時代がI Don’t Like Mondays.に追いつく時【後編】

I Don't Like Mondays. 紹介

Culture Cruiseの「I Don’t Like Mondays.」特集!時系列に曲をご紹介した前編に続き、後編は楽曲と絡めつつ、彼らの音楽性の魅力について、筆者の想いを勝手にお届け!!

メイン画像出典:「SING」公式YouTube動画

前編の振り返りはこちら

「愛が溢れてるね〜」というご意見をたくさんいただいたのですが、むしろ愛以外の内容がなかったですね。暑苦しくてごめんなさい。でもやめません。では、やっぱり今回も愛が溢れてしまった後編に行ってみます。




I Don’t Like Mondays.というイエローミュージック

I Don’t Like Mondays.の楽曲は、4人で一緒にゼロから作り上げるのだそうです。1人でも納得しなければその曲は出さないというこだわりからは、彼らの音楽の質の高さが伺えます。

旬なサウンドの中に確立されたオリジナリティ、そこに少しの懐かしい音が織り交ぜられたトラック。そして普遍的なリリック。それがI Don’t Like Mondays.の音楽性だと思っています。

たくさんの音楽を聴き、たくさんの恋愛や人生経験を経て、彼らのイエローミュージックが出来上がった、という過程が垣間見える気がします。

ジャンルや音の種別に関係なく、いろいろなエッセンスが詰め込まれているけれど、どこかにシンプルが潜んでバランスを取っていたりする。

メンバーの音楽の趣味はバラバラなのだそうですが、複雑なクロスオーバーの中にも、どこか一貫性が見出せるのです。

Shape of love(2017年)

聴けば聴くほど、おしゃれな音がポンポン出てくるんですよこの曲。

ギターってこんなにおしゃれに弾けるんだっけ? っていうくらい、シンプルなリフなのに華があるCHOJIさんのギターが好きです。未来永劫聴き続けることを誓います!

I Don’t Like Mondays.は、生音のクオリティがめちゃくちゃ高いにもかかわらず、容赦なく打ち込みも採用しちゃうスタイルが魅力でもあります。

ドラムのSHUKIさんはDJとしても活躍されていて、最新EPでも「Freaky boy」のリミックスを手がけていますが、これがまた素晴らしいのです。上手いリミックスって華やかだけど、ヴォーカルより前には出てこないんですよね。

個人的にはレコードを集めるほど、DJって昔からずっと憧れていて、リミックスも聴き込んでしまいます。気に入るとオリジナルより聴きがちです。

ドラマーが高いDJスキルを持っているというのは、バンドにとって大きなプラスになりますよね。

“バンドに固執しないバンド”というある種の矛盾と、肌感覚の鋭さが彼らには備わっていると感じます。その鋭さにも、早く時代が追いつくべきでは。早くしてよ!

英語・日本語の「リリックを聴く」

ご本人たちがどこまで意識しているかは分からないのですが、言葉(word)、言語(language)、声(Voice)も音として捉えていて、高いアンテナを張っている気がします。サウンドとして表現できる領域がとても広いのではないかということです。

英語と日本語を散りばめるバランスや、リズムとしても効果的な言葉を的確に並べてくれるので、「リリックを聴く」という楽しみ方ができるのです。

ラップのように韻を踏む感覚とはまた違って、メロディの一部として自然と溶け込んでいます。ここまで高度な聴き方ができるアーティスト、ましてバンドであれば尚更珍しいように思います。そりゃあ、時代もついて来れないですよね。

A GIRL IN THE CITY(2018年)

2018年のツアータイトルにもなっている曲。こんな曲を作ってくれるなんて、最高に紳士じゃないか!

サビの「She is like PARIS, BABY」の「P(ぱ)」と「B(べ)」の破裂音がアクセントになっています。細かい発音にも気を配り、歌い方でも音を表現できるのですね。

彼らの楽曲は、スタンスとしては洋楽を聴く感覚に近いけれど、言語の切り替わりがシームレスなヴォーカルによって、適度なタイミングで日本語を聴かせてくれるので、リリックの内容もすんなり理解できる気がします。

ONE THING feat. SALU(2018年)

「マジでムカつく女だ」とか「もう振り回されてマジでうぜぇ」とか、思っててもYUさんの歌声からは聴かれないであろうセリフを、SALUさんがポップに吐き捨ててくれるのが実に痛快。Featuringの良さってこういうところにあると思ってる。

