【映画『明日を綴る写真館』SAKIインタビュー】シャッターを切るように一瞬を収めた主題歌「瞬」

現在公開中の映画『明日を綴る写真館』に出演、主題歌を担当するSAKI(咲貴)さんにインタビューしました。映画や主題歌について、SAKIさんと音楽についてなど語っていただきました。

映画『明日を綴る写真館』

ーー本作はとても豪華なキャスティングですが、皆さんの飾らない自然な表情が印象的で素敵でした! 観客として作品を観るということはできたでしょうか?

3回観たんですけど、未だに客観的には観れないかもしれないです。でも何回も観ることで、(平泉)成さんのナチュラルなお芝居とか、そこにいるだけで絵になる佇まいだったりとか、細かいところに気付けます。キャストの皆さんの機微が表現されている映画なので、観ていて当たり前に過ぎていく一瞬を、写真や映像に残したような作品になっていて、観る度に新しいことに気付くのが楽しいです。

ーーではキャストとして、完成した作品を観た時はいかがでしたか?

撮影のことを思い出すと涙が止まらなくて。みんなの温かさがあってこそのこの作品なので。皆さんの表情とか目とか、ここが好きですとか……挙げていったらキリがないですね。映画を観た時に、シャッターを切るみたいに、みんながゆっくりゆっくりまぶたを落としていくような、そんな一瞬が多くて、曲のタイトルを「瞬」と付けました。目を伏せてる成さんの姿がすごく好きで、その一瞬一瞬を収めてくれているからこその世界、この作品があるんだなと思ったので、観てくださる方にも、この温かさがどうにかして伝わってほしい! と思って(笑)。現場の優しさが全部、作品に表れているなと思いましたね。

ーー出演はどのような流れで決まったのでしょうか?

オーディションがきっかけでした。オーディションでけーき(景子)ちゃんのセリフを読ませていただいて、その日のうちに秋山(純)監督から連絡をいただきました。すっごく嬉しくて!

ーー即決だったのですね! お芝居はいつ頃からやっていらっしゃるんですか?

趣味で弾き語りをして、部活でお芝居をしていました。小・中学校は演劇部で、大学では演技の授業を専攻していました。高校では、バンドなどの音楽をやっていてお芝居は一旦諦めようとしていたんですけど、どうしても諦めきれなくて……。歌とお芝居をやりたいと思っていた小さな頃の夢が、こんな形で実現する機会をいただけて、小さい頃から見てくださっている方々にも「夢は叶うんだね」って言われて、嬉しかったです。

ーーバンドも経験されているんですね。

はい。以前ギターボーカルをやっていて、お小遣いは全部エフェクターに費やしていました。エフェクターが大好きで(笑)。

ーーギターを始めたきっかけは?

小学校4年生くらいの頃に、ギタリストのMIYAVIさんのギタースラップを見たのがきっかけです。

ーーそれは意外な一面ですね! オーディション前に脚本を読んだ時は、どんな印象でしたか?

まず名前がけーきだったので、「けーきで合ってますか?」って聞いた気がします(笑)。原作が漫画ということもあって、かわいらしいセリフを読ませていただいて。大人になるにつれて純粋さ、素直さって無くなったりするじゃないですか? でもけーきちゃんはみんなを優しく包むような感じの子で、純粋に人としてみんなのことが好きで、そういうところに憧れるなと思いながら読ませていただきました。

ーーSAKIさんご自身からも、そういう雰囲気を感じますね。役作りなどはされましたか?

ケーキ屋さんにいっぱい行きました。どういう人がいるんだろうとか、髪色とかは今どうなんだろうとか。けーきちゃんを演じて、こんなにおいしいケーキを、いろんな人が手をかけて作ってくださっているんだなと思いました。よくケーキ屋さんに行くようになりましたね。現場にいる時も、撮影以外でもずっとけーきちゃんだったんじゃないかなと思います。けーきちゃんのおかげで、皆さんとの距離も近くいられたのかもしれません。

ーー監督からは何か指示などはあったのでしょうか?

今まではダークな役が多くて、けーきちゃんが明るい役だったので、不安で秋山さんに連絡して「どんな風に演じたらいいですかね?」って聞いたら、「そのままでいれば大丈夫!」って。皆さんにそうおっしゃるような方で、役者さんをここまで信頼してくださる人ってなかなかいらっしゃらないだろうなと思います。委ねてくれるところに逆に愛を感じるというか、持っているものを引き出そうとしてくださる監督なので、秋山さんすごい好きです!

ーーまさにそのエピソードが分かるような表情だった気がします。主演の平泉成さんとの共演はいかがでしたか?

自分が撮影じゃない時も、成さんに会いにロビーに行って(笑)、お芝居のお話や日常会話もたくさんしました。自分にストイックな方なのに、みんなに対してはすごく大きな心で接してくれて、それがありのまま作品に出ていて。すべてが勉強で、毎日刺激をいただいていました。それでいてチャーミングで、よく連絡くださったりとか。私もいつかこんな大先輩のようになれるかなと思いながら、たくさんお世話になりました。

ーーどんな会話をされたんですか?

成さんは実際にお写真を撮るのが好きで、ご家族のお写真もたくさん撮っていて。「咲貴は普段何を撮るの?」って聞いてくださって「私は空ばっかりですね、空か人です」と答えたら「空か…寂しいな」って(笑)。成さんはお花がお好きなのでお花をたくさん撮られていたりとか。恋バナでも盛り上がりました。「もし大谷翔平さんに結婚してって言われたら咲貴ならどうする?」って撮影中に(笑)。もちろん、どうしたらお芝居が上手くなるかとか、いろいろ教わりました。「上手くなろうとしなくていいんだよ」と言ってくださって、本当にご謙虚で素敵な方ですよね。

ーー佐野晶哉さん(Aぇ! group)とは、お芝居してみていかがでしたか?

