BALLISTIK BOYZが2024年2月21日にリリースしたアルバム『Back & Forth』について書きました。過去の未公開インタビューエピソードも交えたオリジナルレビューです。
BBZ 3枚目のフルアルバム
Culture Cruiseでは過去に4回インタビューをさせていただいており、先日は今作『Back & Forth』のリリースインタビューも公開しました。
・『Back & Forth』インタビュー 前編
・『Back & Forth』インタビュー 後編
また、初めてBALLISTIK BOYZを取材したのは今作収録の「ラストダンスに BYE BYE」のリリース時とあって、個人的にも各曲かなり聴き込んだ経緯があります。
BALLISTIK BOYZはメジャーデビュー作がアルバムとなっており、これまでには、1作目の『BALLISTIK BOYZ』と、2作目の『PASS THE MIC』をリリースしています。
今作はそれに次ぐ待望の3作目。約2年3ヶ月ぶりのリリースとなりました。
2022年には半年間、PSYCHIC FEVERとともにタイに拠点を移して活動したBALLISTIK BOYZ。
グループとして多くの経験を経てリリースされた今作は、タイでの活動などを通じて得たものを、さまざまなアプローチで表現された1枚だと感じました。
その中身を紐解いていきます。
BBZのアルバム1曲目、やばすぎる
ストリーミング主流の今、アルバムの序盤にシングルやリード曲を持ってくることはスタンダードです。
BBZでいうと、1作目なら「テンハネ -1000%-」、2作目なら「All Around The World」。
「テンハネ -1000%-」はライブで絶対聴きたい代表曲だし、「All Around The World」はいい曲じゃないと思ったことが1秒もない(なんだそれ)!
そして今回は「In My Head」。このアルバムの鍵を大きく握ります。
実際に日髙竜太さんも、まずは最初にしっかり聴いてもらいたいので「In My Head」を1曲目にしたと話してくれていました。
元々シングル候補で、いつかこの曲をやりたいと思っていたと砂田将宏さんも明かしてくれましたが、どんな曲ですか? 再生してみます。
え? こんな表情見たことないんですけど。またしても1曲目最高じゃん。
失恋をテーマに、メンバーの深堀未来さん、奥田力也さん、松井利樹さんが作詞を担当したこの曲。
MVでは、まさにこれまで見せたことのない表情の7人が、リスナーの楽曲理解をリードしてくれます。
以前のインタビューで「主人公感ある」という、私の個人的すぎる急な感想も華麗に交わした深堀さんですが、そのイメージを体現されているのがまさに「In My Head」でした。
おそらくこの曲は、ライブではシンガロングで一体となって、みんなで楽しむような曲になるんじゃないかなと予想しています。…だけどけっこう難しい。
アコギが先導するメロディはシンプルで、日本のライブでは横揺れっぽい。
しかしトラックは808サウンドが意外と強くて、HIPHOPのトラップに近い要素があります。個人的にはリル・ナズ・Xとかを思い浮かべたくらいです。
Bメロとサビ後半にだけ入ってくるハイハット、トラップの要素はあくまでも“仕込み”にとどまるようなトラックメイクが、J-POPとしての絶妙なバランスを保っています。
このあたりは海外でパフォーマンスすると、けっこう盛り上がる曲になりそうな予感もします。
ワールドスタジアムツアーをグループの夢に掲げているBBZにとって、こういう曲があることはとても大切だと思うので、国外でのライブやフェスでも活躍する曲になるといいなと期待しています。
アルバム『Back & Forth』
アルバム『Back & Forth』は、新録3曲を含む全12曲。
松井さんが話してくれたように、タイに住んでいた部屋のベッドの上で歌詞を書いたという「Lonely」や「N.E.X.T.」、タイで活躍するTRINITYや、GULF KANAWUTさんをフィーチャーした楽曲も収録。
その他、日本のファンに贈る曲として制作された「All About U」など、海外での活動を見守るファンにとっても、思い入れの深い作品になっているのではないでしょうか。
- In My Head
- God Mode
- Ding Ding Dong
- Drop Dead feat. TRINITY
- ラストダンスに BYE BYE
- Milk&Coffee
- Lonely
- All About U
- All I Ever Wanted feat. GULF KANAWUT
- WAVIN’
- ドラマチックを残したい
- N.E.X.T.
