THREE1989のボーカル・Shoheiが、上村翔平として行うソロライブ『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music-』。2025年10月24日、第三夜が開催された。
Culture Cruiseでは今回も1部・2部の模様をレポートする。
『Shohei Uemura Solo Live in Tokyo -Personal Music 3-』1部
3度目の開催となった『Personal Music』は、東京・白金へと初めて場所を移して行われた。本日も満席の会場。MCは前回同様、岡本至恩が務める。
「『Personal Music』それは世界に一つ、あなただけの歌。THREE1989のボーカル・上村翔平が、あなたの人生に寄り添って作り出す人生の贈り物です。これまで手がけた曲は200曲以上。今夜お届けするのはその中でも、自分自身への讃美歌。そして旅立ってしまった人や大切な人へ贈る歌がテーマの曲たちです。夏が終わり、秋はふけ、冬がやってきますね。冬は一年を振り返る季節でもあります。そして新たな覚悟を胸に、一歩踏み出す季節でもあります。今夜集った私たちの心が少しでも軽くなり、温かくなりますように。あなたの冬と次の一年が、彩り豊かなものになりますように。約2時間の音楽と物語にゆったりと浸ってください」

客席の間をすり抜け、湧き上がる拍手の波を渡るように上村翔平がステージに登場する。
『自分自身への賛歌 -Self anthem-』
最初のテーマは『自分自身への賛歌 -Self anthem-』。
「ゆっくり楽しんでいってください!」軽やかな挨拶とともに「Not So Bad」からスタートした。ピアノは山元俊幸。MC・岡本至恩に贈られたこの曲も、3度目とあってこのライブのテーマソングのように響いた。
「新しく活動を始めて、この曲が側にあって、どんな風に生活が変わりましたか?」という翔平の問いに至恩は「日々の中で調子が良くなると初心を忘れがちになると思うんですけど、この曲を聴く度に独立しようと決めた時の熱い気持ちを思い出させてくれます」と前向きな表情を見せた。
2曲目はSさん「Tokyo Lonely」。Sさんがステージ横に登場し、依頼した曲のテーマを語る。
上京して2年目のタイミングでの依頼。東京タワーに感じる、他のランドマークにはないエネルギー。過去の積み重ねがあるからこそ、今この風景が見えている。がむしゃらに頑張る今もいいけど、昔の自分を讃えてあげても良いのではないか。孤独に戦いながらも前に進みたいという気持ちを曲にしてもらったという。
《赤いタワーにsmiling and shining 笑った三日月》《ここまでの道を讃えて 一眠りして》明るくも優しく背中を押すパワーソングは、聴く人みんなを勇気づけてくれるようにも思う。
翔平は「(Sさんに)お送りした時は軽快でBGMとして繰り返し聴けるようなサウンドだったと思うんですけど、今日はソウルフルに歌わせていただきました。僕も熊本から東京に出てきて、東京タワーはシンボルだし、未だに東京タワーと自分を重ねることは多い。歌っていて上京したての自分が憑依しました」と話した。
3曲目はRさん「Now Roading」。Rさんは「今年の私自身のテーマが自分を愛するということで、聴き終わった後に笑顔になれる、自分を好きになれるような曲をお願いしました」と明かす。
《一歩ずつ好きになる 飾らないきみが It’s magic》ゲーム好きだというRさん。翔平は「人生はRPGだと思うので、自分を主人公として。宝箱を開けたらこんなに仲間がいた、素敵な仲間に巡り会えたという話を聞いて、ダンサブルな明るい曲を作らせていただきました」と振り返った。
4曲目はピアノの俊幸と、前回出演したドラム・関口拓良との3ピースバンド・SHEWASで制作したオリジナル曲「Rhapsody」。