太一くんがどんどん柔らかくなっていく姿を、けーきちゃんとして見ていました。実際なら本当は日をかけてほどけていくところが、映画となると短い期間でぎゅっとなるので、その機微が激しくなったりしますよね。でもそれがすごく自然にクレッシェンドしていくような方で、たくさん勉強させていただきましたね。

ーー田中健さんとのシーンも多かったですよね?

はい。ご一緒する時間も長くて、娘役なので「咲貴のこと待ち受けにしてたよ」と言ってくださって、嬉しかったですね。本当に娘みたいに接してくださって、「咲貴」「お父さん」って呼び合ってるんですよ、終わってからも(笑)。キャストの皆さんが、優しいという言葉でまとめたくないくらい温かかったのですごく楽しくて、役者としてももちろんですけど、それ以前に人として、勉強になりました。本当に家族のような現場で、キャストもスタッフさんもみんなで一つという感じでした。

ーー実際に趣味で写真も撮っていらっしゃるとのことで、本作を通して考え方が変わったことなどはありますか?

私がもしカメラマンだったら、普段撮られることのない人を撮りたいなと思いました。撮ってくださる側の方とか、スタッフさんとか。当たり前に生きている世界でいろんな人が関わっていて、ここにある机とか、いろんな人の力があってすべて存在していると思うと、工場とか普段見えない場所で働いている人を撮りたいなと思えました。人の温かさが出ている作品なので。

ーーカメラを持ってお出かけされたりもするんですか?

そうですね。同じ趣味の友達と遠出したり、カメラを持って箱根に出かけたりとか、自然を撮ったり、お仕事の時に持って行ったりもしています。

ーーそれはこの映画がきっかけで始められたということですか?

自分のカメラを持とうと思ったのはこの映画がきっかけですね。それまでは友達のカメラを借りていたので、何がいいかも分からなかったんですけど、撮影監督の百束(尚浩)さんが「NikonのZ fcがいいよ」って薦めてくれて。「買いました!」って報告したらレンズをプレゼントしてくださいました。

エンドロールで聴く主題歌「瞬」

ーーエンドロールが流れた時はどう思われましたか?

「映画館で自分の歌が流れることなんてあるんだ!」って、緊張感がありました(笑)。プロデューサーや監督も寄り添ってくださってできた曲なので、エンドロールまで作品の一部として観ました。成さんを思って作った曲なんですけれど、みんなのことも含まれていればいいなと思って書きました。

ーー曲自体は、映画を撮影した後にできたと伺ったのですが。

撮影中に皆さんへの思いを綴っていたものを、監督に「こんなのできたんですけど…」とお見せしたら、それが主題歌になっていったという感じです。最初は主題歌にしようとか考えていたわけではなかったんですけど。

ーーそこからブラッシュアップして「瞬」が完成したんですね。主題歌に決定した時は嬉しかったのではないでしょうか?

嬉しかったですね! 電話しながら「えぇー!」って歩き回ってました(笑)。レコーディングのギリギリまで歌詞を書いていたので、メロディもちょっとずつ変えたりしました。

ーーメロディはどのように作っていきましたか?

思いついたメロディを声で録音したりしました。出だしは絶対に、声だけで入りたいって思ったんです。それは一番最初に決めていて、そこからどんどん作っていきました。楽曲のプロデューサーのLUCAさんと一緒に、どうすればお客さんに気持ちのいいサウンドで聴かせられるかを相談させていただいて、けっこう調整しましたね。映画となると大きな空間でたくさんの人に届けるということで、ちょっと力を抜く箇所を作ったりとか。歌い方をつぶやくように歌ったりとかもしました。

ーー最初に声で入ると決めていたのはなぜでしょうか?

仮で作られた作品を見せていただいた時に、最後のシーンにきれいなピアノが流れていたので、楽器から入るのはちょっと違うなと思って。あとは、私が純粋に言葉が好きなので、言葉から入りたいという理由もありました。

ーー歌詞はどんなシチュエーションで生まれましたか?

岡崎市での撮影の時に、皆さんへの思いを綴っていたんです。皆さんが作品と向き合っている時間に、私も作品と向き合いたかったので。

ーーそれは曲にするという意識ではなく、純粋に書き綴っていたということですよね? どんな風に書かれていたのでしょうか?

普段から言葉をメモすることが多いです。詩みたいなものもあれば、話し言葉とか、その時の感情で自由に書きました。見返してみると、その時生まれてきた言葉って案外、こんなこと思ってたんだっていうのがありますね。寝てる時に見た夢とか、叶える方の夢も書いたりしています。

ーーどんな夢が書かれているのか、少し聞かせていただけたりしますか(笑)?

20代、30代でやりたいことリストとか、映画のヒロインをやりたい、音楽でデビューしたいとか書いていたので、一つ一つ叶っているなと思っていて。言霊ですね。

ーー言葉にするって大事なんですね! 今後も俳優業とアーティスト業の両輪で活動されるのでしょうか?

そうですね。小さい時から、二足の草鞋は無理だといろんな人に非難されながらも、どっちもやりたい思いがずっと消えなくて。お芝居するみたいに歌も歌いたいし、どちらにも通ずるところがあるので、二足の草鞋を履いて生きていこうと思っています(笑)!

Photo:Satoshi Kobayashi
Interview, Text:Chie Hasegawa


SAKI「瞬」

2024年6月5日(水)デジタルリリース
配信リンク:https://big-up.style/qIsNbwNlNn

『明日を綴る写真館』公式サイト

▼編集後記はInstagramへ

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!