2番以降のサビ、2:09あたりの「Oh baby just one thing」の「Oh」(発音的には「う」と聴こえる)が、効果的に響いていてクセになります。こういった点も、声やリリックで聴かせるということだと捉えています。




コンセプチュアルであることのメリット

I Don’t Like Mondays.は「BE PLAYBOY」がテーマであり、彼らは自他共に認める肉食系なのだそうです。コミュ力急降下中の日本において、ここまで振り切ってPLAYBOYぶりを発揮してくれると清々しいというものです。

Sorry(2016年)

まったく使い物にならないメンバーたちが奮闘する、ストーリー仕立てのMVに見入ってしまいますが、曲もめちゃくちゃかっこいいという。

BE PLAYBOYが戦略なのか、元々そういう人たちなのか、最初は訝りながら観ていましたが、聴き込むうちにそんなことどうでもよくなっちゃう。

どっちだろうとステージを観ればかっこいいし板についているので。おそらくその答えは両方というか、半分ずつのように感じていますが、普段の礼儀正しくて気さくな雰囲気とのギャップすらも魅力だと言えます(営業妨害だったらごめんなさい)。

LOVE YOURSELF(2015年)

女性に一輪のバラを渡したりと気取りつつも、自然な感じがIDLMs.らしくて激しく好きなMVです。

そう、I Don’t Like Mondays.は、気取っているから良いんです。じゃなきゃバラの花とか似合わないんですよ。そこも含めてのIDLMs.なんですね。

さらに、彼らが目指してきたものに「おしゃれな女の子を躍らせる」というテーマがあるそうです。最初は、PLAYBOYだから単に女の子を振り向かせたいのだと思っていました。

それもあるのかも? しれないのですが、おしゃれな女の子は流行にも敏感で、感度が高い。だからおしゃれな女の子に「この曲ダサいよね」と言われたら、それはダサいという基準になる。

反対に「これ最高だね」と気に入ってくれたら、最高の曲というお墨付きがもらえるのだ、というお話を伺いました。

ライターが記事を書く時も、どんな人に向けて何を伝えるのか?といった構想や骨組みをあらかじめ考えるので、その答えを聞いて納得しました。音楽制作でも、イメージを持っておくことはとても大切なのではないかと。

彼らは4人で音楽を作り、MVやファッションも考えたりと、トータルでセルフプロデュースをされているそうなので、「こういうの作りたいよね」という構想を元に、楽曲制作に入るのではないかと想像しています。

そうなると尚更コンセプトが大切になります。現にどの楽曲にもテーマがある気がするんですよね。ジャンルレスなのに一貫性を感じるのも、コンセプトに沿って曲作りをされているからなのかもしれません。

今後は音楽においても「コンセプト型」になると、個人的には考えています。彼らの音楽には、何を軸に置いて制作するかという指針のようなものを感じるし、何かに向かって制作できるクリエイターは、ブレることがありません。

きっとこれからも、ブレない音楽性を保ちながら果敢にトライし続けてくれるのではないかと勝手に感じています。




ライブで輝く4つの才能

I Don’t Like Mondays.のライブは独特で、バンドって最高!となるかっこよさもあれば、クラブに迷い込んだようなおしゃれサウンドに包まれて幸せになったりする。

TONIGHT(LIVE Ver.)

YUさんの持ち味である美しいファルセットに、バンドの生音が重なる最高のマリアージュ!

アッパーな曲なのに、ファルセットを駆使してステージを盛り上げるのはとても大変だと思います。「Freaky boy」や、「SO BAD」のサビの部分だったりとか。

しかしYUさんは盛り上げ上手で、何よりご自身も楽しんでいるのが伝わります。2年ぶりの全国ツアーも拝見して、こちらは継続中なので詳細はまだ言えませんが、めちゃくちゃ進化していました!

メンバーのプレイスキルは言うまでもなく最高で、そんな中でKENJIさんは会場をよく見渡していて、観客の顔をしっかり観て盛り上げてくれる存在だし、SHUKIさんはリーダーとしてもバックアップしていて、ライブで素晴らしいドラムソロを聴くのが大好きです。

CHOJIさんはプレイで語る姿が男らしくて、でもMCでしゃべると狙ってないのに面白いっていうギャップが素敵です。4人がそれぞれのポジションで、最高に輝いている姿を俯瞰するのが好きなのです。

「あぁこの4人がバンドでいてくれて良かった」と感じるのですが、コテコテのロックでもなく、踊れる雰囲気にしてくれるし、バージョン違いで曲を聴かせてくれたりバランスよく配分してくれる。

こんなに詰め込んだら普通はガチャガチャするものだと思うのですが、スマートさを保つ4人のセンスには脱帽です。

TOKYO BROTHERS(LIVE Ver.)

