【ライブレポート】たった一人に贈る『Personal Music』上村翔平ソロライブ

2025年3月28日、THREE1989のボーカル・Shoheiが、ソロとして『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』を開催。Culture Cruiseではライブレポート&ライブ後のインタビューをお届けします。まずは1部・2部のライブレポートから。

1部

全席完売し、配信チケットも販売された『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』。この日のMCは、本公演のディレクターであり、『Personal Music』の依頼者でもある朝戸佑飛さんが務めた。

「『Personal Music』、それは世界に一つ。あなただけの曲。THREE1989のボーカル・Shoheiが、あなたの人生に寄り添って作り出す人生の贈り物です。これまで手がけた曲は200曲以上。依頼者お一人お一人にストーリーがありました。ある方は大切な恋人へ。ある方は会社を守る部下や社員へ。ある方は感謝を。ある方は謝罪を。そのどれ一つとして同じものはありません」と紹介を受け、上村翔平が拍手で出迎えられる。

スタートはTHREE1989の最新曲「Down Town」から。カラフルなライティングと軽快なピアノに乗せ、さっそくTHREE1989のライブとは違ったグルーヴを纏っている。

「皆さんこんばんは。お集まりいただきありがとうございます。上村翔平と申します。『Personal Music』というものを2年くらいやってきて、応援してくれる仲間も増えて、今日は初舞台です」と挨拶。

さらに「普段はTHREE1989というバンドをやっていまして、踊れるような音楽をバンドでやっています。今日は淡路島から来てくれた僕のマイメンピアニスト、俊幸(しゅんこう)とやらせていただきます! とピアノ・山元俊幸を紹介する。

「金曜の夜ということで、ゆっくりお酒を飲みながら、美味しいお食事をされながら、いい時間を一緒に作っていきたいと思います」と告げると「High Times」へ。THREE1989の定番曲であるパーティーチューンもJazzyに変身した。

「めっちゃ嬉しくて…」と話し始めると早くも感極まり、「やめよう、後で話そう! 歌えなくなるからやめときます(笑)」と一旦仕切り直し。

「今日はお声がけくださった方々がお見えになっています。その方、そして皆さまに向けて1曲1曲を大切に歌います」。緊張していることを伝えつつも、自然体なMCはいつものTHREE1989のライブと変わらない翔平の姿があった。

3曲目に披露されたのは、このライブのディレクターも務める朝戸佑飛さんに贈った「Flowers」。朝戸さんは「活動のフィールドが変わったり、仕事のステージが上がったりすると、それまで仲良くしていた人と少しずつご縁が離れていってしまう感覚があります。そんな寂しさ、あるいは次のステージに挑戦する時の応援歌を翔平さんにはお願いしました」と依頼したテーマを話した。

〈探していた花 やっと見つけた〉翔平のボーカルがそっと背中を押すような、美しい応援歌。

『テラスハウス』を通じて翔平の大ファンになったという朝戸さんは、「好きなアーティストが自分のことを知ろうとしてくれるのは代えがたい経験、ネガティブな印象のテーマが真逆に変わった、翔平さんがポジティブに変えてくれた」「セッションでは『花』というテーマは僕からは出していない、具体的なエピソードを話す中で、翔平さんが『花』という印象をつけてくださった」と話した。

4曲目はTHREE1989「Rambling Rose」。薔薇色のライトが降り注ぐ中、翔平のボーカルと会場の空気がぴったりと呼吸を合わせていく。「また会いましょう」というテーマで作られたというこの曲の真価がこの場所で、いつにも増して花開いていたように感じられた。

続いては、配信でご覧になっているKさんへの曲。Kさんの海外に住む友人に向けた曲で、精神的に弱っている時期に励ましたいという気持ちで依頼したという。

オレンジの夕日が大好きだということで作られた「Orange Sunset」。勇気づけられる歌詞が心に深く刻まれるが、軽快なサウンドはどこかホッとするような、安心する気持ちにさせてくれる。

6曲目はHさんへの曲「By My Side」。1年間の闘病の末に亡くなったお母様に向けて。最後に伝えたかったけれど伝えられなかった言葉を、母に伝えてほしいという依頼を受けて制作したという。

母の四十九日を迎える前に作られた曲。〈あなたの子供に生まれたこと 今なら良かったと思えるよ ただ最後は笑って見送るね〉会場からはすすり泣く声も聴こえた。

1部のラストは、3曲目に登場した朝戸さんの母、Jさんに贈った「翡翠色の世界」。故郷である鹿児島県・徳之島で過ごした、優しく包み込んでくれた懐かしい日々をカウンセリングで翔平に伝えたという。

