【ライブレポート】上村翔平ソロライブ『Personal Music』第二夜

THREE1989のボーカル・Shoheiが、上村翔平として行うソロライブ『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』。6月27日には第二夜が開催された。

Culture Cruiseでは、今回も1部・2部のライブレポートをお届けします。

『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music 2-』1部

MCを務めるのは、前回は依頼者として出演し、Culture Cruiseでは上村翔平とともに終演後インタビューにも登場してくれた岡本至恩。

「『Personal Music』それは世界に一つ、あなただけの曲。THREE1989のボーカル・上村翔平が、あなたの人生に寄り添って作り出す人生の贈り物です。これまで手がけた曲は200曲以上。今夜お届けするのはその中でも、恋と愛をテーマにした曲たちです。長く連れ添ったパートナーに初恋のようなときめきを覚えた瞬間、忘れられないあの頃の大切な恋、心から愛する仕事やライフワーク、そして自分自身を愛するということ。誰かとの出会いも別れも、頑張りすぎた日々も、自分を信じた瞬間も。すべてが愛の形としてこのステージに続いています。今夜集まった私たちの心が少しでも軽くなり、温かくなりますように」心のこもったMCに温かく迎えられ、上村翔平がステージに上がる。

「Flowers」から始まった第二夜。このライブのディレクター・朝戸佑飛の『Personal Music』として、前回にも披露されたこの曲。2度目にして、自分はまたこの空間に舞い戻ってきたのだという既視感と同時に、止まっていた時計が再び動き出したような気持ちになった。

「皆さん『Personal Music』第二夜にお越しくださいまして、本当にありがとうございます。第2回目を開催できたことに感謝申し上げます」とはじまりの挨拶をする翔平。

さっそく1曲目は、Sさんご夫妻に贈った「10years lover」から。拍手の中ステージ横に登場したのは、昨年結婚10周年を迎えたSさん。以前にも翔平に『Personal Music』を依頼し、素晴らしい曲だったのでご主人に内緒で結婚記念日のために再び依頼したのだとか。

「10周年おめでとう!」という祝福のかけ声とともに、2曲をメドレー形式で歌われた。きっと丁寧なセッション(カウンセリング)が行われたのだろうと思わされる、丁寧な歌詞の描写に耳を澄ませる。まさに『Personal Music』ならではの醍醐味ではないだろうか。

雨の季節ということで、2曲目に歌われたのはTHREE1989「UMBRELLA」。降り注ぐ青色のライトがステージを照らす。前回にも披露された曲だが、また違う景色を見せてくれるさすがのステージングだった。

続いては男性のSさんが登場する。翔平と話している際「自分の仕事のことが一番気になった」というSさんに「最初に仕事を始めた日と繋がってくれたらいいなという思いで書いた曲を歌わせていただきます」と深く息を吐き、歌い始めたのは「Soul letter」。

《海風運んだLetter あの言葉吸い込めば今 幸せ広がったMy Heart》物語が佳境に入るようなクライマックスは圧巻だった。

Sさんは「ふと自分のやっていることが単調だなと思った時に聴くとリセットされる。自分はなぜこの仕事に就いたのか、思い出したい時に聴いてます。だから今聴いてまたリセットされました。来週からまた頑張ろうと思います」と語った。

翔平は「『Personal Music』は頼んでくださった人の大事な曲になるから、僕の大事な曲でもある。でも普段のライブでは歌わないから、結婚式って呼ばれたとしても1回だけじゃないですか? 毎回そういう気持ちなんです。届いていたら嬉しいです」と言葉を添えた。

ライブの模様は今回も配信されており、続いては配信で観てくれている依頼者の方に向けて。子どもが産まれ、この先の人生を共にするご家族へ制作された楽曲「Shining Place」。

《出会いましょう新宿で 運命探すの 人波かきわけて》という出だしから、次第に壮大な風景が浮かんでくる。ピアノとマイク一つで想像もつかない世界に我々を導く、ボーカリストの底力を感じた。

同じく、このライブに欠かせないピアノ・山元俊幸。「僕が出会ってきた中でも最高のピアニストで、元々一緒にバンドをやっていたんですけど、巡り巡って再会して。さらにいいステージをたくさん経験していきましょう」と翔平からの紹介を受け、一礼した。

