グローバル・ラグジュアリー・グループのケリングは、日本において9回目となる「ウーマン・イン・モーション」トークを2026年10月27日(火)、TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催しました。
映画監督の是枝裕和によるオープニング・スピーチに続き、アカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ(Academy Museum of Motion Pictures)館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマ、歌手・俳優の二宮和也、映画『国宝』の企画・プロデュースを手がけた映画プロデューサーの村田千恵子を迎え、世界的な注目を集める日本映画の現在地と未来、映画文化を支える多様性や創造性について意見を交わしました。




また、同日夜には、「ウーマン・イン・モーション」ディナーが都内で開催され、世代や職種を超えた映画関係者が一堂に会しました。
来場者には、石川慶、永田琴、呉美保、奥山由之、天野千尋、奥山大史、山中瑤子、団塚唯我、枝優花、寺田ともか、プロデューサーの福間美由紀、岡野真紀子、脚本家の奥寺佐渡子、俳優の木村多江、霧島れいか、板谷由夏、磯村勇斗、竜星涼、アーティスト・俳優の玉森裕太、女優・アーティスト・クリエイティブディレクターの水原希子、俳優・モデルの三吉彩花、UTA、吉田美月喜、クリエイター・俳優のkemioに加え、文筆家・無言館共同館主の内田也哉子、アーティストの小川紗良、歌舞伎俳優の片岡千之助らが出席。




















オープニング・スピーチには是枝裕和監督が昨年に引き続き登壇。
「この数年だと思いますが、“日本映画って面白いよね”という声を、海外の映画祭や、自分の映画のキャンペーンでよく耳にするようになりました」とここ数年の変化を明かし「濱口(竜介)監督や深田(晃司)監督のような、30〜40代の若い監督たちが自分の作品を(映画祭へ)持っていく。その積み重ねにより、日本映画に対する注目度が上がっている気がします」と分析しながら、「どういう風に継続して次世代に渡して広げていくかというのかが、僕ら世代にとっても課題ですし、映画ファンの方々にとっても大事なことだと思います」とコメント。
さらに近年のアートハウス、ミニシアターの減少についても触れ、「作り手にとっては危機感も感じているので、どういうふうに映画文化を守っていくべきかについても考える必要があると思っています」と語りました。
トークセッションレポート
続いてゲストを迎えてのトークセッションがスタート。実写邦画歴代興行収入1位の歴史的ヒットを記録した『国宝』(2025年)の企画・プロデュースを手がけた映画プロデューサーの村田千恵子氏、国内外で高い評価を得る歌手・俳優の二宮和也氏、そしてアカデミー・ミュージアム・オブ・モーション・ピクチャーズ(Academy Museum of Motion Pictures)館長兼プレジデント、アカデミー・コレクション統括責任者のエイミー・ホンマ氏が登壇しました。
歴史的ヒット作『国宝』の企画とプロデュースを手掛け、制作会社ミリアゴンスタジオの執行役員も務める村田氏。男性社会と言われてきた映画界で数少ない女性リーダーという立場で活躍していますが、「ケリングさんの『ウーマン・イン・モーション』をカンヌ映画祭でも実施されているのを拝見して、私も色々教えていただきたいなと思い、参加させていただきました」とトークセッションへの意欲を見せながらコメント。
続いて挨拶したのは、歌手としてはもちろん、映画『硫黄島からの手紙』(2007年)から映画『8番出口』(2025年)まで、俳優としても目覚ましい活躍が続く二宮氏。映画界における女性の活躍を支えるために、二宮氏は、「(作品に)出演している側としての視点からもお話しできればと思います」と挨拶し、笑顔を見せました。
ホンマ氏は、映画と観客が出会う場であり、映画人同士の交流の場でもあるミュージアムを紹介。世界最大級の映画のミュージアムとして、2021年にロサンゼルスに開館され、展示や上映、教育プログラムを通して、映画の歴史や作り手の仕事に触れることができるほか、各種のイベントを通して世界の映画人たちの交流の場としても存在感を発揮している貴重な施設となっています。
