FlowBackへのロングインタビュー。後編は過去と未来のお話です。
自信を持って自慢できる2年間
ーー今作は、特に独立されてからの2年が詰まった作品になりましたが、改めてこの2年間を振り返っていただけますか?
TATSUKI:FlowBackの10年の歴史の中でも一番濃かったし、僕自身の29年間の人生の中でも一番濃い2年間だったなと思います。1年目は本当にすべてを振り払って、自分たちでやると決めたからこその意地みたいなものもあって。今まで学んできたものを改めて学べる期間でしたね。デビューする前は友達の延長線上から始まって、コミュニケーションを取らなくても、FlowBackというプロジェクトは動いていくし、その中で僕たちができることを最大限にやってきたんですけど、だんだん仕事をするパートナーになってきて。今の環境だと、コミュニケーションを密に取らないとプロジェクトが動いていかないので、メンバーとも一番向き合ったし、FlowBackとしての時間と、作品一つ一つにかける血の濃さも一番濃かったんじゃないかなと思います。
MASAHARU:僕もたぶん、何年後かにFlowBackを思い返した時に、思い出すのはこの2年間の始まりの日だろうなと思いますね。朝方にアーティスト写真を撮ったんですけど、その日が色濃く記憶に残ってます。なんかすごく印象的で。
TATSUKI:へぇ…そうなんだ…。
Swan.J:いつも応援してくれてるスタッフさんだったり、メンバーだったり、ファンの方に対して、うまく伝えられてないかも、役に立ってないかもとか考える日々だったような気もしてて。というのも、新体制になって、今1人でも欠けたらだめだよなっていう状態で再スタートした時、どうやっても気持ちが上がらなくて。メンバーだったりスタッフさんに助けてもらって今やっとここにいられているようなものなので…しんどかったですね! 今思うとやっぱり。今も活動休止するという状況が、正直自分の中で分かってなくて。これがいいのか悪いのか、やりきったのか。このタイミングでアルバムを出して、もう2週間後には一旦区切りのライブがある…自分の中でそれが、笑っちゃいけないんですけど笑えてきて。仮にアーティストとしてメンバーと一緒にステージに立てるのが最後かもしれないし、ファンの方と会えるのがこれで最後になってしまう可能性の方があるし。でもそれは全部可能性でしかないしその逆だってあるし。だとすれば逆の可能性を信じたいし自分を鼓舞し続けたいなと思って。そういうずっとネガティブな感情だった自分を変えてくれたメンバーだったりスタッフさんやファンの人に対して、ラストライブの24時まで伝え続けたいというか。ありがとうと感謝を。だから…総括するとありがとうと感謝を自分の言葉でよく言うようになりました。
ーー素敵なことですね。REIJIさんはこの2年を振り返ってどうですか?
REIJI:この2年で、元々あった絆に深みが出たというか、スムーズじゃなかったからこそ、支え合ったりフォローし合ったり、チームのために動いた2年間でした。メンバーの魅力により気付けたりとか、助けられてるんだなと実感したりとか。生半可じゃない2年間を生きてきた印が、たぶん4人がステージに立つ時に、誰も勝てない部分なのかなと。いろんなグループがいる中で、FlowBackは5人から4人になって、全部自分たちでやってて、どうしても比べちゃう瞬間、いいなと思うこともあったんですけれども、この4人がつくり上げるものは唯一無二だし、この4人だからこそできるもの。誰かに引っ張られてるんじゃなくて、自分たちが踏み出した場所に道ができてるから、かっこよくね?って純粋にずっと思ってたし。それは12月3日過ぎてもずっと誇りに思うし自慢だし。自信を持って自慢できる2年間だったし、メンバーだし、FlowBackだなと思います。
ーー先ほどMASAHARUさんが、FlowBackを振り返っても2年前の始まりの日が浮かぶとおっしゃっていましたが、他の3名はこの10年を振り返った時に、思い浮かぶ場面ってありますか?