「東京は好きだけど、ずっといたいと思わなくなる」と翔平がおもむろに語り始める。
「自然のある場所に帰った方が楽しいだろうなと思う自分もいるし、辞めなかったらまたステージに立てて、皆さんの温かい拍手とか笑顔とか、また頑張ろうと思える。『辞めたい』と『辞めたくない』をループする現状を曲にしておきたいと思って。10年間東京で戦わせてもらった曲を、BGMがてら聴いていただけたらと思います」
《恋に飽きて知りすぎて なのに闇は愛を探してる》ゆったりと流れるピアノとレイドバックなボーカルは、コース料理とドリンクを楽しむ客席を瞬く間に主人公にした。
翔平は「嘘偽りなく書いたものが、皆さんの中で重なる部分があったら嬉しいなと思いました」と結んだ。

『旅立ってしまった大切な人へ贈る歌 -Dear Eternal Lover-』
ここからは、旅立ってしまった大切な人への歌がテーマ。
ステージ横に登場した依頼者のTさんは、48年前に亡くなった父親のことを書いてもらったという。
父の魂が降りてくることを感じられるようになったというTさんの渋めの曲紹介「慶酒(よろこびざけ)」でひと笑い起きる会場も、《さよならの朝に 私に送られた汽笛が聞こえる》《次の停泊はいつですか 今度の波を超えたなら会えますか》《交わしたい言葉は乾杯 大人になりました 飲み干して慶酒 見守ってよ我が人生》その歌詞に思わずもらい泣きしそうになる。
翔平も「船関係のお仕事をされていたお父様と、乾杯したい思いが一番強いということだったので、力を込めて歌わせていただきました」と込み上げる想いを抑えるように語った。
6曲目はIさん「幸せな祝日」。一番側にいてくれた大切な人が突然亡くなってしまい、立ち直れずにいた時に『Personal Music』をInstagramで知り、依頼したという。
《ケラケラ笑って 空でも飛んで 会話を奪って何度もキスして》《七不思議を一つだけ増やして この出会いを書き足して》
「言葉が出てきたので」と即興で歌われたフレーズもあったというのは、まさにこのライブならではの特別感。2人の時間が永遠になるよう、願いを込めて制作したというこの曲には、きっとIさんと大切な方だけの深く睦まじい時間が詰まっているのだろう。
Iさんは「愛を思い出せる曲を依頼したのですが、曲を聴いて愛は過去も未来も繋がっていて、これは私の人生のテーマソングなんだと感じました」と曲の印象を語った。
7曲目はHさん「Rainbow」。母や祖母が亡くなって途方に暮れていたが、いつからか”ここぞ”というタイミングの時に空を見上げると、虹がかかっていることが多くなった。きっと今も美しい虹になり、大切な人が守ってくれているというテーマで書かれた曲だという。
《なれるはずもない人に 泣いた時かかった虹 あなたの笑み今日も纏い 憂いを変えて 優しさに》まるで空に語りかけるように歌われた。
翔平とHさんは、人生の経過を前向きに話し合いながら、1年かけてセッションを行なったという。「虹や雨のサインを見逃さずにいたい」という翔平らしい感性が光る言葉も聞かれた。
1部のラストは、このライブのディレクター・朝戸佑飛の『Personal Music』。ここでゲストにバイオリニスト・髙倉理紗子がステージに招かれる。
1分ほどのチューニングの間に、朝戸佑飛が「自分自身のステージやチャレンジするものが変わると、仲良くしていた人たちとの関係が薄れてしまう感覚があった。その侘しさを『Personal Music』にしてほしいと依頼しました」と経緯を語った。

3度目のはずなのに、バイオリンで始まる「Flowers」は初めましてと微笑むようにフレッシュな花を咲かせた。ピアノ・バイオリン・ボーカルは見事に重なって、会場中に花びらが舞うようだった。翔平の声は少し震えている。