話題は「世界から見た日本映画と日本らしさ」についてのトークに。昨年、『国宝』がカンヌ国際映画祭の「監督週間」でワールドプレミアされ、アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表にもなり、ロサンゼルスを始め各地でプロモーション活動を行う中で、どのように“日本らしさ”を届けようとしたかという質問が投げかけられた村田氏。「是枝さんがスピーチで仰っていたように、日本映画に対する期待感、去年はすごく感じました。二宮さんがご出演された『8番出口』もカンヌ映画祭も大きな話題になっていましたし、みなさん日本映画を観てくださっているなと」と回顧。
“日本らしさ”については、「(『国宝』で)アカデミーキャンペーンをさせていただいている時に、アカデミー会員の方たちに観てもらい、フィードバックをもらうと職人技術の高さをすごく評価していただいたんですね」と振り返り、「(アカデミー賞では)メイクアップ&ヘアスタイリング部門でノミネートしていただきましたが、衣装や美術、俳優部門など同業者の方に術の高さを評価していただけて、それが日本らしさにつながるのかなと。緻密なものを作る、手先が器用みたいなところなのかなと思っています」と分析しました。
この発言に、ホンマ氏は「全く同感ですね」と頷きながら、「職人技を含め、そういったものを通して日本の芸術から感銘を受けていましたので、歌舞伎もそうですが、ヘアメイクの技術など『国宝』を通して日本の伝統を感じることができました」と熱弁しました。『国宝』について、二宮氏も「俳優側はもちろんみんな(『国宝』を)観ていましたし、あれだけ参加したかったと思える作品は久しぶりだったんじゃないかな」と俳優視点から当時の心境を明かしました。
一方、クリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』でベルリン国際映画祭に参加。昨年は『8番出口』で、カンヌ映画祭への参加も果たした二宮氏は「(『8番出口』を観た現地の映画ファンからは)本当にありがたいな、と思う反応をいただきました。カンヌ映画祭は、映画が大好きな人たちが集まる映画祭の一つですし、作品がその人の肌に合わないと途中退席も多々あると事前に聞いていたので」としみじみ。「映画に賛同していただけたというか、面白いと思ってもらえる方に最後まで見ていただけたのは嬉しいことだと思います。日本から(映画祭に)来ている俳優さんたちにも“良かった”と言っていただけて、ホッとしました」と笑顔を見せました。
そんな『8番出口』は、日本、アジア、北米でも興行的な成功も収めましたが、20年前に映画祭へ参加した経験と比較しながら、「是枝さんも仰っていましたが、日本映画が注目されている感じはあります」と変化を明かし、「『浅田家!』(2020年)という映画に出演した際、『浅田家!』がフランスの方にたくさん観ていただいたという話は聞いていたものの、実際に体感はなくて。(映画祭の)現場で“面白かったね”という言葉をいただいた時に、“あの話は本当だったんだ”と初めて感じました」と、自身の肌で感じたエピソードを語りました。
さらに、 “日本映画らしさ”や“日本らしさ”について問われると、「日本らしさというのは、ミニマムな空間や展開がすごく得意なところなのかなと思っています。抽象的な表現の手数が多い国なのかなと」と日本映画の魅力を語りました。
続いて、話題は作品づくりのプロセスへ。企画・製作のどの段階から海外の観客を意識しているのかという問いに、「考えますね」と即答したのは村田氏。特に映画製作の際に意識することが多いという村田氏は、「最近は配信ドラマも同時期に海外で観られることがあるので、考えています」と意図を説明。「アメリカ人は、アメリカ人のために映画を作っていないんです。世界中で観られることがデフォルト」と説明しながら、「映画は後に形となって残るもの。50年後の日本人が面白いと思えるものを作らなきゃいけないというマインドがあるので、海外の方のことを想像することは難しいのですが、“これはわからないかな”と感じるものは省くようにしています」と舞台裏を明かしました。
さらに、当事者ではない方が当事者に寄り添い支援する“アライシップ”というテーマについても話題に。 “アライシップ”の観点も踏まえ、3年連続で男性ゲストも登壇してきた、この「ウーマン・イン・モーション」のトークセッション。