この中から何曲かピックアップします。
「God Mode」
『ぶっちぎり!?』のテーマソングとなっており、アニメのタイアップはグループ初。
とのことですが、BALLISTIK BOYZ、アニメとのタイアップめちゃくちゃいいじゃん。なぜ今までなかった? と不思議になるくらいです。
まさに変幻自在のマイクリレー。
群像劇のように織り成す複雑な歌割りが、BALLISTIK BOYZの持ち味を最大限に引き出しています。
「ドラマチックを残したい」
全国高等学校バスケットボール選手権大会「SoftBank ウインターカップ2022」 大会公式テーマソングとなっていた楽曲。
以前のインタビューで、加納嘉将さんに対して私は「加納さんのボーカルは、この声についていけばいいんだなっていう感覚にさせてくれますよね」と伝えたことがあります。
記事には載せていませんが、こういうお話をちょいちょいしています。
「Ding Ding Dong」「ドラマチックを残したい」などがまさにそうです。
しかし一方で、目の前でその感想を聞いている時の加納さんはとても穏やかで、ボーカルから受ける印象とは少し違います。
加納さんのそんな優しい部分を伝えたいと、その時思ったのです。
「All About U」はそれがうまく出ていて、7人の優しく語りかけるような歌とラップが印象的です。
「All About U」
タイにいる間、寂しい思いもさせてしまった日本のファンへ贈る歌として、ラブストーリー仕立てで表現されています。発想が素敵すぎますね。
6thシングル「Ding Ding Dong」のリリースの際、「All About U」をリードにしようかギリギリまで悩んだと砂田さんが話してくれたように、カップリングにするにはもったいないくらいの名曲です。
しかしアルバムに収録されて再び聴かれるようになったり、「BALLISTIK BOYZ、こういう曲も得意なんだね」と知ってもらえるのが個人的には嬉しかったりもします。
以前アルバムレビューの中で書いた、
“誰がどの場所に立っていても、たった数秒の1フレーズでも輝かせることができるのが、BBZの素晴らしい魅力”
という真夜中のメモは、コーラスでも一瞬のフェイクでも、全力で表現する彼らの姿を見て、すべての瞬間に意味があると思ったからです。
Culture Cruiseでは、タイに行く直前に1度、帰国後に3度取材をしてきました。
タイでの経験はきっと彼らにとって、言葉を交わさずとも団結していく時間が育まれたのだろうというのが、帰国後にお会いして感じたことです。
それをグループの音楽にどう落とし込んでいくのか、いかに還元されるのか、その答えとなるものが次のアルバムだと思っていました。
そして生まれたのが『Back & Forth』の中の曲たちで、特に「N.E.X.T.」に関しては、タイでの経験がなければ生まれていなかったと、奥田さんも松井さんも話してくれています。
「N.E.X.T.」
元々は全国ツアー『BALLISTIK BOYZ LIVE TOUR 2023 “N.E.X.T.”』の中で、未音源化の曲として披露されていた「N.E.X.T.」。
前回のインタビューで、印象に残っている出来事を伺った際、砂田さんもこのツアーとこの楽曲のことを即答してくれました。
ファンの皆さんの間でも反響が大きく、2023年12月には待望のデジタルリリース、そして今回のアルバム収録へと至りました。
深堀さん直筆のリリックビデオ。「夢」と「輝」の文字きれいすぎませんか?
この曲を自作するにあたり、しんどかったり悲しかったりすることもある。等身大の姿も伝えないと本当の自分たちを見てもらえないと思った、ということを語ってくれた奥田さん。
それがインタビュー冒頭での「見た目だけではなく、僕たちのいちアーティストとしてのかっこよさや、リアルな音楽性というものを感じ取ってもらいたい」という部分への答えにも匹敵するのだと思います。
つまり自分たちが素直になることで、BALLISTIK BOYZの音楽となり、リスナーに届く。それが聴き方のスタンスにもつながるという考えに行き着いたのだと思いました。
だからこそアルバムタイトルも『Back & Forth』と名付けることができたのかもしれません。
海沼流星さんのラップパート “止まってはくれない時計 ただ進む度に繰り返されてく失敗” という正直なリリックが個人的には刺さりまくっています。
海沼さんが明かしてくれた、浮き沈みの激しい世界での苦労や悔しいこともたくさんあるというお話、そしてそれはファンの方々もきっと同じだから、一緒に頑張っていけたらというお話。
この言葉で、これは自分自身への歌なのだと思える方もきっとたくさんいるはずです。
これが現在のBALLISTIK BOYZであり、アルバムを締めくくるにふさわしい楽曲です。
前作『PASS THE MIC』はアイデンティティを提示して旗印を掲げ、そこに向かって邁進するような決意を感じました。
今作ではより表現力を増してアーティスティックに、多様な楽曲によって作品としての幅広さも生まれています。
取材を重ねていくうちに感じたのが、数多のダンス&ボーカルグループの中で、BALLISTIK BOYZは自分たちらしさをどう保ち、磨いていくべきか、常によく考えているということでした。
EXILE TRIBEであることの尊重や誇りを持ちつつも、そこに甘んじることなく、自分たちの力で切り拓いていこうとする凛然とした強さも感じます。
そのどちらも実現して継続することがどれだけ困難であるか、彼らが一番感じているはずなのは言うまでもありません。
足跡のない未来を目指したBALLISTIK BOYZ。
一進一退でも確実に前へと進む、7人の現在の足跡を刻んだ新機軸とも言える作品だと感じました。
撮影:小山恭史、文:長谷川 チエ
▼インタビュー前編
▼インタビュー後編
▼「Animal」レビュー
▼アルバム『PASS THE MIC』レビュー