【編集長に逆インタビュー】インタビューするアーティストはどうやって決めている?

編集部の葉山です! 今回の逆インタビューは、毎回リクエストの多い“インタビュー”のお話です。取材相手の決め方、人見知りの克服方法など聞いてみました!


実力がマインドに追いついていなかった

葉山:今回もリクエストが一番多い、インタビューに関することを聞かせてください!

長谷川:以前はインタビューカテゴリーなんて全然更新できなかったし、今も頻繁にはできないけど、注目してくださって本当に嬉しいですね。

葉山:そうですよね。レビューサイトみたいなイメージだったので。

長谷川:最初はポートフォリオとしてレビューをストックして、いつかは取材に行けたらいいなと思ってたけど、遠い夢すぎて。そもそも取材なんて緊張しすぎて無理だったし、マインド的にも実力がやりたいことに全然追いついてなかった。

葉山:でも少しずつ動き始めたんですよね?

長谷川:オファーがポツポツ来るようになって。インタビュー依頼ではなくても、お問い合わせが来るということは、工夫すれば直接取材ができるかもしれないと思ったんだよね。苦手と言っても、そもそも経験も少ないのに得意なわけないと思って、自分の苦手意識はやりながら何とかしようと。

葉山:どうやって克服したんですか?

長谷川:取材のアポイントが取れた時がめちゃめちゃ嬉しいので、この喜びは苦手意識を越えられる、この嬉しさのためだったら頑張れるなって思ったから。

葉山:実際に経験して気づいたんですね?

長谷川:そうそう! あー自分こんな風に喜んで、こんな風に緊張するんだって(笑)。

葉山:そりゃあ嬉しいですよ。大好きなアーティストに本職として会いに行くなんて、普通できないですし。

長谷川:ありがたいことです。でも最終的に一番嬉しいのは、やっぱりいい人だったって思う時です。

取材するアーティストはどうやって決めるの?

葉山:以前から「取材するアーティストはどうやって決めてるんですか?」っていう質問がよく届きます。もちろん、アーティストに限らずですが。

長谷川:取材までの経緯はバラバラですけど、最終的に私自身が取材したいと思えるかは基準にしてます。生意気なんですけれども、私が決めるんで! ってことではなくて、不器用で遅筆なので、手広くできないんです。

葉山:それはチエさんなりの誠意なんじゃないですかね。私も、書くべきライターが書く方がいい記事になると思います。

長谷川:自信は全然ないけど、好きな気持ちがあると弱いメンタルを補ってくれるんですよね。それが記事を書く推進力になっているので。

葉山:なるほど。Culture Cruiseっぽい記事ってそういうところから生まれてるんですね。じゃあ、取材したいと思えるかの基準って、いつも聴いてるとかですか?

長谷川:それもあるし、ラジオで話してる雰囲気とかはチェックするかな。MVとかサブスクで曲だけ聴いてても、人となりってわからないですよね? でもめっちゃいい人! って知った時、人柄とかももっと伝わればいいのにって思うんだよね。

葉山:たしかに。TV出演してたりすれば分かるけど、よっぽど興味持たないと内面まで知る機会ないですね。

長谷川:そういう内面を記事にしたいんですよ。それがきっかけで曲聴き始めることもあると思うし。ラジオのゲスト出演をもう少しリラックスさせた感じが、インタビューの雰囲気に近いので、ラジオはよく参考にします。

葉山:一番の布教活動というか、応援かもしれないですね。

長谷川:せっかく取材するなら、こんな人だったよっていう情報も届けられたらいいよね。アーティストがインタビューを受けるのはリリースタイミングなので、基本テーマは曲についてになるんですけど、編集後記は自分の領域として、自分の思いを書いてます。

編集後記の内容はいつ思いつく?

葉山:その編集後記(インタビュー後記)で書くことって、いつ思いつきますか?

長谷川:実際に後記を書いてる時が多いかな。当日の流れを思い返して「あの時の行動優しかったな」とか、覚えてることを言葉にする感じです。グループだったら、全員の字数も同じくらいの分量になるように調節します。

葉山:あと、Instagramでも取材日記を更新してるじゃないですか? そちらに書く内容は?

長谷川:それはインスタを投稿する少し前に考えるかな。編集後記よりも、もう一段個人的な感想といいますか。書いていいかどうかはちゃんと考えますけどね。先方に確認する場合もあります。

葉山:そうなんですね。

長谷川:思い込みが怖いっていうか。例えば「肉まん食べてて」とか書くと、一連の行動を知っていればいいけど、突然そこだけ切り取られると「食べながら取材受けてるの?」って思われるかも、とかあるので。

葉山:それは実際にあった話ですか?