ロックテイスト溢れる曲はライブで盛り上がります。彼らのライブはシンガロングも英語だったりしますが、オーディエンスも器用にこなしています(すごく難しい英語で要求されるとかじゃないよ)。

何も持たずにフラッと訪れても楽しめるライブって私は大好きなのですが、まさにそんな感じで、とても心地良い空間。「ここにいるのがみんなIDLMs.の良さが分かる人たちなんだなー」と思うと最高なのです。




応援したいのに一人占めしたくなるバンド

I Don’t Like Mondays.はこれからもっと伸びるバンドだと、ファンは誰もが思っているはずです。

だからこそ、彼らの良さに気付く方々も増えて、ライブも今のハコでは収まりきらない程、遠い存在になってしまうのではないか? という感情が湧く。

その一方で「なんでこんなに良い音楽がもっと流行らないんだろう? みんな聴かないの?」という気持ちもある。何とも複雑な感情を行き来するわけですね。

私はどんどん行っちゃってくれ派ですけど、でもやっぱり自分だけの(そんなわけないんだけど)コアな存在でいてほしいという身勝手な思いも少し感じてしまいます。世界最大の矛盾です。

本当に好きでなければファンはそんな感情を抱かないでしょうし、それだけこだわりたくなる魅力があるということですよね。

Wall feat. I Don’t Like Mondays. – BABY-T

I Don’t Like Mondays.が客演として参加している楽曲。テラスハウスの軽井沢編でも使われていました。彼らの曲はテラスハウス全体でよく流れますね。おしゃれな映像ともめちゃくちゃ合うし!

BABY-Tさんも素晴らしいDJで、IDLMs.との相性も良い! ちなみに彼の曲もよくテラスハウスで使われています。「ONE THING feat. SALU(BABY-T Remix)」も12月1日のリリースとともにダウンロードしましたよ!

タイアップに使われるとすごく嬉しいのに、ちょっと感じる遠くに行かないでという気持ち。ああもうこの感情も含めてすべてが、かけがえのないI Don’t Like Mondays.。

ライターとして駆け回る毎日だけど、IDLMs.の音楽のおかげで、私の毎日は華やいでいます。


I Don’t Like Mondays.の音楽はすごくかっこいいのに、近寄りがたい存在でもないところが不思議です。

曲をかけるだけで、いつもの風景がおしゃれに見えたり、「こんな恋愛ができたら素敵だなぁ」と感じさせてくれたり、ラフな素顔を見せてくれたり、離れたかと思ったらまた近くに戻ってきてくれる。

リリックだって、現実離れしているわけでもない、等身大の想いや日常が切り取られていますよね。気付けばいつも身近にいて、毎日を彩ってくれるI Don’t Like Mondays.。

「世界で活躍したい」という想いを抱く彼らに対して、“教えたくない”なんて本当は言っちゃいけないことも分かっています。

こんなに素晴らしい才能があって、私たちの元に素敵な音楽を届けてくれているのに、それを閉じ込めて自分だけのものにしておきたいなんて、言えないなぁと思います。言っちゃったけどさ、もう絶対言わないよ。ごめんねIDLMs.!!!

もちろん彼らはすでに多くのファンに愛されているけれど、もっとたくさんの場所で、IDLMs.の音楽が鳴っていてほしい。

自分で「俺才能ある」とは言えないだろうけど、第三者ならバンバン言えるわけです。私はライターとして、良い音楽を作っている人のことを書きたいし伝えたい。

記事を書くことくらいしかできないけれど、少しでもその才能が誰かに伝わるなら、時代が彼らに追いついてくれるなら、何記事でも、何週間かかっても書き続ける。

時代がI Don’t Like Mondays.に追いついたその瞬間、間違いなく日本の音楽シーンは輝きで満たされるはずだから。

文 / 長谷川 チエ

今回のプレイリストはこちらから(Spotify)

↓はいっ!もう1回前編!

ABOUTこの記事のライター

山口県生まれ、東京都育ち。別業種からフリーライターとして独立後、Culture Cruiseメディアを立ち上げ、『Culture Cruise』を運営開始。現在は東京と神奈川を拠点としている。 カルチャーについて取材・執筆するほか、楽曲のライナーノーツ制作、小説や行動経済学についての書籍も出版。音楽小説『音を書く』が発売中。趣味はレコード鑑賞。愛するのはありとあらゆるカルチャーのすべて!!