《新たな自由と寂しさを胸に 次の旅 始める決意を側に置きました》10月からアーティストとして大きな決意を固めた翔平は「歌詞を眺めてたら自分のことと重なって…」と涙を見せた。会場を覆う花びらをすべて花束にして、翔平に手渡したい気持ちになった。自分以外の方々に贈る『Personal Music』が、彼自身への賛歌にもなるようにと願って。
2部
小休憩では朝戸佑飛と岡本至恩のトークが行われた。『テラスハウス』の裏話など、ライブに行った人だけが聞けるトークも満載で、席を立つのも惜しい時間が続く。
2部のスタートは1983年の名曲、松田聖子の「SWEET MEMORIES」カバーから。この選曲も、1コーラスという時間の作り方も心地よく、間合いをはかるように繊細に紡がれる演奏が観客の心をほぐしていった。
続いては翔平が自身の母に捧げた「サイネリア」。
「お母さんが今年の3月で退職したんですよ。僕のことを育ててくれて、本当に好きなことって何だったのだろう?と考える中で、12月27日が誕生日のお母さんの誕生花が『サイネリア』だったんです。希望、自由、快活という意味があったので、これからの人生は自由に生きてほしいという意味を込めて曲を作りました」
《ここからが鮮やか》という歌詞とともに、いつにも増して優しく伸びやかに響くボーカルとピアノ。この歌声がお母様にも届くようにと願う。
『大切な人へ贈る歌 -My Gift to you-』
続いては、ペットホテル・ペットサロンを経営するMさんの「Born for One」。Mさんがステージ横に登場しテーマを話す。
飼い主はワンちゃんの言葉は分からないが、愛情を注ぐ。ワンちゃんからはどう思われているのだろうかと考える。働いているスタッフもワンちゃんたちに愛情を注いでくれていることから、犬を主人公としたワンちゃん目線の曲をお願いしたという。
《優しい声で僕を呼んで 時の果てまで》前日に出来上がったばかりだという「Born for One」。スタッフも手を止めて聴き入ったというエピソードに、翔平は喜びながら「ワンちゃんは遠い星から、自分たちを選んで来ていると思うので、そういうところを書かせていただきました」と語った。
続いては、パートナーシッププランの無償制作第一弾となった楽曲「黄昏Request」。依頼者のSさんは会場にお越しになることができなかったため、翔平がテーマを説明した。
3児の母であるSさんは、子育てだけで1日が終わってしまうほど忙しい。そんな中でも、黄昏時の5分間のコーヒーブレイクが至福の時。つい子どもを叱ってしまうが、そのブレイクで一旦落ち着き、キッチンから戻ったら子どもを抱きしめよう、と思うのだそう。全世界のママたちが「よし頑張ろう」と思える曲を書いてほしいと依頼があったと話した。
《新しい人生に 眩しすぎて戸惑い だけどぎゅっと守りたい 私よりずっと命》《もう大丈夫 愛してる 私へ帰っておいで》語りかけるようなピアノも素晴らしく、ボーカルと並走していた。
続いては、ディレクター・朝戸佑飛からの2度目の依頼曲。「ある人へのプレゼントとして曲を作っていただきました」と友人のKさんをステージ横に招く。バイオリンの髙倉理紗子も再びスタンバイする。
「出会って8年が経つのですが、彼は辛い幼少期を過ごしております。家庭環境にあまり恵まれていなかった、小さい時にお父さんがいなくなって、お金もない中でお母さんと2人で。そんな彼が結婚して、奥様が妊娠されています」客席にいる奥様に会場からは自然と拍手が起こる。「理想の父親像が分からない中で、父親らしくというよりもKさんらしくいてほしいと思って、曲を作っていただきました」
サプライズで披露された「Fathers Light」は、Kさんのお名前にちなんで、バイオリンの美しい「蛍の光」の一節からスタートした。《初めて男に惚れたよ あどけない太陽 覚悟と希望》
