今回は2度目のw-inds.特集。2017年に書いた前回記事以降の作品や、先日拝見したライブについての感想などをまとめました。
w-inds.と100時間向き合ってみた
私はライターになってから、毎年夏休みの自由研究を自分なりに実行しています。大真面目にやってます。
それで、今年は「w-inds.の研究」が課題でした。前回の記事(w-inds.がトロピカルハウスに出会って大変なことになっていた2017)を書く時も勉強はしましたが、駆け出しのライターとサイトだったこともあり未熟な部分も多くて。
キャリアも浅いなりに頑張って書いたのですが、当時と今ではこのサイトの方針も違うので、今なら違う角度から彼らの魅力を文章にできるかもしれないと、改めてしっかり勉強し直すことにしたのです。
1日4時間×14日間=56時間
…いやいや足りないだろう、w-inds.には結成19年ものキャリアがある。
その時Spotifyで聴いていたのが、w-inds.のアルバム『100』で、このタイトルは当時の3人の年齢を足すとちょうど100になることに由来しているそうです。
1日5時間×20日間=100時間
ということで100時間、w-inds.の音楽に触れてみることにしました。その後記事を書き始めて、移動中も聴いたので実際にはもっと長い時間だったと思います。
前回の記事以降も素晴らしい活動をされていたw-inds.の3人。その楽曲の数々をまとめました。
Dirty Talk
イントロから見事なNew Jack Swing。MV、ファッション、アートワークすべてが最高傑作ではないですか!
MVの色使いやファッションが曲の世界観ともよく合っていますね。0:39あたりで橘さんが洋服をポイーってするところがお気に入りです。名シーン!
楽曲制作からパフォーマンス、ここまですべて自分たちで完璧にこなすアーティスト…私が音楽関係者だったら脅威、というかむしろ絶対コラボしたいと思います。
Stepping on the fire (feat. w-inds.) – RADIOFISH
RADIOFISHにもフィーチャーされています。楽曲制作にも関わったそうなので、客演というよりは共作というイメージです。
多方面からの才能がここに集結している感じ。feat. w-inds.かなり良いですね。
アルバム『100』
橘さんが全曲セルフプロデュースされている、2018年リリースのアルバム『100』もまとまりのある素晴らしい作品です。
Bring back the summer
w-inds.とファンの皆さんをつなぐ、まるで恋人に捧げるかのようなオープニングトラック…これは泣けちゃう。
YouTube Space Tokyoにて行われたプレミアムライブの映像、画角のセンスがおしゃれです。
w-inds.はこういう企画をしたり、ライブ映像を公式でもわりと公開しているので、楽しめるところが良いですね。
Temporary
このMV、3人の動きに注目するとほとんど動いていないのに、躍動するエネルギーを感じる芸術性、静の中に秘めた情熱や美しさが表現されていて素晴らしいです。
曲中でも、ドロップの後半あたりで変拍子のように一瞬ずれたりします。くるんとひっくり返ってまた元に戻るようなテンポ。大サビでは歌が入りつつの、音がずれるっていう。細かな遊び心にもセンスを感じます。
2018年6月には、w-inds.のこれまでの楽曲がサブスクでの配信を解禁され、気軽に聴けるようになりました。
Get Down
2019年7月31日リリースの「Get Down」。橘さんのセルフプロデュース楽曲ですが、今までにないほどヘヴィで刺激的なダンスチューンです。
POPSを歌ってきたw-inds.だからこそ、POPSの良さを継承しつつ、そこに新たな音を掛け合わせることでw-inds.だけの音楽が出来上がるのですね。
w-inds.が乗り越えてきた難しい選択
前回の記事で、w-inds.がこれまで思うように活動できなかった問題について言及しました。
ファンの方からは、このことも絡めてもっと取り上げてほしいというご意見をいくつもいただいていました。