Swan.J:思い返すとするんだったら、本当に些細な稼働の1日だと思います。当時レコーディングしてた所が地下で、TATSUKIくんは長テーブルの端っこに座ってiPadで見てて、MASAHARUくんはソファで足伸ばして座ってて、REIJIくんはTATSUKIくんの隣でお菓子食べてる。MARKくんは鏡の前でかっこつけてる(笑)。それが、非常階段でタバコ吸ってから入ってきた時の風景なんですよ。変わり映えのない1日なんだけど、今はもう、あれは美しい構図でしたね。
TATSUKI:僕が鮮明に覚えてるのは、メジャーデビューの前日ですかね。渋谷のタワーレコードでリリースイベントがあったんですけど、それが終わって楽屋に戻ったら、当時のスタッフ全員からめっちゃ怒られるっていう。メジャーデビューの前だからいろいろなスタッフがいっぱい来てて、「このままじゃだめだよ」って。デビュー前に喝を入れられたことを鮮明に覚えてます。その時にメンバーで傷を舐め合って培われてきた絆だったんですよ。でも独立してからは、傷を舐め合ってても仕方ないし、FlowBackとしての絆の形が進化していった感じはしますね。
REIJI:僕は一番覚えてるのが、イベントで打ち上げをしたんですね、Da-iCEさんと、THE RAMPAGEさんたちと。そこで爪痕残さないとと思ってお酒飲み始めちゃったんですよ。それでパって気付いたら僕THE RAMPAGEさんの中にいて(笑)。LIKIYAくんに「THE RAMPAGE素敵ですね」って話してて。
TATSUKI:そこから仲良くなったもんね。そこまではまだ愉快な人でよかったんですけど、ホテルに戻るバスに乗ってからが大変で。
REIJI:僕がめちゃくちゃ酔っ払って、酔っ払ってるところ人にはあんまり見せないんですけど、その時自分の中で溜まってたものが爆発して、急に「僕(グループを)抜けたい」って勢いで言っちゃって、メンバーで言い合いになって。
TATSUKI:もう本当にね、REIJIは10年間で唯一ですね。泣きながらずっとメンバーに怒ってて。「僕は抜けたい、僕は必要ない」って。
REIJI:そうそうそう! TATSUKIは話聞いてくれてて、MARKは泣きながら「何でそんなこと言うんだよ!」って言ったりとか。
TATSUKI:それでSwanは何も分かんないのに、「黙れタコ」ってREIJIのことバーン!って殴って(笑)。
REIJI:いろんな動物の中からタコを選ばれたのが一番うざいなって(笑)。コオロギとかはあるんですけど、たぶん人生で初めてじゃないかな。タコみあるかな?と思ってちょっと考えたの覚えてます。MASAHARUはずっとイヤフォンして聞いてないし。
TATSUKI:一番後部座席に座って何も言わないっていう。
MASAHARU:いやいや、聞いてたけど、酔っ払いにいろいろ言ったところでどうにもならないと思ってたから。当時から(笑)。
TATSUKI:でもそれ覚えてるものなんだね?
REIJI:え、それ僕鮮明に覚えてる。周りの顔色を窺って立ち回っちゃってて、自分の意見を言いにくい時期で、溜まってるものがあって、お酒飲んだら全部言っちゃったんですよ。申し訳ないと思ってるんだけど溢れ出ちゃってるから全部言っちゃって。
TATSUKI:それでちょっと落ち着いてきて、明日も早いからみんな戻ろっかってなった時に、一気に他のメンバーすぐ自分の部屋戻って(笑)。俺だけずっとREIJIの看病してた。
REIJI:それで優しいのが、そのとき夏だったっけ?
TATSUKI:夏だったんですけど、基本的に彼ってホテルの部屋でエアコンつけると喉がやられちゃうんで、あんまりつけてなかったんです。だからその当時のマネージャーと一緒に部屋に連れて行って、暑いからエアコンつける?っていう話になったけど、「たぶんREIJI喉のこと考えてるから窓開けときましょう」って。
REIJI:それ聞いた時にTATSUKIっていいお父さんになれるなって思いました(笑)。
TATSUKI:他のメンバーまじで一瞬で消えたからね。あんなに話し合ってたのに一瞬で消えるんだと思った。
REIJI:うん、あの今普通に一緒にいますけどうざいっす。
MASAHARU:(爆笑)
REIJI:僕お酒強い方なので、メンバーの前では基本酔っ払わないんですけど、あの日だけなぜか。
Swan.J:何がトリガーになったのかほんとに分からないよね。
グループでの音楽活動休止中にやりたいこと
ーー話は変わりますが、12月3日のライブに向けてはどうですか?
Swan.J:個人的な話なんですけど、これまで経験したライブと同じ感覚なんですよね。これは自分の願いなんですけど、これが続けばいいのになっていう思いと、これが最後になるかもしれないけど、気付いたら来年もしかしたらライブしてるかもしれないしっていう、僕にとってはいろんな可能性がある中のきっかけでしかなくて。集大成を見せたいっていうよりかは、「応援してくれてありがとう、またね」っていうフランクな感じの方が心としては穏やかなのかなって。バイバイっていう感じじゃなくて、またねって。約束できる言葉はないけど、気軽に、明日以降の自分を強くしてくれたり、前を向かせてくれる言葉のような気がして。「またね」って。音楽やってなくたって、ステージに立ってなくたって、別にそこにこだわりはなくて。きっとみんなそれぞれあると思うんですけど。メンバーもファンも、それぞれの人生で前を向いて歩ける、そんな日になればいいなと思っています。
ーーその後のことは考えたりしますか?
Swan.J:活動休止中に何をしようかって考えたら、やってみたいことがあって、目標を定めたら、これをしないといけない、これをするためにはこれを我慢しないといけないって急にバーッと出てきて。正直実現するか分からないですけど、一つ自分の中で目標を決めて、来年というか、12月4日以降からやりたいなって。さっそくチャレンジしたいなって思います。
ーーそれがもう見つかっているんですね?
Swan.J:目標を叶えるために、必要なものが見つかって、それを一つ一つ遂行していく日々になると思います。
ーーそれがファンの皆さんの目に触れることってありそうですか?
