【THREE1989インタビュー】Tokimeki Recordsプロデュースで見出す「Down Town」の普遍性と真骨頂

2025年2月5日に「Down Town」をリリースしたTHREE1989が約5年ぶりに登場。プロデュースしたTokimeki Recordsとの制作などについてお話を伺いました。

THREE1989流「Down Town」カバー

−−「Down Town」のカバーをリリースするお話と、Tokimeki Recordsさんとのコラボ、どちらが先に浮上したのでしょうか?

Shohei:2024年に1年くらい、SNSでシティポップカバーを続けていて「Down Town」もやって僕らも気に入っていたので、この曲のカバーをいつか出したいねと話していたんです。そしてカバー曲をリリースするのならTokimeki Recordsさんとやろうというお話が浮上して「めちゃめちゃいいですね」というところからスタートしました。

−−「Down Town」が収録されている『SONGS』が1975年にリリースされて、今年でちょうど50周年を迎えるそうなんですよね。アナログ盤なども改めてリリースされるとのことで。

Shohei:そうなんですか? すごい!

−−そのあたりも意識されていたのかなと思ったのですが、違うんですね。

Shimo:偶然です! 運命的ですね。

−−原曲には今までどんな印象を持っていましたか?

Datch:あの時代にあのような音楽を作られているのは、かなり最先端なことをされていたんだなという印象を持っていましたね。

Shohei:原曲は基本的にストリーミングにないじゃないですか? でもめちゃめちゃ好きな曲で。たしか大学生の頃だったと思うんですけど、レンタルショップに行って山下達郎さんのアルバムをたくさん借りたんですよ。その中に「Down Town」も入っていて、いい曲だなって。元々シティポップも好きだったので、いつかやりたいなと思っている中の1曲だったので嬉しかったですね。

Shimo:僕はTHREE1989を組んでからシティポップと呼ばれるものをしっかり聴きました。当時から海外でも人気だというのもあって、この2人から教えてもらったりして。去年SNSでカバーさせていただいた時に、どういうコード進行とメロディでどんな楽器が使われているのかなと楽曲を分析して、とても勉強になりました。クオリティも高いし演奏も上手いし、コード進行も特殊だったりとか、2024年は発見がめちゃくちゃありましたね。

−−例えばどんな発見でしょうか?

Shimo:コード進行が特徴的で、THREE1989の音楽と近いところも発見できたりしました。ロックやポップスでは3和音のハーモニーがベーシックなんですけど、シティポップはその和音にプラス1か2くらい足されていて、5和音とかで構成されているんですよね。ハーモニーが複雑になればなるほど、おしゃれに聴こえるというのがあって。そういうところを意識しているのが近いと思いました。

−−実際にカバーしてみて、「Down Town」が長く愛されてきた理由はどんなところにあると思いますか?

Shohei:普遍的な要素が多いなと思っていて、街へ繰り出して、出会いだったりみんなでお酒飲んだりするアクティビティって今でも変わってないなと思います。ラップとかEDMが出てきてBPMが速い曲も流行ったり、今は譜割りが細かくなっているじゃないですか? 一小節に対する歌詞の置き方がぎゅぎゅっとしてきていると思うんですけど、「Down Town」はストロークが長くて一言一言の置き方を大事にしていて、かつ普遍的な歌詞なので、僕らが歳を重ねても聴ける曲はきっと孫の世代まで残っていくんだなと感じました。流行りを追いかけるトライもたくさんしてきたんですけど、やっぱり自分たちに合うのは当時のシティポップのような言葉の置き方で、これをまた大事にすることによって、残っていく音楽が僕らも作れるんじゃないかなと思いましたね。

Shimo:サビが印象的ですよね。《ダウン・タウンへくりだそう》だけっていう。そしてその間(ま)だけで聴かせるというのが、今はあまり見かけないので。

Shohei:間が怖いもんね(笑)。埋めたくなっちゃうんですよ。

Datch:間があるとアレンジ力も大事というか。スタジオでミュージシャンが集まって、コード譜を渡して、その場で演奏しながらアレンジを固めるやり方は、今やっている人はほとんどいないと思うので。ブラスバンドとかもそうですよね。あの時代にしかない雰囲気は、音楽やっている人には勉強になることが多いと思います。サビがキャッチーだから、聴いている人にも愛される楽曲なんじゃないかなと思いますよね。

Shohei:サビの繰り返しはTikTokにも合うと思うし。やっぱり普遍的なんですよね。

−−それだけの名曲をカバーするプレッシャーはなかったのでしょうか?

Shohei:たしかにそうですよね。ご本人が聴かれた時にいいなと思ってほしいというのは頭の中にあったし、ファンの方が多い曲なので、そういう方にもいいじゃんと言ってほしいという意味でのプレッシャーはありましたね。でも自分に合う曲だなと思いましたし、楽しく歌えました。

−−具体的には原曲をどのように解釈して、THREE1989流に落とし込みましたか?

Shohei:歌に関しては、あえて山下達郎さんっぽくならないように頑張りました。リスペクトしている方でもありますから、どうしても似てしまうというか。それが出ないように、自分だったらこういうアプローチだなという歌い方にトライしました。例えばBメロの《暗い気持ちさえ》のところを山下さんはまっすぐ歌っているんですけど、僕はよく使うピッチベンド(しゃくり)を取り入れて徐々に上げていったり、コーラスワークも原曲にはないパートを入れたりしました。あとはずっとサビが同じなので、聴いてくれる方が飽きないように、1番と2番と3番で違う歌い方や入り方を試したりしましたね。35年間生きてきた中の、この歌い方が「Down Town」に対して僕の最高峰ですというのを、ここで表現できたかなと思います。

Tokimeki Recordsとの制作

−−Tokimeki Recordsさんとの接点は今まであったんですか?