ライター1年目の未熟な私が書いたたった1つの記事を、大切に受け止めてくれていたんです。こんなに嬉しいことはありません。
ただ、お叱りの声もあったので控えていたところもあったのですが、再びw-inds.の記事を書こうと決心したのは、橘さんのツイートを拝見したからです。
不満を口にして
誰かのせいにするのは簡単。
でも、それでは何も変わらないんだよ。
簡単な選択を続ける事なかれ。
人生において難しい方を選び続ければ
自ずと道は拓けると僕は信じている。— Keita Tachibana (@Official_Keita) 2019年7月16日
難しい選択をして挑み続けたからこそ、ここまで成長してきた歴史がある。逆境をチャンスに変えて、進化を重ねてきた。
そうせざるを得なかった現実もあったはずですし、そう捉えるしかなかったのかもしれません。それでも自らその道を“選択した”と言える橘さん。
先日ゲスト出演されていたラジオ番組でも、チャレンジすることにマイナスは一つも生まれない、挑戦する方が気持ちにゆとりができるとおっしゃっていました。
私も批判を恐れて何も書かなければ平和なままですが、それは楽な選択をしただけで、自分は何も変われない。
変わらないのではなくて、後退しているのかもしれません。そう思うと、挑戦しない方が不安な気持ちになります。
ではどのようにもう一度書くかと考えた時、ライブを観ればw-inds.は誰よりも楽しそうに歌っているではないですか。
もちろん、楽しいだけで歴史を積み重ねることは不可能ですし、陰では想像を絶する努力をされてきたと思います。
だけどw-inds.は、その時できることに精一杯取り組んで、最高に輝けるステージで進化を続けてきた。その音楽を純粋に楽しむことが、一番の研究になるのではないかと感じました。
LIVE TOUR 2019 “Future/Past”
そして7月26日、オリンパスホール八王子での「w-inds. LIVE TOUR 2019 “Future/Past”」初日公演を拝見しました。
“Future/Past”というだけあって、新旧織り交ぜられたセットリストは、こだわりが感じられる構成。
MVを観たり音楽を聴く以外に、ライブではどんな発見があるのか楽しみにしていたのですが、3人の空気感やそれぞれの魅力がたくさん感じられました。
橘慶太さんはセンターに立つだけで「これがw-inds.か!」と納得する存在感があり、歌いながらの長い手足を生かしたダンス、魅せることがとても上手ですね。
ユニセックスな美少年と注目され続けてきたデビュー当時から、立派なクリエイターになるまでの過程にも全然驕りがなくて。人の成長とは何と素晴らしいものか! と感慨深くなってしまいました。
セルフプロデュースした楽曲を、メンバーとパフォーマンスするのは難しいと思いますが、見事にこなしています。
橘さんのような経歴を持つクリエイターは他にいないので、今のJ-POP界に必要不可欠な存在であり、その努力には音楽ファンとして感謝せずにはいられません。
千葉涼平さんのマイペースな性格は、ブレないステージングにも現れています。「泣いてるの? 笑ってるの?」というちょっと何考えてるか分かんないなっていう佇まいに引き込まれてしまいます。
高度なダンススキルは、卓越した身体能力の高さに支えられているだけでなく、それ以上に努力の賜物であることも分かります。
小技の効いた足元や、抜け感のある動き。派手な振り付けのパフォーマンスでも全然嫌味がありません。
Pastに代表されるパフォーマンスでは、千葉さんの姿を見ればそのまま過去にタイムスリップできる感覚が不思議で、目が離せなくなりました。
きっと基本に忠実な方なのだろうなと思います。変わらない若々しさ、流されずに自分を持ち続けている魅力が伝わってきます。
千葉さんがソフトだとしたら、緒方龍一さんはハードというか。エッジの効いたファッションも着こなせるし、全身で表現するパフォーマンス、情熱的で一貫して全力投球な姿からは、プロ意識の高さが伺えます。
身振り手振りで観客とコミュニケーションを取ってくれるので、初めてライブを観た私でも、楽曲の色を緒方さんのパフォーマンスから受け取ることができたのです。