長谷川:言われたことはないけど、書きかけてやめたことがある。待機中に肉まん食べながらフラッと取材見に来て、コミュニケーションを図ってくれたんだけど、後で「さっきすみませんでした!」ってフォローしてくれて、何て律儀な方なんだろうと思ったんだけど。待機中に食べてるのも、休憩する時間も取れないくらい稼働してる時もあるのでね。

葉山:お忙しいですもんね。私はBALLISTIK BOYZの深堀さんについての日記がやっぱり好きです。

長谷川:ほんと好きだね、はやみー。

葉山:短時間でよく洞察できたなって。「一瞬すぎて言葉にもならないような優しさの積み重ね」なんて生涯で一度も考えたことないですから!

長谷川:私だって初だよー。でも時間の話でいうと、取材時間をのばすことはできない分、準備段階から会えばいいんだって気付けたかな。一方的にだけど、リサーチの時からお会いするくらいの気持ちでいれば、当日焦らないというか。

葉山:なんか素敵。逆にもし横柄な態度とか、イメージ悪かったらどうします(笑)?

長谷川:今のところそんな方は一人もいないですけどね。もしいたとしたら、正直な人なんだなとか、受け取り方を変えますかね。でも表の顔と違うとか思ったことは一度もないし、むしろ印象よくなるほうが多いです。

葉山:チエさんが素直だから相手もそういう振る舞いになるのもあるだろうし、自然とそういう方を選んでるんでしょうね。ラジオとか聞いてみるっていうのも、そこにつながるのかなって思いました。

自分が人見知りであることを一旦忘れる

葉山:チエさんがいろいろ工夫してるのを見て、取材内容を文字だけで伝えるのってこんなに大変なんだなって思いました。

長谷川:推しの話なら無限に読めるけど、普通の文は読みたくない人も多いと思うんですよね。文章から想像することが楽しいと思ってもらうのも、ライターの役割だと思うんです。だから編集で書き換えた言い回しだなとか、発言したことが形を変えて読者に届くとか、発信から解釈までに誤差を生じさせたくないので、それは信頼関係なんですかね。

葉山:読者との?

長谷川:うん。この人が書いたならほんとにそう言ったんだなって思っていただけるライティングを日頃からしないといけないし、アーティストに対してもそうですよね。このライターならちゃんと書いてくれる、だから話そうっていう。それは初対面だろうと関係ないと思う。

葉山:初対面で挨拶しかしてなくて、短い時間で信頼築けます?

長谷川:うん、できるできる。私も最初は、インタビューって流れ作業で予定調和っぽいし、普通こうですっていうパターンを踏んでいけば、記事ってできちゃうんだなって思ったの。でも予定調和にしてるのは自分じゃないですか。

葉山:うわぁ。たしかに。じゃあどうやって空気変えます?

長谷川:私めちゃくちゃ人見知りなので、自分が人見知りであることを一旦忘れようとする。

葉山:現実から逃げる! すると?

長谷川:すると、相手が「あ、この人変な人なんだな」って目で見始める。

葉山:辛い(笑)!

長谷川:でも目標はいい記事を書くことであって、自分が気に入られることじゃないんで、予定調和で終了よりはいいんです。変な人だけど、誠実さは伝わってくるなとかさ。

葉山:受ける方もその方が面白いでしょうし、チエさんは実際変な人ですよ(笑)?

長谷川:なんか、この話を大真面目に語ってる時点でおかしいとは思うよね。でも変なのかなぁ。

葉山:普通に変です(笑)いい意味で。そういう人じゃないと、アーティストにガンガン取材できないと思うので。変っていう言い方は語弊があるけど、独特っていうか。インタビューする側も、感受性豊かな人じゃないと、話が深まらないんじゃないかなって。

長谷川:そうかなぁ。まぁ取材に慣れてる方が多いから、インタビュアーのレベルに合わせてくれるんですよね。私にもっと知識があれば、今の難しい話、さらに掘り下げられたなとか、何度悔しい思いをしたことか。

葉山:それは分かるなー。一般的な会話でもありますよね。

長谷川:そうかもね。だからもっと音楽を理解できる幅を増やしたいです。とはいえ「それって何ですか?」っていう聞き方も大事ではあるけどね。

葉山:読者が置いていかれたら意味ないですもんね。

長谷川:読者とアーティストとの間に立つことを目標にしたいです。

葉山:ありがとうございました。今回も面白かったです!


以上、編集長への逆インタビューでした。アーティストから深い話を引き出すために、毎日勉強している編集長です。

音楽知識のない私からすれば、当初からすでにすごいですが、過去の記事と、今の記事を読み比べると、チエさんの知識量の変化がわかって面白いかもしれません。

最後に、チエさんの音楽知識が活かされた記事を葉山が選んでみました。ぜひご覧ください!

(編集部・葉山)

ライターの音楽知識が活かされていると思った記事3選

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!