女性がより力を発揮できる環境づくりについて質問が投げかけられると、二宮氏は「とにかく、女性の方々のコミュニケーション能力が高いなと。この業界だからというより、生きている生活圏内の中でもすごく感じます」と振り返りながら、「人と向き合うことが男性はそんなに得意ではないと思うので、女性の方々がコミュニケーションの場で引っ張ってくれるのはすごくありがたいです。安心して働ける環境が作られているなと実感します」と、女性たちが活躍することの意義を強調しました。
そんな両者の言葉に続き、ミュージアムを率いる立場にいるホンマ氏も、「私自身、いろんな決断をする立場として、皆を率いる立場として、力を持たせていただいているわけですから、思いを分かち合いたいですし、他の女性たちのことにも目を配りながら仕事をしていきたいと思っています」と、女性たち誰もが力を発揮できる環境づくりへの意欲を示しました。
作品づくりや異文化との出会い、互いに与える影響や女性たちの働き方など、多岐にわたる話が飛び交う中で、トークはアジア映画についての話題に。ホンマ氏は『パラサイト 半地下の家族』(2019年)を挙げ、「アメリカでは字幕で作品を観ることが慣れてきたという効果もありました。さらにコロナ禍を経て、自宅で多様な作品を観るという習慣もついたと思います」と変化を明かします。
「アカデミー・ミュージアムでは50〜60年前の作品の上映も行っています。黒澤明監督の特集もしましたが、なるべくフィルムで上映したいと考えているので、10本ほどフィルムもお借りしました。上映の何時間も前から並んでいるお客さんもいたほどで、若い観客にとっては素晴らしい体験になったと思います」とコメントし、国籍や時代を超えて名作を次世代へとつないでいく取り組みを紹介しました。
この話には、二宮氏も「性別や年齢、生きている時間や職種も違う中で、映画という共通言語の中で通じ合えるのは、エンタメ以外で考えにくいものだと思いますし、劇場体験をするというのは重要ですよね」と共感を示しました。
本イベントでは、ホンマ氏が“女性”をテーマに、自身に影響を与えた映画を6作品セレクト。その中から、トークセッション後には、ルル・ワン監督がメガホンをとった『フェアウェル』(2019年)を上映。
『フェアウェル』について「この作品が大好きです」と愛を滲ませるホンマ氏は「自分が大人になる中で、家族とのつながりがどれほど大事なことか、それを教えてくれる作品で、非常に胸に響きました。(ルル・ワン監督は)とても才能のある監督だと思いますが、アジア系アメリカ人のストーリーテラーとして独特の観点で物語を紡いでいます」と語り、これから鑑賞する観客に魅力をアピールしました。
最後のトークテーマは“次世代と日本映画の未来”。映画文化を次世代へと継承していくことについて、ホンマ氏に次世代の創作へどのようにつなげていきたいかという質問が投げかけられると、「アカデミー・ミュージアムでは、映画の裏側をお見せすることができます。映画を観るだけでは普通の映画体験にすぎませんが、その舞台裏ではどのような方達が映画に貢献したのか、そのストーリーを見ることができます。それが、未来の作り手たちのインビテーションになっているのではないかと考えています」と語り、ミュージアムの存在が次世代の作り手たちの創作意欲を刺激するきっかけになると期待を寄せました。
そして、日本の映画業界で活躍する村田氏、二宮氏には、10年後の日本映画界で、ひとつだけ変わってほしいことについての質問が。村田氏は「子育てをしながら働いている女性の方の中には、子供が熱を出して仕事を休まなければならないような場面に直面することもあると思います。そう言った時に、産休や育休だけではない、もう少しゆとりを持って働けるような制度や環境が整ったらいいなと」と語り、未来への期待を込めました。
二宮氏は「いろんな角度から、さまざまな意見をいただく時代になってきていると思いますが、その分、面白いと思える作品を作ることが難しい時代になってしまうのは、良くないとも思います」と複雑な胸の内を吐露。「とにかく、良い作品で良いお芝居をして、“あの作品を観て映画業界に入りたいと思ったんです”と言ってもらえるような環境を作っていきたいなと思います」と語り、決意をにじませました。
世界的な注目を集める日本映画の現在地と未来、そして映画文化を支える多様性や創造性について、それぞれの視点から考えや思いが語られた本イベント。会場からは盛大な拍手が湧き起こり、イベントは大盛況の中幕を閉じました。
▼ケリング「ウーマン・イン・モーション」公式サイト
https://www.kering.com/jp/group/kering-for-women/women-in-motion/
▼Instagramも更新中