Kさんは、母と2人で過ごしてきたことについて「母に伝えておきたかったのは、こんなに素晴らしい人生だということを僕自身が証明すると決めていました。僕は僕の父親像や家族を作っていこうと決心して…これからは自分の子どもにも、素晴らしい世界に生まれたんだよということを伝えたいです。一つ決心したのは、立派な父親になりたいなということと、やっぱり仕事は全力で休んでいこうと思っています!」と会場の空気を涙から笑いに一変させた。
『Personal Music』は自分と違う境遇には想像して思いを馳せたりもできるし、自分と重なる境遇には共感と感情移入で胸がいっぱいになってしまう。片親育ちの筆者も涙が止まらなくて困った。
そしてラストはオリジナル曲の「楽落樹」。
「10月に独立しまして、自分の好きなように楽しいことを、瞬間瞬間で思ったことをやっていきたい、それだけが僕の願いです。先ほど『Flowers』を歌った時に『これだ、俺ががやりたかったことは』と想いが溢れて涙が出てしまいました」と振り返る。
「ひらひらと風に舞いながら人生を歩んでいけたらという決意の曲です。皆さんもご自身でなにかやっていることとか、信じていることがあると思いますが、照らし合わせながら聴いてくれたら嬉しいです」とう」と歌い出す。
秋の夜長、風に舞うようなピアノとバイオリンに優しい歌声が乗る。上村翔平自身の『Personal Music』と言うべきか、決意に満ちた表情は晴れやかだった。
最後に「皆さんにとって少しでも楽しい時間、これからの人生がちょっと豊かになってくれたら、すっげー嬉しいです!」と笑顔を見せ、「皆さんの曲を作るのが使命だと感じているので、よかったら皆さんの曲作らせてください。今日は本当にありがとうございました!」と拍手に包まれて本編は終了した。
アンコール
そしてMCの至恩がすかさず「余韻が残っておりますが、足りないですよね?」とアンコールを促す。
すぐに翔平が登場し「まじで何も考えてないんですけど(笑)、即興でこの中のお一人の曲を…できるか分からないですけど挑戦していいですか? どなたか『最近こんな出来事があったんだけど』って曲作ってほしい人いますか?」と観客に呼びかける。
何名かが名乗りをあげ、1人の女性に決まる。「2年前に夫が亡くなって、1年前に夫と同じ名前の犬を飼いました。ドーベルマンのこうじといいます。夫がくも膜下出血で急死してショックのあまり犬を飼ったんです」と話す女性に、旦那様の人となりや出会いを翔平が軽くヒアリングし、さらさらとメモしていく。「旦那様に伝えたいこと、今一瞬で出てきたことは?」翔平からの質問に「早く死んでバカヤロウ。もっと一緒にいろんな所に行きたかったのに」と心の内を明かした。
翔平と俊幸は呼吸を揃えるように顔を見合わせ、即興で演奏がスタート。30秒ほどの前奏の後、翔平が歌い出す。
《別に寂しくなんてない とか強くは言えない》《別に今日も一緒だったら とか言わないつもりだったのに あぁ思い出しちゃうじゃない こんな景色の場所にいたら》《バカヤロウ 今伝えたいのはそれだけ バカヤロウって言ったらあなたに 届くかな》
ピアノとボーカルはリードしたりされたりするような距離と、阿吽の呼吸でビルドアップしていく。気持ちを吐露するように放つメロディの中にも、ぽろぽろと切なさが滲んだ。
貴重な1コーラスのセッションが繰り広げられ、アンコールが終了。再び丁寧な感謝を述べ、翔平と俊幸はステージを後にした。

回を重ねるごとにより多くの人の心を掴み、スケールを増していく。同じ時間が一つとない、すべてが特別な『Personal Music』のライブ空間。
この先どんな形を成していくのか、今までこの空間を共に過ごした、そしてこれから出会う観客の皆さんと見届けたい。大きく一歩踏み出したくなる秋の夜だった。
取材・文 / 長谷川チエ