穏やかなバラード、流れるようなピアノの波を泳ぐように、力強いボーカルが碧く壮大な海を思わせた。

Jさんは「伝えたかったことを表現していただけた。一本の糸が線になって面になっていくような、故郷の海が自分を包み込んでくれているような曲で感動しました」と語った。

盛大な拍手の中、あっという間に1部が終了した。

2部

小休憩を挟み、2部がスタート。夜もさらに深まり、観客は美味しい食事とお酒、おしゃべりを楽しんでいるようだった。テーブルを挟んで「はじめまして」と笑顔で乾杯する姿も見受けられる。

ORIGINAL LOVEの名曲「接吻」のカバーから、THREE1989「アイイロ」へと繋がる、この日限りの贅沢なmixに観客も酔いしれた。

続いてはIさんへの曲「hallelujah」。人生の前半戦では、辛い人生を送ってきたと思っていたが、学生時代の卒業ビデオを観て、過去の明るい自分や関わってくれた人、環境に助けられてきたから今があると感じた。だけど感謝と言うには違和感があった。その気持ちを伝え、翔平もそのビデオを観ながら曲作りをしたという。

〈天かけるシャボン玉 弾く音色は讃美歌〉大空を見上げたくなるような伸びやかな曲、見上げればきっと希望が降り注いでいる。

曲を受け取った時Iさんは、何時間も座り込んで放心状態になったと話した。

続いてはリアリティ番組『テラスハウス』で共演した盟友に贈った曲「Not So Bad」。

「ショーンです!」と翔平から紹介され、岡本至恩が座席を立ち前に出る。昨日この曲を受け取ってから、1日中聴いていたという。

〈君と巡り会えた幸せ あなたに渡された幸せ〉〈待ち侘びた ほら世界は 僕の事をずっと呼んでいた〉

心躍るようなピアノに乗せ、ここからまた大きな一歩を踏み出す友を、優しく鼓舞するように歌われた。

「7年前くらいから兄貴のように慕わせてくれた」と話す至恩は、「曲をもらって最初はいちファンとして嬉しくて舞い上がっていたけど、聴けば聴くほど歌詞が刺さってきた。落ち込んでいる時期もあったけど、悲しい気持ちじゃなくて温かく受け入れられるような気持ちにしてくれた」と目の前の親友に感謝を伝えた。

ここでセットリストの順番を考えながら、次の曲をセレクトする翔平。これもシンプルなステージセットと生ライブならではの楽しみ方である。

そして選ばれたのは、配信でご覧になっているEさんに贈られた「Love my self」。

「この世界があるのは、一人一人が細胞のように相互作用して成り立っていると思うので、その支えのおかげで家族の皆さんも救われているし、元気になっているんだよということをお伝えしたくて作った曲です」と翔平自身による説明のあとに始まるピアノ。

Eさんのお名前がさりげなく刻まれた歌詞、まさに『Personal Music』だから生まれた楽曲である。

〈君の道のりが未来の希望を作った だから信じて これからを〉画面の向こうに呼びかけるように歌った。

「エネルギーを1曲1曲、こんなに放出することがなくて、4日くらい寝込むかもしれないです(笑)。でもすっげー楽しいです!」と、MC中もいきいきとした表情を見せる翔平。

続いてはディレクター・朝戸さんの父、Mさんに贈った曲「恋文」。先ほどの母、Jさんも含めファミリーでの登場となる。Mさんは、「簡潔に、家内に対する感謝と謝罪です」と楽曲のテーマを発表、会場からは笑いが起きる。

翔平は「Mさんご自身が天国に行かれた時に、遺せるような想いの曲にできればというお話をいただいて、未来の遺書のように書かせてもらいました。素敵な徳之島の“翡翠色の砂浜”を思い浮かべながら聴いていただけたら嬉しいです」と歌い始める。

〈旅の終わりまで愛してる〉〈手紙の代わりに贈るラブソング〉どこまでも続く砂浜のように、どこまでも純粋で澄み切った恋の歌だった。

「『Personal Music』は僕の曲じゃないけど、どんな曲よりも僕の曲になっているんです。今日初めて歌わせてもらって、僕自身が成長させてもらっている感覚になります」とMCで感謝を告げた。

ここで「もう1曲だけTHREE1989の曲をやってもいいですか? 2曲ありまして、どっちがいいか拍手の大きさで決めたいと思います」と説明。

晴れの曲か、雨の曲か。曲のタイトルは明かさないものの、俊幸がピアノでそれとなくアシストする。

観客の気分で決まるセットリストは、「UMBRELLA」が見事選ばれた。通り雨のようなピアノに、傘を弾く雨粒のように軽快なボーカルが心地よい。何度も聴いたはずのこの曲も、見たことのない表情を見せた。

