GENERATIONSがメンバープロデュース楽曲を6ヶ月連続で配信リリースする『PRODUCE 6IX COLORS』。今回は第5弾として6月2日にリリースされた「Magic Hour」をプロデュースした佐野玲於さんにインタビューしました。
第1弾:中務裕太さんインタビュー
第2弾:片寄涼太さんインタビュー
第3弾:白濱亜嵐さんインタビュー
第4弾:小森隼さんインタビュー
若手チームで挑んだ意欲作
──『PRODUCE 6IX COLORS』第4弾までのメンバープロデュースを見てきて、得られたことはありますか?
佐野玲於(以下、佐野):とてもたくさんあります。6ヶ月連続リリースも初めての試みで、皆さんの反応やメンバーみんなの仕掛け方を見ていて、いろんな収穫があるなと思っています。メンバーそれぞれが作る作品の個性や、楽曲の世界観の面白さであったりとか。こんなアイディアで来るのかっていう発見もありましたね。
──それを受けて、玲於さんご自身はこういう風にやってみようとか、アイディアを考えることはありましたか?
佐野:わりと同時進行でいかないと時間がなかったんです。とはいえ、みんなとは違うラインを突かないとそれぞれの色が出ないなとか、みんなもすごく考えたと思うんですけど。僕はHIPHOPの文脈でダンスをやってきたので、そういったところを触るのはおそらく自分くらいなのかなという気がしていたので、サウンドプロデューサーもそこに特化したメンバーで選定させていただきました。
──最初の段階ではジャンルとか方向性とか、GENERATIONSのメンバーさん同士での話し合いはされなかったんですか?
佐野:「あまりしゃべりすぎず共有しましょう」みたいな会はありました(笑)。ないとは思うんですけど、同じ作家さんに依頼してしまわないために、建設的な話をした方がいいなと思ったので。でもそこはみんな全然違う感じになりそうだったのでクリアして、あとは納品するまでのお楽しみという感じで構想だけ話して。自分は年末くらいですかね、わりと早い段階から動き始めました。

──そして今回の「Magic Hour」ですが、テーマは決めていましたか?
佐野:最初は決めていませんでした。HIPHOPのプロデューサーであるRicky(Nvmbrr)は親交があったので、まずは彼にお願いしました。英語と日本語が堪能なMIXの子で、JP THE WAVYと何年か前に作った楽曲でもご一緒しています。お互いに最近聴いている曲、この辺がいいんじゃないかというのをまずはブレストし合って、音楽談義をしながら決めていきました。
──やりとりは一緒にスタジオに入って進めていったのでしょうか?
佐野:そうですね。スタジオに何回か入って、どんなビートにするかをまず決めて、誰に頼むかという話になり、ineedmorebuxくんにお願いしました。buxくんとは初めてで、Ricky(Nvmbrr)とJP THE WAVYくんのご紹介でもあったんですけど、でもずっと知っていたのでご一緒したいなと思っていました。自分の座組は若手の方とやってみたかったので、それも決め手でした。
──ineedmorebuxさんがこれまで手がけた作品には、どんな印象を持っていましたか?
佐野:今のHIPHOPど真ん中でありながら、キャッチーさもありますよね。耳にしっかり残る上ネタを作るのが得意ですし、ベースの出し方も洋楽志向で、タイムリーでフレッシュなイメージがありました。なおかつ20代の若手プロデューサーであり、もう有名ではありますが、これからもっと有名になるupcomingな方でもあるので、一緒にやりたいなと思いました。
──今回一緒に制作してみてどうでしたか?
佐野:速いですね! スピード感のかたまりですね。さすがは若手のアグレッシブさや機動力(笑)。対応力にも感謝しています。今後絶対に素晴らしいプロデューサーになっていく方だと思いました。
──そのスピード感の中でどのように楽曲ができていったのでしょうか?
佐野:最初とは全然違うものになりました。最初のもすごくかっこよかったんですよ。足したり引いたりして探って「ここのビートをもっとこうしてみよう」とか「上ネタ変えてみてもいいですか?」とか、そのセッションがすごく楽しかったです。全体的にはトラップのビートで、上ネタがもっと…ダークな感じだったんです。季節とかも考えてもうちょっと軽やかにしてみようということになり、でも最終的にもっと強さも出したいということで、トラップをレゲトンっぽくして今に至ります。柔軟なプロデューサーさんだなと思いました。
──レゲトンによって、軽すぎないビートと夏に向けた季節感も出ていますよね。
佐野:そうですよね。元々、自分のリファンレンスがISLAND(ASH ISLAND)な感じだったのでバチっときました。もう少し強さを出したいと僕が言ったので、「じゃあいっそのこと!」ってbuxくんがレゲトンを提案してくれて(笑)。この感じを出せたのが良かったなと思いますね。

