【れん 20歳を祝うバースデーライブ】東京公演ライブレポート

アーティストのれんさん特集、第1弾のインタビューに続き、第2弾はライブレポートです。2023年6月25日にVeats Shibuyaで行われた『れん ONEMAN LIVE TOUR 2023 -20-』東京公演のレポートをお届けします。

インタビューはこちら


誕生日を目前に控えたれんさんへの、10代最後のインタビュー。

「もうすぐ20歳の誕生日を迎える実感は?」と伺った時、

“20歳の当日にライブを計画してしまったが故に、誕生日よりもライブという認識が強くて。ライブの後に誕生日がついてきてる感じです。”

まずはライブを成功させること。れんさんはそう答えてくれた。

そんなバースデーライブ当日はあっという間にやってきた。

『れん ONEMAN LIVE TOUR 2023 -20-』

会場が暗転し手拍子で迎えられる中、バンドマスター、ベース、マニピュレーターの齋藤大陽さん、ギターの坂本遥さん、ドラムの直井弦太さん、キーボードの翔馬さんら、サポートメンバーが登場する。

そしてれんさんが現れると拍手が湧き起こり、すぐに「緋寒桜」からのスタート。

「東京はじめます! よろしくお願いします!!」

短い挨拶から、一気に「空っぽ」の世界へ。言葉を紡ぎながら語るように歌うれんさんと、聴き入る観客の姿が印象的だった。

最初のMCでイスに座る瞬間の「よいしょ」で会場の空気が緩む。MCになると突然素に戻るのはワンマンの時のれんさんの特徴。なぜか無性に安心してしまう。

そしてすぐに「きみのうた」へ。

パフォーマンスの緩急のつけ方はアーティストによって個性が出るけれど、れんさんは一呼吸で空気を変えてしまう。情感を込めて歌う姿を目にしてそう感じる。

「初めて僕のライブに来てくれた方はどれくらいいますか?」と挙手を促すと、たくさんの人が手を挙げる。

「ライブを観に行きたいと思ってもらえるアーティストになることが僕の一つの目標だったので、新しく観に来てくれた方がこんなにも増えて嬉しいです」と感謝を伝える。

スマートフォンのライトを照らしながら歌う「Promise」。ライブを重ねるごとに表現力も増して、観客もそれを丁寧に受け取っているように思う。

ここでバンドメンバー3人が捌け、「氷解」をスローテンポなキーボードの伴奏のみで歌い上げる。

バンドアンサンブルが映える曲ではあるが、あえてシンプルなアレンジで魅せる心憎い演出。

インタビューの時、「個人的には『赤』とか『ゆらせ』みたいにれんさんの気持ちが乗ったような曲が推し曲です」とご本人にもお伝えしたのだけれど、一方でこの透明度の高い切なさを纏えるのも、れんさんのかけがえのない魅力なのだと、この日の「氷解」を聴いて思う。

バンドセットに戻って披露されたのはVaundy「恋風邪にのせて」、Mrs. GREEN APPLE「私は最強」のカバー。

TikTokのフォロワーは95万人以上。数々のカバー曲で多くのリスナーの心を掴んできたれんさんのカバーには、常に注目が集まる。

続く「ゆらせ」では、バンマスの齋藤さんがタオルを回して見せると、観客も一緒になって回し始める。5人組バンドのライブを観ているような気分になる。

インタビューで明かしてくれた、常に高い壁に挑戦してきた過去と現在のれんさんを思うと、よりこの曲が心に響く。

バンドによるブリッジとソロパートの後、徐々に「赤」の世界観に繋がっていくステージに、再びれんさんが現れる。

アコースティックギターがリードするアレンジは、バンドスタイルを生で体感する醍醐味を存分に発揮していた。

ここでエレキギターをチューニング中のれんさんに、会場からHappy Birthdayが自然と歌われるサプライズも。

バンド紹介の後、撮影OKだった「最低」はエレキギターで。続く「フシアワセ」はアコースティックギターで。ギターを抱えるれんさんの姿は、観るたびに様になっていく。

ギターのリフ、バンドのアレンジが映えていた。バンドメンバーのスキルフルな演奏も、このライブを印象的なものにしてくれた。

そして最後の曲は「変わりゆく季節」。

「15歳の時に出会った大切な人がコロナで亡くなってしまって。この曲を重ねて聴くと、命の儚さとか、生きてたらどんな風に僕の活躍とか、音楽を聴いてくれてたのかなと思うと悔しいし、だからこそその人の分まで強く生きて、形に残せるものを残していきたい、音楽を続けて行きたいなと思っています」と語り、最後の最後まで気持ちを届けるような歌唱だった。

名残惜しい余韻を残し、5人はステージを後にした。

アンコール〜終演後

迎えたアンコールでは、れんさんとサポートメンバー全員がツアーグッズの白Tシャツを着て登場する。

「感謝だけは忘れずに生きていきたい」「こんな息子を育ててくれた母親は本当にすごいと思います」と、スタッフや家族など、身近な人への感謝を伝えたMCに続き、ここで新曲「正論さん」が披露される。

インタビューでは、元々は恋愛の曲で、レコーディング後に歌詞を書き直して完成したと明かしてくれた。ライブだと気持ちが乗るとも語っていた渾身の1曲は、躍動感をもって会場に飛び立っていくようだった。

ラストにはデビュー曲の「嫌いになれない」を熱唱し、ロングトーンがひときわ会場中に響いた。

最後に「終わってしまうのが寂しいです。皆さんに会えて本当に楽しかったし、生で聴いてくれてるっていうのが本当に嬉しいです。これからも音楽は続けていくし、声が出なくなるかぎり歌い続けるので、どうぞれんをよろしくお願いします」と告げ、全14曲のステージが終了した。


公演後のれんさんは、とても清々しい表情で迎えてくれた。

「みんなが誕生日をお祝いしてくれて嬉しかったし、一緒に過ごせてよかったです」

ステージを降りると、相変わらず屈託のない笑顔に戻っているけれど、公演前とは違う顔つきで達成感のようなものが感じられた。

「どうでしたか? 記事、書けそうですか?」

そんなことまで気にかけてくれて。こんなにいいライブだったのだから、書けます。書かせてください。

インタビューとライブ、2度の取材を通じて、れんさんはずっと心を開いて向き合ってくれた。ずっと前から知り合いだったみたいに笑いかけてくれた。

20代の幕開けという人生でたった一度きりの日に、みんなと過ごすことを選んでくれてありがとう。会場にいた誰もが、きっとそんな気持ちだったと思う。

帰りがけに再生したこの日の曲たち。何度も聴いたはずなのに、新しい本のページをめくる時のように新鮮に聴こえてきた。

撮影 / 森好弘、取材・文 / 長谷川 チエ

『れん ONEMAN LIVE TOUR 2023 -20-』東京公演セットリスト

  1. 緋寒桜
  2. 空っぽ
  3. きみのうた
  4. Promise
  5. 氷解
  6. 恋風邪にのせて(Vaundyカバー)
  7. 私は最強(Mrs. GREEN APPLEカバー)
  8. ゆらせ
  9. 最低
  10. フシアワセ
  11. 変わりゆく季節
    -Encore-
  12. 正論さん
  13. 嫌いになれない

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!