Bobby Glenn「Sounds Like A Love Song」サンプリングの曲を集めてみた

Culture Cruise久々のサンプリング特集として、1976年の名曲、Bobby Glenn「Sounds Like A Love Song」使いの曲を集めてみました。


Bobby Glenn「Sounds Like A Love Song」

かれこれ20年近く前、渋谷・宇田川町の中古レコード店で見つけたBobby Glenn「Sounds Like A Love Song」の7インチレコード(A面はTom brock「There’s nothing in this world that can stop me from loving you」という最高すぎる組み合わせ)。

試聴して「こんなおしゃれな曲が世の中に存在するのか」と衝撃を受けて、その場で購入した。それからずっと大切に保管し、時々聴いたりする大好きな曲。

イントロを聴いただけで、ほとんどの財産を本とCDとレコードにつぎ込んでいた極端な学生生活の思い出がよみがえる。

2022年、ふいにこの曲を耳にする機会があったので、今回はBobby Glenn「Sounds Like A Love Song」がサンプリングされている曲を並べてみようと思う(ずっとやりたかったのです!)。

Queen Naija, Big Sean – Hate Our Love

まずこの記事を書くきっかけとなった、Queen Naija, Big Sean「Hate Our Love」。何も知らずにSpotifyで再生して、イントロを聴いて「うぉーー!」と声をあげた。イントロからまんま使いだったので。

デトロイト出身のシンガーソングライターQueen Naija(クイーン・ナイジャ)とラッパーのBig Sean(ビッグ・ショーン)のコラボ曲。

2022年になっても新鮮に聴こえてくる「Sounds Like A Love Song」、一体どんな仕掛けがあるのだろうかと探りたくなってくる。

HIPHOPに寄せたビートの強さやパンチインをひたすら重ねている感じは2022年っぽい。

しかし特に目新しいサウンドというわけでもなく、「Sounds Like A Love Song」をサンプリングする時点でその路線に振り切ったのかもしれない。

原曲の「Sounds Like A Love Song」が好きすぎるので、この「Hate Our Love」が好きなのかどうかももはや自分では判断できない。でも2022年に使ってくれてありがとうだし愛着のようなものを感じるのは間違いない。

JAY-Z – Song Cry

「Sounds Like A Love Song」使いの曲といえば、誰もが思い浮かべるくらいの定番曲。

いつしか原曲が「『Song Cry』ネタ」と言われるくらいになり、当時元ネタを知らなかった層にも浸透させた。

大胆に原曲が使われているが、ラップとビートでここまでJAY-Zの曲と認識させてしまう。

原曲の引き出し方が絶妙に上手くて、サンプリングとはつまりこういうことなのだと思わせるお手本のような曲だと思う。

JAY-Zにサンプリングされれば、原曲のアナログ盤はプレミア価格に高騰する。サンプリング王者と言っても過言ではないくらい彼の存在感は別格だと思わされる。

Keyshia Cole – You’ve Changed

Keyshia Coleが2005年にリリースしたデビューアルバム『The Way It Is』収録の「You’ve Changed」。

2021年に引退を発表したKeyshia Coleの楽曲は、今となってはとても貴重に感じる。

90’sの流れを受けて、00’sは洗練されたサウンドを用いたサンプリング曲がたくさん生まれた。コーラスの重ね方を聴くだけで時代背景が見えてきそう。

Keyshia Coleのサンプリングとしては、個人的にはNotorious BIGへのトリビュートソングである「Let It Go」もかっこよくて好き。

Drake – When to Say When

ここに挙げた曲の中では、もっとも原曲の風味が薄いかもしれない。音がブンブンしている。

Drakeのサンプリングの仕方はかなりオリジナリティがあると思っているので、Drakeの曲の中では元ネタを生かしている方だと思う。

「Sounds Like A Love Song」をこんなに愛している自分が、こういう使われ方をすることでどう反応するか、自分自身を俯瞰で見てしまうのだが、原曲にはない楽しみ方ができるのでこれはこれで良いのでは、という結論に落ち着かせている。

往年のBobby Glenn好きのリスナーさんがこのブンブンしてる音をどう思うかは分からないけれど、Drakeにまでサンプリングされる「Sounds Like A Love Song」様はなんてハイブリッドイケメンなのだろうかと思う。

ちなみにこの動画の2:22から始まっている曲は、同日にリリースされた「Chicago Freestyle」で、Eminemの「Superman」をサンプリングしている。

KREVA – 音色

日本のリスナーにはこの曲の印象も強いかもしれない。サブスク中心に聴き方が変わっても、イントロから惹きつけられる。

原曲のメロディをちゃんと耳で捉えながらラップが乗せられていて、JAY-ZともDrakeとも違うリスペクトを感じる。

しかも「Sounds Like A Love Song」に日本語をあてるのは完全に無理っぽいのに、流れるようなフロウでヴァースも繋がっている。

それはラップのみならず、ヴォーカル力もあるKREVAさんならではのスキルなのではないかと思う。

2004年リリースの「音色」は何度か再録やRemixなどで鮮やかによみがえってきたのだけれど、中でも「2019 Ver.」は、バンドで録り直したことで際立ったサウンドが、さらに魅力的になっている。

音色〜2019 Ver. 〜

実はこのバージョンがリリースされた時から、いつかCulture Cruiseで取り上げようと思っていたが、まさか3年も経っていたとは思わなかった。MVのロケーションも込みで素敵なのでぜひ再生してください!

音の厚みは増しているのに、15年歌われて曲自体も大人の落ち着きを得たかのように、元々の「音色」とはまた別のシンプルさを感じる。

経験によって身に付けてきたラップスキルもあれば、削ぎ落としていくスマートさも深みにつながる。

「最新曲が一番かっこいい」と常に思わせてくれるのは、KREVAさんご自身がそうやって更新を重ねてきたからなのだと、この曲を聴く度に考える。


大好きな曲だけに、どんな使われ方をするかというのは最初は気になるけれど、結果的に全部好きになってしまう。

古い曲には、きっと経過した年月だけたくさんの人の思い出が詰まっている。

サンプリングによって何度も生まれ変わることで、それ以上の数の新たな思い出が足されていくことが、サンプリングの素晴らしさなのだと、改めて思いました。

文 / 長谷川 チエ

▼今回取り上げた楽曲のプレイリストはこちら

▼The Weeknd『Dawn FM』レビュー




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!