いポリシーや気概が詰まっています。
全楽曲をプロデュースしたAfrojackだって、常に新しいものを生み出すクリエイターです。
旬な音を追求する限り、その音はいつか過去のものになる。けれど流行が変わっても、本当に良い音楽は生き残るし、登坂さんが選び、紡いだ言葉が消えることはありません。
時が移ろいでその思いが変わったのなら、それは現在の “記録”として刻まれていくし、伝えたい変わらない信念があるのなら、それを受け継ぐ人、賛同してくれる人は必ずいます。
ほんの少しずつですが、私もライターになって、厳しくも楽しいクリエイティブのしっぽくらいは掴めるようになってきました。
それでも前を向く
自分の選んだ道を信じて進み続ける人の姿は、もはや爽快なまでに勇ましい。
登坂さんがふと後ろを振り返った時、その姿を見届けている人たちはたくさんいるし、先に進めば進むほど、後に続く人の分母は増えていくわけです。
このままずっと、走り続けて欲しい。でもそれは、時に孤独を感じるし怖くもあるはずなのです。そんな心境こそが「END of LINE」なのではないかと思います。
この曲を何度もリピートして、わんわんと泣きながら書いたので、皆さんにもぜひ改めて、今「END of LINE」を聴いてみていただきたいです。
この曲は走り続けている人でなければ歌えないし、思い浮かぶ歌詞ではないですよね。
“止まりたくない” “I might hate myself” なんて、どれだけの気持ちを振り絞って書いたことか……。
弱音を吐くことのない登坂さんが、ほんの少しの瞬間見せた本音と素顔。どうか疲れた時は来た道を振り返って、ホッと一息ついて欲しい。きっと壮大な景色が見えるはずです。
しかしこの曲が、決して最後に収録されていないことが大きなメッセージ性を含んでいる気がして、私はたまらなく嬉しかったのです。先へ進む、強い意志が感じ取れるから。
そしてそんな登坂さんの思いを受け止めるメロディを、Afrojackが作り出してくれたのですね。これはいい意味でAfrojackらしくなくて驚きました。
EDMの第一線で活躍するDJが、ここまで究極にシンプルで美しい、メロディックな音を奏でてくれるなんて、泣けてしまう……それだけ2人の信頼関係が、より強固になったことの証ではないでしょうか。
そしていよいよエピローグを迎えた「HEY」の中で光る “Journey to the end of the time” というフレーズ。ずっと旅を続けるのですね。
トップアーティストの成長と輝き
経験値ゼロだった1人の若者が、トップアーティストとして成長していく過程を、多くの人がリアルタイムで見つめてきました。
登坂さんがここまで登りつめたステップ、アーティスト人生とそのバックボーンが、しだいに濃く、強くなっていることを感じ取れます。
それでも、優しい笑顔と歌声は変わらず、輝きを増すばかり。見違えるほどの凜然としたオーラを身に纏った登坂さんですが、そのまぶしい光の中心にはいつも、優しさとぬくもりがあるのです。
人がここまで成長できることを、身をもって証明してくれている登坂さんを見ていると、何より自分が感化されていることに気付きます。
登坂さんがこの先の10年、そのずっと先も、どんな作品を届けてくれるのかとても楽しみであると同時に、自分自身も歩みを止めないように。
そしてその頃も、私は相変わらず今日と同じことを語っているのだろうと感じた、東京の夜でした。
今夜は雨降りで月が見えないけれど、そんな時はひと休みするのもいいかもしれません。雨上がりの虹を待ちながら。
文 / 長谷川 チエ(@Hase_Chie)
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