【鷲尾伶菜インタビュー】「嫌になるほど歌った曲に人生を変えてもらった」自分で選んだ正解

3月3日に配信シングル「正解」をリリースした鷲尾伶菜さんが初登場! 音楽と向き合ってきた過去や現在の活動についてインタビューしました。

“音楽”をテーマにした理由

──今回はレーベル移籍後初のリリースになりますね。

鷲尾伶菜(以下、鷲尾):「ソロ第1弾」とか、第1弾というものは何度か経験してきたんですけど、その中でも違うものにしたいなと思いました。普段はかっこつけた言葉とか、おしゃれな表現も好きなんです。不思議でおしゃれな世界観があってっていう。でも今回はそういうものではなくて、ロックテイストだからこそありのままのかっこつけない言葉、強くても無骨でもいいから、変に飾りつけするのではなく、思いついた言葉をそのまま書きました。

──準備もたくさんされてきたのではないでしょうか?

鷲尾:去年は独立して、基盤作りがものすごく大変でした。ファンクラブを1から立ち上げるとか。1から何かをやるということを詰め込んだような1年だったんですけど、土台が整っていないと何もうまくいかないから、独立してからも今までどおりちゃんと活動できる基盤作りというものが、しっかりできたと思います。

──基盤作りの面で大切にしていたことは何ですか?

鷲尾:人脈作りです! 音楽の人脈もそうだし、ヘアメイクさんとか、スタイリストさんとか、いろんな人に声をかけました。ファンクラブのアプリケーションも作ったことがなかったので、人にお願いしたり。アイディアが常に飛び交っていて、正解がないからこそすごく難しいものではありました。学びがないときっと何もできなかったし、何事もお勉強ですね(笑)。20代の時の自分が必死に音楽を頑張ってくれたからこそ、30歳になってからの人脈もあったし、頼れる人もいたし、やりたいことも明確に固められたと思います。

──“音楽”をテーマにしようと思った理由は何だったのでしょうか?

鷲尾:30歳を超えた節目でもある楽曲なので、今の私は何を歌うことができるんだろうと考えた時に、音楽をテーマに歌詞を書いたことが今までなかったんですよ。「書いたことないんだ、自分。だったら今のタイミングで書くべきだな」と思って。第1弾というものがまた来るか分からないから。歌詞にも《何が歌えるんだろう》と書いてるんですけど、葛藤の中から自分自身をそのまま表現するものって音楽しかないなと思ったので。今までの経験や、グループ活動を通して感じたことも歌詞に込めました。それがあったからこの曲が生まれているので、感謝の気持ちも込めて、全部表したいと思って。

──さまざまな感情が混在しているけれど、音楽にたどり着いているんですね。

鷲尾:音楽活動の中ですべて投げ出して捨て去ってしまって、新たな人生を歩みたいと考えたことって何度もあるけど、結局は音楽にしがみついて、自分はここしかないんだって。いつも悩んでは戻ってきての繰り返しで。そういうことも隠さず歌詞に書きました。嫌になるほど歌った曲ってたくさんあるんですよ。どこで歌うにもこの曲ばかりだなとか、本当は別の曲を歌いたいけどやっぱりこの曲なんだなとか。当時はそう思ってしまう自分もいたんですけど、今思うと、その曲に人生を変えてもらっているし、何度も背中を押してもらっているし。そういう曲がグループ活動の中でもたくさんあったなと思うので、それが1サビに書いた内容です。人生を振り返って、点で覚えていることがあるじゃないですか?こういうことがあった、あの曲を歌ってたなとか。そういうものが全部入っています。

──グループ活動をされていた頃を改めて振り返ると、どんな時間だったと思いますか?

鷲尾:グループの色や世界観が決められているからこそ、そこに自分を染めていくという意味では、自分の表現の幅を広げる勉強にもなりました。いい面もたくさんあるけれども、自分って何? と聞かれた時に、パッと答えられるメンバーっていたんだろうかって。自分で表現できるものはこれだ!というものは持っていたつもりではあるけど、今思い返すと本当に未熟だったと思うし。自分の好きな表現が当たり前にできないということはありましたね。自分が頑張って作った曲、0から1にして作った曲も思うように伝わらなかったりとか、心ない声に傷ついたりとか。表に出る人たちは、そういう声に耐えながら生きているじゃないですか? 当たり前と言われたら当たり前だけれども、自分は人よりも多かったと思うから。それを正解と言うための自分の思いは正義だと思うし、あなたの慕う正義も正解だと思うということを伝えたくて。人それぞれの気持ちがあるからいろんなものが生まれていくじゃないですか。だからと言ってその気持ちを押し付けて人を傷つけるべきではないから、SNSで心ない言葉をつぶやく人たちに言いたいです。アウトロ部分とか特に。あなたはあなたで正解だけど、人を傷つけるべきじゃない、みんな正解なんだよっていう意味で。これはグループ活動で学んだことです。

正解は自分で作るもの

──「正解」というタイトルは制作しながらもう決めていたんですか? それとも最後に名付けたのでしょうか?