「満月と新月の日に降りてきた言葉や思ったことを曲にして、毎月サブスクの方でお届けしているんですけど、その中で友人に作った曲があります。モンゴル出身の画家なんですけど、いつも赤い服を纏っているんですよ。3年前にばったり会って目が合った時に、友達の一目惚れってあるんだと感じて」

そう紹介されて白地に青のストライプシャツを身に纏ったOさんが登場し、会場の笑いを誘う。この日は靴下に赤を忍ばせていたという。

曲のタイトルはまさに「RED BOY」。《太陽の魔法今日も使いきり 一眠りして》草原を駆けるような奥行きを感じるこの曲は、THREE1989「Mr,sunshine」とのマッシュアップでさらに心地よく豊かに響いた。

ここでスペシャルゲストのEden Kaiがステージに招かれる。『Personal Music』を通じた貴重なコラボに期待が膨らむ。

この日は依頼者の恋人である男性が来ているということで、ステージ横へ。「自分の誕生日に彼女からいただいた」。Eden Kaiのファンだという彼女から贈られた「永儚Romance」は、2人が見た花火をテーマにした幻想的な楽曲。「おふたりで花火を毎年見られるようにと願いを込めて作った」という。

Eden Kaiと上村翔平、並んで歌う2人の優しい声は、満開の花火が幾重にも重なるように交差して美しかった。

1部が終了し、ここではディレクターの朝戸佑飛とMCの岡本至恩の対談が行われた。

佑飛は自身の『Personal Music』である「Flowers」について、「何回聴いても泣けます。自分の曲ってすごいなと思いますね」「好きなアーティストが自分のことを知ろうとしてくれる、語ってくれる、これ以上の承認はない」と話す。

リモートで1時間くらいセッション(カウンセリング)をして曲が作られるという、『Personal Music』の制作方法についても詳しく語られ、至恩は「そこまで話したつもりもなかったことまで汲み上げてくれる」と感動を共有した。

2部

小休憩のあとは前回同様、ORIGINAL LOVE「接吻」のカバーから再び開演。軽すぎず重すぎない温度で、2部の訪れを告げてくれる。

▼第1回『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』より

続いてはYさんへの曲「First kiss」。したことのない経験を曲にしてほしいというYさんからの依頼。

次第にスケールを増すアウトロのピアノは、変わるはずのない目の前の景色をどんどん変えていった。会場にいた皆さんや、配信を観ていた方々はどんな景色が浮かんだのか聞いてみたい、そんな気持ちになった。

ステージ横に立つYさんは「First kissは経験がありますけど(笑)、イヤフォンで聴いた時の感覚が、まさに今までにない初めての経験だった」と感動を伝えた。

続いては「実は今日妻と来ています」と奥様と登場したTさん。曲は、夫から妻に贈る「不器用ロマンティック」。青や紫、黄色に輝くライトが揺れてステージを照らした。

《永遠の指輪さえ不器用ロマンティック 強がったプロポーズは少しだけ後悔》言葉にできない2度目のプロポーズを、翔平の歌が背中を押すようにアシストしているように見えた。

「何回か聴いていると口ずさむようになっていた」というTさん。奥様にもしっかり届いていたようで会場は温かい雰囲気に包まれた。

2部もいよいよ後半戦に差しかかり、続いてはRさんが登場。翔平には「聴き終わった後に自分を好きになれるような、元気になれるような曲を書いてください」と依頼したという。

「立ち止まっている時間さえも、未来のためだと受け取ってくれれば嬉しいです」と曲が始まると、会場はたちまちゲームマップのように見えてくる。「Now Loading…」というタイトルにも納得、不協和音のステージをするすると渡り歩くようなボーカルとピアノだった。

「曲を聴いた時、自然と元気になって笑顔になれた」とRさんは明るい表情を見せた。

続いての曲は「One Drop One Love」。翔平はAさんをステージ横に招き、「家で曲を作っているだけの人間なので、壮大なテーマに携われることになると思っていなかった」とお礼を伝えた。

世界からポリオ(小児麻痺)をなくす活動をしているAさん。アフガニスタン、パキスタンではまだポリオの症状はなくなっておらず、炎天下の中毎日子どもたちにワクチンを与える活動をしている方々のために、曲を作ってほしいというオーダーだった。