時折ハッとするような表情をすることがあったり、優しく笑いかけて盛り上げてくれたり…その時々に合わせた豊かな表現力は、深みを増した歌声にも及んでいます。
緒方さんのまっすぐな明るさが、w-inds.を支えているところも大きいのではないかという気がしました。
とにかく三者三様のパフォーマンスに魅力があって、こういう細かいところは、ライブでなければ気付けない部分ですよね。
そしてこの3人の立ち位置がコロコロと変わって、常にステージが変化していきます。
どこを観ても上手くて、「千葉さん上手いな! じゃあ緒方さんはどうかな」と思って反対側観てももう緒方さんはそこにいないんですよ。「いつのまに入れ替わってる?」みたいなことが度々あって面白かったです。
さらに、曲とシンクロする振り付けも素晴らしいので、一つのショーとして楽しめて、とにかく完成度の高さに驚きます。海外で高い評価を受けているのも頷ける。
3人の個性が爆発しているMCも面白すぎたし、仲の良さに心が満たされるし、人が楽しんで仕事(という表現が的確か分からないけれど)に打ち込む姿を見るのが大好きなので、良い刺激をもらえる時間になりました。
w-inds.の魅力
ここ数年のw-inds.は、橘さんのクリエイティブ面や、DTMのサウンド自体に注目が集まる機会が多い気がしています。
かくいう私もそれで前回記事を書きましたし、過去の楽曲もシングル曲は知っていても、じっくり聴く行動まではして来なかったのです。
しかし彼らには多くのバックボーンがあり、それによって今の音楽に行き着いたという過程が、w-inds.の魅力だと感じることも多くて。
今回のツアーコンセプトが“Future/Past”ということで、過去の曲も予習(復習?)してライブを観ると、長い道のりを乗り越えてきたw-inds.には素晴らしい作品がたくさんあり、その道をたどってこそ、今日までのつながりも楽しめるなぁと思うのです。
懐かしい曲もうまくリアレンジされたりと、鮮やかさを失っていないのも素晴らしく、改めて感じるのは、これまでの楽曲の質の高さでした。
2018年の『100』ツアーの映像ですが、2003年の「Long Road」を、15年後もこんなに大切に、想いを込めて歌えるんですよ。素敵すぎませんか。
私この曲がすごく好きで、当時はポップでキャッチーで、青春という印象でしたけど、改めて聴くと今のw-inds.が歌うから響くフレーズがたくさんあるんです。
バンドサウンドがテーマだったこの『100』ツアーのアレンジも秀逸で、原曲の良さを生かしつつ、生音が楽しめる良質なライブだと思います。 DVD素晴らしかったです。
そして、いくつになっても変わらない若々しさもw-inds.の魅力。3人の質の高いパフォーマンスと努力があってこそ、w-inds.の楽曲はここまで進化することができたのだと確信しました。
w-inds.だから表現できる世界がたくさんあると思うので、これからも日本の音楽シーンを支え、リードする存在でいてほしいです。
今回、100時間w-inds.に接することを決めて、DVDや動画を観て、曲を聴き資料を読んで、ライブにも足を運びました。
ーー何が見えてくるだろうか?
そう思って取り組み始めたけれど、本当は答えなんて最初から分かっていた。
彼らがここまでずっと、歌い続けてくれていたことがすべての答え。
音楽を創るということ、続けることの大切さ、変わらないことの強さ。そして楽しむということ。
w-inds.の音楽に触れるだけで、教え導かれることがたくさんある。
時代にフィットさせる音楽性だけでなく、彼らのメンタリティーという面でも、非常にリスペクトする部分があります。
長い間、音楽を続けてくれてありがとう。
100時間ずっと思っていたのはそのことだったし、100時間が過ぎてもw-inds.への興味は薄れず、私は彼らが大好きになった。
w-inds.の過去が他の誰でもなく、彼ら自身のものであるように、どうかこの先は、彼らが望む形が叶う未来でありますように。
そしてその望みが、一つ残らず実現される世界でありますように。
文 / 長谷川 チエ
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