【インタビュー】上村翔平が岡本至恩に贈った「幸せの再発見ができる『Personal Music』」

THREE1989のボーカル・Shoheiが、ソロ・上村翔平として行なった『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』公演後のインタビューをお届けします。ライブに出演した岡本至恩さんにもご参加いただきました!

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群像劇のような『Personal Music』ライブ

──ライブを終えてみていかがですか?

上村翔平(以下、上村):普段のTHREE1989とは真逆で、ステージでほぼ動かず、まっすぐに言葉と向き合う時間になりました。自分の曲だけど依頼してくださった方の曲でもあるので、言葉の一つ一つを真剣に、その方プラス観にきてくださった方に届けるのはエネルギーも使いました。元々CHEMISTRYとか宇多田ヒカルさんとか久保田利伸さんとかが好きで、歌と向き合える歌手になりたいなと思っていたので、35歳にしてようやく自分が思い描いていた歌手像まで来られた気がして嬉しかったです。

──自分の歌でもあり依頼者の方の歌でもあるという部分では、感情の重点をどこに置いたらいいのか、考えると難しいですよね?

上村:感情を出しすぎると僕も泣いて歌えなくなっちゃうので、今日は一番いい塩梅のところを見つけながら歌いました。

──序盤のMCでも感極まっていらっしゃいましたね。

上村:最初に入る時に大きな拍手をもらえて、やってきてよかったなという思いが一気に溢れ出ました。『Personal Music』を始めた時に、この企画自体を応援してくださるファンの方々はいましたけど、周りに一緒に作っていこうという方もいなかったし一人で始めたのもあって、今までは一対一でカウンセリングしていたので。でも2年で200曲近く作ってこられたのもいろんな方々のおかげなので、リアルにそれを感じられました。

──その後のライブは大丈夫でしたか?

上村:もう感情を殺して(笑)。感情を入れすぎたら泣きそうだったので。エンタメとして、いち歌手としてもしっかりと歌を届けたいという想いもありました。

──泣いている観客の方もたくさんいて、私も泣きながらレポートを書いていました。

上村:ありがとうございます! それは作曲家冥利に尽きます。お一人に作っているその方だけの曲ですけど、歌詞の内容やメロディが多くの方に刺さったのかなと。今日はそれを実感できた日でした。

──今日は岡本至恩さんにもインタビューにご参加いただきます。ライブをご覧になっていかがでしたか?

岡本至恩(以下、岡本):エンタメとして届けたかったとおっしゃっていましたけど、エンタメ以上だったと思います。僕は自分の曲をもらった時に、翔平くんの愛とか力をもらって、僕の曲だからとかじゃなくて、他の皆さんの曲にも感情移入させられました。普通に曲を作るだけでも大変なのに、こんなことできるんだって初めて思いました。食らっちゃいましたね。最高の時間でした。

上村:ありがとうございます!ご依頼者以外の方がちゃんと聴いてくださるかなとか、不安はありましたね。でも大きな拍手をもらったり、ぐすんぐすんって泣き声が聞こえる瞬間もあって、自分自身がどんどん救われていきました。

──他の方に向けた歌に共感したり、心が動くのは不思議な体験でした。自分に重ねていたのか、想像だったのかは分からないのですが。

岡本:映画じゃないですけど、翔平くんの歌を通してその人の人生を自分が経験しているかのような。歌の前後でエピソードは聞いていますけど、それ以上に感じるものがそれぞれにあって、自分に当てはめたりその人のことを想像したり、いろんな次元で食らいまくりました。鳥肌立ちっぱなしで、肌ちぎれるんじゃないかと思った(笑)。

上村:群像劇のような映画でよくあるじゃないですか? 第1章はこの人みたいな。そういった映画みたいですよね。

岡本:たしかに。エンターテインメントの新しいフォームだと思いました。

兄弟と友達の間のような関係

──『Personal Music』自体は母校の体育館で思いついたとのことですが、その時のことを振り返っていただけますか?

上村:レーベルにはお世話になっているし、属していていい面ももちろんたくさんあるんですけど、10週連続リリースをやった時のように、自分から出てくるものをもっと人に届けたい、リリース以外で自分が生まれてきた意味を与えることができないかなと模索した時に、人の話を聞いて作るのが自分には合ってるんじゃないかとひらめいて。自分で喋るよりも聞く方が好きなタイプだったので。それで名前を考えていたら『Personal Music』という言葉が出てきて、「これかも」って。最初は無料でやっていたんです。体育館からインスタライブをして「誰か作ってほしい人いますか?」って募集して、そこに来てくれた人と話してその場で作るみたいな、インプロっぽいことをやっていました。