《涙の明日が晴れに変わりますように》翔平は「音楽家として生きてきた意味が一つ増えた」と語った。

ここでさらにゲストを迎える。翔平とピアノの俊幸は、以前3ピースバンドを組んでいた。ゲストはそのもう1人のメンバー・ドラムの関口拓良(たくろう)だった。誕生日であり結婚記念日という大切な日に、わざわざ来てくれたという。

「翔平くんとは地元の居酒屋で出会って、バンドを組んでなんやかんやあって、今日合流しました(笑)。本当に素晴らしいイベントだなと思います」と拍手を促した。

翔平が敬愛するCHEMISTRYの「Pieces of a dream」を3ピースでカバー。ドラムという頼もしい仲間が加わったステージはより一層グルーヴィーに昇華し、かつてのバンドを思わせて感慨深さが込み上げる。

続いて「これからは『Personal Music World』ということで、世界に挑戦していきたいと思っています」と台湾のOさんへの曲「My Sweet Vacation」を披露。

深海に潜る前のように、深く息を吸い込んでゆったりと歌い始める。《私はマーメイド》泳ぐようなピアノとドラム、ボーカルだった。

台湾のOさんとは電話が繋がっており、Oさんは電話越しに、この曲は大阪に留学していた時の思い出だと明かした。「たくさんの日本人から温かさと優しさをもらって、素敵な思い出です」と付け加え、『Personal Music』の素晴らしさを中国語で世界に発信してくれた。

最後の曲になり、前回と同じように客席の反応でバラードかアップテンポな曲かを決める時間に。観客の声を受けて「じゃあ1回アップテンポやろう(笑)」と選ばれたのは、MC・岡本至恩への曲『Not So Bad』。

こちらもドラムが加わり、前回以上にポジティブな光を感じた。晴れやかな表情で聴き入る至恩の横顔も印象的だった。

翔平らがステージを去る前に、至恩からのアシストにより、会場は割れんばかりのアンコールの拍手に包まれる。

「本当はバラード持って来たんですけど、次回に置いておきます。バラード歌える空気じゃないので(笑)」という翔平の説明に、会場からの陽気な笑い声がこだまする。

結局「Just the Two of Us」をやることになり、歌詞を探している間にも拓良のドラムが進み、「早い早い!」と焦る翔平。気取らず砕けすぎず、笑いを取りに行くということでもないのだが、自然と周りを笑顔にさせるMCが心地よい。

色とりどりに変化するライティングの下、山元俊幸のピアノソロに拍手が注がれる。関口拓良が目を閉じて歌うようにタイム感を弄ぶドラムソロ。そして上村翔平、渾身のボーカル。7年ぶりとは思えない息の合ったパフォーマンスだった。

ライブ終了後は観客同士で歓談する姿も。来た時よりも笑顔で店を出て行く観客の姿が印象的だった。

第2回目にして、前回を超えるスケールで開催された『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』。

上村翔平の人柄と音楽が引き寄せる“縁”を感じずにはいられない、多くの人が魅了される幸福な時間となった。

撮影:金子和正(K&K films)、取材・文:長谷川チエ

■次回公演のお知らせ

Shohei Uemura Solo Live -Personal Music 3-

2025年10月24日(金)開催

【ご予約フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSesMNYC5FuwqniflBY-HkY9uq2i1jcEarwv4EJuDaYyK9pgYg/viewform

■Personal Music ご依頼受付中

「あなたの物語を、あなたの音楽に。」

Personal Musicは、依頼者のエピソードや想いをもとにオリジナルの楽曲を制作するプロジェクトです。
受け取る方が価値を決める“ドネーション制”で、個人の記念や大切な人への贈り物としてもご利用いただけます。

【Personal Music ご依頼フォーム】
https://forms.gle/L8LB6hivsMv7v5Ry7

あなたの歌を、いつかライブで歌える日が来ますように。

▼『Personal Music』プレイリストはこちら
https://www.youtube.com/playlist?list=PL-JHZEWnSBx091oQnWedACdfnFshu9J1X

▼前回のインタビューとライブレポートはこちら

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。2017年より『Culture Cruise』を運営開始。 ライター・インタビュアーとしてカルチャーについて取材・執筆するほか、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。ライブレポートや取材のご相談はお問い合わせフォームからお願いします。