──制作陣の方々との今までの接点を改めて教えてください。
佐野:Nvmbrrくんはすごく仲が良くて、後輩の楽曲も制作してもらったりもしていて絡みも多いです。元々JP THE WAVYくんも含めてずっと仲良くて、GENERATIONSでもライブや作品でご一緒していました。その後HIROさんから「PSYCHIC FEVERをJP THE WAVYくんに頼みたいんだよね」というお話があったので「絶対合うと思います」って。それでWAVYくんがPSYCHIC FEVERを手がけることになって。
──玲於さんの働きかけが、後に本当に良い方向に響いていますよね。
佐野:そうやってどんどん繋がっていくんですよね。「WAVYくんの座組で全部やった方が面白いと思いますよ」って話して、ビデオから衣装までプロデュースしてもらって。後輩もそうですけど、なにかのきっかけでできていくその連鎖が面白いなと思っています。
──その連鎖を後輩の方々も受け取っていますよね。PSYCHIC FEVERのJIMMYさんとお話していても、エピソードの中で今回のプロデューサー陣とのことが自然に出てきたり、本当にいい関係なんだなと感じます。
佐野:JIMMYは本当に仲の良い後輩です。彼には積極的にいろんな人を紹介していますね。彼のためになりそうな人はどんどん繋げて。一緒に遊びに行っても彼はちゃんとしているので(笑)、一緒にいて楽しいですし、誰かを紹介しても丁寧にリンクするので、なにかに繋がればいいなと思って。自分も彼も出身が愛知県で、GENERATIONSのバックダンサーをやってくれていた頃からかわいがっている後輩の一人です。彼なら自分のものにするだろうと思って積極的に連れ回してます(笑)。いきなり電話きて「今何してます?」みたいなこともありますし、僕がJIMMYに「ちょっと今さ、こんな人来てて話が面白いから、もし空いてるんだったら来なよ」って友達を紹介したり。そうすると勝手に仲良くなっていくので、すごくいいなと思っています。
GENERATIONSが表現するHIPHOP
──今回の制作では、クリエイティブ面で刺激を受けたこともありましたか?
佐野:ありますね! 技術的な側面もそうですけど、引き出しが面白いなと思ったり、自分の知らないことを共有してもらったり。あとは自由さですかね。HIPHOPを作っている人たちなので。HIPHOPって正解が幾通りも広がっていて、もっとも自由であると思うので、その面白さを感じました。
──その自由度の中で、今回GENERATIONSはどんなHIPHOPを表現できたと思いますか?
佐野:GENERATIONSはまずボーカル2人がいますよね。LDHのボーカルイズムの根源はR&Bとかブラックミュージックにあって、そのスタイルを根強く持っているタイプの2人なので、だからこそ今のHIPHOPをやってもらってみるという。イメージを壊すみたいな。きれいな声の2人だからこそそれも生かしつつ、でも新しい楽曲のテイストに挑戦することによって、2人のまた新しい表情が出ますよね。HIPHOPがベースのサウンドにマイクで参加することによって、GENERATIONSってこっち系やったことないよねっていう面白さと、そこで踊るパフォーマーという面白さを表現できたかなと思います。
──アウトロの着地も面白いですよね。
佐野:そうなんですよ、アウトロでトラップになるっていう。曲はかなり短いんですよね。フック、バース、フックときてアウトロで終わりみたいな(笑)。今っぽいですよね。ここのアウトロは元々なくて、自分のアイディアで後に足してもらいました。RECの時に思いついて「ちょっと足してもいい?」って聞いたら「全然いいっすよ」って2〜3日後に送ってきてくれました(笑)。当初のトラップのビートもかっこよかったし、パフォーマーだけのブレイクをアウトロに作ってもいいかなと思って。上ネタのエモい感じも、ライブの時はギターパートとかになっても面白いなと思ってます。

──その他、プロデュースとして具体的に手がけたことはありますか?
佐野:このインスピレーションを元に、ビデオグラファーも20代の方にお願いしました。GENERATIONSの活動とは別で何度か一緒に仕事をしていて、いいなと思っていたので。ビジュアルのアートディレクションもシングルのジャケットも、20代の才能のある方がいて、その方にお願いしました。そしたら3日で4パターンあげてきてくれて「1,3,4はもう納品できます! 2はビデオを撮るタイミングで自分も現場に行くので、撮ってコラージュしたいです」って言ってくれて。「そっち試していい?」って返事して、結局その写真をコラージュした2に決まったんです。みんな20代の若手で構成されています。
──今回は玲於さんもボーカルに参加されていますね。
佐野:今回は歌い分けがクロスしていて、僕がフックにもバースにも入っていて、3人が交互にクロスしているのが面白いところです。HIPHOPがベースなので、ラインとかもそういう風に作っているので。最初は僕が入る予定ではなかったんですけど、プロデューサーの子が「玲於くんやりません?いけちゃいますよ」って。オートチューンだし、「じゃあやるわ」という流れで入ることになりました(笑)。昔やった「My Turn feat. JP THE WAVY」の時はJIGGさんとRicky(Nvmbrr)が入ってくれていて、あの時は1バースに僕が入ってて、2バースがWAVYくん、フックがボーカルという感じだったんですけど、今回は混ぜ混ぜですね。
「My Turn feat. JP THE WAVY」(Music Video)
──レコーディングはいかがでしたか?
佐野:ボーカルのレコーディングには最初の方しか立ち会えなかったのですが、2人は何百回とRECしているので、大丈夫だろうということで信頼していました。Ricky(Nvmbrr)がディレクションに入ってくれて、いい感じに仕上げてくれましたね。違う印象になったところもありつつ、GENERATIONSらしさも出ているなと思いました。英語と日本語の聴感もなめらかで違和感なく作れたので、海外の方にも聴いてもらいたいです。
──いよいよ次作はラストになりますね。
佐野:早いもので第6弾まできましたね。ソロもやっているし、ボーカルはなんとなく想像がつきます。数原っぽい感じでくるんじゃないかなと思います。パフォーマーチームは全然想像つかなかったので、すごく面白かったですね。僕はいい座組でトライできたので、GENERATIONSのことでも、他のことでもそうですけど、クリエイティブなことをやっていくにあたって、今回のように若手の、世代の近いプロフェッショナルな方と一緒にやっていくことで、一緒に上を目指して上がっていきたいなと思います。
美術提供:新埜康平
撮影:小山恭史
インタビュー・文:長谷川チエ
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▼『PRODUCE 6IX COLORS』第1〜4弾