ピアノの俊幸は「お客様の想いを聞いて、(曲を)聴くのは初めてですよね。直前にお客様から話を聞けて、ちょっと泣きそうになってます。それくらいいいライブですね」と話した。

最後に歌われたのは、Yさんに向けた曲「One day」。デザイナーを目指すために上京したというYさんは「地元で長く過ごした春夏秋冬、家族5人で過ごした時間を、曲にしていただければなと思い、依頼させていただきました」とテーマについて話す。

〈離れていたって渇いた心さえも 思い出がきっと潤すだろう〉

爽やかなイントロから壮大なサビへ。桜吹雪が舞うようにクライマックスを迎えた大サビ。Yさんが歩んだ長い年月を感じるこの曲に、名付けられたタイトルが「One day」。日々の大切さを実感する。

Yさんは「思い出を見事に全部曲に詰め込んでいただいて、この曲を聴くたびに地元や家族を思い出します」と話した。

「僕の中では普通ライブって終わりに向かうと喉を消耗して歌えないシーンが出てくるんですけど、逆に元気をもらっている気がします。重い言い方をすると使命だし、本当にやりたいことだと思っています」

「これからも皆さんの人生の1曲を作らせていただければと思っています。今日は長い時間、ありがとうございました!」と結んだ。

そして、アンコールの拍手が自然と沸き起こる。

「こんなにバラードを人生で歌うことはもうないかもってくらい(笑)、本当に初めてです」と笑い、「真摯にまっすぐな目で観てくださって、バラードでもこんなに聴いてくださる方がいらっしゃるんだなと思いました」と感謝を伝えた。

ここでも拍手の大きさで曲が決まり、未発表のソロ曲を披露することに。

「中学生の時、友達といざこざがあったり、いじめっぽいことがあったりしたんですけど、だからこそ向き合いたいなと思って、2022年、熊本に帰って中学校の友達を呼んで飲んだんです」と話し始める。

「彼らは僕をいじめたことを覚えてないんですよね。僕は勝手にいじめと思っていたけど、彼らからしたら僻みだったり、弄りだったりしたので、自分の考え方一つだなと思ってすべてを許そうと、全部リセットしてもう1回東京で音楽を頑張っていこうと思った時に作った曲です」と打ち明け、「ララバイ」を初披露した。

最後には翔平自身の『Personal Music』を聴けた気がした。

2部もあっという間に過ぎ、『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』第1回目の開催は拍手喝采の中、幕を閉じた。

『Personal Music』のパーソナルとは誰のことなのか。「個人」を指すこの言葉に、どれだけの人の影があるのか。

依頼者の人生が上村翔平のボーカルと、山元俊幸のピアノを通して、この日私たちの元に届いた。

一つとして同じ人生はないけれど、彼らが歩んできた日々がなければ、この日私たちはあの歌を聴くことはなかった。

たった一人のために作られた、極めて個人的だったはずの音楽が、多くの人に向けて解放される瞬間を観たからなのだろうか。清々しさで心が満たされた。

依頼者だけでなく、観客一人ひとりに音楽が届けられる瞬間を見るようだった。

聴けば聴くほど迷路に迷い込むような感覚になるが、目の前の霧が晴れ、道は明るく照らされている。

「死ぬまでこの企画をやり続けたい」

ライブ後のインタビューで、上村翔平はそう語った。

続きは近日公開のインタビューへ。

撮影:内田智之、取材、文:長谷川チエ

■次回公演のお知らせ

Shohei Uemura Solo Live -Personal Music 2-

2025年6月27日(金)開催予定

【ご予約フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/1B0dpf_lJRywN-1Ad9cLBqfvIB7FVz6rutNOwOMqRLn8/viewform?edit_requested=true

■Personal Music ご依頼受付中

「あなたの物語を、あなたの音楽に。」

Personal Musicは、依頼者のエピソードや想いをもとにオリジナルの楽曲を制作するプロジェクトです。
受け取る方が価値を決める“ドネーション制”で、個人の記念や大切な人への贈り物としてもご利用いただけます。

【Personal Music ご依頼フォーム】
https://forms.gle/L8LB6hivsMv7v5Ry7

あなたの歌を、いつかライブで歌える日が来ますように。

▼『Personal Music』プレイリストはこちら
https://www.youtube.com/playlist?list=PL-JHZEWnSBx091oQnWedACdfnFshu9J1X

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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2017年より『Culture Cruise』を運営開始。 ライター・インタビュアーとしてカルチャーについて取材・執筆するほか、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。ライブレポートや取材のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。