鷲尾:最後に名付けました。タイトルって歌詞の中で何回も繰り返すものだと思うけど、この曲は最後に一言しか入っていないんですよね。自分の人生のテーマは「音楽」と、「正解は自分で作るもの」だと思っています。自分で選んだ道が正解だし、誰に何を言われることでもないと思っているので。みんなにも自分を見失いそうになった時には、これが今の自分なんだと思い返してもらいたいし、あなたのその気持ちは間違ってないし、それも正解なんだよということを、自信を持って進んでもらいたいという思いで、このタイトルにしました。

──制作の工程としては、まず曲があって作詞をされたんでしょうか?

鷲尾:そうですね。曲が決まってからも、もっとAメロを変えようとか、曲の構成とかアレンジをどんどん肉付けしていって、まとまってから歌詞をつけるという作業でした。バラードとか、ジャンルの候補はいくつかあったんですけど、移籍後1曲目ということもあって、勢いのある曲の方がインパクトがあるかなとか、自分が言葉を乗せやすいかなと思ったので、この曲を選びました。

──作詞はどんな時に書かれましたか?

鷲尾:夜です! あと移動中、飛行機の中とか。やることがないじゃないですか? 観れるものも映画しかないじゃないですか(笑)? だから映画を観ながら書くこともあるし、家にある本を何冊も出してきたりもします。小説って忠実にいろんな表現がされていて、中性的な表現とかも多いから、パラパラとめくって言葉の言い回しとか、引き出しを増やしたりしています。

──作詞は岡嶋かな多さんとの共作ということですが、どのように進めていきましたか?

鷲尾:一緒にスタジオに入って作らせていただきました。枠組みを作って「これどう思いますか?」「どっちのパターンがいいと思いますか?」と聞いて、自分だけの感性よりもプロの意見を取り入れたりしました。「声を入れた時にこっちの方がいいと思うよ」っていうこととか、自分じゃ分からなかったりするから変えていったり、2人でワードを出していったりしました。

──制作しながら景色として浮かんでいたことはありますか?

鷲尾:デビュー前の自分自身が、今の自分を見ているところがパッと出てきました。過去と今、ネガティブな自分とポジティブな自分が音楽というものでつながって。二面性みたいなものを、MVや歌詞で伝えられたらいいなと最初に思いました。

──レコーディングはスムーズにいきましたか?

鷲尾:全然いかなかったです(笑)。こういうロックな曲を今まで歌ったことがなくて、どういう表現が合ってるんだろうなと何度も繰り返して、その中から正解を探して行きました。いつもディレクションしてくれるプロデューサーの方も「いや、もう1回…」とか言って、テイクを重ねて4〜5時間ですかね。みんなで作り上げた曲になりましたし、学びになりました。

──普段はどんなことからインスピレーションを受けることが多いですか?

鷲尾:アーティストのライブを観たり、旅行したりかな。旅行している時って音楽を聴く機会が増えるじゃないですか? その国の音楽とか。英語だから意味を翻訳すると、日本語だったらくどいような歌詞が書かれていたり。さらけ出して書いているような洋楽も好きなので、そういうものがきっかけで曲を作り始めたりもします。旅行していると、こういう時にバックグラウンドで流す曲があったらいいなとか、自分がほしい曲、自分の感性に寄り添った曲がインスピレーションとして湧いてくるかもしれないです。

──先日もご友人に会いにオーストラリアに行かれていましたよね。旅行がお好きなんですか?

鷲尾:20代の時は普通に好きっていう感じだったんですけど、30代になって、行ったことのない国がたくさんあるってもったいないと思うようになって。日本の文化だけに触れて、日本で一生を終えるより、いろんな国の文化に触れて、世界遺産を見て有名なごはんを食べて…そういう風に経験を増やしたいなと思うようになりました。

──その経験を生かす場が今後も作れそうでしょうか?

鷲尾:30歳はいろんな経験をしたい、がテーマです(笑)。ファンの皆さんとも定期的に会える機会を作って、期間が空かないようにファンミーティングなどやりつつ、ライブももう少し大きな箱でやれたらいいなというのを計画中です。去年がインプットだとしたら、今年はアウトプットの年として、作ってきた音楽たちをやっと出していけるなと思っています。

インタビュー・文:長谷川チエ

鷲尾伶菜「正解」

2025年3月3日(月)リリース

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https://lnk.to/reinawashio-seikai


ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2017年より『Culture Cruise』を運営開始。 ライター・インタビュアーとしてカルチャーについて取材・執筆するほか、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。ライブレポートや取材のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。