Shohei:Tokimeki Recordsのプロデューサーさんはインディーズ時代からの知り合いで、東京で最初にライブをした時に呼んでくれた人だったりします。だからルーツというか、やっと一緒にできたなという感じです。

−− 一緒に制作してみていかがでしたか?

Datch:自分たちだけだとこだわりが出すぎてしまう感があるんですけど、自分たちにはないアプローチだったり、聴きやすさも勉強になったなと思いますね。

Shohei:僕らもデビューの頃は王道のアレンジでディスコサウンドをやっていたんですけど、だんだん新しいことをやりたいと思って、どこか避けてきたところがあったんです。周りのスタッフたちもTHREE1989のディスコチューンがほしいよねと仰ってくれていたので、今回こういうアレンジを提示してくれたことによって、THREE1989のルーツをしっかり表現していきたいというリスタートになったかなと思いました。こういう曲が合うのかなと再認識できたカバーになったと思います。

−−Tokimekiさんとはどのように作業を分担されたのでしょうか?

Datch:最初はこちらにあった素材をお渡しして、トラックはTokimekiさんに調理してもらった感じです。

Shohei:Tokimekiカラーがだいぶ入っていますね。THREE1989のことを思ってこういうアレンジにしてくれたんだろうなというのはとても感じます。第三者だからこそ分かるTHREE1989のイメージというか、真骨頂の部分を感じてくれたんじゃないかな。

Shimo:たしかにね。僕らも3人でずっとやってきたからこその色を出したいという部分もあったので、そこを強めに出していただきました。THREE1989らしさの部分を思ってアレンジしてくれたんだろうなというのはサウンドから随所に感じます。

シティポップとTHREE1989の繋がり

−−リスナーとしては、シティポップとどんな風に触れ合ってきましたか?

Shohei:母の車ですかね。松任谷由実さんがずっと流れてました。「真夏の夜の夢」とか。上京して聴いた、大貫妙子さんの「都会」の歌詞に《その日暮らしは止めて 家へ帰ろう》という部分があるんですけど、連呼されるのでまじで熊本帰ろうかと思いました(笑)。同じく熊本から上京したDJの友達が、「翔平『都会』聴いたらいいやん」って薦めてくれて「そんな曲あるの?」とかいって聴いたら滲みまくって。ノリとかは山下達郎さんの曲もめっちゃいいなと思っていました。「ジャングル・スウィング」とか。

Datch:レコードの再ブームで海外の人が日本にやってきて、竹内まりやさんや山下達郎さんのレコードを買っていくというムーブメントと同時に、「シティポップ」という言葉があると認識したような気がします。元々影響を受けていたのは宇多田ヒカルさんとか、R&Bとか、日本語と英語が入り混じる曲を聴いていたんですけど、シティポップはザ・日本語で。今は使わない言葉遣いとかもあったりして、いい感じの昭和感というか。サウンドもシンプルで、散歩しながら聴けるような音楽に惹かれる部分もあります。

−−THREE1989さんの音楽としては、これまで制作する上でシティポップを意識してきたところはあるのでしょうか?

Shimo:それはあるかもしれないですね。結成当初一緒にやっていたサウンドプロデューサーの影響もあるのかなと思います。僕らが作った曲のアレンジなどをお願いしていて、年々自分たちで独立して作れるようになってきてまた変わりましたけど、コード進行としては通ずるものがあるかもしれないですね。あとはコーラスワークとかじゃない?

Shohei:山下達郎さんの『ON THE STREET CORNER』というアカペラアルバムのコーラスワークを参考にしたところかもしれないですね。今回「Down Town」を歌ってみて、僕らも年齢を重ねて、これくらいの世界観でも大人として歌えるようになってきたな、やっとブレずに、いいものを残していきたいという感覚になれているかもしれないですね。

−−2月22日にはTokimeki Recordsをスペシャルゲストに迎えた『THREE1989 presents “Down Town” Release Party』が開催されますね。

Shimo:今回のキーワードはシティポップなので、ライブのアレンジもそのあたりを意識しつつ進めています。

Shohei:Tokimeki RecordsのバンドさんとTHREE1989は相性もいいと思うので、シティポップ現行世代の方も楽しめると思うし、新しくストリーミングでTHREE1989を聴いてくださっている方にもハマると思うし、海外の方も。幅広くラブ&ピースな会場になると思いますね。殺伐とはしてないと思います(笑)。「肩身狭いな」「若すぎるな」とかもなく、全人類受け入れ型の幸せな空間です(笑)。

Datch:ライブのアレンジの部分で仕込んでいることがいろいろあって、このライブでしかできないこともあるので、それを演奏した時に反応してくれるお客さんがどれくらいいるかなとか、楽しみですね。

Shohei:東京でバンドセットでしっかりライブをやるのは久々なので、それも楽しみですね。ふらっと遊びに行く、飲みに行く感覚で来てみてほしいなと思います!

インタビュー・文:長谷川 チエ

‘Down Town (Prod. Tokimeki Records)’
▼ストリーミングはこちら
https://three1989.lnk.to/downtown-tokimeki

▼THREE1989公式サイト
https://www.three1989.tokyo


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ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2017年より『Culture Cruise』を運営開始。 ライター・インタビュアーとしてカルチャーについて取材・執筆するほか、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。ライブレポートや取材のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。