Swan.J:正直ないと思います。SNSも今までは毎日のように更新していたんですけど、自分にとって証みたいな大切な言葉だったのに、SNSに投稿して、それが感情的に成仏しちゃったことがけっこうあったんですよね。それがもったいないなと思って。アカウントは残すと思いますけど、更新はローペースになるかもしれないです。
ーー他の皆さんは、来年以降何か考えていることはありますか?
TATSUKI:僕は今までの10年間、それより前のことも、自分のこれからに対して活かせるなと思うことがたくさんあって、改めて次の場所で学びたいなと思います。最初はまず学びから入ろうかなと。自分が表現するものは減ると思うんですけど、視野を広げて。今までは自分たちのライブというものだけを見てきたけど、もっと外のライブの作り方とかを学んでいきたいと思っています。
MASAHARU:僕は…ワニの飼育員になりたくて。
REIJI:うん、言うと思ったよ。だいたいMASAHARUがボケる時は身体を起き上がらせるか、身体の繊維が動くので、そこ確認してもらってからで大丈夫です(笑)。
Swan.J:ちょっと前かがみになる。
REIJI:今からボケるぞボケるぞーって。それがなくなれば、いいんですけどね。
TATSUKI:書いといてください。ワニの飼育員って。はい次REIJIさん(笑)。
REIJI:この後むず!
ーーMASAHARUさんワニ以外にありますか?
MASAHARU:はい。僕は、音楽により向き合っていこうかなと思いますね。作るのもそうですし、シンガーソングライターとしてステージに立ったり、誰かに曲を書いたり。FlowBackを通してやってきたことも活かしつつ、新しいことに挑戦してみたいなって考えてます。
REIJI:僕はよりデザインと向き合っていこうかなと思っていて、音楽とダンスで表現していたものから、デザインを通して表現していくクリエイティブアーティストとして、自分が表現したいことをより広げていけたらいいなと思っています。ダンスと歌も好きなので、どこかのバーでアコースティックでやってもいいのかなとか、そういうのは遊びでというか。
ーーとても素敵ですね! WATWINGの八村倫太郎さんとの「ZERO-8」(FMヨコハマのラジオ番組)は続けてくれるんですね。
REIJI:はい、ラジオは続けていくので、音楽はもちろん、表現することを広げるきっかけとして挑戦できたらいいなと思っています。
ーー皆さんの挑戦を心から応援しています!
編集後記
FlowBackを初めて知ったのは、「Heartbreaker」の頃、ちょうどCulture Cruiseを設立した2016年の暮れだったと思います。
まさかここまでご縁を繋いでいただけるなんて、想像もしていませんでした。
10年もの間、リーダーで居続けたTATSUKIさんにはここまで本当にお疲れ様でしたと声をかけたくなる気持ちです。インタビューでは足りない部分を補足してくれたり、いつもフォローしてくれるので、編集脳で一緒に記事をつくり上げていただくような感覚に勝手になっていました。TATSUKIさんの人生の中で、最も濃い期間だったと明かしてくれた2年間を、ずっと取材させていただけたことは取材者冥利に尽きますし、間違いなくCulture Cruiseにとっても財産のような時間です。
ワニの飼育員になりたいMASAHARUさん。願望も含め、前編の冒頭に書いた4年の月日は、後にも先にも唯一MASAHARUさんがボケたこの瞬間に、凝縮されているような気がします。私の勝手な思い込みかもしれないですが、初回だったらきっとMASAHARUさんから“ワニ”のフレーズは飛び出さなかったと思うので。インタビューにおけるコミュニケーションは、会話以上に大切なものが多分にあるということを、MASAHARUさんからいつも教えていただいていました。
そんなMASAHARUさんに秒でツッコミを入れたREIJIさんの驚くべき瞬発力。「なりたくて」の「く」あたりでリズミカルなツッコミが入っており、美しいほど華麗なコラボレーションでした。REIJIさんは“タコ”のフレーズで話を広げてくれて、みんなで大笑いして。その場にいる全員を巻き込んでしまうほどの笑いの渦を紐解くと、その中心にはいつもREIJIさんの愛と優しさがあります。今回の取材には少し不安もあったのですが、その心遣いで自分の緊張がほどけていくのが分かりました。
前回の記事のタイトルでもある「365日FlowBackでいるのが当たり前だった」という言葉をくれたのはSwan.Jさんでした。そんなSwanさんが今どんな風に過ごされているのか気になっていたので、Swanさんにお会いすることは今回の取材において必ず大事なヒントになるだろうと思っていたのです。この日の穏やかな笑顔が、すべての答えだった気がします。その表情がどうか文章から伝わってほしい、話し手の柔らかな体温はどうしたら文字に込めることができるのだろうかと悩むほどでした。
“ここまで来た”FlowBackも、ここから始まるFlowBackも。「またね」の気持ちで、ずっと変わらず応援し続けます。
撮影 / 小山恭史、インタビュー・文 / 長谷川 チエ
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