──毎日のように配信していましたよね。

上村:ありがとうございます! トラックもつけてもっとしっかりとお届けしたいなと思って、1ヶ月くらい時間をかけて作るということを始めました。体育館のピアノで歌った「アメイジンググレース」を思い出して、そこに戻りたいなと思って。廃校になっていたので市役所に連絡して「体育館って借りられませんか?」って聞いたら「ママさんバレーとかで貸しているので貸せますよ」と言うので「ピアノってまだありますか?」「あります、調律できたらいいんですけど」「逆にその方がいいです!」って。それで1ヶ月間、昼間だけ貸してもらいました。1日300円とかでめっちゃ安いんですよ。暖房もないので-2℃とか寒い中でやりました。今日披露した「ララバイ」とか、「あぁ今夜」「イチグラム」とかもそこで作って東京に戻ってきたという感じですね。行かせてくれたレーベルも優しいですよね、謎の期間を過ごさせてくれて(笑)。

──今回ライブをやることになったきっかけは何だったのでしょうか?

上村:ご本人を前に歌いたいという気持ちはあったんですけど、お住まいの地域もバラバラだったので、いつかできるかなという感じでした。以前は2万5000円の定価で受けていたんですけど、「高いです」という人もいれば「安すぎます」という人もいたので、音楽の価値って人それぞれ違うなと思って。それで35歳の誕生日に、35曲限定で100円から始める企画をやったんです。その時にこのライブのディレクターの方(朝戸佑飛さん)が依頼してくれて。「手伝いたいです、ライブやりましょうよ」と背中を押してくれて、今日実現しました。

岡本:全部がご縁ですけど、翔平くんの人柄ですよね。『Personal Music』って誰にでもできることじゃないし、人の良さを見つけたり引き出したりするのが上手い翔平くんだからできることで。僕も会うたびに元気をもらっています。

──お二人は定期的に会っているんですか?

上村:テラスハウスの中では一番頻繁かもね。東京に住んでるからお誘いしやすいし。あの時は男衆が3人いたんですけど、今でも本当のマイメンというか。小中高大と友達っていると思うんですけど、その後の親友ですね。

岡本:僕が表にいない時も連絡くれて。近くに住んでる友達ともそんなに会わないですけど、家族みたいな感覚ですね。年に2回くらいは会うし、会わなくても繋がっている感じがあります。

上村:ソウルメイトですね!

岡本:横文字の語彙力がすごい。大好き(笑)。カメラ回ってない時にいつも名言が出てくるんで。

上村:全カットだったよね(笑)。

岡本:兄弟と友達の間みたいな関係ですね。兄弟にも話せないことを話せるし、何も話さなくてもいいっていう。

──至恩さんへの曲「Not So Bad」は、どんな経緯で作ることになったのでしょうか?

上村:至恩が芸能活動を再開すると聞いて、彼の背中を押したいな、何かできることはないかなと思った時に『Personal Music』で曲を作りたいと提案して、「ぜひ作ってください」と言ってくれたので、カウンセリングをしました。

岡本:活動再開といってもただSNSを再開しただけだったので、予定があるわけでもない中で、翔平くんみたいに応援するよって能動的に言ってくれる人が周りにいるありがたさも曲に入れてもらってて。周りの人に支えられているなと、この期間すごく感じました。翔平くんもそうだし、仕事をくれる方とか家族とか。歌詞を見て翔平くんの気持ちがリアルに伝わってきて、家宝になりました。今日も朝から「俺自分の曲あるんだぜ」ってテンション上がりまくってて(笑)。それが経験できるんだっていう。

上村:ここまで喜んでくれるのは本当に嬉しいですね。やっててよかったと思えるので。死ぬまでこの企画はずっとやっていこうと思っていますね。ライフワークとしてやりたいです。

岡本:みんな喜んでると思う。依頼していたのは「朝やる気が出る曲」だったんです。これから人前に出るような活動を再開していくにあたって、新しい出会いもあって、これまでとは違うギアを入れないといけない時に、自分でそれをするのが苦手なタイプなので。毎朝7時に目覚ましかけて起きてます。

上村:まじで? すげぇ。目覚まし鳴っても一切起きない人だったのに。

岡本:俺の目覚ましでみんなが起きるみたいなね(笑)。朝を気持ちよく迎えないと1日が締まらないので。完成をすごい楽しみにしてて、ダウンロードしてから電車でずっと聴いていました。データでもらっているのでリピートとかできないんですけど、イヤホンで聴きながら何回も再生して無限に聴いてました。

上村:うんうん、なんかごめんね(笑)。

──それが逆にいいですよね。能動的に聴く動作としてはレコードと近い気がします。「Not So Bad」をライブで聴いて、翔平さんのボーカルのいいところが全部詰まっている曲だと思いました。

上村:まじですか!えーめっちゃ嬉しい!

岡本:これまで僕、翔平くんのこの曲のここのところが好きってよく言ってたんですよ。ところどころそういうのが詰まってて。自分で歌いたいと思ってたんですけど、歌えないと思いました(笑)。翔平くんにしか歌えないよ。カラオケに行っても毎回THREE1989を入れるんですけど、いつも途中で諦めます。「Not So Bad」っていうタイトルもいいよね。

上村:幸せの再発見をしたと聞いたので「意外と悪くないじゃんこの世界も」ということで。この世界はめっちゃいいよーって押し付けるんじゃなくて、悪くないじゃんの積み重ねが最高になっていくと思うので。

岡本:普段は日々消化してしまう中で、曲を聴くたびに小さな幸せを思い出せるので、今日はずっと幸せでした。

もっと人と向き合えるようになった

──今は音楽もストリーミングから世界中に発信できますが、『Personal Music』は個人に向けて、逆にクローズドな世界に入っていくわけですよね。そういうものを創作するのはどんな感覚なのでしょうか?

上村:オープンだからできることと、クローズドだから伝えられることは違うと思うんですよね。家族の話とか、プライベートな話題とかキーワードも、オープンだったらその人以外には伝わらないものを歌詞に込めたりできるので。大きい意味でいうと、その人の家宝になったらいいなと思って作っています。そうなってくれたら僕も嬉しいです。

岡本:『Personal Music』だからなのか、情景が浮かぶんですよね。翔平くんの曲って詞がすごくいいから画が浮かぶんですけど、そこに自分がいるところが浮かびます。

──翔平さんもよくおっしゃっている「聴く人が主人公になれる音楽」ってまさにそういうことだなと思います。

上村:そう! そうなんです! そういう音楽を作っていきたいんですよね。

──『Personal Music』を続けてきたことで得られたものや、変化したことはありますか?

上村:人に興味が湧くようになって、大事に思うようになりました。変なところでドライな部分もあったんですよ。でもマンションの巣穴に一つ一つの生活があるように、道ですれ違う人もこんなに深い人生を持っているんだというのが分かって、もっと向き合えるようになれてきたかな。人のことをちゃんと知ってちゃんと接するという。テラスハウスを出た後はみんなが敵に見えて怖かったり、どこか人を疑ったりしたこともあったけど、みんないい人だなと思う瞬間に切り替わって、勉強させてもらいました。僕自身の学びかな、人生のテーマかもなって思います。

──THREE1989さんの楽曲制作にはどんな風に影響を与えられていますか?

上村:THREE1989の楽曲も難しいと言われることもあるけど、もっと人のためにということを考えるようになりました。「この曲をこの人が聴くとしたら」ということもいい意味で考えられるようになったので、自分の作風に影響を与えられています。次は僕らの中での勝負曲を出す予定で、THREE1989っぽさもあるんですけど今までとは少し違うところもあって。聴いてくれる人にもっとフォーカスして、人生の中の1曲になってくれたら嬉しいなという目線で書きました。楽しみにしていてほしいです。

岡本:楽しみすぎる!

──『Personal Music』のライブも次回開催が決定しているそうですね。

上村:はい!6月27日に同会場で開催します。ピアノの俊幸も出てくれる予定なので、今日来られなかった方にもお越しいただけたら嬉しいです!

撮影:内田智之、取材、文:長谷川チエ

『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』ライブレポートはこちら

■次回公演のお知らせ

Shohei Uemura Solo Live -Personal Music 2-

2025年6月27日(金)開催予定

【ご予約フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/1B0dpf_lJRywN-1Ad9cLBqfvIB7FVz6rutNOwOMqRLn8/viewform?edit_requested=true

■Personal Music ご依頼受付中

「あなたの物語を、あなたの音楽に。」

Personal Musicは、依頼者のエピソードや想いをもとにオリジナルの楽曲を制作するプロジェクトです。
受け取る方が価値を決める“ドネーション制”で、個人の記念や大切な人への贈り物としてもご利用いただけます。

【Personal Music ご依頼フォーム】
https://forms.gle/L8LB6hivsMv7v5Ry7

あなたの歌を、いつかライブで歌える日が来ますように。

▼『Personal Music』プレイリストはこちら
https://www.youtube.com/playlist?list=PL-JHZEWnSBx091oQnWedACdfnFshu9J1X




ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2017年より『Culture Cruise』を運営開始。 ライター・インタビュアーとしてカルチャーについて取材・執筆するほか、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。ライブレポートや取材のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。